2025年春闘アピール

2024年12月21日
国公労連第163回拡大中央委員会

 国公労連は本日、第163回拡大中央委員会を開催し、混迷する国内外の諸情勢のもと、民主的で持続可能な社会を実現するため、公共の「担い手」である公務労働者の賃金、人的体制などを抜本的に改善する労働運動の在り方などを議論し、その基盤となる組織の強化・拡大をめざす2025年春闘方針を決定した。
 近年の日本社会に漂う閉塞感は、「失われた30年」という言葉に象徴されるように、低迷する経済指標、激甚化する自然災害、蔑ろにされる多様性など、政権の失策による弊害が背景にある。
 そこから脱却するための「物価上昇を上回る賃上げ」は、久しく実現しないまま推移し、大企業の内部留保が過去最高の総額553兆円にまで膨張する一方で、実質賃金は過去30年で最低にまで急落するなど、貧富の格差が顕在化している。本年度の地域別最低賃金の改定は、「最下位脱出のチキンレース」とも揶揄される不健全なものとなり、人材確保と賃金の地域間格差の矛盾が露呈した。
 本年の人事院勧告に基づく公務労働者の賃金は、地域手当で温存された賃金格差、中高齢層の職務と生活実態に見合わない低水準の改定など、〈労働者本位〉からかけ離れた「給与制度のアップデート」は、多くの課題を残すものとなった。公務員賃金の社会的影響を重視し、官民較差の比較企業規模の底上げなどをめざして、2025年春闘でも官民共同の「社会的な賃金闘争」に全力をあげよう。
 公務の職場に差別と分断をもたらしてきた非正規公務員の労働条件は、当事者の活躍と組織的な運動が有機的につながり、「3年公募要件」の廃止や病気休暇の有給化などを実現し、非正規という「身分」ではなく、「労働者」としての地位と権利を保障するために大きく前進した。安心・安定の無期雇用を実現する任用制度の抜本的な転換、正規公務員との均等・均衡待遇をめざして、オンライン署名のスタートダッシュに成功した「あんみつキャンペーン」にも学びつつ、とりくみをステップアップしていく。
 公務・公共サービスの拡充に向けては、定員合理化目標数の半減を足掛かりに、政府の定員管理政策を打破していかなければならない。長時間労働を是正するための大幅な増員を追求する一方で、人手不足を口実とした安易なデジタル化や労働時間の柔軟化は、行政そのものの歪みに直結しかねない。深刻な格差と貧困で疲弊した国民の危機意識は、行政ニーズの高まりにつながっており、誰一人として孤立・困窮させない行政体制の確立、すなわち「公共の再生」が急務となっている。「公務・公共サービス拡充を求める請願署名」を基軸としたとりくみに、すべての組織・組合員の結集を呼びかける。
 10月の衆議院議員総選挙は、「政治とカネ」によって歪められてきた国政を糾そうとする国民の意思が如実に反映された。国民不在の政策論議を修正し、ジェンダー平等やあらゆるマイノリティの権利保障など、国民的な諸課題を実現する好機を逃してはならない。
 海外では、アメリカ大統領選挙の結果に伴い、「小さな政府」を標榜する新自由主義の再興や保護主義の台頭、さまざまな分断が危惧される一方で、隣国の韓国では、国家元首の権力濫用に抗う国民の瞬発力などに民主主義の可能性が示唆されている。また、ロシアやイスラエルなどの核保有国が当事者となる紛争が長期化・深刻化し、核使用の脅威が高まっている。そのカウンターパンチとして、日本被団協がノーベル平和賞を受賞し、核軍縮に向けた強烈なメッセージを世界中に発信した。日本国憲法が定めた平和主義や国民主権を護る社会的な組織として、労働組合の機能と役割を存分に発揮しよう。
 本年の公務労働者の賃上げは、政府の決定が先延ばしとなり、実質的な「凍結」状態に陥った。労働基本権制約の代償措置である人事院勧告が軽視されたことは、労働者の普遍的な権利を侵害する人権問題である。厚生労働省の労働基準関係法制研究会は、労働時間規制のデロゲーションの範囲拡大や労使交渉のルールの見直しなどを議論し、財界に迎合した〈労基法解体〉を狙っている。いずれも労働組合への挑戦であり、それに対峙できる強固で広範な組織とストライキに匹敵する運動の構築が不可欠となっている。
 2025年春闘では、とりわけ4月期に組織の強化・拡大をめざすため、「対話と学びあい」を重視するとともに、とりくみの成果を効果的に発信するなど、職場の仲間が労働運動を〈自分ごと〉にできる「全員参加型」の意識を浸透させる。国民本位の行財政・司法の確立を展望して、職場・地域から奮闘しよう。

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