国公労新聞|2023年4月25日・5月10日合併号|第1603号

すべての世代の賃上げを
第160回中央委員会ひらく

 国公労連は4月20日、第160回中央委員会を東京都内で開催し、中央委員22人が出席しました。中央委員会では、国民本位の行財政・司法の確立、人事院勧告期・概算要求期闘争をはじめとする賃金・労働条件の改善、組織強化・拡大のとりくみなどを柱とする夏季闘争方針案を議論し、「2023年夏季闘争方針」「概算要求期重点要求」「人勧期要求」「中間会計決算報告」などを全員一致で決定しました。

 冒頭、あいさつに立った九後健治委員長は「春闘は物価高騰による低賃金への怒りが高まったことが特徴。全労連は春闘相場を形成する労働組合として3月8日に集中回答日を設定し、9日の第1回集計では額・率ともに前年同期を上回るとともに2万円を超える回答を引き出す組合も3つあった。4月6日の第4回集計でも額・率ともに前年を上回る回答を引き出している。全医労の全国124施設でのストライキには、県国公組織はもとより民間労働者も支援に駆けつけ、テレビや新聞などにも多く取り上げられ、31年ぶりのストを実施した全医労の仲間の姿に多くの国公労働者・民間労働者も励まされた。全労連公務部会が提起した『緊急勧告を求める』とりくみも共感を呼び、全労連として人事院地方事務局に対する申し入れなど前進面を築いた。人勧期課題に『給与制度のアップデート』がある。具体的な中身は明らかになっていないが、これまでの『給与制度の総合的見直し』や『給与構造改革』で具体化されてきた①総人件費抑制、②能力・実績主義強化、③中央優遇などが、職場にどういう影響を与えてきたかをまずはしっかり総括し、組合員にその危険性を理解してもらうことが重要だ。多くの課題があるが文字どおり全員参加型の運動を展開し要求実現を勝ちとろう」と呼びかけました。続いて浅野龍一書記長が2023夏季闘争方針等を提案しました。
 討論では12人から次の発言がありました。

討論(要旨)発言順

全法務

 物価高騰で生活は日々厳しくなっており、すべての世代で早期の賃上げが必要。全支部での要求書提出と当局交渉に全力をあげる。通勤手当では新幹線の利用等、通勤経路は全額支給する改善を。非常勤職員の雇用の安定と、定年延長では定年まで安心して働けるよう定員定数の別枠措置が必要。また、定員管理を抜本的に見直し行政需要に見合う定員確保の実現が重要。組織拡大では新規採用者の加入促進、新たな脱退者を出さない日常の組合活動の見える化に奮闘する。

全労働

 定員は労働行政においても2年連続の純増。国公労連として行政体制拡充を求めてきた成果だ。定員合理化計画の撤廃と定員管理の抜本転換が必要であり、引き続き国公労連の行政体制拡充署名等の運動強化が必要。物価高騰に見合う大幅賃上げが必要だが人事院は「給与制度のアップデート」を行うとしており従来の給与制度改悪は到底認められない。中央・地方での人事院追及等の強化を。

全厚生

 要求実現、組織拡大、国公共済会拡大に向け全員参加型の運動を進める。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し特殊法人国立健康危機管理研究機構を作る法案が今国会に提出されている。研究・労働条件の確保等が不明のままであり、全医労と力を合わせてこの課題にとりくむ。

全医労

 全医労ストライキへの国公労連、各単組の支援に感謝。ストは多くの組合員の自信につながっている。しかしコロナ禍で奮闘してきた職員に報いる賃金改善はなく、中労委にあっせん申請し引き続きたたかっていく。

全司法

 物価高騰、燃料費高騰はとくに青年の生活に大きな打撃を与えている。全司法でとりくんだ青年アンケートで56.4%が生活が苦しいと回答。2日に1度しかお風呂に入れない、寒冷地だが気軽に暖房も付けれられないとの回答もあった。また、新幹線など通勤手当が満額支給されないことは大きな問題であり改善は急務。春の国公青年セミナーに全司法から6人が参加。愛知県医労連書記長の矢野さんの講義に感銘を受けた青年の支部では、学んだことを実践し新規採用者全員の加入を達成。夏の青年セミナーにも多くの青年を送り出したい。

