国公労新聞|2025年4月25・5月10日合併号|第1643号

全世代の賃金改善、組織拡大に全力
第164回中央委員会ひらく

 国公労連は4月23日、第164回中央委員会を東京都内で開催し、中央委員19人が出席しました。中央委員会では、国民本位の行財政・司法の確立、人事院勧告期・概算要求期闘争をはじめとする賃金・労働条件の改善、組織強化・拡大のとりくみなどを柱とする夏季闘争方針案を議論し、「2025年夏季闘争方針案」「概算要求期重点要求」「人勧期要求」「中間会計決算報告」などを全会一致で決定しました。

 冒頭のあいさつで浅野龍一委員長は、「ストライキに立ち上がった全医労、国共病組の皆さんの勇気と行動に心より敬意を表する。国公労連は、ケア労働者の処遇改善など25春闘後半のたたかいに結集するとともに、25人勧に向けた戦いに全力をあげる。『給与制度のアップデート』で生じた不利益の解消、すべての世代とりわけ中高年層職員の賃金改善、官民給与比較企業1000人以上への引上げ、非常勤職員の無期転換ルール確立などを重点にたたかいを強化していく。近年の人事院の姿勢は、労働基本権制約の代償機関・第三者機関としての中立性が保たれているのか疑念が拭えない。全国税組合員原口さんの分限免職事案に対する不当判定に強く抗議する。労働組合の活性化に向けたとりくみの土台として、組合員と役員、単組と国公本部など双方向でのコミュニケーションをしっかりとって、信頼関係を築いていきたい」と述べました。
 続いて、笠松鉄兵書記長が2025年夏季闘争方針等を提案し、討論では13本の発言がありました。

討論(要旨)発言順

〈全司法〉2月〜5月を組合拡大強化月間として集中的にとりくんでいる。すべての支部で「ファーストアタック」を完遂し多くの新採職員の加入につなげることが目標。二の矢三の矢のとりくみでさらなる加入拡大をめざす。『対話をすすめる5つのレシピ』(以下、『対話レシピ』)を活用した学習会を企画し、対話を通じた関係づくりを学んでいく。

〈全司法〉通常国会で裁判所職員定員法の一部を改正する法律案が提出され、可決・成立した。3月6日の中央行動に合わせた単組独自のとりくみで、この法案の慎重審議を求める議員要請を行った。3月13日には最高裁前で各単組の協力のもと要求行動を実施。最高裁の姿勢を変えさせることが最大の課題。

〈全医労〉今年は2回のストを実施したが、賃金について人勧はおろか全くのベースアップもない状況。しかも、病院機構は628億円もの財源を国庫に返納し、業績悪化を理由に賃上げしないという横暴な姿勢を維持。要求を実現するためには組合の大きさ・力強さが必要と呼びかけ、昨年の大会組合員数を上回る組織拡大を達成したい。

〈全厚生〉4月に厚生労働省本省と日本年金機構の新採職員を対象とした組合説明会を実施。本省では1割を超える加入があったが、今後はさらなる上積みをめざす。『対話レシピ』を活用した仲間づくり講座で国公労連に講師派遣をお願いしたい。国立感染症研究所の法人化の問題は深刻。全医労とも連携して運動をすすめていく。

〈開建労〉いま、南西諸島の軍事化とともに、自衛隊基地の強靭化という名目で防衛省予算もかなり膨らんでいる。辺野古の改良工事に400億円など、私たちの税金が湯水のように使われており、絶対に許すことができない。全国で大きく声を上げてほしい。職場では仲間に個別に声をかけ、少しでも拡大できるようにとりくみをすすめている。

〈全法務〉この物価高騰のもと、とりわけ中高年層職員について実質手取りがマイナスになるような状況が想定され、処遇改善が喫緊の課題。2025年度からの5年間の定員合理化目標は5%と半減させたが、職場における実態は変わっていない。定員合理化計画そのものの中止を求めていく。一人ひとりの要求を大切にした全員参加の組織づくりをめざす。

〈国土交通労組〉異常な物価高騰が続く情勢のもと中高年層をはじめとした仲間が真に生活改善を実感できる賃上げに向けたとりくみ強化が急務。参院選前に国会議員要請や決起集会開催など政府・人事院交渉を後押しする新たなとりくみ提起が必要。『対話レシピ』は適正な財政支出という観点で疑問が残る。各単組、ブロック・県国公の要望を踏まえた運営をお願いしたい。

〈国土交通労組〉非常勤職員は職場で不足する常勤職員を補う業務を担っており、欠かすことのできない存在。国土交通省の非常勤職員を対象に全国で実態調査を行い、課題を整理している。回答数も昨年度より伸びており、組織に対する期待の高まりを実感している。

〈全労働〉ハローワーク職場では、受付時間が勤務時間と一致しているため、ほぼ確実に超過勤務が発生してしまう。引き続き受付時間の設定を求め、一刻も早くこの要求を勝ち取りたい。カスハラ対策も急務。現場の誰もがわかりやすく実効性のあるカスハラ対策の構築を求めていく。

〈全労働〉4月10日に厚生労働省本省で新採職員を対象とする組合説明会を実施。本省は組織率が低く「みんなが入っているからあなたも」という声かけができず勧誘の難しさを実感した。組織拡大は役員だけでなく、組合員同士の交流でつながりを広げていくことが重要。非常勤職員の組織化にもこれまで以上に奮闘したい。

