国公労新聞|2024年12月10日号|第1635号

実質賃金が過去最低
大幅賃上げで暮らし改善

 —2025年春闘方針のポイントについて、笠松鉄兵書記長にお聞きします。25年国民春闘はどのような情勢のもとでとりくまれるのですか?

 労働者・国民の生活はますます苦しくなっています。これを打開する春闘としなければなりません。日本経済は30年以上にわたって停滞・衰退してきました。そこへ物価高騰が襲い掛かっています。総務省が11月22日に発表した10月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が108.8と前年同月比で2.3%上昇しており、38か月連続の上昇となっています。その影響もあって、8・9月の実質賃金は再びマイナスに転じています。
 こうした状況を尻目に、大企業や大資産家に富が集積しています。財務省が12月2日に発表した2024年7〜9月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の全産業(金融・保険業含む)の大企業が保有する内部留保は53兆円となり、過去最大を更新し実質賃金は過去最低です。アベノミクス前の2012年と比べて経常利益は約1.7倍、株主配当は2.4倍、役員報酬は30%増と大幅に増加する一方で、労働分配率(2023年度)は38.1%と過去最低を記録しています。このように、労働者を犠牲にしてつくられた富を労働者に還元させることが求められています。いまこそ大企業が社会的責任を果たすべきときです。
 この間の政府の物価対策は、ガソリンや電気代への補助、一時的な定額減税や給付金など、細切れの対策ばかりで、国民生活を抜本的に改善するものとはなっていません。そうした状況にくわえて裏金事件などの不祥事が相次ぎ、その真相をうやむやにしようとする自民党政治に対する国民の審判(怒り)が下ったのが10月27日の衆議院選挙でした。与党は過半数割れに追い込まれ、場合によっては、国会で内閣不信任案が可決する可能性もある状況です。第2次石破内閣も、時事通信の世論調査(11月)では、支持率が28.7%と「危険水域」となっています。
 現在開かれている第216回臨時国会では、自民党の政治資金問題の真相究明が大きな争点となるとともに、11月22日に閣議決定された「総合経済対策」に盛り込まれた「年収103万円の壁」問題や介護・福祉労働者の処遇改善をはじめ、紙の健康保険証廃止問題などが議論の俎上に載せられています。このように、国民の声が政治を大きく動かしており、政治は「変わらない」から「変えられる」ことを表しています。
 物価高騰から国民生活を守り改善するにはすべての労働者の大幅賃上げが不可欠です。全労連・国民春闘共闘はもとより、連合でもすべての労働者の賃上げをめざす方針を掲げるなど、賃上げにむけた機運が高まっており、こうしたうねりをさらに広げていくために一人ひとりが声をあげていく必要があります。そのことで政治や企業経営者に変化をもたらすと確信しています。
 私たちの仕事において切っても切れない関係にある憲法をめぐっては、衆議院で改憲勢力が発議に必要な3分の2議席を下回り、憲法改正に一定の歯止めをかける状況をつくり出しました。しかし自民党政権がすすめてきた大軍拡と大増税、沖縄など南西諸島の基地強化、武器輸出など、憲法第9条の土台を崩す「壊憲」をこれまで以上に拡大してくることが想定されます。
 また、アメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が返り咲いたことから、世界では脱炭素化政策の揺り戻しや対米輸出の圧迫が懸念されています。日本に対しては、特に防衛費の負担増大の要求をエスカレートさせるおそれもあります。大軍拡や前述の「年収103万円の壁」などをめぐっては、その財源をどうするのかという議論が煮詰まっていない状況にあり、国民生活のみならず、私たちの賃金をはじめとする労働条件や職場・仕事にも影響しかねません。状況を注視しつつ、これらを許さないとりくみを強めていくことが25年国民春闘において求められています。

「ひとり一行動」を合言葉に 25春闘に全力で結集しよう

 —公務労働者が25年国民春闘に結集する意義はどこにありますか?

