国公労新聞|2024年6月25日号|第1626号

公務員減らしで脅かされる いのち・くらし
定員増、公共の再生へ シンポジウムひらく

 国公労連は6月9日、新たな定員合理化計画目標数の策定阻止をめざして「公務のあり方と公共の再生を考えるシンポジウム〜公務員減らしで脅かされるいのち・くらし」を開催しました。シンポジウムには、会場に57人、オンラインで255人が参加しました。
 シンポジウムは、浅野龍一書記長をコーディネーターに、東京新聞記者の望月衣塑子氏、元文部科学事務次官の前川喜平氏、和光大学名誉教授・ジャーナリストの竹信三恵子氏、上智大学教授の中野晃一氏をシンポジストに招きました。
 望月氏は「能登半島地震の対応について、支援物資の配送をはじめ、自治体職員だけでは手が足りていない状況のなか、ボランティアの受け入れも十分ではない。自治体職員にPTSDが多く発生し心のケアが必要になっている。学校も避難所となっており、先生も避難者のケアにあたっている。こうした危機的な災害の際、基礎となるのは公共の施設であったり、そこで働く職員の力だ。非正規ではなく正規の公務員を増やし、住民のための行政ができる政策を実行していくことが求められている」と、この間の取材から公務員を増やすことの重要性が見えてきたと指摘しました。
 前川氏は「政府は小さければ小さいほどいい、公務員は少なければ少ないほどいいという新自由主義政策の中で、各省庁一律削減ありきの公務員減らしがすすめられ、非正規職員がどんどん増える結果になった。機構は増え、頭でっかちの組織になり、若手は減少し、疲弊している。人事評価も職員の疲弊の原因で意味のないエネルギーを浪費している」と文部科学省で働いていた経験から政府の定員管理政策の問題点などを分かりやすく指摘しました。
 竹信氏からは「期間業務職員・会計年度任用職員は1年の任期だが、公務で1年で終わる仕事はほとんどない。住民に必要な仕事と任用形態は全く合わない。労働基本権も制約され、任用期間も短いので公平審査などの制度も使えず、声もあげられない。結果、労働条件の引上げもできず、貧困化が起きている。ここには女性が多く、DV支援などケア的な仕事が中心となっている。公共は貧困やジェンダー差別をなくすことが役割なのに逆に貧困等を拡大している。非正規問題は公共サービスの根幹の問題だ。身バレしないよう録音などで当事者の声を集め省庁交渉で聞かせたり、住民から支援の声をあげてもらうなど、新しい地域巻き込み型の労働運動も芽生えてきている」と新たな運動への期待についても言及がありました。
 中野氏は「公共の再生には、個人の解放と社会を良くしていくことを両立させて、しわ寄せされている若い世代、特に女性が声をあげられる運動をつくっていく必要がある。抑圧的なやり方やジェンダー差別への若い世代の感覚は優れている。より横につながっていく連帯の形を労働組合はつくり直していくことが重要だ」と語りました。
 フロア発言では、国土交通労組の青木中央執行委員から航空や地方整備局の職場実態、全労働の津川書記長から労働行政の実態が紹介されました。また、学校現場や自治体のおかれている実態について全教の鈴木中執、自治労連の吉田書記次長から発言がありました。労働組合以外の2人の一般参加者からも発言があり、非正規労働者の労働実態やそこから見えてくる国の政策の矛盾などが指摘されました。
 最後に浅野書記長が「国公労連は、それぞれの行政の専門性をいかしながら、公共体制の拡充運動、行政民主化運動を推進していく。連帯と対話を通して市民との共同を広げていきたい」と発言し、シンポジウムを締めくくりました。

