2024年統一要求に対する政府・人事院回答を受けて
すべての職員の処遇改善へ引き続き奮闘を
記録的な物価高騰などにより、労働者・国民の生活は厳しい状況がつづくなか、多くの労働組合で全労連・国民春闘共闘の行動提起を積極的に受け止め、ストライキ体制を確立し、24春闘を展開し、生活改善にむけて大幅賃上げを求める国民世論をつくりあげています。一方、国公労連も春闘期における政府・人事院との最終交渉を実施し、その回答を受けて3月25日に中央闘争委員会声明を発表しました。その内容を紹介します。
国公労連は24春闘において、組合員の労働と生活の実態を踏まえた賃金改善はもとより、900万人の労働者に影響を与える公務員賃金の社会的意義を踏まえ、政府・人事院に対して物価上昇を上回る大幅な賃上げを求めてきました。しかし、政府は「人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討」、人事院は「情勢適応の原則にもとづき、必要な勧告を行う」と従来どおりの回答に終始するなど、国公労連の切実な要求に真摯に応えない姿勢をとっており極めて問題です。
公務員賃金は、民間の賃金改定を迅速かつ的確に反映する仕組みとはなっておらず、現在の物価高騰に対応できていません。そのことが職員の生活実態を悪化させる要因となっています。また、現行の人事院勧告制度は、比較対象企業規模が小さすぎることをはじめ官民給与比較方法に多くの問題点があり、公務員賃金水準を低位に押しとどめています。このことは日本の低賃金構造を固定化させる要因となっています。
民間準拠原則に偏り過ぎている一方で、生計費原則が形骸化している現在の公務員賃金の在り方は、社会的な賃金政策課題として国民的に議論することが求められています。
給与制度のアップデート等に言及せず地域間格差解消、非常勤職員の雇用安定を
人事院は、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、「給与制度のアップデート」「公務員人事管理のアップグレード」の検討をすすめています。いずれも組合員の関心や期待が高い課題であるにもかかわらず、最終回答で具体的な言及はありませんでした。現在の検討状況からは、本府省や「(成績)優秀者」など一部の職員を念頭に検討されている印象が否めません。
これらの検討にあたっては、労働者本位の立場にたって、国民と直接向きあい最前線で行政サービスを提供している地方支分部局で働く職員を中心に据えるとともに、公務組織全体の活力を高め、その持続可能性を実現するよう求めています。
また、地域別最低賃金を下回る高卒初任給の是正や、地域手当による賃金の地域間格差の解消、特急料金の全額支給をはじめとする通勤手当の改善、燃料費高騰に見合う寒冷地手当の見直し、再任用職員の労働条件の抜本改善などは喫緊の課題です。職員の不利益変更とならないことはもとより、すべての職員の処遇改善を求めます。
人事院は、昨年の勧告時報告で言及した「非常勤職員制度の運用等の在り方」について検討をすすめています。しかし、最終回答で具体的な言及はありませんでした。
民間では有期雇用労働者に無期転換権が保障されているにもかかわらず、公務員だけを対象外とする理不尽な国の姿勢は許されません。人権侵害とも指摘されている「3年公募」の廃止、労働契約法第18条に準じた「無期転換ルール」の導入は喫緊の課題です。また、パートタイム・有期雇用労働法の趣旨である「同一価値労働同一賃金」および病気休暇の有給化をはじめとする均等・均衡待遇の実現は急務です。
「非常勤職員制度の運用等の在り方」の検討にあたって、「運用の在り方」にとどまらず、非常勤職員制度をめぐる既存の概念を払拭し、現行制度を抜本的に改善するよう求めます。
震災で行政体制の脆弱性うきぼり 定削中止、必要な人的体制の確保を
職場で生じているさまざまな問題の根底にあるのは定員問題(人員不足)です。職員のワーク・ライフ・バランスなどを実現するにあたっては、各種施策が実施・検討されている「柔軟な働き方」よりも、職場の人的体制を拡充することが不可欠です。必要な人的体制を確保することが、休暇制度をはじめとした各種制度の充実した運用にもつながります。
能登半島地震の被害が甚大で復旧が長期にわたっている背景には、公務員の削減や自治体の広域合併など、この間政府がすすめてきた新自由主義政策の弊害があります。現行の定員管理政策が破綻していることは、コロナ禍や大規模災害で行政体制の脆弱性が浮き彫りになったことからも明らかです。
国公労働者が働きがいを実感できる職場を実現するとともに、国民本位の行財政・司法を確立するために、総定員法の廃止、定員合理化計画の撤廃・中止(2025年度からの定員合理化目標数策定中止)と行政需要に見合う定員確保(増員)を求めます。
労働基本権は公務労働者の人権問題 これ以上の無権利状態は許されない
今年も政府に対し、労働基本権の回復や人事評価制度の見直し、行政の公正・中立・透明性の確保などを求めて「国家公務員制度等に関する要求書」を提出し、ILO勧告にもとづく交渉・協議の場を早急に設定するよう強く求めてきました。しかし、政府は従来回答を繰り返すばかりで具体的な言及はありませんでした。