全労働

 定年延長が始まったが定員定数課題や低賃金問題など課題が多い。切実な要求は再任用職員の処遇改善だ。定年延長の初年度であるからこそ再任用職員の処遇改善をはかる最大の機会だ。当局追及などとりくみ強化を。人事院の「柔軟な働き方」の最終報告が出た。そもそも定員が大幅に足りず慢性的な超過勤務が続いている現状こそ改善すべきで、勤務時間の柔軟化等に焦点があたるのは筋違いだ。超過勤務解消と勤務時間管理が中心課題だ。当局追及の強化を。

国土交通労組

 組織強化ブロック会議を開催するなどして分会体制の立て直しをはかっている。組織拡大ニュースやLINEも活用し組織拡大への気運を高める。ワンコイン共済に加えセット共済7型で組織拡大をはかっている。7月には青年交流集会を200人規模で開催して全国的な交流も深め、組織強化を進める。

全通信

 賃金が低く、労働条件が悪いため若手職員の離職が相次いでいる。人材確保の観点からも全世代での賃上げ、大幅増員による業務執行体制改善が急務だ。長野県国公の再建など全通信も積極的に対応する。全国各地の県国公の活動は重要だ。引き続き県国公運動に結集する。

国公一般

 ハンセン病資料館不当解雇撤回の中労委でのたたかいが山場。国税職員不当解雇撤回のたたかいも人事院審理がスタート。引き続きとりくみへの支援をお願いしたい。非常勤職員課題では無期転換に関わって非常勤職員の正規化に向けてのプロセスも検討を始める必要がある。

国土交通労組

 全医労のストライキに大きく勇気づけられた。今後、中小企業における大幅賃上げへ官民共同でのたたかい強化を。人勧期は給与制度のアップデートや非常勤職員・再任用職員の処遇改善など課題が多いが後手に回らないようたたかいの提起を。

全国税

 国税職員不当解雇撤回のたたかいで人事院口頭審理が行われ、記者会見や報告集会を開催。引き続き支援をお願いしたい。

開健労

 職場では定員削減が続き60人で200億円の予算を執行するなど精神的にも負担が重く休職する職員が増え職場自体が壊されている。まともな公務・公共サービスを提供するには職員を増やす必要がある。大幅増員、行政体制拡充は急務だ。

