国公労新聞|2025年12月10日合併号|第1655号

実質賃金は最低、大企業に富が集中
くらし改善する大幅賃上げを

 物価上昇に賃上げが追いつかず、労働者・国民の生活は日々苦しさが増しています。
 総務省が11月21日に発表した10月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が112.1と前年同月比で3.0%上昇し、50か月連続の上昇、実質賃金も10か月連続でマイナスとなっています。国民生活基礎調査では生活が「苦しい」と回答した世帯は約6割にものぼり、そのうち「大変苦しい」と回答した世帯は前年度から1.5ポイント上昇し28.0%となっています。みなさんにこの秋ご協力いただいた「要求組織アンケート」でも生活が苦しいと回答された方が増加しています(4面参照)。
 この反面、大企業や大資産家が潤っています。財務省が12月1日に発表した2025年7〜9月期の法人企業統計によると全産業(全企業規模)の経常利益は前年同期比19.2%増の33兆5656億円となっています。資本金10億円以上の大企業が保有する内部留保は581兆円(図表①)も積み上がり過去最大を更新し続けていますが、労働分配率は37.3%(図表②)と過去最低です。また、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、同5億円以上の「超富裕層」も2013年以降は一貫して増加傾向にあり、世帯数は165.3万世帯、資産総額は約469兆円と推計され、いずれも過去最高となっています。
 労働者が生み出した富がこのように一部に集中している状況を転換して、労働者・国民に再分配することが求められており、とりわけ大企業に社会的責任を果たさせる必要があります。

物価高から生活守る春闘

 政府は、11月28日に総合経済対策に基づく2025年度補正予算案を閣議決定しました。物価高対策として、自治体向けの支援金を拡充し「おこめ券」や電子クーポンなどに使えるようにしたり、2026年1〜3月の電気・ガス代の支援、子育て世帯に18歳以下の子ども1人あたり2万円を給付することなどが盛り込まれていますが、先の参議院選挙で争点となっていた消費税減税には触れず、政府自らが掲げていた最低賃金時給1500円の目標も取り下げてしまいました。
 11月25日には高市政権になってはじめての政労使会議が開かれ、高市首相は「『(これまでと)遜色ない水準の賃上げ』への協力を求めた」との報道がありますが、これまでと同水準であれば、生活苦を打開するような賃上げとなるか甚だ疑問です。
 こうした状況を踏まえれば、物価高騰から国民生活を守るために、労働組合の役割を十二分に発揮することが求められています。26年春闘では、近年、全労連・国民春闘共闘が勝ち取ってきた賃上げの流れを継続させ、すべての労働者の大幅賃上げ・底上げを実現しなければなりません。
 全労連・国民春闘共闘は3万3000円(10%)以上の賃上げ要求を、連合においては実質賃金を1%上昇軌道に乗せることを方針に掲げています。日本経団連の筒井会長も「来年の春季労使交渉は『さらなる定着』という方針を強く打ち出していく」と発言しており、政労使ともに賃上げの方向性は一致をしています。十分な賃上げとなるか否かは労働者・労働組合のたたかいにかかっています。賃上げの世論をいっそう高め、賃上げのうねりをさらに広げていくために一人ひとりが声をあげていく、このことが求められています。

いのち・くらし・憲法を守る正念場

 高市政権は、自民党が少数に転落した原因である「政治とカネ」問題は横におき、安保三文書改定の前倒し、憲法改正条文起草協議会の設置、「スパイ防止法」の制定など、これまでの大軍拡路線を加速させ、日本を「戦争する国」に変えようと躍起になっています。現在、「台湾有事」は「存立危機事態」に「なり得る」との発言が大きな波紋を呼んでいます。
 防衛費については、国内総生産(GDP)2%への引上げを前倒しし、2025年度補正予算案に盛り込みました。自民党では、その総額について2%を超す水準に引上げるかどうかについての議論がスタートしています。アメリカからは3.5%への引上げが要求されており、お隣の韓国は早期に3.5%に引上げると表明しています。
 膨れ上がる防衛費の財源確保をどうするのか明らかになっていませんが、国民のいのち・くらし・権利保障に必要な予算が削減される危険性が高まっています。先駆けて、高齢者の窓口負担を3割に引上げるなど、自民党と日本維新の会との連立合意である医療費4兆円削減をはじめとする社会保障の改悪や所得税の増税などが狙われています。さらには、公務・公共サービスが削減・縮小の対象となる可能性も否定できず、「日本」を守るための予算確保のために「国民」のいのち・くらしが脅かされる本末転倒な事態となることも想定されます。
 日本は歴史的岐路にたっていると言っても過言ではなく、26年春闘においても、いのち・くらしを守るために憲法を守りいかすことが大切になっています。

