国公労新聞|2023年12月25日号|第1616号

第161回拡大中央委員会
すべての労働者の大幅賃上げ
市民との共同で行政体制拡充を

 国公労連は12月16日、第161回拡大中央委員会を東京都内で開催し、中央委員22人、特別中央委員41人が出席しました。拡大中央委員会では①すべての労働者の賃金引き上げと雇用の確保、②国民本位の行財政・司法の確立、③憲法を守り、国民本位の政治への転換、④職場で働くすべての仲間を視野に入れた組織強化・拡大の4つの柱を基本とする春闘方針案を議論し、「2024年春闘方針」を満場一致で決定しました。

 冒頭のあいさつで九後健治委員長は、「パレスチナでの戦争は、イスラエルによってコンクリートの壁で囲まれたガザ地区、とりわけ病院への攻撃などが行われており、今週半ばには1万9千人弱が犠牲となりその多くが子どもであるなどジェノサイド(集団殺害)の様相だ。一貫して労働者の要求として平和を求めるとりくみを進めてきた国公労連として、イスラエルとパレスチナ、ロシアとウクライナの間での即時停戦を求める。自民党の派閥による裏金作りが明らかになり、閣僚や自民党幹部の辞職・更迭が行われた。これまでも岸田政権は、軍事費確保に向けた増税や健康保険証廃止、インボイスのごり押しなど、生活や基本的人権をないがしろにしてきた。その結果、岸田内閣に対する支持率の低下と不支持率の増加がいっそう進んでいる。こうした政権・政府の姿勢は、公務・公共サービスの切り捨てにもつながっている。『市民との共同』で国民本位の行財政・司法を実現する、大幅増員で行政体制を拡充するという世論を中央・地方で作っていく上でも、国会請願署名や宣伝行動、行政相談活動などを通じて行政や公共のあり方を議論し発信していこう」と呼びかけました。
 続いて、浅野龍一書記長が2024年春闘方針を提案し、討論では24人から発言がありました。

討論 …… 発言順

〈京都国公〉来年2月4日投票で京都市長選が実施される。市民本位の市政に転換するため福山和人氏への支援をお願いしたい。

〈全厚生〉非常勤の3年公募の撤廃や処遇改善、感染研の特殊法人化による職員の不安解消や処遇の維持・改善をめざす。

〈全医労〉ハンセン病療養所の体制拡充の署名にご協力を。国立病院の賃金が上がらない。機構が賃金改善しない場合はまたストライキでたたかう。

〈全通信〉ジェンダー平等宣言のとりくみでは、複数回の学習会実施や学習に使える資材などの提供をお願いしたい。

〈全司法〉ストライキなどの労働組合活動が社会的に認知されてきている。公務員賃金を上げ、労働者全体の賃金を上げて組織拡大につなげよう。

〈全法務〉職場実態に見合った人員配置に向け、新たな定員合理化計画を阻止するため公務公共サービス拡充署名にとりくむ。

〈全法務〉労働組合の基礎的な活動を強化して新規採用者はもとより未加入者に加入を呼びかける。

〈全労働〉地方の通勤は大変。産別としての運動強化をお願いしたい。再任用職員の賞与は定年前職員の半分で改善が必要。赴任旅費の三社見積もりは職員の負担が大きく見直しが必要。

〈国交労組〉共済掛金引上げで負担が大きくなる。これに対応するには大幅な賃金引上げが必要。

〈国交労組〉運輸や交通、建設など様々な産業の仲間と共闘している。交通産業では路線バスの運転手不足で路線の廃止が続いている。労働環境の悪化が人員不足につながっている。タクシー業界では人員不足を解消するためライドシェア導入が狙われている。

〈全経済〉内閣人事局や財務省は、人口減のもと国家公務員だけ優秀な人材を集めることはいかがなものかと言っており、注視が必要だ。

〈全国税〉分限免職処分取り消しのたたかいは山場。処分担当者が分限免職回避努力という言葉も知らないというひどい証言があった。引き続きご支援・ご協力を。

〈九 州〉公務・公共サービス拡充の地方議会意見書採択のとりくみ用のマニュアルなどの作成を。九州はマイカー通勤が多く駐車場を個人で借りており改善が必要。

〈中 部〉ブロック財政に余裕があり県国公に財政援助を行った。

〈愛 知〉23春闘では全医労のストライキで賃上げの世論を作ることができた。署名活動でも頑張ってくださいと市民からの応援もあり、公務員への風当たりも変わってきた。

〈埼 玉〉55歳以上は昇給停止、再任用は昇給がない。高齢層の賃金改善が必要。国公労連でモデル賃金を作っていただきたい。地域手当改定がどのような方向になるか追及を強めていただきたい。

〈神奈川〉毎年行政相談活動を実施。今年は自治労連からの協力も得て様々な相談に対応できた。相談とともに行政体制拡充の必要性をアピールしている。

〈岩 手〉24春闘でビクトリーマップ運動をいわて労連を巻き込んですすめていく。岩手医科大の仲間470人が賃上げ求めストライキを実施し大きな反響があった。官民一体の春闘で大幅賃上げを勝ち取ろう。