2023年夏季闘争アピール

 国公労連は、本日開催した第160回中央委員会において、23春闘の経過と到達点を確認するとともに、2023年人事院勧告や2024年度概算要求にむけた夏季闘争方針と重点要求を確立し、たたかう決意を固めあった。
 23春闘では、自動車産業をはじめとした大手企業で、月例給・賞与ともに労働組合の要求どおりの満額回答が出るなど大幅な賃上げが行われたように報じられたが、そもそも大手企業組合の賃金要求が低く抑えられており、物価上昇分を上回る生活改善ができる賃金水準には遠く及ばない回答結果となった。労働者の大半を占める中小企業や非正規労働者の賃金の回答状況も低水準の傾向にあり、労働者・国民の生活は依然として苦しい状態が続いている。
 「3・9全国統一行動」では、回答集中日に低額回答を受けた労働組合がストライキに立ち上がり、全国で近年にない行動がとりくまれた。国立病院機構で働く全医労の仲間は、賃金改善と大幅増員を求め31年ぶりのストライキを決行し、「たたかう労働組合」の姿勢を貫徹し全国でストを成功させた。
 国公労連は、要求アンケート結果に基づく有額要求を掲げ、物価上昇分を上回る政策的賃上げや「緊急勧告」を求め、公務員労働者が自ら「公務員賃金を引き上げろ」の声をあげ、民間労働者と公務労働者の賃上げの好循環をつくるべく、23春闘を主体的にたたかった。
 国公労連統一要求に対する政府・人事院の春闘期の最終回答は、極めて不十分なものであったが、私たちは職場・組合員の切実な要求実現を求め、これから人勧期・概算要求期のたたかいに臨んでいく。職場要求は、初任給・諸手当の改善、賃金の地域間格差の是正・解消、公務員労働者本位の「給与制度の整備(アップデート)」の実現、非常勤職員の均等・均衡待遇と安定雇用、定年延長に伴う定員・級別定数の確保、再任用制度・運用の改善、長時間労働是正・超過勤務縮減、行政体制拡充・定員増など多岐にわたる。今夏は、「労使関係で変える」「当局に汗をかかせる」という労使の力関係を強く意識し、政府・人事院、各省当局を職場の団結の力で追及していこう。
 政府は、これまで憲法9条を基に日本が堅持しつづけてきた「専守防衛」を投げ捨て、敵基地攻撃能力の保有や国家安全保障戦略などを新たに記した「防衛3文書」を閣議決定した。また、政府は、敵基地を攻撃するミサイル購入予算を含めた5年総額43兆円を超える防衛費増大を打ち出すなど、米国追随の大軍拡路線を突き進んでいる。戦争放棄・恒久平和を掲げる日本国憲法を尊重・擁護する義務を負う私たち公務労働者は、あらためて歴史を顧み、「ふたたび戦争の奉仕者にはならない」という不退転の決意で、政府がすすめる「戦争する国」づくりを許さず、憲法と平和を守り、武力に頼らない世界をつくるために奮闘するとともに、政府に対し憲法9条を活かした国際貢献と外交努力を積極的に行うなど世界平和にむけた役割を発揮するよう求める。
 組織の強化・拡大は待ったなしの課題となっている。23春闘では、対話を重視したとりくみが展開され、多くの職場で新しい仲間を迎え入れている。職場での日常的な労働組合活動の一つひとつが組織強化・拡大につながることに確信を持ち、全員参加型の活動を実践することで、さらなる組織強化・拡大につなげていこう。すべての組織で「組織強化拡大3か年計画」を推進し、春の組織拡大強化月間ではそれぞれの拡大目標の達成に全力を挙げ、必ず第69回定期大会を増勢で迎えよう。
 23夏季闘争において、「大軍拡、大増税反対」「国民のいのちとくらしを守れ」の国民的共同を追求するとともに、公務労働者が働きがいを持てる賃金・労働条件、職場環境の改善、国民本位の行財政・司法の確立をめざし、夏季重点要求の実現に向けて職場・地域から大いに奮闘しよう。

                                   2023年4月20日     
                                   国公労連第160回中央委員会

Q&Aで考える『柔軟な働き方』【職場学習資料】

 
 人事院の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」(以下「本研究会」)は3月27日、その最終報告を公表しました。この職場学習資料は、「働き方」の当事者である組合員の理解をすすめるため、最終報告の概要と論点などを整理したものです。ぜひ職場の議論などに活用してください。

Q1.最終報告とはどのようなものですか?

 本研究会は、人事院が2021年8月の「公務員人事管理に関する報告」において、テレワークの推進の重要性などを表明し、翌年1月に設置したものです。国公労連は、2022年2月のヒアリングで総論的な意見を表明するとともに、今年3月には、最終報告に反映させるべき網羅的な意見を提出しました。いずれも人事院のホームページに全文が掲載されています。
 最終報告では、主に表1の3分野が提言されました。今後の個別具体的な施策は、その検討が人事院に委ねられましたが、勤務時間制度が使用者視点の柔軟な「働かせ方」として悪用されれば、労働条件がさらに悪化しかねません。労働者本位の柔軟な「働き方」として機能するよう、人事院などとの交渉・協議を強化する必要があります。

Q2.フレックスタイム制の柔軟化とはどのようなものですか?

