国公労新聞|2023年12月10日号|第1615号

実質賃金19カ月連続マイナス
暮らし守る大幅賃上げを

 —2024年春闘方針のポイントについて、浅野龍一書記長にお聞きします。24春闘はどのような情勢のもとでとりくまれるのですか?

 日本経済が30年にわたって衰退してきたところへ物価高騰が襲い、国民の生活はますます苦しくなっています。
 23年10月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、総合指数が106.4と前年同月比2.9%上昇しました。上昇は26か月連続となり、伸び率は前月の2.8%から拡大しています。また、10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は、前年同月比2.3%減。マイナスは19か月連続となり、物価高に賃金の伸びが追い付かない状態が続いています。長期的にも実質賃金はピーク時の1996年から年間64万円も落ち込み、30年前の水準です。
 日本経済の停滞は一過性のものではなく、構造的な問題です。
 その要因の1つめは国民生活の劣化です。低賃金と雇用不安に加え、税・社会保険料の負担が重くのしかかっており、そのことが国内消費を低迷させ、投資を伸び悩ませています。
 2つめは産業の衰弱・空洞化です。生産拠点の海外移転などで産業連関の裾野が狭まり、このことにより雇用の受け皿が失われ、サービス業などに従事せざるを得ない状況となっています。
 3つめは政府と日銀の政策の失敗です。政府は労働法制を改悪し、低賃金・不安定な非正規雇用を増やしました。また、度重なる社会保障改悪で医療や介護、年金など負担増と給付減を押しつけてきました。一方、日銀は長期金利の上昇を容認するとしながら、異次元の金融緩和を継続しています。日米金利差などを背景にした円安が続き、物価高騰が家計の負担になっています。
 岸田首相は、賃上げと経済の好循環に「ようやく明るい兆しが出てきた」と発言していますが、現実とは大きく乖離しています。政治の責任で、低賃金や格差の構造を変える改革に踏み出す必要があります。
 政府が11月に閣議決定した総合経済対策を裏付ける23年度補正予算は、総額13兆円超のうち物価高対応は約2.7兆円に過ぎず、国民生活に背を向け、一時しのぎの物価対策しか盛り込まれていません。それどころか大企業優遇の基金の創設や増額に4.3兆円、大阪・関西万博関連に750億円、そのほか軍拡予算などを盛り込んでいます。財源は7割近い8兆8750億円を国債の追加発行で賄います。
 一方で、2022年度の大企業の内部留保は過去最高の511.4兆円に拡大しており、前年度と比べると27兆円(5.6%)も増大し、増加額・率ともに過去最高となっています。このように労働者を犠牲にして積み上げられた内部留保を取り崩し、労働者の賃上げや下請け企業の待遇改善につなげ、消費を起点とする経済の循環構造を立て直すとりくみが求められています。
 政府が進める新自由主義政策のもと、公共を解体・縮小する攻撃が際限なく強められています。病院や学校、保健所、鉄道などの統廃合や独法・民営化、公共部門の業務委託や派遣の導入、正規職員から低賃金・不安定雇用で働く非正規職員への置き換えなど、あらゆる分野で公的役割が削り取られています。こうした状況のなかで、水道民営化の阻止や自治体業務の委託中止、岸田内閣が提唱するライドシェア導入阻止をはじめ、「公共の再生」を求めるたたかいが全国各地で広がっています。こうした地域住民と労働組合の共同による「生活圏に公共を取り戻す」たたかいを交流し、全国に広げるとりくみが求められています。
 岸田首相は6月の記者会見で、「令和版デジタル行財政改革」を推進することを表明し、「全体の公務員数を増やさず」「広範な機能を担う、小さくて大きな政府」をつくる意向を示し、10月11日には第1回デジタル行財政改革会議が開催されています。こうした政府の動向に対して、職場では人員削減や行き過ぎた業務の効率化などへの警戒感が強まっており、今後も注視が必要です。

職場・地域から24春闘で 一人ひとりが声あげよう

 —公務労働者が24春闘を「主体的」にたたかうとはどういうことですか?

