国公労新聞|2023年3月25日号|第1601号

2023年統一要求に対する政府・人事院回答を受けて
物価高騰上回る賃上げへ引き続き奮闘を

 41年ぶりの物価高騰により、労働者・国民の生活が厳しい状況に置かれているなか、生活改善できる大幅賃上げなどを求めて、31年ぶりのストライキに立ち上がった全医労をはじめ、多くの労組でストライキ体制を確立し、23春闘を展開しています。国公労連も春闘期における政府・人事院との最終交渉を実施し、その回答を受けて3月24日に中央闘争委員会声明を発表しました。その要旨を紹介します。

 国公労連は23春闘で、要求アンケート結果にもとづく有額要求を掲げ、物価高騰から組合員はもとより、労働者・国民の生活を守るため、政府に対して政策的賃上げを、人事院に対しては「緊急勧告」を求めてきました。
 また、初任給・諸手当の改善、賃金の地域間格差の是正・解消、公務員労働者本位の「給与制度の整備(アップデート)」の実現、非常勤職員の均等・均衡待遇と安定雇用、定年延長に伴う定員・級別定数の確保、再任用制度・運用の改善、長時間労働是正・超過勤務縮減、行政体制拡充・定員増などの職場要求の実現を求めてきました。
 しかし最終回答は「人事院勧告もふまえ、国政全般の観点から検討」(政府)、「情勢適応の原則にもとづき、必要な勧告を行う」(人事院)と従来の回答にとどまりました。国民のいのちやくらしを守るために現場第一線で奮闘する職員の労苦に報いないばかりか、物価高騰下で生活苦に置かれている組合員の大幅な賃上げへの期待に背き、国公労連の要求に真摯に応えない極めて不十分なものです。以下、主な問題を指摘します。

物価高騰に対応した「緊急勧告」に一切応じず

 政府・人事院は、41年ぶりの物価高騰に適応した「緊急勧告」を求める国公労連の要求に、一切応じませんでした。現行の人事院勧告制度は、民間準拠原則が重視され、生計費原則が形骸化しており、現状のような急速な物価高騰を迅速かつ的確に反映できず、職員の生活実態を悪化させる要因となっています。また、比較対象企業規模をはじめ官民給与比較方法に多くの問題点があるため、公務員の賃金水準が低位にとどまり、そのことが日本の低賃金構造を固定化させている要因となっています。こうした状況を鑑みれば、人事院勧告制度は見直す時期を迎えていると言っても過言ではありません。
 国家公務員の高卒初任給は、地域別最低賃金の加重平均を下回っています(国公労連試算)。民間企業と競合する人材の確保にあたっては、国家公務員の初任給を大幅に改善する必要があります。また、職務給原則に矛盾する地域手当は、国公労働者に不平等な処遇をもたらしていることにとどまらず、地域別最低賃金をはじめとする民間企業の地域間格差を固定化させている要因となっています。国家公務員の初任給改善と賃金の地域間格差の是正・解消は喫緊の課題です。
 詳細は不明ですが、昨年勧告の「職員の給与に関する報告」で表明された「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(アップデート)」が人事院で検討されています。
 60歳前後を含め公務員給与については、職務給原則に見合った水準を維持し、高齢層職員のモチベーションとともに、そのライフサイクルに見合った生計費を確保する必要があります。前述した問題の解決を含め、労働者本位の「アップデート」を実現することが求められています。

