大企業・富裕層は史上最高のもうけ
労働者は史上最悪33万円の賃下げ
暮らし最優先の政治へ
物価高騰で「経済的ゆとりない」が63%
実質賃金はこの12年間で33万円マイナス
自民党と公明党がつくる政権は2012年12月末に民主党政権に変わって発足し、現在まで12年間続いています。
この12年間で大企業の内部留保は205.8兆円も増え、1.6倍にふくらみました(図表①)。
一方、私たちの暮らし向きは、「経済的ゆとりと見通し持てない」が1・4倍に増え63・2%と過去最多になり、生活悪化が激しくなっています。このことは、直近の国際比較においても、日本の貧困率がG7でワーストになっていることにも示されています(図表②)。
こうした私たちの生活悪化のいちばんの原因は、物価高騰にまったく追いつかず、主要国の中で日本だけ下がり続けている実質賃金の現状にあります(図表③)。他国もコロナによるパンデミックのもと2022年に実質賃金が大幅に下がりましたが、2023年には再び賃上げになっています。ところが日本だけが賃下げが続き、直近の2023年の実質賃金は過去最低になっているのです。
実質賃金を金額で見ると、自公政権の12年間で32万8千円もマイナスになっています(図表④)。
どの国においても主に労働者の賃上げによって内需を拡大し経済を回しています。ところが、先進主要国で日本だけ賃下げが続いているので、日本経済は世界2位から34位に転落してしまいました(図表⑤)。
賃下げと貧困拡大で日本経済は衰退
大企業・富裕層優先の政治を転換しよう
実質賃金が史上最低となる一方で、大企業は内部留保だけでなく、経常利益・配当金・役員報酬を史上最高にしています。こうした大企業の利益は史上最高を更新し続けているのに、大企業の法人税負担率は年々減少しています(図表⑥)。直近の2022年度には、資本金1億円以下の小規模企業の半分しか大企業は法人税を負担していません。安倍晋三元首相が「日本を世界でいちばん企業が活躍しやすい国にする」と明言して推し進めてきたアベノミクスによって、大企業の法人税負担は減少し続けてきました。
自公政権がこの12年間すすめてきたアベノミクスは、「大企業と富裕層をもうけさせれば、それが滴り落ちて国民全体が潤う」というものです。
このアベノミクスによって株価をつり上げ、図表⑦にあるように、富裕層トップ50人の金融資産は2.9倍増となり、各税収も上回る史上最高額を記録しました。
岸田文雄前首相は、「貯蓄から投資へ」「資産所得倍増」と言いましたが、単身世帯の36%、2人以上世帯の25%は金融資産ゼロです。そもそも金融資産がなく投資できない庶民にとって「資産所得倍増」は無理なので、「貧困と格差」が拡大するほかありません。
そして、図表⑧にあるように、主要国と比べて株式投資利益の税率が日本は低いため、所得1億円を超えると所得税負担率が低くなる「1億円の壁」が放置され続けています。
大企業と富裕層は過去最高の富を手にしました。しかし、私たち労働者には滴り落ちてくることはなく、貧困と格差が広がるばかりになっています。
これまでの大企業・富裕層優遇の政治から、賃上げをはじめ、労働者の暮らし改善を優先する政治に転換する必要があります。
公務員人件費が主要国で18年連続最低の日本
国民のための大幅増員・行政体制の拡充を
能登半島地震や豪雨災害など大規模な自然災害が相次いでいます。マスコミも「公務員不足が被災地の被害を拡大し災害関連死等の増大をもたらしている」と指摘しています。公務員を増やし行政体制を拡充することは国民のいのちと暮らしを守るために必要です。
ところが、「小さな政府づくり」「構造改革」「身を切る改革」をすすめる新自由主義の政治によって、職員数の削減と賃下げによる公務員の総人件費削減が続いてきました。
図表⑨にあるように、日本の公務員人件費は18年連続でOECD加盟国で飛び抜けて最低。34か国平均の半分しかありません。
自公政権は、財源がないことを理由にして公務員の総人件費削減を続けていますが、図表⑩にあるように防衛費だけはどんどん増やしています。そして、日本が「敵基地攻撃」のためのミサイルなども大量に購入しています。ストックホルム国際平和研究所によると、自公政権が計画する防衛費2倍化が実現すると、日本はアメリカ、中国に次いで世界第3位の軍事大国になります。
頻発する災害によって多くの国民の生命が失われる中でいま必要なのは、国民のいのちと暮らしを守るための公務員増と行政体制の拡充を実現する政治です。
人勧取扱いで政府交渉
