国公労新聞|2025年6月25日号|第1646号

全世代に物価高騰上回る賃上げを
政府・人事院に重点要求書を提出

 国公労連は6月13日、政府(内閣人事局)に「2026年度概算要求期重点要求書」、人事院には20日に「2025年人事院勧告に向けた重点要求書」を提出し、夏季闘争の交渉をスタートさせました。

 2025年春闘は、「物価上昇に負けない賃上げ」や実質賃金の継続的な上昇などの世論と運動が高揚する情勢のもと、大企業を中心に概ね5%超の賃上げが維持されると報道されていますが、世代・企業規模・業種間などの格差拡大と二極化も指摘されています。国家公務員には、そうした不安定要素を払拭し、長期化する物価上昇と実質賃金の低下傾向に対峙できる持続可能性のある賃金体系を構築する必要があります。
 6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」では、「賃上げを起点とした成長型経済の実現」などが掲げられています。約900万人の労働者に影響する国家公務員の賃金は、それを先導するように早急かつ大幅に改善されるべきです。

あらゆる格差の解消が課題

 2024年の「給与制度のアップデート」は、主に若年層や本府省の職員、成績優秀者という一部の属性に限定した賃金改善にとどまりました。さまざまな職員の不公平感を助長し、「給与の満足度」やモチベーションの低下を招き、「人材の確保」を阻害しかねません。
 とりわけ、中高齢層の賃上げは顕著に抑制されつづけ、地域手当でも最大20%の格差が解消されていません。男女の賃金格差や非常勤・再任用職員の差別的な取扱いなど、2025年の賃金改定では、民間の春闘相場に見合った官民較差の解消のほか、あらゆる格差の解消が重要な課題となっています。

比較企業規模の引上げを

 2024年の改正給与法案などが審議された第216回臨時国会では、官民較差の比較企業規模の引上げや賃金の地域間格差の縮小などが議論され、政府・人事院は、「(改善に向けて)必要な措置を検討する」旨の答弁をしました。その有言実行が求められています。
 2024年の賃金改定は、厚生労働省が公表した民間主要企業の賃金上昇率5.33%と1.7ポイント程度の乖離があり、官民較差が解消されていません。結果として、「国家公務員は賃金が上昇しない職業」というイメージが蔓延し、「若者の公務員離れ」に拍車をかけています。
 その要因の1つには、比較企業規模の在り方にあることは明白です。これまで要求してきたとおり、50人以上から1000人以上に改善することが不可欠です。
 3月に公表された人事院の「人事行政諮問会議 最終提言」では、比較企業規模について、「少なくとも従前の100人以上に戻すべき」とする一方で、「政策の企画立案や高度な調整等に関わる本府省職員については、…少なくとも1000人以上の企業と比較すべき」とされています。

 国の行政機関は、本府省や地方支分部局による全国ネットワークを構築し、各地域でくまなく公務・公共サービスを提供しており、広域の人事異動も余儀なくされています。いずれも全国的に事業を展開する大企業に相当する組織であり、労働条件の機関間格差は、職員の不公平感を助長し、組織のパフォーマンスを低下させかねません。地方支分部局も含めて、比較企業規模を1000人以上として官民較差を解消すべきです。

全員参加型の運動を

 非正規公務員の労働条件について、6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」などでは、「働き方改革」「女性の活躍」を推進するため、「職務経験等を考慮した適切な給与水準の決定や、能力実証を経た会計年度任用職員の常勤化の普及促進を図る」とされました。国家公務員である非常勤職員にも措置すべき施策であり、政府・人事院には早期の実現を求めていく必要があります。
 このほか、夏季の重点要求は、①定年引上げなどを踏まえた高齢層・再任用職員の賃金改善、②地域間格差の解消につながる地域手当の見直し、③ワークライフバランスの実現につながる通勤手当の改善(マイカー通勤)、④物価上昇に対応した寒冷地手当をはじめとする諸手当の改善、⑤職場実態に見合った大幅増員と長時間労働の是正、⑥すべてのハラスメントの根絶に向けた実効性ある対策の実現など、多岐にわたっています。
 これらを実現するためには、「全員参加型の運動スタイル」を意識した職場活動の活性化が不可欠です。6月30日の週は第2波全国統一行動として、職場集会の開催と職場要求決議の採択などを提起しています。すべての組合員に積極的な参加を呼びかけます。