2026春闘の基本方針ポイント

①すべての労働者の賃上げと良質な雇用の確保をめざす
 今春闘こそ、生活改善できる大幅賃上げを

 円安の進行や、トランプ政権の高関税政策の影響が懸念されるもと、26年春闘こそは生活改善できる全労働者の大幅賃上げ・底上げの実現をめざします。また、社会保障改悪などの労働者・国民犠牲を許さず、生活と権利を守る国民春闘構築にむけて国公産別労働組合としての責務を果たしていきます。
 公務員賃金は約900万人の労働者に影響を及ぼします。そうしたことから、全労連の社会的な賃金闘争(最低賃金、公契約、公務員やケア労働者の賃上げ)に結集し、ケア労働者をはじめとする公務員賃金改善を柱に春闘を主体的にたたかいます。
 国民の生活苦の背景には、雇用破壊や失業、貧困と格差の拡大などをもたらしてきた新自由主義政策があります。また近年、「日本人ファースト」などと主張する勢力が増しています。このような排外主義が台頭する根底には新自由主義の矛盾があり、転換を政府に迫っていくことが必要です。その世論づくりとして、国公労働者の専門性を活かして作成する「税制改革の提言2026」を活用した学習を推進し、富の再配分機能強化、内部留保の取り崩しや課税により社会への還元をめざす「ビクトリーマップ」運動を全国で展開するなど、地域春闘の強化にむけて公務労働者側から官民一体の共同行動を推進していきます。
 独立行政法人等労働組合では、労働基本権を背景にした交渉機能を発揮し、大幅賃上げをはじめとする労働条件の改善をめざします。また、2026年春闘においても、全医労をはじめ多くの労働組合で要求実現にむけて実施されるストライキに、各ブロック・県国公から最大限結集します。
 高市首相は厚生労働大臣に労働時間規制の緩和(「働きたい改革」「働かせたい改革」)の検討を指示するとともに、裁量労働の導入など労働時間法制の解体の検討もすすめています。
 公務・民間問わず長時間労働が蔓延しており、必要なのは長時間労働の是正・解消です。全労連では、こうした政府の動きに対して「働く時間に関して本音を語る緊急アンケート」を実施しています。ぜひ、ご協力ください。国公労連は、健康確保、人間らしい生活の実現にむけて、賃上げとともに超過勤務縮減を図り、国公労連の基本要求である1日7時間労働制を追求していきます。

