職場から大幅賃上げの声あげよう
総人件費削減の危険性ともなう政府「骨太方針」
政府は6月16日、経済財政運営の方向性を示す「骨太の方針」を閣議決定しました。「骨太の方針」は、新しい資本主義の加速として、「三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と『人への投資』の強化、GX、DX、スタートアップ推進や新たな産業構造への転換など、官と民が連携した投資の拡大と経済社会改革の実行」を掲げています。
「三位一体の労働市場改革」では、リ・スキリングなどによって成長分野への労働移動の円滑化を進めることにより賃金が上昇するとしています。しかし、ここで掲げる「日本型職務賃金」「ジョブ型雇用」「多様な社員」などの制度導入は、雇用の重層的な分断、差別化、不安定化を図るものであり、賃金の生計費要素や手当の削除、評価制度の強化と個別賃金管理の徹底により、賃上げにはつながりません。今後こうしたジョブ型の仕組みが公務員の給与制度に導入される危険性が懸念されます。
国家公務員については、「デジタル環境の整備、業務の見直し、時間や場所にとらわれない働き方の充実等により働き方改革を一層推進する」とし、人事院は「勤務時間の柔軟化」の措置案を検討していますが、これが「三位一体の労働市場改革」と軌道を一とした働くルールの改悪にならないよう追及を強める必要があります。
「官民連携」を掲げる「骨太の方針」は、従来の新自由主義政策の焼き直しにほかならず、「公的部門の産業化」や「行財政改革の徹底」、「デジタル改革」によって行政の減量化が狙われています。また、「予算・税制、規制・制度改革を総動員して、国が呼び水となる政策を集中的に展開する」と強調し、「単年度主義」を形骸化しようとしています。これは、会計年度毎に予算を作成し国会で審議する財政民主主義の根幹への攻撃にほかなりません。
このように「骨太の方針」が進める経済政策は、大企業には「官民連携」の名で、湯水のように税金を注ぎ込み、労働者には、「労働市場改革」の名で自己責任を押し付けるというものです。また政府は、防衛費を大幅に増額する反面、その予算を確保するために「歳出改革」を行うとしています。社会保障費や公務員の総人件費など国民生活充実のための予算が削減されることがないよう国民的運動を広げていかなければなりません。
こうした情勢のもと、いよいよ人事院勧告期と概算要求期のたたかいは山場を迎えます。
「骨太の方針」が、「『成長と分配の好循環』と『賃金と物価の好循環』の実現の鍵を握るのが賃上げであり、物価高に打ち勝つ持続的で構造的な賃上げを実現する」と謳っているのであれば、政府の責任で物価上昇を上回る賃上げを公務員から先導して行い、民間労働者へと波及させていかなければなりません。また、「給与制度のアップデート」に対しては、人件費の削減を許さず、不合理な賃金格差を解消・是正させ、全世代の職員の生活改善とモチベーションが向上するよう人事院を追及します。
この間、定員の一定の純増査定はあるものの、地方出先機関の人員不足は顕著です。国民のいのち・くらし、権利をまもるためにも大幅な増員が必要です。政府に対して総人件費抑制政策を改めさせ、総定員法廃止、定員合理化計画の中止・撤回を強く求めます。
官民一体でとりくんでいる人事院総裁宛ての「物価高騰から生活を守る大幅賃上げを求める署名」を職場ですすめ、夏季闘争最大の山場である7月26日の「中央行動(人事院包囲行動)」に全国の職場から多くの仲間の参加を呼びかけます。
築40年超で床板腐食、すぐ退去する青年
公務員宿舎の整備・拡充求め財務省交渉
国公労連は6月26日、公務員宿舎の確保・改善などを求めて財務省交渉を国公青年フォーラムと合同で実施し、9人が参加しました。
公務員宿舎は、戸数削減や入居要件の厳格化、老朽化による居住環境の悪化などが指摘されています。とりわけ入居要件「5類型」の運用は、短時間再任用職員をはじめ、宿舎を必要とする職員の実態とかけ離れています。建物や設備は、エアコン設置などの改良が不可欠です。
若年層の人材確保においても、経済的負担を軽減するための使用料の引下げや単身用の戸数拡充が急務です。勤務間インターバルなどの働き方改革では、宿舎の整備により「職住近接」を実現する必要があります。
参加者からは、「若者の職業選択には居住環境の充実も重要。宿舎の整備は国家公務員の志望者増加や離職抑制につながる」「築40年超で床板の腐食などがあり、貸与されても数か月で退去する若年層が毎年いる」「『原状回復ガイドライン』の運用が統一されず、経年劣化も含めて高額な補修費を請求された」「短時間再任用を理由に宿舎から退去し、賃貸住宅や長距離通勤を選択する職員がいる。再任用の給与水準ではモチベーションを維持できない」「職員の同性パートナーが入居できるようにすべき。事実婚の配偶者などとの差別的な取扱いは許されない」など、多岐にわたる要求を訴えました。
これらの要求に財務省は、「空室となった幹部用などをリノベーションして単身用の規格にしていく」「トイレや風呂、台所などの水回りを中心に今年度から改修し、若者にとっての『普通の設備』にしていく」「エアコン設置は徐々にならざるを得ないため、使用料の設定の在り方を検討している」「短時間再任用は、人事院が諸手当の改善などを検討しているならば、宿舎の改善に当たっても情報共有したい」などと回答しました。
最後に国公労連から、「宿舎の確保・改善に向けた継続的な努力を求める」と主張し交渉を終えました。
