国公労新聞|2024年9月25日号|第1632号

一人ひとりの仲間と対話を
笠松書記長にインタビュー

私たちの労働条件と つながっている政治


Q 秋季年末闘争をめぐる情勢の特徴をお聞かせください

A 消費者物価指数が2023年9月から11か月連続で2%台となり、物価の高騰・高止まりなどの影響を受け、国民生活は大変苦しい状況がつづいています。
 厚生労働省が発表している7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)では、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月から0.4%増加し、2か月連続のプラスとなっていますが、この結果は、夏のボーナスなど「特別に支払われた給与」の伸び率が大きいことが寄与したと言われています。所定内給与に休日手当などを加えた「きまって支給する給与」だけで見ると0.8%マイナスとなっており、まだまだ生活改善が図られたとは言えません。
 大企業の内部留保は約540兆円に上り、過去最高を更新する一方で、労働分配率は過去最低の水準まで落ち込んでおり、労働者の賃上げが抑えられている実態が明らかとなっています。
 このような現状を打開するためにも、24秋季年末闘争では、物価高対策や、生活改善できる大幅賃上げにむけた世論をいっそう広げていくことが求められており、職場・地域からの運動がそのカギを握っています。
 他方、9月27日投開票で行われている自民党総裁選にも注目しておく必要があります。9人の候補者からは「憲法改正」など軍事大国化の促進や、「解雇規制の緩和」など貧困と格差を拡大させた新自由主義のさらなる推進などの声が上がっており、総裁選後には解散総選挙も取りざたされています。
 第70回定期大会で確立した「衆議院総選挙闘争方針」に沿ってすべての組合員による学習と討議、権利行使を呼びかけます。国民本位の行財政・司法を実現し、国公労働者が「全体の奉仕者」としての誇りと働きがいを持って職務に邁進するためにも、そして労働条件改善にむけても24秋季年末闘争はきわめて重要です。

人勧の不利益変更 許さないとりくみを

Q 24年人勧の不利益変更に対するとりくみは?

A 24年人勧ではご案内のとおり、初任給の抜本改善をはじめ全俸給表の引上げ改定、通勤手当の支給限度額15万円への引上げと特急料金の全額支給、再任用職員の手当拡大など、少なくない前進を勝ちとりました。一方で、中高年層職員の賃上げは物価上昇分にも満たず不十分であること、寒冷地手当の支給地区分「見直し」や、「給与制度のアップデート」による地域手当の「見直し」、扶養手当改悪など、不利益変更も多く含まれています。
 こうしたもと国公労連は、誰一人として労働条件の不利益変更を許さない立場から、9月を中心に、すべての職場で職場集会を開催し、「『給与制度のアップデート』による勤務条件の不利益変更に反対する職場要求決議」を採択して政府・内閣人事局に送付するとともに、各ブロック・県国公においては機関会議で同決議を決定し、政府・内閣人事局に送付するとりくみを展開しています。また、国公労連は各単組書記長も参加する政府・内閣人事局との中間交渉を9月30日に予定しています。この交渉での追及だけでなく、職場から政府に対して圧力をかけるという点でも職場決議のとりくみを完遂することが重要です。
 状況を見つつ、国会議員要請行動など、国会(政治)に対するとりくみも強めていきます。

定員削減の半減など 運動の前進さらに広げ

Q 公務・公共体制拡充運動はどのようにすすめますか

A 終わりの見えない物価高騰や能登半島地震をはじめ頻発する自然災害などによって、国民のいのち・くらし、権利が脅かされるもとで、公務・公共サービスへの期待が高まっています。2017年からとりくんでいる「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」の紹介議員は、はじめて100人を超えました。各単組がとりくんでいる請願署名の国会採択や定員の純増などに見られるように、運動の前進と世論の広がりをつくりだしています。
 こうしたなか、政府は2025年度以降の定員管理政策として、合理化目標数を5年10%から5%への変更などを内容とする「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(2014年7月25日閣議決定)を決定しました。合理化目標数を撤廃させるという目標は達成できず、不十分な面は残していますが、閣議決定を変更させるという貴重な到達点を築くことができました。
 定員削減がすすむもと、非常勤職員は職場で欠かせない存在です。非常勤職員の強い要求であり、良質で安定的に公務・公共サービスを提供していくうえでも重要な雇用の安定にむけて足かせとなっていた「3年公募要件」の撤廃も勝ちとりました。
 国公労連はこれら運動の到達点をふまえて、職場の要求と地域住民の共通する要求を「見える化」し、国民本位の行財政・司法の確立を国民的課題として社会連帯を追求していきます。その軸として今年度も「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」にとりくみます。各単組、ブロック・県国公は、前年を上回る署名の集約を目標としてこの秋からとりくみを開始します。一方で来年度の定員要求(政府全体で5221人、純増1278人)の満額確保にむけて政府・当局追及を強めます。