〈国公一般〉非常勤職員の生理休暇はいまだに無給。休暇制度の正規職員との格差を比較表にするなどして発信し、世論喚起を促す必要がある。結成から20年以上が経過した国公一般の位置づけについて改めて確認を。本省のとりくみは国公労連の再生に不可欠。本省庁対策について具体的な議論をすすめてほしい。

〈全労働〉物価高騰によって可処分所得が相当下がっている。今年の民調は比較企業規模50人以上で始まったが、調査の結果から1000人以上の企業をピックアップしていくことを共同の力で求めていきたい。高齢層職員の処遇改善は喫緊の課題。能登半島地震から1年半、被災地に対して私たち公務労働者の持つ役割をどう果たすことができるのか、引き続き追求していきたい。

〈全司法〉通勤手当について、育児介護等のやむを得ない事情により転居した職員については支給要件に該当する反面、夫婦の別居を回避することはこの「やむを得ない事情」には該当しない。60㎞の距離制限とあわせて、ワークライフバランス実現の観点から改善を求めていく。

人事院が「処分承認」の不当判定
全国税の原口さんらが記者会見で抗議

事実と証拠に基づかない判断

 2021年6月に東京国税局から不当な分限免職処分(以下、「本件処分」という)を受けた全国税組合員の原口朋弥さんが、本件処分の取り消しを求めて人事院で争っていた事案について、人事院は2025年3月27日、本件処分を「承認する」との不当判定を行いました。
 判定では、争点となった「分限免職回避努力義務」の履行の有無について、国税局が分限免職回避措置(配置転換)を検討したことの裏付けとなる協議メモやメールの履歴などの客観的資料が国税局から証拠として何も出されなかったにもかかわらず、「処分者の主張は信ぴょう性が高く、事実であると認めるのが相当」などと強弁し、国税局の主張を全面的に認めました。

記者会見で処分の不当性を強調

 この判定を受け、全国税と国公労連は4月17日、東京・霞が関の厚生労働省会見室で記者会見を行いました。
 請求者代理人の加藤健次弁護士は、「詭弁に詭弁を重ね、初めから国税局を勝たせるために無理やり出された判定だ」と批判。本件処分に先立ち人事院人材局が国税局に対して「本件処分は問題なし」とお墨付きを与えていた事実が審理で明らかになったことに触れ、「前代未聞の由々しき事態だ」と強調しました。
 また、原口さんは、「あまりにもひどい判定で憤りを抑えきれない」とやりきれない心境を吐露し、全国税の林登美夫委員長は「公務職場で懸命に働いている障がい者のためにも闘い続ける」と述べました。最後に国公労連の笠松鉄兵書記長は、「判定を見て愕然とした。客観的事実が無いにもかかわらず国税局の言い分だけを鵜呑みにして出された本判定は極めて不当だ」と訴えました。

25年4月からの制度改定と今後の課題

【第二回】通勤手当で自己負担の解消を実現

 近年は、ワークライフバランスなどが優先され、自己負担で新幹線等の特急料金を支払い、長距離・長時間通勤を選択する職員が増加していました。家族を帯同した転居による配偶者の離職や子の転校、単身赴任などを回避するためです。国公労連は、職員の経済的負担を解消するため、地方組織の運動も活性化しながら、通勤手当の全般的な改善を要求してきました。
 そうして実現した主な内容は【図表】のとおりです。新幹線等の特別料金には、在来線の特急料金や高速道路の通行料金なども含まれます。
 一方で、マイカー通勤の改善が不十分なままです。現在の支給水準では、最近の燃料価格の高騰とも相まって、ガソリン料金などの実費を賄えません。職場などに隣接する駐車場料金も通勤に必要な経費ですが、全額が自己負担となっています。
 職員の実情として特徴的なことは、①特急列車などが通勤の時刻に運行していない地域、②最寄駅まで長距離の位置にある官署や自宅、③朝夕の子の送迎などにマイカーを利用する育児中の職員など、マイカー通勤は自己都合を優先したものではなく、ワークライフバランスの推進などに有効です。
 民間企業のマイカー通勤は、通勤手当などの賃金ではなく、燃料費や駐車場料金の実費を補填する場合もあります。各事業所に従業員用の駐車場が整備されている場合も含めて、賃金の官民比較に反映されない実態も踏まえる必要があります。
 また、新幹線等の特別料金が支給される「育児・介護等のやむを得ない事情で転居した職員」には、①子の養育、②父母の介護、③職員の転居などの要件が定められました。夫婦の別居を回避するという理由だけでは、「やむを得ない事情」と認められません。
 近年は、必ずしも子を養育しない夫婦や障がいのある成人の子の医療的ケアを担う労働者をはじめ、ライフスタイルや家庭的事情などが多様化し、いずれも家族が同居することによってはじめて、そうした多様性を維持できます。さらに、民法第752条は、夫婦の同居と相互扶助の義務を定めていますが、女性の社会進出や男女共同参画を推進し、ジェンダーギャップを解消するためには、夫婦が同居できる職場環境を整備し、配偶者の就業を支援する必要があります。
 3月8日の国際女性デーにちなんで公表された先進29カ国の「女性の働きやすさ」ランキングでは、日本が2年連続でワースト3位でした。夫の遠隔地への転勤に伴う妻の離職が男女共同参画を阻害してきたことなどを踏まえれば、通勤手当の改善により「女性の働きやすさ」を実現する観点も不可欠です。
 新幹線等の特別料金の支給は、あらゆる家庭的事情にある職員を網羅的に対象とすることを要求していく必要があります。

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