 いま、欧米もさることながら、日本においても労働者が立ち上がり、ストライキなどを背景としたたたかいで賃上げなどの要求実現を勝ち取っています。公務労働者もストライキでたたかおうと言いたいところですが、労働基本権が制約されている現状ではそう簡単にはいきません。しかし、手をこまぬいているわけにもいきません。
 近年、労働基本権制約の代償たる人事院勧告制度の矛盾と限界が露呈しています。そうしたもとでは、労働基本権回復が非常に重要です。職場での学習をすすめ、職場での世論を高めていくとともに、労働基本権の全面回復を展望して各支部・分会での日常活動の活性化など、組織強化と要求実現に不可欠な組織拡大をすすめていくことが求められています。
 また、全労連の「たたかう労働組合のバージョンアップ」に呼応し、実際にスト権を行使することは難しくても、組合員一人ひとりがスト権行使に匹敵する決意を持って春闘に臨み、「ひとり一行動」を合言葉に25春闘に全力で結集することが大切です。それは、現行制度下ではなおのこと、私たちの要求実現は、国民要求が実現するなかでその展望が開けてくるからです。
 他方、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区での戦闘行為やロシアによるウクライナへの全面侵攻、プーチン大統領による核兵器使用をほのめかす発言など、各地で平和が脅かされているなかで、日本被団協のノーベル平和賞の受賞は極めて貴重で尊い出来事でした。被爆者一人ひとりが苦しみながら自らの体験を証言し、核兵器のない世界の実現を訴え続けてきたからこその受賞です。一貫した訴えととりくみを継続していくことの重要性は労働組合でも同じです。
 春闘に限りませんが、私たちの要求の正当性や切実性を主張し続ける、そうした運動の継続性を重視したとりくみをすすめていく必要があります。そのような観点からすれば、青年組合員に春闘に結集する意義も含めて国公労働運動を継承していくことも大切です。

2025春闘の基本方針【ポイント】

1.すべての労働者の賃上げと雇用の確保をめざす
 —大幅賃上げで生活改善・景気回復を

 物価高騰によって国民生活が悪化しています。生活改善には、すべての労働者の大幅賃上げ・底上げが必要です。25春闘では、すべての労働者の大幅賃上げ・底上げと良質な雇用を確保し、生活改善をめざします。国公労連は、そのことを通じて内需を拡大し、景気を回復させるとともに、社会保障改悪や労基法解体など労働者・国民犠牲を許さず、生活と権利を守る国民春闘の構築にむけて、民間労組へのストライキ支援をはじめ官民共同を大きく広げるなど、国公産別労働組合としての責務を果たしていきます。
 公務員賃金は約900万人の労働者に影響を及ぼすことから、全労連の社会的な賃金闘争(最低賃金、公契約、公務員やケア労働者の賃上げ)に結集し、ケア労働者をはじめ公務員の賃金改善に向けて春闘を主体的にたたかいます。
 政府・財界による新自由主義政策の推進が、労働者・国民の生活を困窮させる一方で、富裕層の資産や大企業の内部留保を増大させており、貧困と格差が拡大しています。新自由主義政策の転換を政府に迫ると同時に、富の再配分機能の強化、内部留保の取り崩しや課税により、社会への還元をめざす「ビクトリーマップ」運動を県国公を中心に全国で展開するなど、国公労働者の専門性を活かしつつ、公務労働者側から官民一体の春闘構築にむけた共同行動を強めていきます。
 独立行政法人等労働組合では、労働基本権を背景にした交渉機能を発揮し、大幅賃上げなど労働条件の改善をめざします。
 公務・民間問わず長時間労働が蔓延しています。健康確保をはじめ人間らしい生活を実現するためには賃上げとともに労働時間短縮が不可欠です。政府・財界が狙う労基法解体を許さず、超過勤務縮減はもとより、国公労連の基本要求である1日7時間労働を追求していきます。