 いま、労働者が労働組合でたたかうことの意義やストライキへの注目と期待が広がっています。このような情勢の中で、国公労連は、社会的影響力の大きい公務員賃金を社会的賃金闘争の中心に位置付けるとともに、公務労働者として24春闘を「主体的」にたたかうことを提起しています。公務労働者が「主体的」にたたかうということには特別な意味があります。
 労働者の賃金や働き方は労使自治というルールにもとづいて決められます。労使が交渉し、対立し、そして妥結するという労使自治のフィールドでこそ賃金や働き方は決められます。その一方で、国家公務員は、労働基本権の一部が制約されていること(団体協約締結権と争議権は保障されていない)や国家公務員の賃金や勤務条件が法律で決まるということ(勤務条件法定主義の原則)などにより、労使自治というルールが有効に機能することが極めて限定的になっています。
 国家公務員の労働基本権が制約されていることの代償として、人事院勧告制度が措置されています。人事院は、国会と内閣に対し、春闘で妥結された常勤の民間企業従業員の給与水準と常勤の国家公務員の給与水準を均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行います(情勢適応の原則)。
 このような仕組みのなかで、国家公務員は春闘期に労使自治のルールにもとづき賃金や労働条件を決定することができず、その決定は人事院勧告や国会と内閣に他律的に委ねられています。国家公務員の賃金・労働条件の決定にあたっては、多くの障害が横たわっており、そのことが公務労働者の権利を侵害し、「主体性」を奪っています。
 それでも国公労連は、逆境をはね返し、公務労働者の賃上げ要求を公務労働者自らが声を上げ、国民春闘に結集して職場・地域でたたかいます。国家公務員にはスト権(争議権)は保障されていませんが、従来から国公労連はスト権行使を放棄しているわけではありません。現状では、実際にスト権行使は難しくても、公務労働者として組合員一人ひとりがスト権行使に匹敵する決意を持って24春闘に臨むことが、「労働組合のバージョンアップ」につながるものだと考えます。

2024春闘の基本方針(ポイント)

1.すべての労働者の賃上げと雇用の確保をめざす
 511兆円の内部留保を社会に還元させよう

 いま日本の賃金問題は国家の政策課題となっています。賃上げを伴わない物価高騰で実質賃金が低下しており、実効性のある賃上げ政策が強く求められています。労働者の賃上げで、生活防衛はもとより、消費購買力を高め、内需拡大による景気回復が図られなければなりません。国公労連は、全労連・国民春闘共闘委員会に結集し、すべての労働者の物価上昇を上回る大幅賃上げと雇用の確保により生活改善と景気回復をめざすとともに、民間労組のストライキ支援をはじめ官民共同を大きく広げるために国公産別労働組合としての責務を果たします。
 公務員賃金の地域間格差や地域別最低賃金を下回る高卒初任給など、公務員賃金が日本社会の低賃金構造を固定化させています。これらの課題については、国公労働者自らの要求として政府・人事院を追及するとともに、民間労働者や国民諸階層が持っている要求と結合した社会的な賃金闘争のなかで要求実現を追求します。国公労連は、社会的影響力の大きい公務員賃金を社会的な賃金闘争の中心に位置付けるとともに、公務員の賃金闘争と労働基本権回復闘争を結んだ職場学習と世論喚起を強めながら、公務労働者として24春闘を主体的にたたかいます。独立行政法人等労働組合では、労働基本権を背景にした交渉機能を発揮します。すべての組合員が「ひとり一行動」を合言葉に、職場・地域で提起される行動に積極的に参加するとともに、自らの要求実現に向けて、要求書の提出をはじめとした基本的とりくみをすべての職場で完遂します。
 労働者・国民の生活が困窮する一方で、富裕層の資産や大企業の内部留保が増大するなど貧困と格差が著しく拡大しています。貧困と格差をつくり出す新自由主義政策の転換を政府に迫り、富の再配分機能の強化、内部留保の取り崩しや課税によりその社会への還元をめざす宣伝行動を展開します。労働者・国民犠牲の上に利益を上げる大企業の社会的責任を追及するため、国公労働者の専門性を活かした「ビクトリーマップ」運動を全国で展開するなど、公務労働者側から官民一体の春闘構築にむけた共同行動を強めます。
 また、超過勤務削減、長時間労働解消・是正を要求し、政府・財界主導によらない労働者本位の働き方改革を追求するとともに、公務分野での賃下げを伴わない時短要求を強めます。
 国公労連が24春闘で提起している賃上げ要求「月額2万7千円、時間額300円以上」をはじめとする統一要求は、職場討議を経たうえで1月12日の中央闘争委員会で決定することとしています。確認された「2024年国公労連統一要求書」は、2月上旬に政府・人事院に提出し、その実現をめざします。職場段階においては2月5日の週を「第1波全国統一行動週間」に設定し、すべての職場で所属長に要求を提出し、たたかいをスタートします。
 3月22日の最終回答日にむけて、3月7日に実施される春闘期最大規模の中央行動に職場から仲間を送り出すとともに、3月14日の「第2波全国統一行動日」には合同庁舎などでの合同職場集会を含め、すべての職場で組合員が最大限結集する職場集会を開催し、政府・人事院の最終回答に向けて職場決議の採択・送付などのとりくみを積み上げます。同時に、官民一体で春闘をたたかう立場から民間労働組合のストライキ支援などのとりくみを展開します。

