2025年4月2日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 笠松鉄兵
人事院が2023年9月に立ち上げた人事行政諮問会議が2025年3月24日に最終提言(以下、「提言」)を公表した。
人事行政諮問会議では、2024年2月に職員団体などを対象としたヒアリングが実施されたものの、それ以降は当事者である労働組合の意見などを反映する機会すら設定されなかった。国家公務員の人事行政の在り方を検討するプロセスとしては、到底容認できるものではない。
提言では冒頭、「公務が危機に瀕している。公務の危機は、国民の危機である」とはじまり、「今の日本を、そして未来を支える公務であり続けるために、真の改革に挑む時である」とし、改革の方向性等が述べられている。しかし、公務がなぜこのような危機に陥っているのかという問題分析においては、「一人一人の職員に向き合ったマネジメントが十分になされていない」ことを第一に挙げるなど、現場のマネジメントの問題に矮小化している。
国公労連は、政府の総人件費削減方針に基づいて、「改革」の名の下にこの間進められてきた様々な施策にその要因があると考える。まずはこの認識に立つ必要があり、その反省を踏まえた施策が講じられなければならない。
また、提言は、本府省職員を念頭にした検討が主であり、一般職である国家公務員の8割以上を占め、公務・公共サービスを直接的に提供している地方支分部局の職員は蚊帳の外である。これでは「公務の危機」は解決しない。
提言では、「国家公務員行動規範」の制定を求めており、その「3つの方向性(①「国民を第一」に考えた行動、②「中立・公正」な立場での職務遂行、③「専門性と根拠」に基づいた客観的判断)」自体は、国家公務員が日本国憲法に「(国民)全体の奉仕者」と位置づけられていることからも当然であり、この理念を実現できる施策が職場全体で共有・運用される必要がある。しかしながら、とりわけ「職務基準の給与制度・運用」については、能力・実績主義の強化が強調され、職員間での対立や本府省と地方での分断を煽るものとなっている。また、その前提となる人事評価制度の改革の方向性も実効性が不明であり、公正性・透明性・客観性・納得性が担保されていない現在の人事評価制度、その結果によって生じる大きな給与格差が職員のコンセンサスを得られていないばかりでなく、職務へのモチベーションを低下させている実態に対して、正面から答えるものとなっていない。
本府省職員の処遇改善を否定するものでないが、地方支分部局の職員、とりわけ中高年層職員を念頭にした措置も一体的に講じられるべきである。
近年の国家公務員の志望者の減少や離職状況を見ても「有為な人材の確保」は本府省だけの問題ではなく、地方出先機関でも喫緊の課題である。給与面での措置のみならず、職員を疲弊させている超過勤務をはじめとする長時間労働を是正・解消することも求められており、そのためには増員など人的体制の強化が不可欠である。しかし、提言の冒頭で「国家公務員を大幅に増加させることは難しい」とし、「魅力ある勤務環境」を構築するための方策として、「必要な人員の確保」も掲げているが「働き方改革や業務見直しを推進するための人員の拡充の検討が政府においてなされることが求められる」としか述べられていない。
大規模自然災害などが頻発するもとで、既存業務をはじめ行政需要が増大しているが、政府の進めている定員管理政策が障壁となって、それらに対応できていない。地方出先機関では超過勤務が増加し、健康被害も顕著であり、国家公務員志望者の減少、職員の離職も増大している。政府は、2024年6月に「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を10年ぶりに一部変更し、定員合理化目標数の割合を10%から5%へと半減させたが、国民の行政ニーズに適応する組織体制の回復は期待できない。現行の定員管理政策を早急にあらためるべきである。
「魅力ある勤務環境」として、「時間に縛られない働き方の推進(柔軟な働き方の更なる促進や裁量勤務の導入など)」に言及している。しかし、この間の過剰な定員削減により脆弱化している職場の人的体制で柔軟な働き方をさらに促進すれば、いっそうの人的体制の分散に伴う業務の停滞につながり、行政サービスの低下を招く要因になりかねない。
「裁量勤務の導入」にも言及しているが、民間における裁量労働制は労働者の長時間労働を助長するなどの問題点が指摘されている。これは公務においても同様であり、長時間労働や健康被害を一層促進しかねない。まずは、職場の人的体制の大幅な拡充や適正な勤務時間管理等を実現すべきである。
ここでは、「ハラスメント防止対策の徹底」でカスタマー・ハラスメント防止にも言及している。国公労連は、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントも然ることながら、カスタマー・ハラスメントに対しても実効性ある対策を求めてきており、現在の職場状況に鑑みれば早急な対応が必要である。
今後、提言の具体化にむけて政府・人事院内部で議論・検討が行われると承知している。提言の具体化は、今後の公務の行く末、ひいては私たちの労働条件に直結する課題でもある。政府においては使用者機関として、人事院においては労働基本権制約の代償機関として、その責任をしっかりと果たすとともに、国公労連との十分な協議と合意を前提とすることを求める。
国公労連は国民のいのち・くらし、権利を守るために国民本位の行財政・司法の確立と公正で民主的な公務員制度の確立をめざして奮闘する所存である。
以 上