2.公務労働者の賃金改善、均等待遇、権利確立など職場要求の前進めざす
 —実質的「賃下げ」阻止を

 私たちの賃金をはじめとする労働条件をめぐっては、11月29日に「人事院勧告どおり2024年度の給与改定を行う」との取扱方針が閣議決定され、第216回臨時国会に改正給与法案などが上程されています。改正給与法案は臨時国会会期終盤に可決・成立する見込みですが、予断を許さない状況です。
 改正給与法案が成立すれば、「給与制度のアップデート」による地域手当「見直し」、配偶者にかかる扶養手当廃止、寒冷地手当改悪によって、2025年4月から実質的に「賃下げ」となる職員が生まれることとなり、極めて問題です。政府が物価上昇を上回る賃上げをめざしている流れに逆行し、賃上げに向けた民間企業の機運に水を差すことにもなりかねません。
 国公労連は現在(2024年12月10日)、こうした改悪などを阻止するために、単組本部を中心に国会議員要請行動を展開しているところです。

賃金の地域間 格差解消を

 改正給与法案が成立しても私たちのとりくみは終わりではありません。後にも述べますが、公務・公共サービス拡充にむけたとりくみにおいて、地元選出国会議員への要請行動を提起しています。春闘期においても、そうした機会や街頭での宣伝行動などでも「給与制度のアップデート」等の問題点や弊害をアピールし、公務員賃金改善や賃金の地域間格差解消への理解と共感を広げていきます。
 賃金の地域間格差をめぐっては、近年の地域別最低賃金の改定状況や、人事院勧告に準拠しない地方自治体の人事委員会勧告が散見されるなど、格差是正・解消の方向にむかっています。しかし、国家公務員の賃金は今回の地域手当の「見直し」によって、最大20%もの賃金の地域間格差が温存されたまま、支給割合が低下する地域が多く存在しており、賃金の地域間格差解消の流れに逆行しています。地域経済を底上げ・活性化するためにも、賃金の地域間格差の解消は喫緊の課題であり、全労連の「チェンジ全国一律最低賃金実現キャンペーン」と有機的に結んだとりくみを展開していくこととしています。

職場から 声をあげよう

 国公労連が25春闘で提起している賃上げ要求「月額2万8千円以上、時間額200円以上」をはじめとする統一要求は、職場討議を経たうえで1月17日の中央闘争委員会で決定することとしています。確認された「2025年国公労連統一要求書」は、2月上旬に政府・人事院に提出し、その実現をめざします。
 職場段階においては2月3日の週を「第1波全国統一行動週間」に設定し、すべての職場で所属長に要求を提出してたたかいをスタートします。
 3月下旬に設定する最終回答日にむけて、職場からの上申闘争を強化し、2月28日までに統一要求書に関わる上申書を発出するようとりくみます。また、3月6日に実施される春闘期最大規模の中央行動(3千人規模)に全国の職場から仲間を送り出すとともに、3月13日の「第2波全国統一行動日」には合同庁舎などでの合同職場集会を含め、すべての職場で組合員が最大限結集する職場集会を開催し、政府・人事院の最終回答に向けて職場決議の採択・送付などのとりくみを積み上げます。同時に、官民一体で春闘をたたかう立場から民間労働組合へのストライキ支援・激励などのとりくみを展開します。
 また、男女の賃金格差が社会問題となるなかで、公務職場においてもその是正にむけてとりくんでいきます。