 本研究会は2年7月、その中間報告をとりまとめ、早期に実施すべき事項として「フレックスタイム制の柔軟化」を提言し、人事院がその運用を4月にスタートさせました。その概要は次のとおりですが、基本的枠組みは表2を参照してください。
 勤務時間の割振りは、これまで同様に職員からの申告を基本とし、4週間単位で行うことに変わりありませんが、これまでの割振り期限は「単位期間の開始以前に行うものとし、できる限り、単位期間が始まる日の前日から起算して1週間前の日までに行うものとする」とされていたのが、「1週間前の日まで」という制約が削除されました。
 1日の最短勤務時間数は6時間とされていましたが、2〜4時間の範囲内で各省各庁の長があらかじめ定める時間以上とされました。週1回を限度として、この最短勤務時間数を下回る日を設けることが可能ですが、15分を下回るなど、1日の勤務時間をまったく割り振らないことはできません。
 コアタイムは9時〜16時の間で毎日5時間を設定していたものを、最短勤務時間数を下回る日を除いて毎日2〜4時間の範囲内で各省各庁の長があらかじめ定める時間を設定することとされました。また、各府省において、この基本的枠組みよりもさらに柔軟な割振り基準のパターンを府省・部署ごとに内規で設定することもできますが、その場合には、人事院との協議が必要であり、職員の健康及び福祉が確保されなければなりません。
 さらに、休憩時間制度の柔軟化も図られています。これまで休憩時間は、疲労を排除して勤務能率を維持する観点から、概ね4時間の連続する正規の勤務時間ごとに置くことを原則としていましたが、この原則を存置した上で特例措置が設けられ、休憩時間を置く時間帯にかかわらず、最長で6時間30分まで勤務時間を連続させることができるようになりました。ただし、休憩時間は勤務能率の低下や疲労蓄積を防止するためのものであることから、この特例措置は各省各庁の長が公務の運営並びに職員の健康及び福祉を考慮して支障がないと認める場合に限られます。
 中間報告では、こうした柔軟化を進めるに当たって、①職員の勤務時間の正確な把握のための機能などを備えた勤務時間管理のシステム化を各府省において速やかに進めること、②職員の勤務時間を柔軟化した場合であっても行政サービスを提供する執務態勢を確保するため、管理職員のマネジメント能力の強化を図ること、③フレックスタイム制及び休憩時間制度の運用が職員の柔軟な働き方に対応したものとなるよう、業務量に応じた要員を十分に確保することが提言されましたが、現在もなお十分な対策がとられているとは言いがたい状況です。

Q3.「より柔軟な働き方」とはどのようなものですか?

 最終報告では、「より柔軟な働き方」として、フレックスタイム制の拡充、夏季休暇の使用可能期間・年次休暇の使用単位の見直しなどが提言されました。
 フレックスタイム制の拡充は、①選択的週休3日、②勤務開始後の勤務時間の延長・短縮、③非常勤職員への適用などが中心です。
 ①は育児・介護を行う職員等と同様に、一般の職員についても勤務時間の総量を維持したまま、フレックスタイム制の活用により、職員が選択する任意の週について、土日の他に週1日まで週休日の追加を可能とすることとしています。
 ②はフレックスタイム制の勤務開始後であっても、職員が当日の状況に応じて変更を申告することを可能とするとともに、各省各庁の長が勤務時間の割振り変更を承認するかどうかの最終決定権を持つこととし、このことで「申告割振制の下でも、職員の当日の事情等にも対応できる十分な柔軟性を確保するとともに、各省各庁の長が公務の運営に必要な執務態勢を確保することが可能」としています。
 ③は事務補助員等として常勤職員と類似した勤務形態で勤務する非常勤職員も多いなか、「常勤職員と同様に柔軟な働き方の推進を可能とすることで、職員のワーク・ライフ・バランスの実現、ひいてはワーク・エンゲイジメントの向上にもつながると考えられる」とし、フルタイムの期間業務職員が1日7時間45分を超えて勤務することができない現状をあらためることとしています。
 夏季休暇の使用可能期間・年次休暇の使用単位の見直しは、夏休み期間やシルバーウィーク等が繁忙期となっている空港関連官署の実態や、航空管制官署の交替制勤務において1日の休暇をとる際に15分や45分の休暇の切り捨てが生じている問題などを紹介し、夏季休暇の使用可能期間の拡大や年次休暇の15分単位での使用について、対象職員の範囲も含め、業務の実態に即して実現に向けた調整を進めていくこととしています。
 これら「より柔軟な働き方」に伴う長時間労働の助長や健康管理への影響などの問題は、Q5を参照してください。
 また、裁量勤務制の拡充についても検討されてきましたが、「中間報告を踏まえて柔軟化された申告割振制によるフレックスタイム制の運用の定着を進めた上で、裁量勤務制による柔軟な働き方へのニーズについて検証することが必要である」とし、今後の検討課題としています。民間の裁量労働制においては、長時間労働をはじめとした諸問題が指摘されています。民間の動向にも注視しながら、裁量勤務制の拡充には反対していく必要があります。