政府・人事院に夏季重点要求書提出
あらゆる格差解消へ賃金底上げを

 国公労連は6月13日、政府(内閣人事局)に「2025年度概算要求期重点要求書」、人事院には20日に「2024年人事院勧告にむけた重点要求書」を提出し、夏季闘争の交渉をスタートさせました。人事院には先行して、「労働者本位の『給与制度のアップデート』を求める要求書」を17日に提出しています。
 2024年春闘での賃金上昇率は、定期昇給を含めて5%超を維持するなど、33年ぶりの高水準が見込まれています。政労使が「賃上げのモメンタム(勢い)」を強調していますが、4月の実質賃金は25か月連続で減少しています。物価上昇にも終息の兆しがなく、岸田首相が明言した「物価高に負けない賃上げ」は実現していません。
 国家公務員の給与は、民間の賃上げが僅かながらも実現する一方で、依然として低水準なまま放置されています。こうした官民格差ばかりでなく、地域間、男女間、非常勤などの任用形態間、中高齢層が長期の給与抑制に晒されていることに伴う世代間など、さまざまな不均衡が蔓延しています。あらゆる給与格差の解消を念頭に、すべての職員を対象とした給与の底上げが至上命題となっています。
 また、「給与制度のアップデート」が最重要課題となっています。
 これまで国公労連は、①あらゆる不合理な給与格差を解消・是正すること、②全世代の職員のモチベーションを向上させること、③能力・実績主義の強化を是正することを主張してきました。しかしながら、人事院の検討状況は、本府省や「優秀者」など、一部の職員を対象としたものになることも否定できません。一般職の国家公務員の8割以上を占め、公務・公共サービスを直接的に提供している地方支分部局の職員を念頭にした検討が不可欠です。
 政府が「物価高に負けない賃上げ」をめざしているのなら、給与の引下げなども断固として容認できません。
 8月の人事院勧告が迫っているなか、当事者である職員には漠然とした不安が広がっています。将来のキャリア形成、職業選択、人生設計などにも関わるものであり、職務に専念する意欲にも影響しかねません。
 国家公務員の給与制度やその水準が900万人以上の労働者に影響することを踏まえれば、その「アップデート」には、地方公務員などの多様な意見を反映する必要があります。民主的な公務員制度の確立や財政民主主義の観点を重視するのなら、そこに国民の理解・共感も不可欠です。労働組合との協議の保障とともに、その合意を前提とした「労働者本位の『アップデート』」を要求していかなければなりません。
 さらに、政府の定員管理政策について、各府省の定員合理化目標数が2024年度に終了することなどを踏まえれば、その抜本的な転換も喫緊の重要課題です。職場では、国家公務員の志願者の減少や若年層の離職者の増加に拍車がかかっています。将来的に生産年齢人口が減少していくなかで、安定的に人材を確保するためには、長時間労働を解消し、ワークライフバランスをすすめるための人的体制の確保が不可欠です。
 夏季闘争の重点要求は、①物価上昇を上回る全世代を対象としたベースアップの実現、②人材の確保につながる若年層給与の官民格差の解消、③地域間格差の解消につながる地域手当の見直し、④ワークライフバランスの実現につながる通勤手当の改善、⑤物価上昇に対応した寒冷地手当をはじめとする諸手当の改善、⑥定年引上げを踏まえた高齢層の給与抑制措置の廃止、⑦再任用職員の抜本的な処遇改善など安心して働ける高齢期雇用の実現、⑧非常勤職員の公募要件の撤廃など安定雇用と均等・均衡待遇の実現、⑨職場実態に見合った大幅増員と長時間労働の是正など、極めて多岐にわたっています。
 これらを実現するためには、「全員参加型の運動スタイル」を意識した職場活動の活性化が不可欠です。
 6月24日の週は第2波全国統一行動として、職場集会の開催と職場決議の採択などを提起しています。単組の各級機関、ブロック・県・地区国公などでも要求決議にとりくみ、ブロック国公が6月中に配置する人事院地方事務局(所)交渉で提出します。それらも背景として、7月5日の人事院交渉には、各地域の代表者も参加し、職場からの追及を強化していきます。

職場のジェンダー平等実現を
第53回 国公女性交流集会ひらく

 国公女性協は6月15〜16日、第53回国公女性交流集会in湯河原をオンライン併用で開催し、全国の仲間が115人参加しました。今集会はメインテーマを「ひろげよう 連帯と共同の輪」、サブテーマを「つなげよう 憲法がいきるジェンダー平等の平和な社会へ」としました。
 1日目は、国公労連の西口書記を講師に職場採択運動をすすめている「国公労連ジェンダー平等宣言(案)」の作成過程、島袋中執を講師に沖縄戦と基地の現状から平和を学ぶことの大切さについて、2本のミニ学習会を開催しました。また、分散会では、交流集会の目的の一つである「単組の枠組み越えた交流」の実践として「しゃべり場」を開催し、互いの職場実態や日頃の悩みを語り合いながら大いに交流しました。
 2日目の全体会では、亜細亜大学教授で、国連女性差別撤廃委員会の委員をされている秋月弘子さんをお招きし、「日本のジェンダー平等の現状と女性差別撤廃委員会の役割」というテーマで講演をいただきました。
 講演では、意思決定過程への女性参加を高めていくこと、固定化された男女役割分担概念の変革が重要であることが強調され、法の下の平等にとどまらない事実上の平等や、個人、団体、企業による社会慣習・慣行の中での差別の廃止を求める委員会の活動が紹介されました。
 「不平等な立場の人を優先的に処遇しても差別ではない」という暫定的特別措置を、より一層、迅速に進める必要性を知る貴重な時間となりました。
 そして、「今集会でのつながりと学びをパワーに、それぞれの職場、地域に共同の輪を広げ、公務・公共の拡充、そして職場のジェンダー平等を実現させよう」とのアピールを採択し、閉会しました。
 集会にあわせてとりくんだ「ひと言メッセージ」に集まった組合員の想いをタペストリーにし、6月27日に行う人事院交渉で人事院に届け、職場改善につなげていく予定です。
 集会開催にあたっては、各単組本部を中心に実行委員会を立ち上げ、企画・運営、物販、広報などにとりくみ、みんなと集まれる喜びを感じた集会となりました。

部下数要件撤廃、業務に見合った行(二)の処遇改善へ人事院交渉

 国公労連は6月13日、全法務と全国税の行(二)組合員4人を含む13人の参加で人事院交渉を実施しました。
 能登半島地震では、国の行政機関が担う自動車運転業務の重要性がクローズアップされています。行(二)職の職務・職責を再評価することや、「給与制度のアップデート」で行(一)以外の俸給表も職務の特性に見合った「アップデート」を検討することを主張しました。組合員からは、「人事評価では自動車運転の本来業務で評価すべき」「行(二)はほとんどベースアップしておらず行(一)との給与差が拡大している」「付加業務がメイン業務になっているような職場では行(一)俸給表を適用すべき」といった職場実態に基づく切実な声を伝えました。
 これらの要求に人事院は、「行(一)以外の俸給表の給与水準は、行(一)との均衡を基本に所要の改正を行っている」「部下数要件について、行(二)職員の昇格基準としては、ある職務の級を役付級として位置づけるための客観的な基準であり、その撤廃は困難」「運用においても可能な限り配慮してきている」などと従来の回答にとどまりました。
 最後に国公労連から、「行(二)職員の付加業務が増加している実態を踏まえ、そうした付加業務をどう捉えて行(二)職の処遇改善につなげていくか、様々な対応を検討するよう求める」と主張し交渉を終えました。

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