非常勤職員賃金の常勤職員に準じる改正を勝ち取る

 非常勤職員の労働条件は、私たちの運動もあって少しずつ改善してきています。3月22日には、非常勤職員の給与を常勤職員に準じて改定することを基本とする「指針・申合せ」の改正を実現しました。しかし、「予算の範囲内」という不合理な制約があることなどから、安心して働き続けられる職場環境としては極めて劣悪なままです。「指針・申合せ」改正の実効性は政府の責任において確保されなければなりません。また、病気休暇の有給化をはじめとする均等・均衡待遇、パートタイム・有期雇用労働法の趣旨である「同一労働同一賃金」の実現は急務です。
 雇用に関しては、職場実態を顧みない建前だけの回答に終始し、雇用の安定を図る立場には立っていません。民間では有期雇用労働者に無期転換権が保障されているにもかかわらず、国家公務員だけを対象外とする理不尽な国の姿勢は許されません。人権侵害と指摘されている「3年公募」の廃止、労働契約法第18条に準じた「無期転換ルール」の導入は喫緊の課題です。
 再任用職員の処遇改善については「ゼロ回答」でした。①俸給水準の抜本的改善、②期末・勤勉手当の支給月数の改善、③各種生活関連手当の支給、④宿舎の貸与、⑤年次休暇の繰越しなど常勤職員との均等・均衡待遇を早期に実現することが求められています。

国公労働者が働きがいを実現できる職場環境の実現

 国家公務員の労働時間は短縮の兆しがなく、地方においては、客観的に勤務時間を把握する措置が普及・定着していないため、夜間・休日などのサービス残業が蔓延しています。勤務時間制度の柔軟化は、公務の特性である集団的執務体制を弱体化させ、さらなる長時間労働を招くおそれがあり、必ずしも推進すべきものではありません。
 「柔軟な働き方」よりも、職場の人的体制の大幅な拡充や業務の効率化を実現するとともに、実効性のある超過勤務の規制や客観的な勤務時間の把握をはじめ、長時間・過密労働とそれに伴う職員の健康被害を回避するための措置を優先的に講じる必要があります。
 現行の定員管理政策が破綻していることは、コロナ禍で行政体制の脆弱性が浮き彫りになったことからも明らかです。国公労働者が働きがいを実感できる職場を実現し、国民本位の行財政・司法を確立するためには、総定員法の廃止、定員合理化計画の撤廃・中止と行政需要に見合う定員確保が必要です。定年延長制度の運用に当たっても、必要な定員・級別定数が十全に措置されなければなりません。必要な人的体制を確保することが、休暇制度をはじめとした各種制度の充実した運用につながります。

人勧期・概算要求期へとつづくたたかいへの結集を

 今年も労働基本権の回復や人事評価制度の見直し、行政の公正・中立・透明性の確保、ILO勧告にもとづく交渉・協議の場の早急設定については、具体的な回答はありませんでした。政治による行政私物化に対する国民の不信が払しょくされていないなか、それらの真相の解明とともに、公正で民主的な公務員制度の確立と行政民主化こそが求められています。
 23春闘はこれから多くの中小労組などで労使交渉が本格化します。物価上昇を上回る生活改善できる大幅賃上げを求め、引き続き官民共同のたたかいに全力をあげることが求められています。「ひとり一行動」のスローガンのもと、23春闘の諸行動に結集してきた全国の仲間のみなさんに敬意を表するとともに、春闘最終盤までの奮闘と人事院勧告期・概算要求期へとつづくたたかいへの結集を呼びかけます。

全医労が31年ぶりストライキ
統一行動に1000人結集

全医労

 全医労はコロナ対応などによる過酷な働き方の改善へ欠員補充や賃金改善を求め交渉を重ねてきました。これに対し国立病院機構当局がベアゼロ回答など不誠実な姿勢に終始したため、全国の機構支部で3月9日に一斉ストライキ行動(指名2人による1時間スト)を実施。このストライキ行動とあわせて全国統一行動を展開し、国公労連や医労連、地域労連から支援を受けて1000人が結集しました。テレビ局18社・新聞社54社がこの行動を大きく取り上げ、ツイッターデモのとりくみでは「#国立病院ストライキ」が1万5000ツイートを記録しトレンド入りするなど大反響を呼びました。

原口さんを直ちに職場に戻せ
人事院での勝利めざし報告集会

 全国税労働組合と国公労連は3月16日、「原口さんを職場に戻せ!3・16報告集会」を東京・新橋で開催。会場参加37人とオンライン参加11人の計48人が結集しました。
 2021年6月に東京国税局から不当な分限免職処分を受けた原口朋弥さん(全国税組合員)は、同年9月に人事院に不服申し立てを行い、処分の取消しを求めてたたかいを続けています。