Q4.テレワークを利用するにはどのような問題がありますか?

 最終報告では、①原則として、特定の個人的事情がある職員に限定することなく、業務上支障がない限り、職員の希望に応じてテレワークを可能とすること、②テレワークの希望が認められる場合や希望なく命令できる場合を統一的な基準として各府省に提示することなどが提言されました。
 コロナ禍を契機として普及したテレワークは、通勤時間の解消をはじめとするメリットが再認識され、さまざまな事情に置かれている職員のニーズが明らかになりました。しかしながら、とりわけ各種行政手続の審査・相談・窓口業務などを実施する国の行政機関は、いわゆる集団的執務体制にあるため、テレワークの利用が業務の停滞や行政サービスの低下につながりかねません。
 したがって、テレワークを利用する職員の属性や事由などの要件として、①自然災害・防疫などの出勤困難事由に対応した業務継続とともに、②育児・介護などの家庭事情への配慮、③障がいのある職員などの通勤緩和、雇用促進・安定を図るための合理的配慮、④育児休業、病気休職などからの職場復帰に当たっての経過的措置などを定め、ワーク・ライフ・バランスの実現の効果、とりわけ離職などすることなく勤務を継続できる職場環境の整備などを追求すべきです。
 職員の希望なく命令する場合も想定されていますが、テレワークの場所となる職員の自宅などは、労務を提供する場所として想定していない私的財産であり、公的な権力関係から隔絶された排他的な生活空間です。そもそもテレワークという命令になじむ場所ではなく、職員の私人としての権利を一般的な受忍限度を超えて侵害するおそれがあるため、職員の同意を要件とすべきです。
 また、自然災害などの出勤困難事由においては、厳しい環境下における労働力の確保、すなわち「働かせ方」を重視したものとなります。非常時における職員の権利などを保護するため、厳格な要件が運用されるべきであるとともに、あえてテレワークに固執することなく、①自宅待機、②自宅から最短距離にある官署への出勤、③特別休暇などを含めて柔軟に対応すべきです。
 さらに、現在の職場は、テレワークの実施率に固執するあまり、業務の特性や職員の事情を無視したノルマ的な運用も指摘されています。
 テレワークの利用に当たっては、個々の業務との親和性や適合性、すなわちテレワークになじむ業務か否かなどに留意しつつ、その意義・目的・期待される効果などを総合的に勘案するとともに、さまざまなメリット・デメリットを比べて諸条件の最適化を追求すべきです。

Q5.「柔軟な働き方」は逆に長時間労働や健康被害につながりませんか?