非常勤職員課題で さらなる前進を

 いわゆる「3年公募要件」の撤廃や病気休暇の有給化など、非常勤職員の切実な要求の実現を勝ち取りました。これは、非常勤職員をはじめとするすべての組合員の奮闘や国公労連の運動にご支援・ご協力いただいたみなさんの力で築いた貴重な到達点です。
 しかしながら、期間業務職員の任用は毎年公募が原則、任用期間は一会計年度に限るといった運用は残されていますし、人事院が出した「期間業務職員の採用等に関するQ&A」には「各府省が、…公募によらない再採用の上限回数などの目安を独自に設けることも否定されるものではない」との記述があるなど、「3年公募要件」撤廃の形骸化をもたらすおそれを含んでいます。病気休暇も2025年4月から有給化となるものの、日数は10日のままです。このように雇用不安や常勤職員との不合理な格差はまだ多く存在します。
 「3年公募要件」が撤廃されてはじめての年度更新期を迎えます。全労連が提起する「非正規春闘」に結集し、「非正規公務員の雇用を守る全国いっせいのたたかい」を国公産別として展開します。各職場では、一律・機械的な公募や不公正な能力実証などが実施されないよう監視するとともに、非常勤職員の安定雇用や不合理な格差解消にむけて、各級機関などでの一体的な交渉・協議を強化します。また、「非正規公務員あんみつネットワーク」が実施しているオンライン署名キャンペーンに結集するとともに、地方公務共闘への結集など、地方公務員や教職員の非正規課題と連携した運動をすすめていきます。

再任用職員の 処遇改善を

 「給与制度のアップデート」によって「住居手当」「寒冷地手当」「地域手当の異動保障等」「特地勤務手当(準ずる手当含む)」が2025年4月から再任用職員にも支給されます。これらの諸手当の支給は、長年の要求が前進したものです。しかし、扶養手当は支給とならず、一時金は常勤職員の約半分の支給月数のままです。俸給水準も在職者の多い2級から初号にも届かない低水準となっています。
 国公労連は引き続き、再任用職員の俸給水準を大幅に引き上げるとともに、①期末・勤勉手当の支給月数の改善、②扶養手当の支給、③宿舎の貸与、④年次休暇の繰り越しなど常勤職員との不合理な格差の解消を人事院と政府に要求します。

3.国民本位の行財政・司法の確立をめざす
 —定員増で「公共の再生」を

 この間、国家公務員の定員をめぐっては、7年連続の純増を勝ち取り、「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(2014年7月25日閣議決定)を一部変更(2024年6月28日)させ、定員合理化目標数を5年10%のところを2025年度からは5年5%に半減させるなど、貴重な到達点を築いています。公務員バッシングが激しく行われていた時代においても、そうしたことに負けることなく、国民のいのちやくらし、権利を守るために、職場・地域から増員をはじめとする公務・公共サービスの拡充を今日まで訴え続けてきたからこそです。しかし、貴重な到達点を築いた一方で、増員はとりわけ地方出先の職場まで届いておらず、厳しい状況が続いています。
 国公労連は、こうした実態を改善していくために、全労連が提起する「公共の再生」にむけた運動に積極的に結集するとともに、①国民の共有財産(公共財)としての公務・公共の社会的価値、②全体の奉仕者・エッセンシャルワーカーとしての公務・公共の社会的役割を重視し、「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」を基軸に運動を展開していきます。
 各県国公を主体にリーフ「国民のくらしを支える行政の拡充を」(リニューアル版)を活用した地元国会議員事務所への要請・懇談や街頭での宣伝行動などを実施し、職場と地域住民が共通して持っている公務・公共サービス拡充要求を「見える化」することで、理解・共感を広げていきます。また、理解・共感をいっそう広げていくためにも公務・公共サービスを必要とするステークホルダー(利害関係者)とのつながりをいかしてシンポジウムなどの共同開催を追求するなど「市民との共同」を実践していきます。
 具体的には、今秋からとりくんでいる「公務・公共サービス拡充を求める請願署名」を各単組がすすめる増員署名と両輪のとりくみと位置づけて積極的な集約目標を掲げ、職場だけでなく広く民間労働組合などへの協力も要請していきます。
 請願署名はこれまで各ブロック・県国公、職場の仲間の奮闘もあって100を超える紹介議員を獲得し、紹介議員にはなれなくても私たちの主張に理解を示す議員も増えています。このとりくみは地元事務所での要請が肝要です。各ブロック・県国公において地元選出国会議員への要請を積み上げ、3月7日の「議員会館一斉要請行動」にすべてのブロック・県国公の仲間が参加し、議員への働きかけを強めて通常国会での請願採択をめざします。