2.国民本位の行財政・司法の確立をめざす
 定員削減やめさせ公共を取り戻そう

 「規制改革」「民間開放」などの新自由主義政策は、企業利益を最大限追求する反面、「公務・公共」を解体に向かわせ、その結果コロナ禍のなかで公務・公共サービスの劣化が明らかとなりました。公務労働は、国・自治体の公共的職務の遂行であり、それによって国民・住民の日常的な生存条件を確保すべきものです。公務・公共分野において、本来の「公共性」を回復するためには、新自由主義政策を転換し、人権尊重の社会的ルールを確立しなければなりません。
 国公労連は、全労連が提起する「公共を取り戻す」運動に積極的に結集するとともに、①国民の「共有財産(コモン)」としての公務・公共の社会的価値と、②エッセンシャルワークとしての公務・公共の社会的役割を基軸に、国民のいのちとくらし、権利を守る行政体制の拡充を訴えるとともに、それを阻害している国の定員合理化計画の中止・撤回(2025年度から2029年度までの定員合理化目標数策定阻止)を求める運動を展開し、特に地域のとりくみを最重視します。
 職場と地域住民が共通して持っている公務・公共サービス拡充要求を「見える化」し、請願署名とともに地域に持ち込み、国民本位の行財政・司法の確立及び行政体制の拡充を官民共通の課題として追求します。また、「市民との共同」を重視したステークホルダー型のとりくみをすすめます。これらのとりくみをつうじて国民世論を広げ、地元選出国会議員をはじめ大多数の国民・住民の理解と支持の獲得をめざします。
 また、森友・加計学園問題や統一教会問題などの真相究明を求めるとともに、政治の私物化による行政の歪みを正す行政民主化にむけた運動を推進します。
 具体的には、今秋からとりくんでいる「公務・公共サービス拡充を求める請願署名」について、各単組での増員署名と両輪のとりくみと位置づけて積極的な集約目標を掲げ、職場だけでなく広く民間労働組合などへも打ってでることが重要です。これまで国会での請願採択は勝ちとれていませんが、この間、各ブロック・県国公や職場の仲間の奮闘もあって「請願署名」の紹介議員の数は年々増えており(23年95人、22年89人、21年86人)、紹介議員にはなれないとしつつも私たちの主張に理解を示す議員も増えています。したがって、2月を中心に地元選出国会議員への要請を積み上げ、3月8日の「議員会館一斉要請行動」にすべてのブロック・県国公の仲間が参加し、議員への働きかけを強めて通常国会での請願採択をめざします。また、「新たな定員合理化目標数の検討の中止を求める要請署名」(団体署名)にとりくみ、統一要求書の中間回答日である3月6日に政府に提出します。