そもそも労働基本権は労働者の人権の問題であり、本来はILO勧告の有無にかかわらず、労使で自律的に問題解決をはかるべき課題です。公務員の労働基本権が剥奪されてから76年が経過しており、これ以上公務員の無権利状態を放置しておくことは許されません。
今年6月に開催されるILO総会に向けて、全労連公務部会が派遣する「ILO要請・欧州調査団」に国公労連からも参加し、公務員の労働基本権の全面回復に向けて奮闘します。
政府も賃上げ必要性に言及ならば生活改善できる大幅賃上げを
24春闘では、「ひとり一行動」のスローガンのもと、諸行動に結集された組合員をはじめ全国の仲間の奮闘が、官民共同のとりくみを前進させ、大幅賃上げを求める世論を大きく広げてきました。こうした労働者のたたかいが、政府・財界にも賃上げの必要性に言及せざるを得ない状況に追い込み、大手企業では満額回答が相次ぐ状勢をつくりだしました。あらためて組合員をはじめ全国の仲間のみなさんに敬意を表します。
他方で、33年ぶりと言われている高い水準の賃上げでも物価高騰には追いつかず、生活改善にはおよんでいません、これから中小企業や非正規労働者の賃上げにむけたたたかいが本格化します。
物価上昇を上回り、すべての労働者が生活改善できる大幅賃上げを求め、引き続き官民共同のたたかいに全力をあげるとともに、組合員の団結と産別結集を強め、仲間を増やし、人事院勧告期・概算要求期へと続くたたかいへの結集を呼びかけます。
みんなで学ぼう
ジェンダー平等オンライン学習会ひらく
国公労連は3月22日、「みんなで学ぼうジェンダー平等」第1回オンライン学習会を開催しました。この学習会は、「国公労連ジェンダー平等宣言(案)」職場採択運動のスタート集会として位置付けられ、弁護士の青龍美和子さんを講師に招き、ジェンダー視点から見る日本の現状や労働組合の役割について意見交換をしました。
開会あいさつで浅野書記長は、「ジェンダー問題を理解するためには何より学習と対話が不可欠」とし、誰もが自分らしく生きられる社会の実現に向けてとりくみをすすめていきたいと述べました。
青龍さんの講演では、「お茶を出すのは女性のほうがよい」「管理職は男性のほうが適している」などのジェンダーチェック表の項目をみながら各自が自らのジェンダーバイアスについて考え、政治や経済分野におけるジェンダーギャップが世界各国に比べて突出して大きい日本の現状などについて学びました。
参加者からは、「ジェンダー課題がいままでよりも身近なものに感じた」「学習と対話を通じてみんなが尊重しあえる職場にしていきたい」「私の分会でも、みんなで話し合い、ぜひ職場採択を行いたい」といった感想が寄せられました。
懸念される高齢層の給与抑制
【単身赴任手当の見直し】
昨年の人事院勧告では、「適用範囲を『採用』の場合にも拡大」することが報告されました。
現行の単身赴任手当の支給水準は、職員の生活実態に見合っておらず、その経済的・精神的な負担の軽減は喫緊の課題です。近年は、大規模な自然災害が頻発しており、業務継続計画(BCP)の非常参集要員などとして官署の近郊に単身赴任を強制される管理職員なども増加しています。
したがって、「採用」の場合にとどまらず、給与法などに定められた支給水準や支給要件を含めて、単身赴任手当を全般的に改善すべきです。
【再任用職員の給与】
また、「公務上の必要性により転居を伴う異動を余儀なくされるなど、(再任用)制度創設当時は想定されていなかった人事運用が生じてきていた」という人事院の認識のもと、生活関連手当などにも「支給範囲を拡大」することが報告されました。
再任用職員は、極めて脆弱な職場の人的体制にあって、長年にわたり蓄積した知識・技能に裏付けられた能力を発揮し、その中心的な存在として活躍しています。しかし、その勤務条件は、職務給原則を無視した俸給額と一時金の支給月数をはじめ、常勤職員との均等・均衡待遇が実現していません。まさに労働力の搾取であり、再任用職員という「身分」に基づく差別的な取扱いでもあるため、早急に改善されなければなりません。
【60歳前後の給与水準】
定年引上げに伴い、60歳超職員は、年齢差別とも言える30%の給与の引下げが適用され、当然ながらモチベーションが低下しています。
2023年の職種別民間給与実態調査の結果では、「一定年齢到達を理由とした給与減額の状況」は、「給与減額なし」が60.2%(非管理職)です。「60歳で給与を減額している事業所」の「60歳を超える従業員の年間給与水準」は、60歳時点の77.3%となっており、国家公務員を7.3ポイント上回っています。
一方で、定年引上げに伴い、60歳という年齢は、人事管理の指標としての意義を喪失しました。国家公務員の給与体系は、昇任や昇格を前提とした官職ごとの職務・職責で決定する「職務給」が原則であり、定期昇給や初任給などを含めて、いずれも経験などに基づく能力・業績を指標として決定されています。
さらに、55歳超職員の昇給停止・抑制措置は、65歳までの10年という長期間にわたって、通常は昇給できないことを前提とする年齢差別です。55歳という年齢のみを指標とした給与の決定は、これまで以上に不合理なものとなっているため、早急に廃止する必要があります。
近年は、将来的に生産年齢人口が減少していくなか、「60歳で給与を減額」しない民間企業も少なくありません。官民の人材獲得競争が激化していることを踏まえれば、若年層ばかりでなく、高齢層を含めたの適正な給与体系を総合的に整備し、定年前の離職なども回避すべきです。