国公労働者全体にかかわる大問題

 集会の冒頭、主催者を代表してあいさつした国公労連の九後健治委員長は「処分に至るまでパワハラが繰り返されており、人事評価のやり方にも問題がある。この処分は国公労働者全体にかけられた攻撃だ。勝利判定はもちろん、民主的公務員制度の確立に向けて奮闘したい」と述べました。
 続いて弁護団報告を行った加藤健次弁護士は「分限免職は公務労働者にとって死刑宣告に等しい極めて重大な処分。しかし、原口さんのケースでは分限回避努力も障害についての合理的配慮もまったくなされていない」として「違法かつ不当な処分であることは明白だ」と強調しました。
 当該組合の全国税からは高橋誠副委員長が経過報告。「当局との交渉では原口さんの障害に配慮するよう求め続けてきたが、そのような配慮がないまま分限処分が強行された」「恣意的な人事運用をただすためにもこのたたかいは何としても勝たなくてはならない」と力強く述べました。
 参加者からの発言も相次ぎ、同じく解雇争議をたたかう仲間(国公一般国立ハンセン病資料館分会、全厚生闘争団、JAL争議団(JHU))の当事者から激励と連帯のあいさつがありました。

安心して働き続けるためのたたかい

これらの発言を受け、当事者の原口さんが決意表明。「不当な処分により生活の糧を奪われ、生活困窮に陥っている。この事案には、パワハラ、障害者差別、不当な人事評価など社会的にも重大な問題が幾重にも含まれている。東京国税局による恣意的で乱暴な不当解雇を撤回させるため、あらゆる機会を捉えて訴え続けていきたい」と決意を述べました。
 行動提起では、国公労連の浅野龍一書記長が改めてこの処分の不当性を訴えるとともに、人事院宛ての署名や生活支援カンパ、東京国税局前の宣伝行動などへの積極的な結集を呼びかけました。
 最後は、全国税の林登美夫委員長が閉会あいさつ。「このたたかいは、職場で安心して働き続けるためのたたかい。国公労連や争議団の仲間との連帯の重要性を再認識した。ともに勝利にむけて奮闘しよう」と締めくくりました。

国立ハンセン病資料館の健全な運営を
稲葉さん・大久保さんが報告集会で訴え

 国公一般国立ハンセン病資料館分会の2人の組合員が笹川保健財団により不当に解雇された問題で、国公一般は3月22日、中央労働委員会で開かれた第4回調査期日の報告集会を開催しました。
 これまでの調査で、笹川保健財団が主張してきた内容に対して、労働者側からは適切に反論・主張を行ってきました。しかし笹川保健財団はまともな反論をせず、明らかに時間稼ぎとしか思えない対応を行ってきています。労働者側から「2人は職場への復帰しか考えられない。無駄に調査を引き延ばさず、早々に結審にしてもらいたい」と中央労働委員会へ対応を求めてきました。
 今回の第4回調査で結審になると想定されていましたが、公益委員から「使用者側と和解が可能か」という発言がされました。また、次回期日までに和解が可能かどうか検討してくるよう指示されました。
 報告集会では、弁護団から調査の内容説明と分析が行われ「我々は、財団が都労委の命令に従うことを望んでいる。金銭解決は望んでいない」として引き続き奮闘することが述べられました。その後、当事者の稲葉さんと大久保さんからも決意表明があり、2人からは「公益委員は和解をと言うが、私たちはお金が欲しい訳ではない。笹川保健財団が資料館の委託業務を行うことにより、資料館が患者の立場に立った運営ができなくなってきていることが許せない。とにかく職場に復帰したい」と力強い訴えが行われました。次回の期日は5月26日に開かれます。2人の職場復帰のためにも、引き続き署名やカンパ等へのご協力をお願いします。
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