3.憲法を守り、国民本位の政治への転換を
 「ジェンダー平等宣言」の職場採択運動すすめよう

 国公労連は、日本国憲法の基本理念を破壊する改憲や大軍拡・大増税路線を断じて許さず、憲法と平和を守るとりくみをすすめるとともに、憲法に基づく国民の権利保障を実現するため、憲法尊重擁護義務を負う国公労働者としての役割を発揮します。そのためにも意欲と誇りを持って国民全体に奉仕できる国公労働者の労働条件と権利を守るとりくみを推進します。とりわけ、公務員の権利回復は民主的な行財政・司法の確立を後押しし、国民全体の奉仕者を担保するものであり、ひいては国民の幸福追求権の実現に寄与することを国民世論に訴えます。併せて公務員の労働基本権の全面回復を求め政府を追及します。
 労働組合は、ジェンダー平等の実現による社会像を明確にするとともに、時代の要請に応えて、社会の変革者として、ジェンダー平等社会づくりに向けて強力に牽引する社会的責務を負っています。国家公務の職場でもジェンダー平等の実現は、国民全体の奉仕者である公務員の役割発揮や公務・公共サービスの質の向上を図る上でも、安心して働くことができる公務職場をつくっていく上でも極めて重要な課題です。
 国公労連は、公務職場における働き方やハラスメントの防止、労働組合における男女共同参画など、国公労働者の労働条件と権利を守るすべてのとりくみにジェンダー平等の視点を重視するとともに、「ジェンダー平等宣言」の職場採択運動をすすめます。

4.公務労働者の労働条件改善をめざすたたかい
 給与制度のアップデート等に対峙 非常勤職員・再任用職員の処遇改善を

給与制度の アップデート

 今年の人事院勧告では、昨年表明された「給与制度のアップデート」について、諸課題や検討すべき取組事項などを踏襲しつつ、「令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格案」として、あらためて報告されました。列挙された取組事項には、本来は来年まで先送りできない喫緊の課題も少なくありません。
 国公労連は、①あらゆる不合理な賃金格差を解消・是正する方向、②全世代の職員のモチベーションを向上させる方向、③能力・実績主義を解消・是正する方向で改善されるよう引き続き追及を強めます。

非常勤職員の 処遇改善

 国公労連はこれまで「3年公募要件」の撤廃や「無期転換ルール」の創設をはじめとする雇用の安定化、任用当初からの年次休暇の付与・病気休暇の有給化など、常勤職員との均等・均衡待遇の観点を重視し、非常勤職員にも労働者としての地位と権利を保障することを政府・人事院に求めてきました。一方で、非正規労働者をめぐる社会問題は、労働契約法の「無期転換ルール」の創設による雇用の安定化、パートタイム・有期雇用労働法による不合理な待遇と差別的取扱いの禁止などにより是正されつつあり、近年の労働法制のすう勢となっています。
 人事院は、今年の「公務員人事管理に関する報告」で、非常勤職員の有意な人材を安定的に確保することの重要性などを踏まえ、「非常勤職員制度の適切な運用の在り方等について検討」すると報告しています。国公労連は、非常勤職員制度の抜本的な改善を求め、引き続き政府・人事院に対する追及を強めます。

再任用職員の 処遇改善

 この間、再任用職員の処遇改善が一向に進んでいません。国公労連は引き続き、再任用職員の俸給水準を大幅に引き上げるとともに、①期末・勤勉手当の支給月数の改善、②住居手当や扶養手当など各種生活関連手当の支給、③宿舎の貸与、④年次休暇の繰り越しなど、常勤職員との不合理な格差の解消を人事院および政府に要求します。