自分の生き方を切り拓いて
第54回国公女性交流集会ひらく

 国公女性協は6月14〜15日、第54回国公女性交流集会を長野市内で開催し、オンライン参加を含め100人を超える全国の仲間たちが集いました。
 1日目の記念講演では、講師の渡部容子弁護士が「自分の生き方を切り拓くのは自分」をテーマに、ジェンダーバイアスにとらわれず個人を尊重し合うことの重要性を語り、「私が心地よい・楽しい・幸せ」を自ら選び取っていこうという呼びかけに、参加者らはパワーと活力を得ました。また、NHK連続テレビ小説『虎に翼』のセリフを交えながら憲法の重要性が説かれるとともに、職場のハラスメント被害をなくすため、ハラスメントが「人権侵害」という認識を持つことや、ハラスメントが起きる背景(長時間過密労働、ジェンダーバイアスなど)を学ぶことの大切さなどが語られました。
 「戦争遺跡は平和の語り部 〜松代大本営の保存運動と平和祈念館の建設〜」と題したミニ学習会では、松代大本営記念館の北原高子さんを講師に、敗戦間際の大本営の移転計画と工事に携わった人々の状況や、戦争遺跡を通して戦争の実相を語り継いでいくことの重要性を学びました。
 2日目は、「渡部弁護士と語り合おう」、「長野県のジェンダーのとりくみに学ぼう」、「働く女性のためのSRHRとジェンダー講座」、フィールドワーク「松代大本営地下壕見学〜歴史の現場から平和と人権を考える〜」の4つの分科会で、学び、語り、一人ひとりの思いや意見を共有し合いました。
 参加者からは、「単組を超えた交流を深めることができた」「男女の役割に対する無意識の思い込みが自分にもあることに気付いた」「松代大本営が沖縄戦と関係があることに驚いた」などの感想が寄せられました。

【全国税が報告集会】不当判定に抗議

 東京国税局による全国税組合員の原口朋弥さんに対する不当な分限免職処分(以下、「本件処分」という)について、全国税と国公労連は6月4日、人事院が3月に処分を承認する判定を出したことに抗議する報告集会を都内で開催しました。集会にはオンラインを含め100人以上の支援者らが参加しました。
 集会の冒頭、国公労連の浅野龍一委員長は、「人事院の判定は、結論ありきの論理矛盾を露呈しており、到底納得できない。このような判定がまかり通れば、職員は安心して働き続けることができない」と述べました。
 経過を報告した加藤健次弁護士は、中立的な第三者機関である人事院に対し東京国税局考査課が本件処分について事前に相談し、人事院から「問題なし」とのお墨付きを得ていたことや、判定が「免職時判断事項に相当する考え方は考査課には十分認識されていなかった」と認定している点に触れ、本件処分の手続き過程も不公正であり、取り消されるべきものだと強調しました。
 原口さんは、「このたたかいで多くの仲間に出会うことができた。今後も障がい者の権利を守るたたかいを続けていく。裁判闘争については、期限までじっくり考えたい」と述べました。
 全国税の林登美夫委員長は閉会あいさつで、「障がい者差別が根強い職場を変えていくために、全国税はこれからもたたかい続ける」と力強く決意を述べ、集会を締めくくりました。

7月20日 参議院選挙に行こう
物価高から暮らし守る政治へ

物価高・コメ高騰で生活悪化
ミサイルより農水予算の拡充を

 激しい物価高騰から暮らしを守る政治に転換することが必要です。とりわけ、コメの高騰が追い打ちをかける食料品値上げラッシュが深刻で、消費者物価指数(図表①)を見ても、食料品の指数が全体の指数より大きく増加し続けています。

 図表①の左のグラフは、東京における所得階層において、最も低所得の階層と、最も高所得の階層のエンゲル係数(世帯の消費支出に占める食料費の割合)を見たものです。低所得層と平均世帯のエンゲル係数が増える中、高所得層は2023年から2024年にかけて減少しており、食料品の高騰においても格差が拡大しています。

 図表②にあるようにコメの高騰は政治がもたらしたものです。1980年度の農水予算は防衛費より1兆円も上回っていました。ところが農水予算を削減して防衛費を増やしました。政府は農家に減反を押しつけ、所得補償制度を全廃。コメ農家は2000年の175万戸から53万戸まで3分の1以下に激減し、食料自給率が38%に減少してしまったのです。