②公務労働者の賃金改善、均等待遇、権利確立など職場要求の前進めざす
 再任用・非常勤・地域間格差の是正へ

 私たちの賃金をはじめとする労働条件をめぐって、政府は「人事院勧告どおり2025年度の給与改定を行う」との方針のもと、12月9日に改正給与法案を第219回臨時国会に上程しました。しかし、人事院勧告が求める一時金の基準日である12月1日までの法案成立は叶わず、こうした不正常な事態が2年連続で発生し、ここ5年で3回も起きています。
 このように政府が多岐にわたる賃金改善を事実上「凍結」状態としていることは、労働基本権の代償措置である人事院勧告をも軽視する重大な権利侵害です。また、自治体や独立行政法人など約900万人の労働者の賃上げや労働条件の確定も遅延させており、政府・国会がいま一番求められている生活改善にブレーキをかけていることも極めて問題です。
 このように、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度がないがしろにされている、もはや十分に機能していない実態を踏まえれば、労働基本権の全面回復を本格的に議論していく必要があります。全労連公務部会が作成する学習資料などを活用して職場内での議論をすすめ、労働基本権回復にむけた世論を高めていきます。
 一方、人事院は2026年夏にむけて「新たな給与体系」などを検討するとしています。その過程では、国家公務員の特性である中立性・公正性・専門性を維持することなどを重視し、実効性のある交渉・協議を追求していきます。また、作成をすすめている「人事評価制度の抜本的な改善に向けた要求書」(仮称)を活用し、職場学習を推進していきます。
結集を強め
職場からの声を
 国公労連は、職場の仲間から積み上げた「月額2万8千円以上、時間額200円以上」の賃上げなどの統一要求を、職場討議を経たうえで、1月15日に開催する中央闘争委員会で決定します。確認された「2026年国公労連統一要求書」は、2月上旬に政府・人事院に提出し、その実現をめざします。
 職場段階においては、全労連が提起する統一闘争として、2月2日の週を「第1波全国統一行動週間」に設定し、すべての職場で所属長に要求を提出し、たたかいをスタートさせます。
 3月下旬に設定する最終回答日にむけて、職場からの上申闘争を強化し、2月27日までに統一要求書に関わる上申書を発出するよう要求します。
 また、3月5日に実施される春闘期最大規模の中央行動に全国の職場から仲間を送り出すとともに、26年春闘の最大のヤマ場である3月12日を「第2波全国統一行動日」に設定し、すべての職場で組合員が最大限結集する職場集会を開催して、政府・人事院の最終回答に向けて職場要求決議を採択・送付します。
 そして「給与制度のアップデート」などによる改悪分も跳ね返して、生活改善を実現するために、すべての組合員が自らの要求を掲げてストライキや宣伝行動など、地域で展開される行動(地域春闘)に積極的に参加します。
あらゆる格差の
解消にむけて
 再任用職員の俸給水準は1級が常勤職員の高卒初任給と同一、2級が一般職大卒初任給以下、3級が地方出先機関の係長級以下といったように極めて低水準におかれています。さらに、一時金は常勤職員の約半分の支給月数とされ、扶養手当も支給されず、年次休暇も繰越せません。
 非常勤職員は、住居手当・扶養手当・寒冷地手当などの生活関連手当が支給されず、昇給制度や月給制の導入も実現していません。
 「給与制度のアップデート」などによる賃金の地域・機関間格差、男女間の賃金格差も依然として、残されています。
 こうした課題を地元国会議員事務所での要請・懇談、街頭での宣伝行動などでアピールし、公務員賃金改善や格差解消への理解と共感を広げていきます。
 賃金の地域間格差については、春闘や「社会的な賃金闘争」への結集、全労連の「チェンジ全国一律最低賃金実現キャンペーン」と有機的に結んだとりくみを展開し、その解消をめざしていきます。
 また、非常勤職員の雇用の安定にむけて、全労連が提起する「非正規春闘」に結集し、非常勤職員の不当な雇止めを許さず、要求事項のアップデートをすすめるなど、安定雇用の実現にむけたとりくみを強化します。

③ 国民本位の行財政・司法の確立をめざす
 増員で国民のいのち・くらしを守ろう

 国家公務員の定員をめぐっては、職場・地域から国民のいのち・くらし、権利を守るために、増員をはじめとする公務・公共サービスの拡充を訴えつづけてきた結果、8年連続の純増を勝ち取っています。しかし、国家公務員志望者の減少、中途退職者の増加などもあって十分な人員配置ができず、とりわけ地方出先の職場まで増員が届いていません。人が足りず、長時間労働も蔓延しています。
 他方、政府は11月25日に内閣官房の行政改革推進本部事務局を「行政改革・効率化推進事務局」に改組し、その下に「租税特別措置・補助金見直し担当室」を設置しました。これは、自民党と日本維新の会が連立合意書にアメリカの「政府効率化省(DOGE)」を習った組織として「政府効率化局(仮称)」を創設する方針を盛り込んでいたものの具体化です。今後、この担当室において、租税特別措置や補助金を点検し、無駄を削減するとしています。それだけに留まらず、アメリカのような公務リストラがこの日本でも起こるのではないか、そうでなくとも増大している防衛費の財源確保として私たちの賃金・労働条件に手をつっこまれるのではないか、不安は拭えません。
 こうした情勢を踏まえれば、増員をはじめとする公務・公共サービス拡充への理解と世論をいっそう広げていかなければなりません。「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」を全労連が提起する「公共の再生」に向けた運動の柱に位置づけ、単組・ブロック・県国公と一体で運動を展開していきます。
 リーフ「国民のくらしを支える行政の拡充を」を活用した地元国会議員事務所への要請・懇談や街頭での宣伝行動などを実施し、あらためて国家公務職場・労働者の現状や職場と地域住民が共通して持っている公務・公共サービス拡充の要求を「見える化」することで、理解・共感を広げていきます。このとりくみのポイントは、各ブロック・県国公が地元国会議員事務所へ直接要請することです。
 請願署名の紹介議員は100名を超え、さらなる広がりを見せています。各ブロック・県国公において地元選出国会議員への要請を積み上げ、そうした行動を背景に3月6日の「議員会館一斉要請行動」にすべてのブロック・県国公の仲間が参加し、議員への働きかけを強めて通常国会での請願採択をめざします。