公務員人事管理の アップグレード

 今年の「公務員人事管理に関する報告」では、「新時代の公務員人事管理の在り方」として、「抜本的なアップグレードを実行していく」ことが表明されました。
 人事院は10月30日までに、「人事行政諮問会議」を2回開催し、①生産年齢人口減少による人手不足、②高スキル人材の需要増大〜グローバル人材確保・育成の重要性増大、③デジタル化の進展、④キャリア意識の変化〜働くことの価値観の多様化などのキーワードを提示しつつ、将来的に追求すべき公務員人事管理の在り方を総括的に構想するための議論を開始しています。
 「公務員人事管理のアップグレード」は、「給与制度のアップデート」とともに、その概念を捉える視点の中心には、当事者である国家公務員や行政サービスを享受する国民が据えられなければなりません。これら複線的にすすめられる人事院の議論などに対峙するため、労働組合の要求・主張を早急に構築します。

長時間労働の是正

 勤務間のインターバル確保は、人事院規則に努力義務が定められることとなったものの、実質的には勤務時間制度としての導入が見送られました。国際基準である11時間のインターバルを最低限の指標としつつ、実効性を担保し、その形骸化を許さないためには、長時間・過密労働や恒常的な超過勤務に依存してきた職場の人的体制の拡充をはじめ、業務改革や職場環境の整備などが課題となります。
 また、フレックスタイム制のさらなる柔軟化による「選択的週休3日制」をはじめ、勤務時間に関する新たな施策は、いずれも当事者にとって「柔軟な働き方」につながる一方で、勤務時間の規制や労働力の分散を伴うため、公務の特性である集団的執務体制に影響する多面性があります。それらの均衡を維持するに当たっての困難性を指摘します。

独立行政法人等 労組のとりくみ

 運営費交付金の拡充をめざすとりくみとして、基礎研究に従事する研究者が安心して働くことができるよう、2025年度予算概算要求期に配置する財務省要請に向けて「独立行政法人・国立大学法人等の運営費交付金拡充等を求める要請書」(団体署名)にとりくみます。
 また、各組織の運営費交付金の現状をとりまとめ、「運営費交付金の削減の影響」の資料を改定するとともに、その実態などを発表するシンポジウムを2024年6月頃に開催するため、必要な準備をすすめます。

5.職場で働くすべての仲間を視野に入れた組織強化・拡大
 すべての組合員の「資源」をいかし全員参加型の職場活動すすめよう

 国公労連「組織強化拡大3か年計画(2021〜2023年度)」及び全労連「組織強化拡大4か年計画(2020〜2023年度)(第2次新4か年計画)」に基づき、職場で働くすべての労働者に積極的に声かけを行い、一人ひとりとの対話を旺盛にすすめ、組合員の拡大を図ります。
 すべての職場で組合員の「資源」をいかした「全員参加型」の運動を推進し、組合活動の「見える化」を図ります。労働組合が持っている組合員一人ひとりに寄り添うケアの感性をいかし、日常活動をつうじて相互のつながりを深め、職場・組合員から信頼と共感が得られる組合活動を推進します。各組織は日常活動をすすめるなかで、常に次世代育成を意識するとともに、労働運動を主体的すすめるリーダーを発見し、勧誘し、育てていくという「人づくり」のサイクルを実践し、対話と学習・教育活動を強化して体制の基礎固めを行います。
 国公産別地方組織(ブロック・県・地区国公)においては、体制の確立と機能の維持・強化を図り、地域における国公産別運動を牽引するとともに、学習や育成をはじめ単組のとりくみの補完やヨコのつながりをつくる組織的役割を果たします。また、職場活動の出発点である各級機関(支部・分会)の体制確立を図ります。