諸手当改悪等は許さない 職場からとりくみ強めよう
不利益変更の回避を求めて政府と中間交渉
国公労連は9月30日、単組書記長などの参加のもと、8月8日に提出した「2024年人事院勧告の取扱い等に関する要求書」に基づく政府との中間交渉を実施しました。
内閣人事局の辻総括参事官は、その検討状況として、「人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある。今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催される」などと回答するにとどまりました。
国公労連からは、衆議院解散・総選挙などの政局に紛れ、給与改善の実施時期を逸することのないよう、政府としての確実な対応を求めました。また、「給与制度のアップデート」などによる不利益変更について、人事院の不誠実な対応などを踏まえつつ、国公労連との合意のないまま政府が決定することは、国家公務員の権利を不当に侵害するおそれがあることを強調しました。
さらに、24人勧のテーマのひとつである「Well-beingの実現」に向けては、①長時間労働の解消と所定内労働時間の短縮、②少子化対策を念頭にした両立支援制度の拡充、③職員の多様性に配慮した職場環境、④ハラスメント根絶などの心理的安全性の確保を求めています。
非常勤職員の給与は、初任給などが大幅に改善されることを踏まえ、常勤職員に準拠した遡及改定が確実に実施されるよう、各府省を指導するとともに、必要な予算措置を講じることを求めました。
単組からは、①諸手当の改悪による「賃下げ」の回避、②若年層の人材確保にもつながる高齢層の給与体系の重要性、③非常勤職員の雇用の安定化と休暇制度の拡充、④次年度増員要求の満額確保による職場環境の改善など、それぞれの職場実態を踏まえた主張を展開しました。
最後に笠松書記長は、職員の理解と納得、労働組合との合意もない24人勧について、最低でも不利益変更を回避する措置を政府の責任で検討・実施することを求めて交渉を終了しました。
職場から「当事者参加型」のとりくみの強化を
24人勧は、いくつかの給与改善が反映されましたが、容認できない諸手当の改悪も含まれています。
地域手当の見直しは、現行の支給割合の引下げを伴います。とりわけ地方自治体の人材確保や低水準に抑制された地場賃金の固定化など、その社会的影響も看過できません。
配偶者の扶養手当の廃止は、受給する職員の減少傾向などが理由とされていますが、配偶者の就業をめぐる政策的な判断を伴うものです。国家公務員の広域的な人事異動が配偶者の安定的な就業を阻害している実態なども踏まえれば、家庭環境の多様性を否定するおそれがあります。
寒冷地手当の見直しは、本州の35市町村で所要の経過措置をもって廃止されることとなります。豪雪地域である秋田市や長野市での廃止は、多くの地方支分部局が設置されている県庁所在地でもあり、その影響が甚大です。
政府が「物価高に負けない賃上げ」をめざし、民間企業などに労働者の賃上げを促している一方で、国家公務員の使用者の立場では、諸手当の減額で実質的に「賃下げ」を実施することは本末転倒です。あからさまなダブルスタンダードであり、賃上げに向けた民間企業の機運も急速に減退しかねません。
政府との最終交渉は、10月27日投開票の衆議院議員選挙の終了後である11月上旬が見込まれています。
すでに最終局面となっていますが、職場・地域のとりくみを徹底することが極めて重要です。通勤手当の改善では、多くの地方組織が組合員のアンケートにとりくみ、期間業務職員の「3年公募要件」の撤廃では、当事者が中央交渉にも参加し、セルフストーリーとして不合理な境遇を主張しました。その結果、人事院や内閣人事局がないがしろにしてきた実態を無視できない状況に追いこんでいます。
そうした貴重な教訓を踏まえ、追加的なとりくみを提起しています。10月中旬までに単組の各級機関(任命権者単位)で要求書を提出し、10月末日までに内閣総理大臣宛ての上申の発出を追求します。
また、10月28日からの「全国統一行動週間」では、職場集会を開催し、諸要求の到達点や情勢などを確認するとともに、8月に提起した職場要求決議を完遂する意思統一を図ります。
国公労連は、そうしたとりくみを背景として、勤務条件の不利益変更に反対する姿勢を堅持し、政府への要求を強化しています。仮に労使交渉が決裂した場合には、11月上旬から中旬にかけて、単組本部の専従役員の協力のもと、緊急の国会議員要請行動にとりくむことも検討しています。