23人事院勧告の取扱い 〈政府と中間交渉〉
すべての職員の生活改善を
国公労連は10月5日、「2023年人事院勧告の取扱い等に関する要求書」に基づく政府との中間交渉(2回目)を実施しました。冒頭、九後委員長から現時点での検討状況を質しましたが、政府はこれまでの交渉での回答や基本姿勢に終始しました。国公労連は政府からの回答を受け、あらためて、①すべての職員が生活改善できる賃上げ、②増員などによる長時間労働の是正、③両立支援制度等の充実に向け、通勤手当、休暇等の改善④非常勤職員の適切な処遇確保、⑤定年引き上げなど誰もが安心して働ける高齢期雇用の実現などの課題について政府を追及しました。
8都府県221か所で 最低賃金を下回る
賃金については、初任給の改善がはかられようとしていますが、それでも都市部を中心として8都府県で高卒初任給が地域別最低賃金を下回る市町村が存在します。具体的には、国の出先機関を多く設置しているハローワーク、労働基準監督署、法務局、税務署、国土交通省の各官署、さらに裁判所をくわえた職場で、8都府県の市町村に延べ221か所存在することが判明しています(国公労連調べ)。こうした実態は、新規採用者に不合理な給与水準を押しつけるばかりでなく、そうした職場への赴任を回避するなどの措置に伴い適正な人事配置が阻害されるなど、行政運営に少なくない支障を及ぼしています。物価の高騰・高止まりに苦しむ職員の生活を改善するためにも、初任給はもとより、再任用職員の処遇の抜本改善など、すべての職員の大幅賃上げが必要です。
定員削減の 即時中止を
長時間労働の是正について、本年の職員の勤務時間の改定に関する勧告等に沿って、勤務時間のさらなる柔軟化がすすめられようとしています。しかし、過剰な定員削減により脆弱化した職場体制では、「働き方の柔軟化」は機能しない可能性が高く、長時間労働の是正にむけても、職場の人的体制の確保は待ったなしの課題です。現在の定員合理化目標数を前提とした定員の再配置は、適正な人的体制を確保できないまま業務の肥大化を招いています。あらためて、2025年度からの定員合理化計画の策定はもとより、2024年度の定員合理化の即時中止も求められます。
非常勤職員の 給与改善を
非常勤職員の処遇改善については、初任給などの給与改善がはかられることから、人事院の「指針」とともに、政府の「申合せ」に沿って常勤職員と同様に改善されることが基本となります。ただ、給与法では「予算の範囲内で、給与を支給する」とされていることから、各府省において4月に遡って給与改善できる予算を確保させることが重要です。
交渉の最後に国公労連は、多くの国家公務員労働者が厳しい状況に置かれているもと、具体的な回答がなかったことに不満を述べ、最終交渉では要求実現にむけた回答を行うよう求めました。なお、人勧の取扱いは10月20日に臨時国会が開会された後、早々に決定されることが想定されています。
職務評価見直し 昇格改善を
他方、国公労連はこの秋、物価高騰に苦しむ組合員の生活改善にむけて、昇格改善の課題にもとりくんでいます。9月28日に人事院に対して「2024年度昇格改善要求書」を提出し、職務評価の見直し、初任給基準の抜本改善、定年延長に係る定数確保等を求めました。今後、各単組・ブロック国公をはじめ各レベルで交渉を強めていきます。「全国統一行動週間」(10月30日の週)のとりくみをはじめ、職場・地域から秋季年末闘争での要求実現と組織強化・拡大にむけて奮闘していきましょう。
対話で主体性引き出そう
京都国公「仲間づくり講座」ひらく
京都国公は9月30日、16人の参加で「仲間づくり講座」を開催しました。講座では全員参加型の活動にむけ相手の主体性を引き出す対話の手法(コーチング)について、国公労連・井上伸書記を講師に2人1組で実際に対話を行いながら学びました。以下、参加者の感想の一部を紹介します。
〇一方的に話すのでは組合員の主体性を引き出せないことが理解できた。きょう学んだステップを踏んで対話していきたい。
〇相手から聞き出してもらって話せたことで自分の課題をどう解決していくか、いろいろな手段を考えることができた。
〇普段、自分ひとりで考えてやっていても、それでは元気が出なかった。今回の対話で、自分の課題とその課題解決にむけ一緒に共有し考えをめぐらせることで元気になっていけるのだと思った。
〇会議で一方的に役員が話し、あまり議論することもなく、飲み会で中途半端に対話するだけでは深まることがあまりなかった。今回学んだステップを踏んで対話をすると、お互いに深まり、いいアイディアが出て、つながりも強くなることを実感できとても良かった。
〇定員削減と能力・実績主義強化で職場では対話が困難になり、隣の人が何を考えているのか分からないような状況で、若い世代の離職が増えている。こうした中、対話をすすめることが年々重要になっているので、きょうの学びを広げる必要がある。
〇組合の分散会などに参加してきたが、今日の方が対話をすすめる際のステップが明確で、普段思っていることも話しやすく意見を活発に出せ、自分も元気になれると実感した。この対話を広げれば、みんなが元気になっていけると思った。
楽しい活動で職場の改善を
女性協 秋の全国代表委員会ひらく
国公労連女性協は9月23〜24日、都内で「2023年秋の全国代表委員会」を集合とオンラインの併用で開催しました。8単組、1ブロック、6県国公に加え、オブザーバーと女性協スタッフを含め31人が参加し、2023年度方針と統一要求、秋季年末闘争方針を確立しました。昨年に引き続きオンラインを併用しましたが、集合参加者からは「集まって話すことの大切さを再認識できた」という声も多く聞かれました。