大幅賃上げで生活改善を実現しよう

 国公労連は24年春闘の賃金要求案を「要求組織アンケート」結果(12月4日現在)と全労連・国民春闘共闘の賃上げ要求額(案)を踏まえて月額2万7千円(6.6%)以上で提起し、職場で討議することとしています。
 物価高騰の収束する気配が見えないなか、2023年の食品値上げは3万2395品目にものぼると報道されており、記録的な値上げラッシュとなった昨年を大幅に超えることが明らかになっています。
 一方で、国家公務員の賃金は23年人勧で一定改善を勝ち取ったものの、記録的な物価上昇から生活改善できる水準には到達しておらず、とりわけ中高年層職員の改善はきわめて不十分なものでした。
 こうした状況を反映してアンケートでは、生活実感について、56.8%が「生活が苦しい」としており、昨年と比較して2ポイント程度、上昇する結果となっています。
 政府は、コストカット型経済からの転換をめざすとともに、物価高から国民生活を守る方策のひとつとして「賃上げしやすい環境を作る」ことをすすめています。その実現のためにも政府自ら国家公務員の賃金を大幅に引き上げ、民間労働者にも波及させていくべきです。
 24春闘で、少なくとも物価上昇を上回る賃上げを勝ちとらなければ、生活改善にはつながりません。すべての労働者が生活改善できる大幅賃上げを実現していくために、「全員参加型」の運動を追求し、官民の労働者が一体となって、賃上げの世論を高めていくことが求められています。
 全労連・国民春闘共闘は賃上げ要求額(案)を月3万円以上(定期昇給分含む)で提起しています。
 現在、国公労連の要求組織アンケートにおける賃上げ要求額は加重平均で2万5048円となっています。
 これらの状況をふまえて、国公労連は組合員をはじめ、多くのみなさんにとりくんでいただいたアンケート結果の加重平均額を重視するとともに、国公労働者が主体的に春闘をたたかい、官民一体での春闘を構築するうえでも全労連・国民春闘共闘の賃上げ要求額にあわせる必要性が高いと判断し「月額2万7千円以上(定期昇給分含むと3万円以上)」の賃上げ要求額で提案します。
 統一要求(案)は、今年も職場での討議時間を確保するため、第161回拡大中央委員会での議論も経たうえで1月12日に開催する中央闘争委員会で決定します。職場で大いに議論をすすめ、24年春闘への準備を職場のなかまと今からすすめていきましょう。

2024年国公労連統一要求書(案)抜粋・要約

1 賃金・昇格等の改善について

(1)国家公務員の賃金を月額27,000円(6.6%)以上(行政職(一))引き上げること。
(2)非常勤職員の時給を300円以上引き上げること。
(3)行政職(一)一般職高卒初任給(1級5号俸)を216,000円、一般職大卒初任給(1級25号俸)を245,600円に引き上げること。
(4)公務職場において時給1,500円未満の労働者をなくすこと。
(5)地域間格差と世代間格差を解消すること。
(6)「給与制度のアップデート」は国公労連の要求を十全に踏まえるとともに、協議を尽くし、合意を前提とすること。
(7)一時金の支給月数を引き上げ、改善部分をすべて期末手当にあてること。
(8)職員に自己負担を生じさせないよう通勤手当の支給要件・支給額を改善すること。

2 非常勤職員制度の抜本改善について
(1)非常勤職員制度を抜本的に見直し、雇用の安定、均等・均衡待遇などをはかる法制度を整備すること。
(2)恒常的・専門的・継続的業務に従事する非常勤職員は、常勤化・定員化すること。
(3)労働契約法の解雇権濫用法理や無期転換制度と同様の制度を整備すること。
(4)期間業務職員の更新に係る公募要件は、撤廃すること。
(5)職務給の原則、同一価値労働同一賃金を基本とする均等・均衡待遇を確立すること。
(6)休暇制度について、不合理な相違を解消して、常勤職員と同等の制度とすること。
(7)非常勤職員制度の適切な運用の在り方等の検討は、国公労連の要求を十全に踏まえるとともに、協議を尽くし、合意を前提とすること。