 最終報告では、柔軟な働き方は、「職員の能力発揮やワーク・ライフ・バランスの実現」とともに、「多様な有為の人材確保を通じた長期的な公務の持続可能性」などに資すると指摘されています。そのための施策として、①フレックスタイム制の活用により、週休日を追加する選択的週休3日や勤務開始後に勤務時間を延長・短縮する割振り変更、②職員の希望に応じて可能とするテレワークなどを提言するとともに、申告割振制によらないフレックスタイム制の導入や単位期間の拡大なども示唆しています。
 しかしながら、過剰な定員削減により脆弱化している職場の人的体制にあっては、恒常的な超過勤務に依存した業務を余儀なくされています。柔軟な働き方は、さらなる人的体制や労働時間の分散に伴う組織パフォーマンスの低下につながり、業務の停滞や行政サービスの劣化などを招く要因になりかねません。とりわけ地方支分部局においては、客観的に勤務時間を把握する措置が普及・定着していないため、職場の繁忙とも相まって、依然として夜間・休日などのサービス残業が蔓延しています。
 仮に柔軟な働き方を推進する場合であっても、職場の人的体制の大幅な拡充とともに、業務の効率化をはじめ、適正な勤務時間管理や実効性のある超過勤務規制などを実現し、職員の長時間・過密労働とそれに起因する健康被害の実態を早急に解消することを優先すべきです。
 フレックスタイム制は、単位期間の超過勤務を縮減するメリットがあるとしても、1日や数日単位の長時間労働を助長するデメリットもあります。一方で、超過勤務手当には、正規の勤務時間を超過した労働に対する給与としての機能とともに、長時間労働を命令した使用者に対するペナルティとしての効果もあります。
 また、勤務間インターバルの導入を提言している趣旨を踏まえれば、1日ごとに労働時間の上限を設定し、起床・始業・終業・就寝の時刻など、1日のライフサイクルを一定の範囲で規則的かつ安定的に維持することを優先すべきです。
 フレックスタイム制の柔軟化は、超過勤務手当の支給を免れることに悪用され、長時間労働を抑制する超過勤務手当の機能を喪失しかねないばかりでなく、勤務間インターバルの効果を減退させるおそれがあります。
 テレワークは、「仕事」と「家庭」という明確に区分された社会生活の概念の境界を曖昧にする特性があるため、長時間労働の温床となっています。また、職員の自宅などの執務環境が劣悪な傾向にあるため、在庁勤務のような業務の効率性を確保できず、正規の勤務時間に予定していた業務を完了できないことが少なくありません。
 さらに、管理職員などと物理的に離れて勤務しており、客観的な勤務時間の把握や業務の進捗管理などが困難であるため、明示的な超過勤務命令もないまま、サービス残業が潜在化するおそれもあります。テレワークの利用に当たっては、あらかじめ業務量を適正に配分・調整し、超過勤務を回避できるような措置を講じることも不可欠です。

Q6.テレワークを利用した際の費用と通勤手当はどうなりますか?

 テレワークの費用について、最終報告は、基本的に使用者である国が負担することが望ましいとした上で、その検討に際しては、「テレワークの実施により通勤回数が少なくなる職員の通勤手当の在り方のほか、必要となる機器の貸与等の環境整備等について、人事院及び関係府省において総合的に検討が行われるべきである」としています。既存の手当制度や在宅勤務環境の整備などとの関係があるため、新たな在宅勤務関連手当などの具体的な制度設計については方向性を示しておらず、人事院に一任したかたちと言えます。
 人事院は、2021年の「職種別民間給与実態調査」から民間企業の在宅勤務関連手当の支給状況を調査しており、今年もその支給状況等を調査するとしています。民間企業は、テレワークの手当制度を恒常的に設ける場合において、通勤を要しない在宅勤務等の頻度に応じて通勤手当を減額する仕組みをとっている場合も多く、人事院が今年夏の勧告・報告時に示すと想定されているテレワークの手当制度も同様の仕組みとなる可能性があります。
 いずれにせよ、テレワークを利用する職員の経済的な不利益を解消する手当制度となるよう、人事院を追及する必要があります。

Q7.公務における勤務間インターバルの導入はどのようなものが想定されますか?