30年間で最低の実質賃金
物価高に負けない賃上げへ

 日本の賃下げが止まりません。27年間に渡り実質賃金が下がっているのはOECD加盟38か国の中で日本だけです(図表③)。しかも2024年の実質賃金はここ30年間(統計で遡れる30年間)で過去最低。2025年に入っても実質賃金は1月から4月まで4か月連続で前年比マイナスを継続中です。日本はパート労働者の比率(非正規雇用比率)がOECDの中で高いのに最低賃金は低いため低賃金の悪循環となっています。全国一律による最低賃金の大幅引上げによる賃金の底上げが必要です。

 最低賃金の大幅引上げを主張すると、中小企業が倒産してしまうという反論があります。大企業は中小企業に対して「買いたたき」など不公正な取引を行うなどで図表④にあるように、自公政権の12年で230.5兆円も内部留保を増やしています。莫大な大企業の内部留保を、中小企業支援に回して、賃上げを実現することが政治に求められています。

 大企業のシンクタンクである明治安田総研が「失われた賃金は180兆円、内部留保増分の約半分〜所定内給与は月額9万円増、ユーロ圏以上の経済成長だった可能性」とする調査を発表。内部留保を賃金に回せば「月額9万円増」「実質GDP年平均成長率は1.5%とユーロ圏(1.2%)を上回る。賃金の出し惜しみが日本の成長を妨げた可能性が高い」としています。

消費税減税・応能負担で生活改善
国民のための行政体制の拡充を

 物価高で生活悪化が広がり消費税減税が急がれています。図表⑤にあるように、消費税は増税され、法人税は減税されてきました。とりわけ、大企業の法人税負担は優遇税制のもと3分の1にまで減っています。史上最高の経常利益を更新し続けている大企業には、しっかり法人税を負担してもらって、庶民に対しては消費税減税を行うことが政治の役割です。

 また、図表⑥にあるように富裕層の金融資産がこの12年で2.5倍増です。同時期に生活苦での自殺者数は1.5倍増になり、貧困と格差が拡大しています。年間の所得が1億円を超えると所得税の負担が減っていく「1億円の壁」が放置されており、政治の責任で応能負担の所得税にして貧困と格差を解消することが必要です。

 政治の役割は、税と社会保障によって所得再分配を行い、誰もが人間らしく安心して暮らせる社会づくりです。ところが日本の貧困率はG7でワースト(直近2021年のOECD統計)。図表⑦にあるように「共働き・子ども2人で平均年収の7割の低所得世帯の税・社会保険純負担率」は、日本は8.5%で、デンマークと比べて21.8ポイントも重くなっています。所得再分配を機能させるために、消費税減税と大企業・富裕層の応分負担による社会保障の拡充が急務です。