3 高齢期雇用・定年延長について

(1)定年年齢の引き上げに関わって、以下の事項を実現すること。
ア 60歳を超える職員の賃金については、職務・職責、蓄積された知識・能力・経験、生活維持にふさわしい水準とすること。
イ 60歳以前の賃金については、現行水準を維持・改善すること。
ウ 定年年齢の引き上げにあたって、安定的な公務・公共サービスを提供していくためにも必要な定員・定数を確保すること。
(2)高齢期雇用にかかる労働条件・勤務環境の整備について以下を実現すること。
ア 長時間過密労働の解消をはじめ、職員が健康で意欲をもって働き続けられる職場環境の整備に努めること。
イ 再任用職員の賃金水準を大幅に引き上げるとともに、常勤職員と同様の一時金並びに生活関連手当等を支給すること。また、定年退職前に残った年次有給休暇を再任用となっても使用できるようにすること。

4 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立について

(1)所定勤務時間を「1日7時間、週35時間」に短縮すること。また、窓口取扱時間を設定すること。
(2)客観的な勤務時間管理を徹底し、超過勤務の大幅な縮減と不払い残業を根絶すること。
(3)超過勤務の上限は月45時間、年間360時間とし、その徹底をはかること。
(4)連続勤務時間を短縮し、勤務間隔を11時間以上確保すること。
(5)インフルエンザなどによる学校保健安全法にもとづく出席停止に対応するための休暇を新設すること。
(6)国家公務員宿舎使用料を引き下げること。また、必要な公務員宿舎を確保すること。
(7)旅費法を改正し、赴任旅費を改善すること。当面、三社見積りの撤廃をはじめ、移転料等の申請手続きを簡素化し、移転料等を速やかに支給すること。
(8)職員一人あたりの執務スペースの拡充やバリアフリー設備の充実、相談しやすい環境など障がいのある職員も含めた働きやすい職場環境を整備すること。
(9)性的マイノリティの職員や行政利用者への偏見や差別を防ぐために必要な措置を講じること。
(10)同性パートナーを対象とした諸手当の支給や各種休暇制度、育児・介護をはじめとする両立支援制度などの利用を可能とすること。

5 民主的公務員制度と労働基本権の確立について

(1)憲法28条の原則に立った基本的人権として、ILO勧告など国際基準にそった労働基本権の全面的な回復を実現すること。
(2)内閣人事局を廃止するとともに、新たな人事行政機関を設置すること。
(3)幹部職員等の人事については、中立した第三者機関が担う制度とすること。
(4)政治と官の疑惑については、真相解明と再発防止策を確立する仕組みを整備すること。
(5)情報公開や公文書管理の運用にあたっては、第三者機関を設置すること。

6 定員管理等にについて

(1)総定員法を廃止するとともに、「定員合理化計画」を撤回し、必要な要員を確保すること。2025年度からの定員合理化目標数を策定・通知しないこと。
(2)障がい者および障がい者を支援する者について、必要な定員・予算を確保すること。
(3)行(二)職の不補充政策を撤廃すること。

7 両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画の推進について

(1)両立支援制度の拡充と制度利用しやすい職場環境を整備すること。
(2)男女平等・共同参画を推進し、ジェンダーギャップを解消すること。

8 健康・安全確保、母性保護等について

(1)パワーハラスメント防止にむけた人事院規則の徹底をするとともに、すべてのハラスメント根絶にむけて体制確保をはじめ具体的な対策を講じること。
(2)母性保護のために必要な措置を講じること。

9 独立行政法人制度等について

(1)事業の安定性と継続性を保障する財政的措置を講じること。
(2)労使自治による賃金・労働条件決定を保障し、政府は不当な介入を行わないこと。
(3)有期雇用職員の無期転換権や同一労働同一賃金ガイドラインに基づく均等待遇を保障する予算を確保すること。

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