4.憲法を守り、国民の権利保障・「ジェンダー平等」の実現
 —学習を力に「ジェンダー平等宣言(案)」職場採択運動

 国公労連は、日本国憲法の基本理念を破壊する改憲や大軍拡・大増税路線を断じて許さず、憲法と平和を守るとりくみをすすめるとともに、憲法にもとづく国民の権利保障を実現するため、憲法尊重擁護義務を負う国公労働者としての役割を発揮します。そのためにも意欲と誇りを持って「全体の奉仕者」として任務を遂行する国公労働者の労働条件と権利を守るとりくみを推進します。とりわけ、公務員の労働基本権の全面回復を求め政府を追及するとともに、職場では権利回復にむけた学習をすすめます。公務員の権利回復は民主的な行財政・司法の確立を後押しし、「全体の奉仕者」を担保するものであり、ひいては国民の幸福追求権の実現に寄与することを国民世論に訴えます。
 職場でのジェンダー平等の実現は、国民全体の奉仕者である公務員の役割発揮や公務・公共サービスの質の向上をはかるうえでも、安心して働くことができる公務職場をつくっていくうえでも極めて重要な課題です。公務職場における働き方やハラスメントの防止、労働組合における男女共同参画など、国公労働者の労働条件と権利を守るすべてのとりくみにジェンダー平等の視点を重視します。現在とりくんでいる「国公労連ジェンダー平等宣言(案)」職場採択運動もひきつづき、学習をすすめながら推進していきます。
 また、第163回拡大中央委員会において性的マイノリティに関する要求を確立することとしています。政府・人事院への性的マイノリティに関する要求を強化していくため職場学習をすすめていきます。

5.職場で働くすべての仲間を視野に入れた組織強化・拡大
 —対話と学びあい推進を

 職場は、定員削減と新規施策による労働強化や当局の管理強化などにより、メンタルヘルス疾患の増大や職員同士のコミュニケーションが不足するなど極度に疲弊しています。このようななかでこそ労働組合が持っている組合員一人ひとりに寄り添うケアの感性(集団的ケア)をいかし、日常活動をつうじて相互のつながりを深め、組合員同士で支えあい、ともに成長しながら、職場・組合員から信頼と共感が得られる組合活動を展開していく必要があります。全労連が提起している「対話と学びあい」に基づき、何より「対話」を重視し、職場で働くすべての仲間一人ひとりとの対話をつうじて、要求を組織し、その要求を実現するためにも労働組合への加入も含めて活動への参加を呼びかけていきます。その際、この秋に職場にお届けした、組合が勝ちとってきた成果や組合の力をアピールするビラやポテッカーを活用しましょう。また、組合員だからこそ加入できる国公共済会を全面に打ち出して対話を推進していきます。
 組織強化・拡大の基盤となるのは各単組の支部・分会です。その体制の確立・強化にむけては、各単組本部と支部・分会間の対話・連携を強めていくことが重要です。
 春の組織拡大強化月間(3〜5月)では、各単組が設定する目標達成にむけて、正規・非正規・再任用などすべての職員を対象とし、とりわけ4月の新規採用職員への重点的な働きかけと、異動などに伴う脱退防止策を積極的に講じます。
 要求実現にむけた地域での運動の要となるブロック・県・地区国公の体制構築・強化にむけては、単組本部の協力も得ながら、日常的なつながりを強めるとともに、必要に応じてオルグを実施するなど、伴走型の支援をすすめます。