④国民の権利保障「ジェンダー平等」の実現
 憲法を守りいかす時

 日本国憲法の基本理念を破壊する改憲や大軍拡・大増税・社会保障改悪を断じて許さず、憲法と平和を守るとりくみをすすめます。
 憲法に基づく国民の権利保障を実現するため、「ふたたび戦争の奉仕者にならない」のスローガンのもと、憲法遵守擁護義務を負う国公労働者としての役割を発揮します。そのためにも、意欲と誇りを持って国民全体に奉仕できる国公労働者の労働条件と権利を守るとりくみを推進していきます。
 ジェンダー平等の後退の危機を迎えているなか、日本国憲法第13条の「幸福追求権」と第14条の「法の下の平等」に基づき、国民全体の奉仕者である公務員の役割発揮や公務・公共サービスの質の向上、安心して働くことができる公務職場をつくっていくためにも、ジェンダー平等の実現にむけたとりくみを推進していきます。
 男女の賃金格差解消、公務職場における働き方やハラスメントの防止、労働組合における男女共同参画など、国公労働者の労働条件と権利を守るすべてのとりくみにジェンダー平等の視点を重視します。職場からの学習をすすめ、「国公労連ジェンダー平等宣言(案)」職場採択運動を引き続きすすめます。
 昨今、デマとフェイクに基づく情報拡散によって排外主義、差別などが煽られています。いま必要なのは団結・連帯、多様性の追求、誰もが人間として尊重される社会の実現であり、労働組合としてその役割を果たしていきます。

⑤職場で働くすべての仲間を視野に入れた組織強化・拡大
 「対話と学びあい」の実践で仲間をふやそう

 定員純増や定員合理化目標数の半減など要求を前進させてきている一方で、新規施策による労働強化や当局の管理強化などにより、メンタルヘルス疾患の増大や職員同士のコミュニケーションがとれない状況がつくられ職場は極度に疲弊しています。このようななかでこそ、労働組合が持っている組合員一人ひとりに寄り添うケアの感性(集団的ケア)をいかし、世話役・日常活動をつうじて相互のつながりを深め、組合員同士で支え合い・励まし合い、ともに成長しながら、職場・組合員から信頼と共感が得られる組合活動を展開していきます。
 また、「これからの国公労働運動を考える全国会議」(2022年4月)で提起した「全員参加型の運動スタイル」をすべての職場で実践していきます。組合員一人ひとりが持つ「資源」(スキルや知識、人柄、属性、人脈、経験、熱意、想像力、時間などあらゆるものを含む)を組合員自身が相互に活用して、組合員が主体となる運動を展開し、組織の活性化を図っていきます。
 全労連が提起する「対話と学びあい」のもと、「対話」を重視し、「対話をすすめる5つのレシピ」を活用して、職場で働く仲間一人ひとりとの対話をすすめ、要求を組織し、その要求を実現するためにも労働組合への加入も含めて活動への参加を呼びかけます。あわせて、組合が勝ち取ってきた成果や組合の力をアピールする「成果チラシ」や各級機関の役員・組合員で制度学習を強めつつ国公共済会を組織拡大のツールとして活用し、対話を推進していきます。
 組織強化・拡大の基盤となる支部・分会体制の確立・強化にむけて、各単組本部と支部・分会間の対話・連携を強めます。春の組織拡大強化月間(4〜6月)では、「減らさず、増やす」を合い言葉に異動などに伴う脱退防止策を積極的に講じるとともに、各単組が設定する目標達成にむけて、正規、再任用、非常勤、役職定年者などすべての職員を対象とし、声かけの総当たりを展開します。
 また、要求実現にむけた地域での運動の要となるブロック・県・地区国公の体制構築・強化、組織的困難の克服にむけては、その実態を的確に掴み、単組本部の協力も得ながら、日常的なつながりを強め、体制・活動の強化に向けた議論を当該組織とも行っていきます。

