2024年11月29日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 笠松鉄兵
1.政府は本日、人事院勧告どおり2024年度の給与改定を行うとの取扱方針を閣議決定した。
国公労連は、政府に対して物価高騰から公務労働者の生活を守るためにも生活改善できる大幅な賃上げを求めてきたが、今回の決定は、とりわけ中高齢層職員は物価上昇にも満たない改善であり極めて不満である。しかしながら、公務労働者の生活を少しでも改善するために、改善部分の早期実施を求めたい。
2.この閣議決定を受けて、私たちのたたかいは国会段階へと移る。国家公務員の給与、勤務時間など勤務条件の最終的な決定権限と責任は国会が負っている。「改正」給与法案の国会審議にあたって、あらためて国公労連の問題意識を表明する。
(1)11月26日の政労使会議における石破首相の発言にあるとおり、政府が物価上昇を上回る賃上げをめざしているなかにおいて、今回の改善措置は不十分である。また、「給与制度のアップデート」による地域手当「見直し」、配偶者にかかる扶養手当廃止、そして寒冷地手当改悪によって、実質的に「賃下げ」となる職員が2025年4月から生じることとなる。労働条件の不利益変更は許されず、回避する措置が講じられるべきである。さもなくば、賃上げに向けた民間企業の機運に水を差すことにもなりかねない。
くわえて、最低賃金や地方自治体の人事委員会勧告の実態を見れば、賃金の地域間格差は解消に向かわなければならないところ、地域手当の「見直し」では、最大20%もの賃金の地域間格差が温存されたまま、支給割合が低下する地域が多く存在し、格差解消の流れに逆行している。地域経済を底上げ・活性化するためにも、賃金の地域間格差の解消は喫緊の課題である。
(2)例年の人事院勧告の取扱いは、10月中にも閣議決定があり、11月中には臨時国会で改正給与法案などが可決・成立するという経過をたどっている。本年はそれが大幅に遅れ、4月時点の勤務条件が確定しない不安定な状態が長期にわたった。このように、賃金改善が事実上「凍結」状態とされていることは、国家公務員の期待権を反故にするばかりでなく、人事院勧告をも軽視する重大な権利侵害である。また、自治体労働者や独立行政法人等労働者など約900万人の労働者の賃上げや労働条件の確定も遅延させており、生活改善にブレーキをかけていることも極めて問題である。
(3)近年、労働基本権制約の代償措置としての実効性や合理性など、国家公務員の賃金決定システムの構造的な問題がいっそう浮き彫りとなっている。人事院自身も今年の「公務員人事管理に関する報告」で、官民給与の比較対象となる企業規模に対する問題意識を表明するなど、人事院勧告制度の矛盾と限界が鮮明となっている。
こうしたもと、公務員の労働基本権の全面回復が求められている。公務員の労働条件のみならず、公務・公共サービスの拡充にもつながる課題である。
そもそも労働基本権は、国際的にも保障されている労働者の普遍的な権利であり、それが一部の労働者で剥奪されていることは、人権侵害でしかない。政府は「多岐にわたる課題がある」と労働基本権回復を拒んでいるが、そうした人権保障に優先する相応の合理性があるとは言えない。諸外国では、当事者の人権を尊重する観点から、国民の理解などにも優先して、公務員労働者の労働基本権の保障はもとより、諸制度の法制化などを実現している。政府は、公務員の労働基本権の回復もそうした次元と性質の課題であることを認識すべきであり、早急に労働基本権回復にむけた交渉のテーブルにつくべきである。
3.25年国民春闘が幕を開けようとしている。全労連・国民春闘共闘委員会は、すべての労働者の大幅賃上げ・底上げ実現にむけた方針を議論し、そのたたかいをすすめている。
国公労連は、「改正」給与法にある改善部分の早期実施と、労働条件の不利益変更阻止にむけたとりくみを強めていくとともに、25年国民春闘においては、社会的な賃金闘争(最低賃金、公契約、公務員やケア労働者の賃上げ)を基軸に、900万人の労働者に影響を及ぼす公務員賃金改善を柱に春闘を主体的にたたかう決意である。「ひとり一行動」を合言葉に、すべての組合員が職場・地域で提起される行動に積極的に参加するよう呼びかける。
労働者・労働組合の団結の力で国民春闘勝利をめざし、職場・地域で大いに奮闘しよう。
以 上