初日は班別分散会を実施し、「ジェンダー平等」と「女性協の統一要求書」の2つを中心に討論しました。具体的な要求については、増員、介護休暇の改善、定年延長にかかわり、安心して働き続けられる環境の整備等が挙げられました。また、女性協の要求は子育て支援が中心になりがちだが、子育てにかかわらない女性職員との分断を生まないよう、議論は丁寧に進めていくことが重要という指摘もなされました。
2日目の全体討論では、職場実態報告とともに組織課題の意見交換も行いました。女性部や女性協役員のなり手がおらず、「女性部だけ脱退したい」という声や休止を検討している実態のほか、「このままでは女性協の活動を身に着けた組合員が不在となり、県の人事院交渉が実施できなくなる日も近い」といった切実な報告があった一方、「組織をなくすことは簡単、存在だけで意義がある。学習を大切に、やれる範囲でやっていく姿勢、組織率を落とさない努力、新規採用者を必ず加入させるんだという強い気持ちを持ってとりくみたい」との発言もあり、参加者の気持ちを引き締めてくれました。
しゃべれば・食べれば・集まればの「3ば」で
職場実態では、全医労から124支部で実施したストライキの報告や、女性職員の少ない全通信の職場においてトイレや更衣室の改善を進めていること、全厚生からはオンライン会議でCO(コミュニティ・オーガナイジング)を学び、活動のボトムアップを目指していることなどが紹介されました。また、育児休暇を取得した国土交通労組の男性組合員は、「育児参加休暇に年次休暇を組み合わせて1か月、子育てに参加した。育児休暇中の収入減と職場に対する人員の手立てがなされないことが気になり、長期の育休取得には踏み切れなかった。制度上の改善とともに、取得しやすい雰囲気の醸成も必要」と自身の体験を語ってくれました。
根本議長から「しゃべれば・食べれば・集まればの『3ば』を大切に、女性は何をしたら楽しく活動できるかを考えながら1年やっていきたい。また、制度があっても気兼ねなく行使できない職場ではダメ。余裕のある職場体制を目指していく」というまとめがなされました。最後に、女性協議長を続投する根本さん(全司法)は、「新体制の女性協がスタートした。女性をとりまく情勢を認識し、男女ともに働きやすい環境をめざしていく」とあいさつし、秋の全国代表委員会を終えました。
吉原太一中執が全労連青年部長に
全労連青年部は9月30日から二日間、第36回定期大会を開催しました。大会では物価高騰などで生活苦に陥っている青年労働者を組織化するため、積極的に対話を進めようと呼びかけられました。新役員として新たに国公労連の吉原太一中央執行委員が全労連青年部長に選出されました。
実効性を期待できない在宅勤務等手当
本年8月の人事院勧告では、2022年に表明された「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」(給与制度のアップデート)について、「①多様性ある人材の公務への誘致とその能力発揮・活躍の促進、②チームや組織全体での体制の円滑な機能、③国民の理解や信頼の観点を調和させつつ、…より職務や個人の能力・実績に応じたものにシフトする」などの認識のもと、「令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格案」が報告されました。
これまでの要求の実現を期待できるものもありますが、政府の新自由主義的な政策により変質した給与制度を是正し、あくまで労働者本位の「アップデート」を追求していく必要があります。
いまだ抽象的な報告にとどまっていますが、今後の課題と論点などについて、連載形式で紹介します。第1回は、先行して2024年4月の新設が勧告された在宅勤務等手当です。
コロナ禍を契機として、国の行政機関にもテレワークが急速かつ緊急避難的に導入され、主に職員の自宅が利用されています。これに伴い、①光熱費(照度・温度の保持)、②通信費や情報セキュリティ対策などの導入・運用経費、③建物賃料(自宅を国に貸与)などの職員の経済的負担が過重となっています。
人事院の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」は本年3月、「テレワークに係る費用については、…使用者である国が負担することが望ましい」と提言しました。本年の民間給与実態調査では、同種手当を支給する民間の割合は30.8%でしたが、とりわけ光熱・水道費などの経済的負担の軽減が重視されました。しかしながら、本年の給与勧告では、月額3000円の定額(翌月分概算払い)という低水準にとどまりました。3か月以上継続して1か月当たり10日を超えてテレワークを利用することが支給要件であり、通勤手当を減額する措置も講じられます。
現在のテレワークは、依然として解消すべき課題がありますが、さまざまな利用の在り方が模索され、実効性を獲得しつつあります。前述の支給要件では、短期的又は一時的なテレワークの利用が躊躇されるため、「柔軟な働き方」の機能を喪失させかねません。また、自然災害などの出勤困難事由では、職務命令によるテレワークで経済的負担が強制されます。
国公労連は、1日目から日額を支給すること(前月分精算払い)などを要求してきました。近年は、夏季に猛暑となりますが、電気料金の高騰とも相まって、自宅での冷房使用を躊躇すれば、適正な労働衛生環境が確保されず、健康被害にも発展しかねません。民間の支給水準は、テレワークの普及から相当の期間を経過していないため、適正な相場が形成されておらず、経済的負担の実態などを反映していないおそれもあります。
自宅をテレワークの場所として整備・維持するための経費など、職員の経済的負担に見合った補償を追求していく必要があります。