非正規公務員のオンラインミーティングⅡを開催
全労連公務部会は7月2日、「非正規公務員のオンラインミーティングⅡ」を開催しました。
本集会は2月に開催した第1回から引き続き、「もっと! ずっと! だから、みんなで!」をキーワードに、非正規公務員の雇用安定と処遇改善の課題を単産・地方の垣根を越えて話し合いました。
参加者は全体で約75人、国公労連からは非常勤組合員10人以上を含む約25人が参加しました。
国と自治体の 非常勤制度は つながっている
集会には、全労連非正規センターのほか、はむねっと(公務非正規女性全国ネットワーク)の渡辺百合子代表や、NPO法人働き方ASU-NETの川西玲子副代表理事からも連帯メッセージが寄せられました。国公労連からは「期間業務職員制度の経過と現在の課題について」を報告し、国土交通労組の仲間からは3年公募のために職場でハラスメントなどがあっても声をあげづらい実態が報告されました。
各単産・現場からのリレー報告では、更新時の公募や賃金・休暇の改善など非正規公務員の労働条件が国と自治体で連動し、郵政職場などともつながっている事例が報告されました。単産・地方の枠を超え連携して運動を進めることの重要性が改めて確認されました。
各単産・現場からのリレー報告では、更新時の公募や賃金・休暇の改善など非正規公務員の労働条件が国と自治体で連動し、郵政職場などともつながっている事例が報告されました。単産・地方の枠を超え連携して運動を進めることの重要性が改めて確認されました。
国公労連分散会で 議論
集会の後半では国公労連単独で分散会を実施し、人事院勧告期の当局追及に反映させるべく職場の実態を共有しました。参加者からは、日給月給制は月ごとの賃金の変動が大きいため月給制にしてほしいこと、暖房費が高騰し生計を圧迫しているため寒冷地手当の支給が必要であること、病気休暇は有給化だけでなく付与日数の改善も必要であることなど、切実な要求が語られました。
みんなの力で持続可能な社会を
国公女性交流集会に150人
国公女性協は6月17〜18日、第52回国公女性交流集会in越後湯沢をオンライン併用で開催しました。北は北海道から南は沖縄まで全国の仲間が150人参加しました。
今集会のメインテーマを「ひろげよう 連帯と共同の輪」、サブテーマを「生活者の視点で憲法をとらえ みんなでめざそう持続可能な社会を」としました。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、リアル参加をメインに位置づけながら3年ぶりの地方開催となり、分科会も行いました。
1日目の全体会の記念講演は、農民連事務局長の藤原麻子さんを講師にお招きし、国連も警告する戦後最大の食糧危機といわれる状況の中、今後日本の食と農をどうしていけばいいのか、そのために何が必要かを学ぶことができました。生活者の視点で、また憲法の視点でSDGsに目を向ける機会になりました。
全体会では、基調報告や現地案内動画、各単組紹介等も行いました。中でも新潟の魅力が存分に詰まった実行委員会渾身の現地案内動画は大変好評でした。
2日目の第1分科会は、青龍美和子弁護士から四谷姉妹の活動動画(QRコード参照)を視聴しながら憲法を楽しく学び、第2分科会は、農民連のとりくみを参考に職場・家庭でのジェンダー平等を考えることができました。また第3分科会のしゃべり場では参加者が単組の枠を超え大いに交流しました。
その後、「私たち自身が要求を掲げて、しなやかにしたたかにしぶとくたたかいぬこう。そのために共同の輪を広げよう」とのアピールを採択し、閉会しました。
集会にあわせてとりくんだ「ひと言メッセージ」に集まった組合員の思いを模造紙3枚のタペストリーにしました。皆さんからの思いを、7月5日に行った人事院交渉で人事院に届けました。
集会は4年ぶりに50人を超える参加者を会場に迎え、集まる喜びを感じる集会となりました。開催にあたり、各単組本部を中心に実行委員会を立ち上げ、企画・運営、物販、広報などに取り組むことができました。
人事院・内閣人事局・財務省と交渉
夏の国公青年セミナーひらく
国公青年フォーラムは6月25〜26日にかけて「夏の国公青年セミナー2023」を開催しました。現地参加18人とオンライン参加9人の計27人の青年が結集し、青年層組合員の要求実現に向けた学習と行動に取り組みました。
1日目には国公労連の笹ヶ瀬亮司調査政策部長を講師に「『給与制度のアップデート』をめぐる諸問題について」を標題に講演いただきました。また、国公青年フォーラム運営委員が講師となって人事院・内閣人事局・財務省の役割や翌日の交渉ポイントなどをそれぞれの担当が解説しました。
その後、現地参加者は各交渉グループに分かれ、要求書の確認や各々の職場における要求や実態などを報告し、翌日の交渉に向けた準備を行いました。オンライン参加者は交渉グループに伝えてほしい要求や実態を報告することで交流を深めつつ交渉班に思いを託しました。
2日目には各交渉グループに分かれて交渉を行い、人事院では「賃金や超過勤務等についての改善」、内閣人事局では「人手不足の解消や非常勤職員の無期転換など改善」、財務省では「宿舎の戸数確保や宿舎設備の改善」を要求しました。
セミナーのまとめで国公青年フォーラムの吉原太一運営委員長は「今回経験した交渉で大きな改善となる回答はあまりないように感じられたかもしれないが、こうした交渉の積み重ね上に今の職場環境がある。引き続き、現場で働く青年の声を当局に届けていきたい」と語り、セミナーを閉じました。