国公労新聞|2023年8月25日号|第1610号

23人勧取扱いで政府と交渉
早急に生活改善できる賃上げを

 国公労連は8月7日に出された人事院勧告等の取扱いについて、同日に「2023年人事院勧告の取扱い等に関する要求書」を政府・内閣人事局に提出し、交渉を実施しました。交渉では、国公労連との合意にもとづいて勧告などの内容の取扱いを決定すること、一刻も早く職員の生活改善を図るため人事院勧告の改善部分を早期に実現することを求めました。政府・内閣人事局は窪田人事政策統括官らが対応しました。

 交渉で浅野書記長は、「月例給が3869円、0.96%、特別給が0.10月分の引上げを中心とする給与勧告などがなされた。改定額は29年ぶり、改定率も26年ぶりの高水準とされているものの、2023年春闘の賃金上昇率をはじめとした客観的な指標を踏まえれば、労働者の実感に見合った給与水準とはいえない。生計費原則と職務給原則を重視し、全世代の生活改善につながる給与水準を確保することを求める」と国公労連の基本スタンスを述べました。

最低賃金を下回る 地域いまだ多く

 重点課題のひとつとして追及してきた初任給の抜本改善については、高卒初任給を1万2000円、大卒初任給を1万1000円引き上げる勧告が打ち出されました。まだ十分ではないものの、高卒・大卒の初任給をともに1万円を超えて引き上げるのは1990年以来33年ぶりとなり、この間の運動の成果といえます。これによって全国平均で見れば高卒・大卒ともに4千円程度、民間初任給を上回ることとなります。しかし地域手当非支給地では高卒で3千円程度、大卒で7千円程度、民間初任給が公務を上回っており課題は残されています。
 また、7月28日には、中央最低賃金審議会が最低賃金の引上げの目安額(Aランク41円・Bランク40円、Cランク39円)を答申し、各都道府県においても地域別最低賃金の答申が出され、(上図参照)中央最低賃金審議会が答申した目安額を1〜8円上回る引上げ額を答申するところが多く見られます。これは、この間の運動の反映であるとともに、都市部への人材流出に対する地方自治体の危機感が現れたものと考えられます。
 この最低賃金の状況を踏まえた国公労連の試算では、今回の初任給引き上げで高卒初任給が時給992円となり、地域別最低賃金を下回るような水準の地域は三重県、滋賀県、広島県全域で解消され、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県でそうした地域が減少することとなります。しかし、地域別最低賃金を下回るような水準の地域がいまだ多く現存する状況は残されています。優秀な人材確保にむけても初任給のさらなる改善が必要であり、国公労連はあらためて初任給の抜本改善を求めました。

長時間労働是正へ 人員不足解消を

 公務員人事管理に関する報告と職員の勤務時間に関する勧告において、フレックスタイム制のさらなる柔軟化や勤務間インターバルの確保、夏季休暇の使用可能期間および年次休暇の使用単位の見直しが打ち出されるもとで、職員個々の勤務時間が複雑化するとともに、かえって長時間労働を助長することも想定されます。
 そうしたなか、政府が推進しようとしている措置は、①ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化、②適正な勤務時間管理や客観的把握、③組織全体や管理職のマネジメント強化などであり、その実効性は限定的です。長時間労働の是正にむけては、その最大の原因となっている職場の人員不足について、現行の定員管理政策を見直すとともに、国民のいのち・くらし、権利を守る公務・公共サービスの拡充に資する定員の確保・配置を求めました。

非常勤職員の雇用安定、 休暇改善、給与の適正支給

 非常勤職員制度の改善については、公務員人事管理に関する報告において、非常勤職員の有意な人材を安定的に確保することの重要性などを踏まえ、「各府省の実態等を把握しつつ、非常勤職員制度の適切な運用の在り方等について検討」することとされています。
 また、初任給と一時金が改善されることを踏まえて、本年度から適用される給与改定の遡及を含めて、非常勤職員の給与が適正に支給されるよう、各府省を指導・監督するなど、政府として的確な措置を講じることを求めました。

再任用職員の処遇改善 定年延長の実効性確保

  高齢期雇用については、職務・職責が定年退職以前からほとんど低下していない再任用職員の処遇、とりわけ一時金の支給月数が定年前職員の約半分に抑制されている問題について指摘しました。また、給与水準やその他諸手当について定年前職員との均等・均衡待遇の実現を求めました。
 一方、4月から定年延長制度がスタートし、来年3月末は定年退職者が発生しない状況となります。職場に混乱を来すことのないよう、2024年度定員の査定などにあたって、特例定員の実効性を確保できる柔軟な判断を求めました。

職場から政府・各省当局を 追及し労働条件改善

 これらに対し、政府・内閣人事局は「国家公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国政全般の観点から、その取扱いの検討を進める」「フレックスタイム制の見直しについての勧告もあり、さらに在宅勤務手当等の勧告もあった。現場の実情も含め、皆様方の意見も十分に聞きつつ必要な対応を検討する」との回答にとどまりました。
 政府は勧告同日(7日)に、第1回給与関係閣僚会議(持ち回り)を開催し、人勧の取扱いの検討に着手しています。松野官房長官は翌日の記者会見で「人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、適正な結論を得るよう、国政全般の観点から検討する。今回、給与勧告のほか、フレックスタイム制の見直しについての勧告も提出されているので、政府として、必要な対応を検討する」と立場を表明しています。
 この秋に私たちの労働条件決定の山場を迎えます。すべての職員の労働条件改善にむけ政府・各府省当局に対する追及を強めていきましょう。

核兵器のない世界へ
平和のトーチ掲げよう

原水爆禁止世界大会 5800人が参加

 原水爆禁止2023年世界大会が8月4日から8日にかけて開催され、世界各国から5800人が大会に参加しました。
 4日から5日は広島市のJAビルで国際会議が開かれ、1日目は「被ばく者の声を世界に」、2日目の午前中は「核兵器禁止、核兵器のない世界の実現」、午後は「核兵器のない平和で公正な世界—市民社会の連帯と行動」をテーマに世界各国を含めた各地から核兵器廃絶に向けた行動や、これからのとりくみなどが報告されました。また、被爆者とともに、そして常に若い世代の参加の輪を広げ、核廃絶に向けて前進する決意が述べられ会議を終えました。
 6日には広島市内でヒロシマデー集会が開催されました。カナダ在住で広島被爆者のサーロー節子さんが「核の被害者たちが掲げてきた非核による平和というトーチを受け継ぎ、これまでになく高く掲げてくれる、より若く、より強い手が必要」と訴えました。
 集会では国際社会がその脅威を根絶するためにただちに力を尽くすことを訴える決議「広島からすべての国の政府への手紙」を採択しました。
 7日から8日にかけては会場を長崎市に移し、ナガサキデー集会等が開催されました。台風6号の影響で開催期間を短縮し、9日開催予定のナガサキデー集会を8日の午後に前倒しして開催。8日に開催する予定だった分科会・動く分科会については8日の午前中のみに縮小して開催することとなりました。また、8日の夕方から開催予定だった国公労働者平和のつどいについては残念ながら中止としました。
 ナガサキデー集会には国連の中満泉軍縮担当上級代表、マレーシア国連代表部常駐代表や岸本聡子東京都杉並区長がビデオメッセージを寄せるなど核兵器廃絶への熱い想いが伝えられました。
 最後に、核兵器廃絶に向けて「ただちに行動に立ち上がろう」と訴える決議「長崎からのよびかけ」を採択し、閉幕しました。

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