26春闘 物価高こえる賃上げを官民一体で実現しよう

 国公労連は、26年春闘の賃金要求として、平均月額2万8千円(6.5%)以上の引上げを提起します。
 これは、要求組織アンケートの結果(12月1日現在)を重視したものです。生活実感の回答は、「かなり」と「やや」を合計した「苦しい」の割合が57.5%となりました。前回から1.7ポイント上昇し、物価上昇に伴う実質賃金の低下などの「負担感」が反映したものと推測できます。
 賃上げ要求額の回答は、加重平均で2万7811円となり、前回の2万7369円から僅かに上昇しました。
 その背景には、25年人事院勧告に基づく月例給の平均改定率が3.62%にとどまった一方で、民間の25年春闘の賃上げ相場の上昇率が5%台後半となるなど、官民較差を解消できない低水準の給与勧告への不満があるはずです。
 また、国家公務員の賃金の在り方をめぐっては、さまざまな課題が残されています。①本府省と地方支分部局の機関間格差の拡大、②年齢差別である高齢層の理不尽な賃金抑制、③同一労働同一賃金の原則に矛盾した地域手当による地域間格差、④再任用職員や非常勤職員の劣悪な勤務条件などです。26年春闘では、国公労連の賃金要求を「社会的な賃金闘争」の中心に据え、官民一体で運動を展開する必要があります。
 高市政権は、「物価上昇を上回る賃上げ」を謳いながらも、地域別最低賃金の引上げには消極的で、労働時間規制の緩和により労働市場の人手不足を解消しようとしています。高市首相の無謀な「働き方」が職場の常軌を逸した「働かせ方」につながっていることも指摘されました。
 一方で、人事院は「職務・職責を重視した新たな給与体系に移行する」ため、26年夏に「措置の骨格」を報告することなどを表明しています。能力・実績主義の強化を阻止するため、新たな要求の構築に向けた議論も急務となっています。
 26年春闘統一要求(案)では賃金のほか、労働時間・休暇制度や健康・安全確保、定員管理などの要求、非常勤職員の処遇改善、性的マイノリティをめぐる職場環境に関する要求書なども併せて提案します。この1年では、①官民較差の比較企業規模の引上げ、②前年を大幅に上回る中高齢層の賃上げ、③2年連続となる通勤手当の拡充など、少なくない成果を得てきました。「たたかいつづければ、いつかは実現する」という教訓のもと、さらに要求を強化していく好機です。
 これらの要求(案)は、12月20日の第165回拡大中央委員会で議論し、1月15日の中央闘争委員会で決定します。「対話と学びあい」や組合員の主体的・自覚的な参加による春闘を意識しながら、職場での活発な討議をお願いします。