 最終報告は、「勤務間インターバルの確保についての各省各庁の長の責務を早期に法令上明確にすることが適当と考える」とし、「その上で、必要と考えられる制度的措置を法令に規定することについて、制度の有効性や業務遂行への影響などの観点から、関係者間で検討を行い、勤務間インターバルの本格的な実施へと進めていくことが適当である」としています。
 勤務間インターバルとは、1日の勤務終了後、翌日の出勤までの間に一定時間以上の休息時間を確保する仕組みですが、公務職場はもとより、民間企業でもまだ十分に普及しているとはいえない状況です。最終報告は、今後いくつかの段階に分けて概念や制度の普及を図っていくべきとのスタンスに立っています。第一段階として、勤務間インターバルの定義や確保の責任主体を法令上に位置づけ、第二段階で、①超過勤務命令の抑制、②フレックスタイム制の活用等、③年次休暇の使用の促進といった現行制度の運用によって勤務間インターバルを確実に確保できるようとりくむこととしています。また、第三段階の数年の間で、前段階までに勤務間インターバルを確保できない職種等について課題解消に向けたとりくみを「試行」し、その結果を踏まえ、第四段階で、制度的措置として「本格的な実施」をするとしています。これらすべての段階を経て制度として完成するまでには、ある程度の年数が必要と想定できます。
 使用者の責務を法令上に位置づけ、適用範囲について「最終的には、原則として全職員を対象とすることを目指すべき」とし、「原則とすべき時間数を11時間とすることが適当である」とするなど、制度の大枠では、この間、国公労連が要求・主張してきた勤務間インターバルの枠組みに沿った報告内容となっています。
 一方で、制度化するまでの第二段階で、フレックスタイム制の活用や年次休暇の使用の促進によって勤務間インターバルを確保するとしていることは、フレックスタイム制の利用や年次休暇の取得の強制にもつながりかねないため、到底容認できません。
 さらに、第三段階の「試行」や第四段階の「本格的な実施」の内容についても十分に具体化されておらず、制度化を担う人事院との今後の交渉・協議が非常に重要になります。最終報告においても「今後、本報告の提言や提案した施策の具体化に当たっては、関係者で再度丁寧な合意形成を図りながら進めていくことが望まれる」と強調されており、人事院や政府には国公労連との合意を前提に制度を具体化する責任があります。
 国公労連は、本研究会に提出した意見などにおいて、実効的な勤務間インターバルの確保に必要な条件として、①業務量に見合った定員の増加などの人員配置、②地方支分部局を含めた全職員に対する客観的な勤務時間管理の義務化、③人事院規則に基づく超過勤務命令の上限規制の強化を主張してきました。これらは人事院や政府に対する重点要求項目であり、いまもなお横行している長時間過密労働を解消するために不可欠なとりくみです。勤務間インターバルを形骸の制度としないためにも、定員合理化の中止や長時間労働の是正を一体的にとりくみ、一刻も早く持続可能な公務職場をつくっていく必要があります。

見て・聴いて・発信しよう
沖縄のリアル
5月21日〜23日 沖縄支援行動

 沖縄は第二次世界大戦後に米軍統治下におかれ、1972年の本土復帰以降も、日本全体に存在する米軍基地の70%以上が沖縄に集中するなど、米軍基地に係る事件・事故との闘いの歴史を繰り広げてきました。そのような中、大軍拡路線を突き進む岸田政権により、さらなる軍事要塞化が進められようとしています。国公労連が5月21日〜23日に実施する沖縄支援・連帯行動にむけて、いま沖縄で起きている基地をとりまく実態について報告します。