労働組合の力を アピールしよう

Q 秋の組織拡大強化月間(9〜11月)のとりくみはどのようにすすめますか

A 国公労連は、「全員参加型の運動」をすべての職場で実践し、「人づくり」をすすめ持続可能性を追求することを提起しています。
 労働組合が持っている組合員一人ひとりに寄り添うケアの感性(集団的ケア)をいかし、日常活動をつうじて相互のつながりを深め、組合員同士で支え合い・励まし合い、ともに成長しながら、職場・組合員から信頼と共感が得られる組合活動をすすめていきます。何より「対話」を重視し、職場で働くすべての仲間一人ひとりとの対話を通じて、要求を組織するとともに要求を実現するためにも労働組合への加入も含めて活動に参加していただくことを呼びかけていきます。
 その際、組合が勝ちとってきた「成果」=「組合の力」や、組合員だからこそ加入でき「小さな掛金で大きな保障」の国公共済会を全面に打ち出し、対話を推進していきます。
 正規・非正規・再任用などすべての職員を対象とし、とりわけ、10月の新規採用職員および4月の新規採用職員の未加入者への重点的な働きかけと、異動などにともなう脱退防止策を積極的に講じるとともに、来年の春闘を視野にいれた支部・分会体制の基盤づくりをすすめていきます。

誰にも必ずケアが必要 労働組合の役割もケア

ジェンダー平等学習会

 国公労連は7月31日、「みんなで考えようジェンダー平等」第2回オンライン学習会を開催し、岡野八代・同志社大学教授の「ケアの視点からジェンダー平等と労働組合運動を考える」と題した講演で学びを深めました。
 岡野氏が説く「ケア」とは、「他者の手を借りなければ、自らの生存に必要な活動——食事や身の回りの世話から安全確保まで、生命維持に密接にかかわる——ができない人たちのために、生きるために必要なもの(=ニーズ)を満たす活動・営み・実践である」とし、ケアを必要としている人を支えるための身体的な「活動」だけではなく「営み」と「実践」を含むものであることを強調しました。ケアを受ける人が何を必要としているのかを考え、その人に強く関心を向けることが「営み」であり、ケアを受ける人とケアを提供する人とがよりよい関係を結ぶためには何をすべきか、具体的な活動が本来のニーズに応えていないのであればそれをどう正していくかを考えて配慮の仕方を変えていくことが「実践」であるとし、労働組合の役割も「ケア」であると言います。
 また、「市場で測れないケアの価値は公的に決めなければならないが、現状はケアにほとんど関わったことのない者たちがその価値を決めている」と指摘し、ケアの認識を正すために、「人は必ず誰かのケアに依存する存在」であること、「誰もが搾取されず、誰もが公的領域から排除されず、誰もが差別を受けないようにする」ことなどが必要であると説きました。
 参加者からは、「ジェンダー平等についての新しい視点が理解できた」「ケアに対する考え方が変わった」「自分たちの労働の時間、生活そのものにはケア(育児・介護・教育など)があり、その部分を豊かに楽しくしていくために労働条件や賃金を改善したいという要求には説得力がある。ケアの視点は最も重要だと思った」といった感想が寄せられました。

レイバーノーツ大会報告会ひらく
「職場の仲間との対話に踏み出したい」

 国公労連は8月26日、「2024レイバーノーツ大会報告会」をオンラインで開催し、30人が参加しました。レイバーノーツ大会は4月19日から21日までアメリカのシカゴ市で開催され、浅野龍一書記長、笠松鉄兵書記次長、大門晋平中央執行委員(役職はいずれも当時)が全労連派遣団(39人)の一員として参加しました(大会の詳細は、国公労新聞1625号および『KOKKO』第56号参照)。
 報告会では、派遣された3人それぞれが、大会に参加して感じたことや学んだこと、国公労働運動に活かしていきたいことのほか、アメリカ労働運動の高揚や労働者たちの熱意、シカゴの街並みなどを報告しました。
 その後、3人ずつのグループに分かれ、感想や意見交換などを行い、参加者全員でディスカッションの内容を共有しました。
 参加者からは、「交渉だけでなく当事者主体の運動もという報告があったが、要求実現に有効な手段である団体交渉の場に、より多くの当事者が関わることができるような工夫も必要」「労働組合がたたかわなくても要求が実現されていると思っている青年たちに、運動の成果をどう伝えていくかについて改めて考えさせられた」「アメリカの労働者たちはいきいきしているように見えた。要求実現は簡単ではないが、前進したところはきちんとアピールして、新たな仲間を迎え入れていくことが大事だと感じた」「レイバーノーツ創始者のバーバラさんが組合員と対話するときに、①あなたが仕事をとおして誇りに思うことは何か、②仕事を通してあなたが守りたいものは何か、③職場で不満に思うことは何か、という3つの質問をしているという話を思い出した。自分も職場の仲間との対話に踏み出したい」などの意見や感想が寄せられました。
 次回のレイバーノーツ大会は、2026年6月に開催されます。

シェアお願いします!