2026年国公労連統一要求書(案)抜粋・要約

1 賃金・昇格等の改善
⑴国家公務員の賃金を平均月額28,000円(6.5%)以上(行政職(一))引き上げること。
⑵非常勤職員の時給を200円以上引き上げること。
⑶行政職(一)一般職高卒初任給(1級5号俸)を217,000円、一般職大卒初任給(1級25号俸)を249,000円に引き上げること。
⑷官民給与の比較方法の見直しで得られた原資は、あらゆる賃金格差を解消するため、すべての世代を対象とする俸給額の引上げに活用すること。
⑸地域手当による地域間格差を解消すること。当面は、支給地域の拡大や支給割合の改善を図り、地域間格差を縮小すること。また、将来的には地域手当を廃止すること。
⑹自宅での待機を指示された緊急参集要員等に支給するオンコール手当(仮称)を新設すること。
2 非常勤職員制度の抜本改善
⑴任用は、公正な人事管理を実現するための法制度を整備するとともに、労働契約法の解雇権濫用法理や無期転換制度に準じた措置を講じること。
⑵再採用や任期の更新に当たって、公募を必要とする原則を廃止すること。
⑶賃金は、行政職(一)1級5号俸を基礎として、学歴、経験年数、職務内容、職務経験等を考慮して決定すること。また、昇給制度を創設するとともに、月給制を導入すること。
⑷生活関連手当をはじめ、諸手当の支給を拡充すること。
⑸無給の休暇を有給とすること。また、すべての職員の年次休暇を採用の当初から取得できるようにすること。
3 国民本位の行財政・司法の確立
⑴2025年度以降の定員合理化目標数を撤廃するとともに、柔軟な定員管理を実現するなど、国家公務員を大幅に増員すること。
⑵適正な人的体制と人材を確保し、デジタル行財政改革に基づく定員合理化、人手不足を口実とした行政DXによる過剰な業務改革を強行しないこと。
4 定年延長をはじめとする高齢期雇用
⑴60歳を超える職員の賃金は、その減額措置を廃止し、従事する職務・職責、蓄積された知識・能力・経験など、高齢期にふさわしい生活が維持できる賃金水準とすること。
⑵60歳を超える職員の退職手当は、職員の希望により一部又は全部を前払いできるようにすること。
⑶高年齢者雇用安定法に準じた措置として、職員の希望による70歳までの就業機会を確保すること。
⑷暫定再任用のフルタイム勤務の希望が保障されるよう、必要な定員と級別定数を確保すること。
5 民主的公務員制度と労働基本権の確立
⑴日本国憲法第28条に則った基本的人権として、ILO勧告等の国際基準に沿った労働基本権の全面的な回復を実現すること。
⑵能力・実績主義の強化とそれに基づく給与制度の見直しを強行しないこと。
⑶人事評価制度は、中・長期的な人材育成と適材適所の人事配置に活用するため、抜本的に見直すこと。
⑷職員の内部告発権を保障するとともに、国民監視のもとで告発者を保護できるよう、不利益取扱いの禁止を徹底すること。
6 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立
⑴所定勤務時間を「1日7時間 週35時間」に短縮すること。
⑵客観的な勤務時間管理を徹底し、超過勤務を大幅に縮減するとともに、不払い残業を根絶すること。
⑶「つながらない権利」を保障するための勤務時間制度などを整備すること。
⑷各府省が窓口取扱時間を設定できるよう、勤務時間制度の改定やガイドラインの策定など、必要な措置を講じること。
⑸障がいのある職員への合理的配慮の徹底、当事者が利用しやすい相談体制の構築、職員の教育体制の拡充など、必要な職場環境を整備すること。
⑹旅費制度の運用に当たっては、職員の自己負担をすべて解消すること。とりわけ、転居費等の支給手続を簡素化し、速やかに支給すること。また、日帰り旅行に日当を支給し、職員の経済的負担を軽減すること。
7 両立支援制度の拡充、男女共同参画の推進、健康・安全確保
⑴子の看護等休暇を子ども一人につき10日に、保護者による看病や通院の同伴等の実態を踏まえ、適用対象年齢を中学校卒業前の子まで引き上げること。
⑵子に障がいがある場合や医療的ケアを必要とする場合、職員が「ひとり親家庭」の場合等を想定し、両立支援制度を拡充すること。
⑶すべてのハラスメントの根絶に向けて、実効性のある対策を講じること。カスタマーハラスメントは、当事者の特性等を踏まえた必要な対策を早急に措置すること。
8 性的マイノリティの職場環境の改善等
⑴任用のすべての過程(募集(試験)、採用、昇給、昇任、昇格、退職管理等)で性的指向・性自認に関する差別やハラスメントを防止・根絶すること。
⑵トランスジェンダーの特性に配慮したトイレ、更衣室等は、労働安全衛生の観点等を踏まえ、共用個室化等の施設整備を推進するとともに、柔軟な施設利用を可能とすること。
⑶性自認に基づく氏名や同性パートナーと同一の氏等、通称名(ビジネスネーム)の使用を可能とすること。
⑷同性パートナーを対象とした諸手当(扶養・住居・単身赴任・寒冷地)の支給、各種休暇・休業制度や妊娠・出産・育児・介護の両立支援制度の利用を可能とすること。

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