 加えてOECD最低の公務員人件費を増やすなど国民の暮らしを支える行政体制を拡充することが必要です(図表⑧)。

25年4月からの制度改定と今後の課題【最終回】

【第五回】地域手当の賃金格差解消を

 「給与制度のアップデート」による地域手当の見直しでは、①市町村単位の級地区分を都道府県単位に広域化、②中核的な市(都道府県庁所在地と人口20万人以上の都市)は級地区分を個別に設定、③級地区分を7区分から5区分に再編成し、支給割合を4%から20%の等間隔に設定、④2年間とされていた異動保障を3年目にも60%の割合で支給することなどが実施されました。
 4月から4年間で段階的に実施されている地域手当の見直しは、一部の地域で支給割合の引下げを伴っています。地域手当は俸給額に準じた賃金であり、「賃下げ」の悪影響が甚大です。
 2006年に導入された地域手当は、「地域における民間の賃金水準を基礎とし、当該地域における物価等を考慮して」支給割合を定めています。同一労働同一賃金に違反し、職務給原則を形骸化させているばかりでなく、全国均一・統一の行政サービスを提供する国の行政機関の機能を否定することにもつながっています。
 2024年度の地域別最低賃金は、最高の東京都と最低の秋田県の格差が212円(18.2%)です。東京都特別区に支給される地域手当の支給割合が20%であることと無関係とはいえません。相互に悪循環しながら、地域の低賃金構造を固定化し、賃金格差をさらに拡大させてきました。
 人材確保に当たっての地域間格差も深刻です。24年度の地域別最低賃金の改定に当たっては、中央最低賃金審議会の目安を大幅に上回る答申が相次ぎました。隣接する都道府県との賃金格差を解消し、人材流出を防止する観点などが重視されましたが、「最下位脱出のチキンレース」などとも揶揄され、賃金決定の在り方として極めて不健全なものとなり、人材確保と賃金の地域間格差の矛盾が露呈しました。
 物流網や情報網が発達した近年では、消費者物価の地域ごとの格差は縮小し、社会インフラの発達や生活様式の均一化に伴う生計費水準のフラット化がすすんでいます。賃金の地域間格差の是正は、政府の「骨太の方針」などにも明記されており、国家公務員の地域手当の見直しは、そうした潮流を先導すべきものでした。
 全国で行政サービスを提供する国の行政機関の特性を踏まえれば、地域手当が支給されていない地域や生産年齢人口が急激に減少する地域であっても、人材流出を招くことなく、安定的に新規採用などを確保できる賃金体系が不可欠です。人事院も24年の「職員の給与に関する報告」で、「最大20%という支給割合の差が過大ではないかなどの指摘があり、支給割合の差の在り方について今後とも検討していく」と言及せざるを得ない実態に至っています。
 今後の地域手当の在り方は、賃金の地域間格差の合理性などをゼロベースで検証し、「将来的には廃止を実現し、その原資は全世代を対象とする俸給額の引上げに活用すること」という国公労連の要求の実現に向けて、不断に検討することを政府・人事院に要求していく必要があります。

【 税制改革の提言】あるべき税制を考える

【第二回】個人所得課税の見直しを

 前回は、国公労連の「税制改革の提言」の歴史を紹介し、提言が憲法第14条(法の下の平等)、第25条(生存権、国の社会的使命)を踏まえて「応能負担の原則」を根幹としていることを述べました。今回は、個人所得課税についての提言内容を紹介します。

課税最低限の改善を

 応能負担原則において、健康で文化的な最低限度の生活を営むための最低生活費には公租・公課を課してはいけません。課税におけるナショナル・ミニマムの確立が必要であり、課税最低限の水準が問題になります。
 個人所得税では近年、いわゆる「103万円の壁」についての議論が活発になっています。昨年末の税制改正大綱でその解消が盛り込まれ、今年の通常国会の審議を経て税制改正法案が成立しました。結果的に、大綱での案(基礎控除・給与所得控除を各10万円引上げ等)からさらに低所得層の基礎控除を上乗せする改正内容となり、収入160万円以下であれば所得税負担は生じないこととなりました。ただし、住民税については基礎控除の改正がなく、110万円を超えると税負担が生じるため、「160万円の壁」になったというより「110万円の壁」になったといえるかもしれません。
 いずれにせよ、国公労連は従来、「103万円の壁」に象徴される課税最低限の水準があまりに低いことについて問題指摘を行ってきました。課税最低限の額は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の人的控除の合計額で生活保護基準を超えるレベルに設定すべきです。具体的な水準としては、当面、基礎控除180万円、配偶者、扶養控除をそれぞれ70万円に引き上げた上で、誰もが生活費非課税とする趣旨から、基礎控除の所得制限は廃止すべきだと考えます。

総合課税化が不可欠

 戦後、所得税の最高税率は、74〜84年の75%をピークに、消費税の導入直前の88年に60%に引き下げられ、99年には37%まで下げられました。06年度に所得税から地方住民税への税源移譲に伴う税制改正で、個人住民税が最高税率13%から一律10%とされました。その一方、国・地方を合わせた最高税率の合計水準を従来通りに維持するため、所得税の最高税率は40%(15年分からは45%)に引き上げられました。

高額所得層に対する所得税の負担軽減は、最高税率の引下げと税率の刻みの簡素化によるだけではありません。次々と分離課税が持ち込まれたことで、総合累進課税の構造に機能劣化が起きています。分離課税の対象とされたのは、利子や配当、株式・土地などの譲渡に係る資産所得でした。その総合課税化の方向は断たれたままです。

 今や消費税収に追い抜かれた所得税を改めて基幹税として立て直し、財源調達機能と所得再分配機能を回復するためには、最高税率を引き上げた上で金融所得を含む全ての資産所得の分離課税を廃し、総合課税化を進めることが不可欠です。

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