〈福 島〉漁業関係者の理解が得られないもとでアルプス処理水の海洋放出が強行されており、漁業全体に影響が出ている。

〈石 川〉奨学金の問題で組合を脱退する者が出てきている。奨学金の負担を軽減する要求も検討してほしい。

〈国公一般〉国立ハンセン病資料館分会のたたかいは9月に中労委で和解。ハンセン病資料館を守り改善するために引き続き奮闘したい。

〈全労働〉昇格問題や低賃金など多くの問題が生じている社会人選考採用者の処遇改善が必要。国公労連の来年の大会は70回となる。運動史の発行なども検討を。

〈中 国〉春闘では通勤手当についての実態アンケートにとりくみたい。アンケートは組合員に限らずとりくみ、体制強化につなげたい。

〈全国税〉組合員減が続いている。体制強化に支援をお願いしたい。

人勧上回る賃上げを
独法等労組代表者会議

 独立行政法人等労組代表者会議が12月2日に東京都内にてオンライン併用で開催され、10労組20人が参加しました。
 会議では、冒頭に笠松独法等対策委員長が「独立行政法人制度が誕生し約20年になる中、運営費交付金が削減され続けるなど、各職場では業務遂行に負担が生じている。各職場での問題を共有し、今後のたたかいに活かしてもらいたい」とあいさつしました。その後、事務局から情勢・基調報告が行われ、それを踏まえた各労組での課題について議論しました。
 討論では、予算や業務に対し、国として責任を持つ意味での再公営化に関しては、独法化から20年たった現在、各法人職場での状況が異なりすぎるため、各法人の状況を精査していく必要がある意見が出されました。
 独法等対策委員会では、引き続き23年賃金確定期で、人勧を上まわる賃上げなどを求めて奮闘します。

当事者が声あげよう
非常勤組合員集会ひらく

 国公労連は12月2日、オンラインで「非常勤組合員集会」を開催しました。全体で32人(うち非常勤組合員11人)が参加し、これまでの運動の成果と今後の課題について議論・交流しました。
 集会の前半は、笹ヶ瀬中央執行委員が情勢報告を行い、国公労連の要求内容のほか、非常勤職員の賃上げの4月遡及が実現したこと、人事院が「3年公募要件」の見直しを検討していることなどを報告しました。
 続いて、自治労連の嶋林中央執行委員から会計年度任用職員の現状と課題について特別報告をいただき、自治体の非常勤職員も国の制度に大きく影響を受けることから、「国も自治体も一緒に運動を進めること」、「正規も非正規も公務公共をとりもどす当事者として一緒に声をあげること」の大切さが訴えられました。
 後半では分散会を行い、参加者全員が発言して思いを共有しました。参加者からは「声をあげることが改善につながると信じている」「他の単組や自治労連との連携の重要性を強く感じた」「同じ障がい者雇用で働く参加者がおり、とても心強かった」などの感想が寄せられました。

〈連載〉 給与制度のアップデートを考える    第3回

早急な格差是正が求められる地域手当

 2023年人事院勧告では、地域手当について、「最新の民間賃金の反映と併せ、級地区分の設定を広域化するなど大くくりな調整方法に見直すことにより、地域をまたぐ人事異動時の影響の緩和や給与事務負担の軽減を図る」ことが報告されました。
 現在の級地区分(支給割合)は、市町村ごとに「民間の賃金水準を基礎とし、当該地域における物価等を考慮して」定められています。しかしながら、県庁所在地よりも大企業などが立地する中小規模の地方都市で支給割合が高水準になるなど、不自然でいびつな地域が少なくありません。人事異動の不公平感など、過剰に細分化された級地区分の弊害が指摘されています。
 2006年の「給与構造『見直し』」により地域手当が導入されたことに伴い、2015年の「給与制度の総合的見直し」とともに、その原資を確保するため、俸給額の引下げが強行されました。同一価値労働・同一賃金の法理に違反するばかりでなく、職務給原則を形骸化させています。それが地域の低賃金構造を固定化し、地域間格差をさらに拡大させ、全国均一・統一の行政サービスを提供する国の行政機関の機能を否定することにもつながってきました。
 2023年度の地域別最低賃金は、最高額の東京都が時給1113円、最低額の岩手県が時給893円、その地域間格差は220円(19.8%)です。これは東京23区に支給される地域手当の支給割合が20%であることと無関係とは言えません。相互に悪循環しながら、地域間格差も固定化されてきました。
 また、物流網や情報網が発達した近年では、消費者物価の地域ごとの格差は縮小し、社会インフラの発達や生活様式の均一化に伴う生計費水準の全国的なフラット化がすすみました。全労連などが2022年までに27都道府県で実施した「最低生計費試算調査」では、「8時間働けば人間らしく暮らせる」ため、全国どこでも月額24万円(時給1500円)以上の賃金が必要であると判明しています。
 賃金の地域間格差の是正は、6月16日に閣議決定された「骨太の方針2023」などにも明記されており、国家公務員の地域手当の見直しは、そうした潮流を先導するものでなければなりません。
 国公労連は、現行の地域手当による地域間格差を早急に是正するとともに、将来的には廃止を実現し、その原資は全世代を対象とする俸給額の引上げに活用することを要求しています。
 今後は、級地区分の「広域化」に当たって、地理的な範囲の在り方(例えば、都道府県ごとやその経済圏ごと)、支給割合の引下げを回避するための措置など、職員の不公平感などに配慮した丁寧な検討が不可欠です。

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