25春闘】物価高に負けない賃上げを官民一体で実現しよう

 国公労連は、25年国民春闘の賃金要求として、月額2万8千円(6.9%)以上の引上げを提起します。
 これは、要求組織アンケートの結果(12月6日現在)を重視したものです。生活実感の回答は、「かなり」と「やや」を合計した「苦しい」の割合は、55.8%となりました。前回(前年度)から少し低下していますが、物価上昇に伴う実質賃金の低下傾向など、さまざまな「負担感」が反映したものと推測できます。
 一方で、賃上げ要求額の回答は、加重平均で2万7323円となり、前回の2万5048円から大幅に上昇しました。
 その背景には、24年人事院勧告に基づく月例給の平均改定率が2.76%(定期昇給を除く)にとどまった一方で、民間の24春闘の賃上げ相場や地域別最低賃金の上昇率が5%超となるなど、官民格差を解消できない低水準の給与勧告への不満があるはずです。
 政府が11月22日に閣議決定した「新たな総合経済対策」は、サブタイトルを「全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす」とし、「物価上昇を上回る賃金上昇を全国的に幅広く普及・定着させる」などとしています。「地方創生施策」では、「全国津々浦々の賃金・所得の増加」も謳われています。
 25春闘は、賃上げの機運をさらに向上させるため、官民一体となった運動がこれまで以上に重要となっています。全国一律最低賃金制度の確立は、各地域で深刻化する人材確保の問題を解消するために不可欠です。それは、国家公務員の地域手当による地域間格差の弊害とも共通する課題です。
 官民格差を解消できない人事院勧告制度の構造的な欠陥を是正するため、比較企業規模を見直すなど、政府が自ら雇用する国家公務員の賃上げを実現し、「物価上昇を上回る賃金上昇」を先導させていくための追及も必要です。
 25年春闘統一要求(案)では、労働時間・休暇制度や健康・安全確保など、職場の日常的な要求のほか、非常勤職員の処遇改善、定員管理に関する要求書なども提案します。この1年では、期間業務職員の「3年公募要件」の撤廃、定員合理化の半減などを実現してきました。「たたかいつづければ、いつかは実現する」という教訓のもと、さらに要求を強化していく好機です。
 また、新たに「性的マイノリティをめぐる職場環境の改善等に関する要求書」を提案し、当事者が働きやすい職場環境の実現や偏見・差別の根絶をめざします。
 これらの要求(案)は、12月21日の第163回拡大中央委員会で議論し、1月17日の中央闘争委員会で決定します。「全員参加型」の労働運動を意識しつつ、職場での活発な討議をお願いします。

2025年国公労連統一要求書(案)抜粋・要約

1 賃金・昇格等の改善

(1)国家公務員の賃金を月額28,000円(6.9%)以上(行政職(一))引き上げること。
(2)非常勤職員の時給を200円以上引き上げること。
(3)行政職(一)一般職高卒初任給(1級5号俸)を216,000円、一般職大卒初任給(1級25号俸)を248,000円に引き上げること。
(4)官民給与の比較は、企業規模を1,000人以上に引き上げるなど、同種・同等比較を徹底すること。
(5)地域手当による地域間格差を解消すること。当面は、支給地域の拡大や支給割合の改善を図り、地域間格差を縮小すること。

2 非常勤職員制度の抜本改善

(1)雇用の安定、常勤職員との均等・均衡待遇等を図る法制度を整備すること。
(2)任用は、公正な人事管理を実現するための法制度を整備するとともに、労働契約法の解雇権濫用法理や無期転換制度に準じた措置を講じること。
(3)再採用や任期の更新に当たって、公募を必要とする原則を廃止すること。
(4)賃金は、学歴、経験年数、職務内容、職務経験等を考慮して決定すること。また、昇給制度を創設するとともに、月給制を導入すること。
(5)生活関連手当をはじめ、諸手当の支給を拡充すること。
(6)無給の休暇を有給に、年次休暇を採用の当初から取得できるようにすること。