 政府が「南西シフト」として進めている自衛隊基地の増強は、これまで存在してきた「守りの駐屯地」とは異なり、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を備えながら南西諸島への軍備増強を続けています。岸田政権が安保3文書を閣議決定したのは昨年の12月末ですが、すでに国は2020年の防衛大綱と中期防衛力整備計画で中国を念頭に南西地域の防衛力強化を打ち出しており、2014年には与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島へ部隊を配備することを明記していました。
 2016年3月には与那国島に陸上自衛隊沿岸監視隊を新設。2019年には宮古島に陸上自衛隊駐屯地部隊を配備し、2023年3月16日には石垣島に陸上自衛隊石垣駐屯地部隊を配備してミサイルや弾薬庫が搬入されました。奄美大島にも駐屯地部隊が配備され、既存する沖縄本島内のうるま市勝連駐屯地にも地対艦ミサイル部隊の配備が計画されています。
 宮古島等への自衛隊部隊配備当時、防衛省は「弾薬庫は作らない」「ミサイル本体は置かない」と住民に説明していました。そのため、一部の住民からは「地域振興に繋がる」と自衛隊部隊の開設を喜ぶ声も聞かれ、実際に宮古島では駐屯地が開設されたことにより、小学校のクラスが1クラス増えるなど、住民数が増えるという明るい話もありました。しかし、実際に駐屯地が開設されると事前の説明とは異なり、2021年11月には地対艦・地対空ミサイルが配備されました。そのミサイルの配備地から最も近い民家まで200メートルもないことなどが判明し、地元住民からは自衛隊配備に大反対の声が上がっています。
 宮古島では、そのような陸上自衛隊部隊の配備から4年が経ち、本年3月19日には記念式典が駐屯地で開かれましたが、その式典でのパレードの車列には地対艦・地対空ミサイルも参加・披露されています。大陸に近い沖縄等南西地域では、住民の意思とは裏腹に日本の最前線として戦争をする国づくりの準備が着々と進められています。
 「世界一危険な飛行場」とうたわれた米軍普天間飛行場の完全閉鎖にむけ、その撤去条件として代替え策とされた辺野古新基地建設が今もなお強行され続けています。そもそも沖縄が辺野古新基地建設に反対する理由としては、①すでに沖縄県が異常ともいえる過重な基地負担を抱えていること、②辺野古移設に反対する民意があること、③辺野古・大浦湾の豊かな自然環境が破壊されてしまうこと、④辺野古移設では米軍普天間飛行場の一日も早い危険性除去にはつながらないこと、などが挙げられています。
 戦後75年以上が経過したいま、日本の国土面積の約0.6%しかない沖縄に日本全国の米軍占有施設面積の約7割が集中し続けています。沖縄県内の米軍基地負担が軽減されない中において、今後耐久年数が100年とも200年ともいわれている辺野古新基地の建設を受け入れることは、沖縄に対する過度な基地負担を固定化させるものであり、沖縄県民としては到底容認できるものではありません。米軍普天間飛行場の代替施設として辺野古新基地建設を進めることについて、2019年2月に実施された沖縄県の県民投票では、投票者総数の7割以上という圧倒的な民意が反対の意思表示を示しています。県民の理解が得られない辺野古新基地建設を強行することは地方自治の本旨・民主主義の観点からも大きな問題があります。
 また、辺野古新基地建設が進められている辺野古・大浦湾周辺海域には、ジュゴンを始めとし、サンゴや希少生物が多数存在していることが判明しています。環境保護の観点からみても、同地域に米軍新基地建設を行うことは認められません。
 政府はその辺野古周辺海域を埋め立てて辺野古新基地を建設しようとしていますが、その海底には水面下約90メートルまで軟弱なマヨネーズ状の地盤が存在することがこれまでの調査で明らかになっています。しかし、現在の地盤改良技術では水面下70メートル以上での地盤改良工事の施行実績がないうえ、仮に新基地が完成したとしても、地盤沈下防止策などの維持管理に莫大な経費がかかるおそれがあり、この海域を埋め立てて新基地を建設することが不適切であることは明らかです。そのため、沖縄県は政府に対し、辺野古新基地建設は認められないと表明し続けていいますが、政府は「辺野古しかない」と、辺野古ありきの姿勢を崩さず、新基地建設工事を強行し続けています。
 このような現状から、多くの沖縄県民は辺野古新基地建設NOを訴え続けています。国公労連が5月21日から実施する沖縄支援・連帯行動は、日本本土では聞こえてこない沖縄県民の声を聴き、現地の状況を肌で体験したことを、それぞれの参加者の地元をはじめ日本全国に伝えていただくことに大きな意義と目的があります。基地問題は、決して沖縄だけの問題ではなく国民一人ひとりに関わる重要な問題です。基地のない平和な社会の実現にむけ、現に存在する問題を直視し、学び、発信していくため、沖縄支援・連帯行動への多くの組合員のみなさんの参加を呼びかけます。

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