3 高齢期雇用・定年延長

(1)60歳を超える職員の賃金は、その減額措置を廃止し、従事する職務の内容・職責、蓄積された知識・能力・経験など、高齢期にふさわしい生活が維持できる賃金水準とすること。
(2)再任用職員の賃金水準を大幅に引き上げるとともに、一時金と諸手当は、常勤職員との均等・均衡待遇を実現すること。
(3)再任用で継続勤務する職員は、退職前の年次休暇の繰越しを可能にすること。
(4)暫定再任用制度は、定員と級別定数を確保するなど、希望者全員のフルタイム任用を保障すること。

4 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立

(1)所定勤務時間を「1日7時間 週35時間」に短縮すること。また、窓口取扱時間を設定すること。
(2)客観的な勤務時間管理を徹底し、超過勤務を大幅に縮減するとともに、不払い残業を根絶すること。
(3)インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の学校保健安全法に基づく出席停止措置等に対応するための休暇を新設すること。
(4)職員一人当たりの執務スペースの拡充やバリアフリー化、障がい者への合理的配慮の徹底など、誰もが働きやすい職場環境を整備すること。
(5)旅費制度の運用に当たっては、職員の自己負担をすべて解消するとともに、とりわけ転居費等の支給手続を簡素化し、速やかに支給すること。
(6)宿舎への入居が認められる職員の類型を廃止し、新築やリノベーション、民間賃貸住宅の借受等を含め、必要な公務員宿舎を確保すること。

5 民主的公務員制度と労働基本権の確立

(1)日本国憲法第28条に則った基本的人権として、ILO勧告等の国際基準に沿った労働基本権の全面的な回復を実現すること。
(2)公務員の政治的行為の制限を抜本的に見直し、日本国憲法で保障された市民的・政治的権利を保障すること。
(3)能力・実績主義強化とそれに基づく給与制度の見直しを強行しないこと。
(4)人事評価制度は、中・長期的な人材育成と適材適所の人事配置に活用するため、抜本的に見直すこと。
(5)職員の内部告発権を保障するとともに、国民監視のもとで告発者を保護できるよう、不利益取扱いの禁止を徹底すること。

6 定員管理等

(1)2025年度以降の定員合理化目標数を撤廃するとともに、柔軟な定員管理を実現するなど、国家公務員を大幅に増員すること。
(2)適正な人的体制と人材を確保し、デジタル行財政改革に基づく定員合理化、人手不足を口実とした行政DXによる過剰な業務改革を強行しないこと。
(3)恒常的・専門的・継続的な業務に従事する非常勤職員を常勤化・定員化すること。

7 両立支援制度の拡充、男女共同参画の推進、健康・安全確保

(1)子の看護休暇を子ども一人につき5日以上とするとともに、保護者による看病や通院の同伴等の実態を踏まえ、適用対象年齢を中学校卒業前の子まで引き上げること。
(2)女性の大幅な登用を図るとともに、転居を伴う人事異動をその要件としないこと。
(3)パワーハラスメントの防止等のための人事院規則の運用を徹底するとともに、すべてのハラスメントの根絶に向けて、実効性のある対策を講じること。
(4)国家公務員災害補償は、業務に起因する感染症やテレワークの利用に際しての事故等も含めて速やかに認定すること。

8 性的マイノリティの職場環境の改善等

(1)任用のすべての過程(募集(試験)、採用、昇給、昇任、昇格、退職管理等)で性的指向・性自認に関する差別やハラスメントを防止・根絶すること。
(2)トランスジェンダーの特性に配慮したトイレ、更衣室等は、労働安全衛生の観点等を踏まえ、共用個室化等の施設整備を推進するとともに、柔軟な施設利用を可能とすること。
(3)性自認に基づく氏名や同性パートナーと同一の氏等、通称名(ビジネスネーム)の使用を可能とすること。
(4)同性パートナーを対象とした諸手当(扶養・住居・単身赴任・寒冷地)の支給、各種休暇・休業制度や妊娠・出産・育児・介護の両立支援制度の利用を可能とすること。

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