国公労新聞|2024年8月25日号|第1630号

職員への権利侵害・不利益変更やめよ
人事院勧告の取扱いめぐり政府交渉

 国公労連は8月8日午後5時から、同日の2024年人事院勧告(以下「24人勧」)の取扱いをめぐって、政府(内閣人事局)交渉を配置しました。
 当日は、①長時間労働の是正、②健康・安全確保、③非常勤職員の処遇改善、④高齢期雇用などの諸課題を含む要求書を提出しましたが、「給与制度のアップデート」をはじめ、24人勧が多岐にわたるものであることを踏まえ、給与勧告に関わる論点などを中心に主張しました。
 内閣人事局の松本人事政策統括官の回答は、「国家公務員の給与について、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、国政全般の観点から、その取扱いの検討をすすめていく」などの抽象的なものにとどまりました。今後の政府交渉では、単組代表者の参加も得ながら、さらに追及を強化していく必要があります。

勤務条件の不利益変更、労働組合の軽視は許されない

 24人勧は、①月例給の平均改定率が2.76%という32年ぶりの高水準となったことをはじめ、②地域別最低賃金の水準を下回る高卒初任給の解消、③通勤手当の大幅な改善、④再任用職員の諸手当の支給など、いずれも不十分ですが、これまでの要求を実現するものとなりました。
 しかしながら、地域手当の支給割合の引下げや寒冷地手当の改悪、配偶者の扶養手当の廃止など、経過的な措置を前提としつつも、勤務条件の不利益変更を含むものとなり、労働者本位の「給与制度のアップデート」には至りませんでした。
 非常勤職員の勤務条件は、無給休暇の有給化などが期待されましたが、ほぼ「ゼロ回答」となったことも容認できません。
 とりわけ、「給与制度のアップデート」を名目にした勤務条件の不利益変更は、人事院が労働組合を軽視した態度に終始してきたことを踏まえれば、職員の権利侵害を回避するための措置をはじめ、国公労連との合意を前提とした労使交渉・協議、その実効性をこれまで以上に追求していく必要があります。
 一方で、厚生労働省は8月2日、「令和6年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」を公表しました。資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合のある企業348社では、定期昇給を含む平均妥結額が1万7415円、賃金上昇率は5.33%でした。国家公務員の平均昇給率を1%程度と想定すれば、2.76%という平均改定率では、依然として1.5ポイント程度の官民較差が解消されません。
 現行の人事院勧告制度には、国家公務員の給与上昇を抑制するシステムが固定化されています。例年の春闘相場に見合った給与勧告を阻害しており、とりわけ中高年層の給与改善に配分できる原資が確保できないままになっています。その要因の1つには、官民較差の比較企業規模があり、これまで国公労連が要求してきたとおり、50人以上から1000人以上に改善することが不可欠です。
 24人勧の「公務員人事管理に関する報告」では、人事院の人事行政諮問会議での議論なども踏まえ、「公務における人材確保が危機的となっている大きな要因として、官民給与の比較を行う際の企業規模が挙げられ、その引上げの必要性が強く指摘されている。…適切な報酬水準の設定に向けて、官民給与の比較対象となる企業規模について検討を進めていく」と言及されています。
 なお、秋季年末闘争方針案では、24人勧に基づく「勤務条件の不利益変更」に反対する職場要求決議を9月中に採択し、政府に集中させるとりくみを提起する予定です。

必要な人的体制の確保、定員管理政策の転換を

 今後の政府交渉では、定員管理をはじめ、2025年度の予算編成などに向けた要求も重要となります。
 政府は7月29日、「令和7年度から令和11年度までの定員合理化目標数について」(内閣人事局長通知)を決定し、各府省に通知しました。6月28日に「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(閣議決定)を一部変更したことに基づき、これまでの定員合理化目標数を概ね半減していますが、定員管理政策そのものの構造は踏襲されています。
 行政DXによる省力化などの効果が発現するまでは、「定員合理化目標数の一部猶予の要求を行うことができる」とされていますが、将来的な効果を予測できないまま、必要な人的体制をめぐる諸課題を先送りすることになりかねません。定員査定での内閣人事局の姿勢なども不透明であり、各府省が定員の純減を回避するに当たっての困難性は依然として解消されていません。
 政府の定員管理政策の抜本的な転換をめざす運動は、1つの重要な節目を経ながら、定員合理化目標数の半減という一定の成果を得ました。これまでのスタンスを堅持するとともに、さらに実効性と発展性のあるとりくみを追求しつつ、政府への要求を強化していく必要があります。

「自分が被爆したら」と想像を
原水爆禁止世界大会・国公労働者平和のつどい開催

 8月3日から9日まで原水爆禁止2024年世界大会が開催され、今年のメイン会場となった広島には、4日の開会総会に4千人、6日のヒロシマデー集会に5千人が参加しました。
 広島大会初日(4日)の開会総会では、全労連の秋山正臣議長が「私たちはこの被爆地広島から市民社会の真の声を世界に発信します」と力強く開会宣言を行い、広島大会が開幕。被爆者をはじめ世界各国からの海外代表、草の根運動の代表らが集いました。
 被爆者で日本被団協代表委員の田中熙巳(てるみ)さんは、ウクライナやパレスチナをはじめとする国際情勢に触れたうえで「関係諸国は国連を中心とした国際的安全保障の原則を前面に打ち出して解決を図るべき。そのために、唯一の核兵器被害体験国で平和憲法を持つ日本の真価を発揮すべきだ」と述べると、会場から盛大な拍手が送られました。

過去に学び 未来に伝える

 2日目(5日)は、広島市内でテーマ別フォーラムと分科会が開かれました。核兵器禁止条約、原発ゼロ、気候危機など10のテーマで開催され、なかでも「青年のひろば」には国公労連の加盟単組からも多くの組合員が参加し、360人が結集。関連行事の「高校生平和集会」にも200人が参加するなど、青年たちによる活発な議論と交流が図られました。
 夕方からは、国公労連主催の「国公労働者平和のつどい」が開催され、青年組合員を中心に37人の仲間が参加。被爆二世で広島県被団協事務局次長の大中伸一さんを講師に招き、原爆の非人道性と残酷性、放射線被害の実態などについて学びました。講演は「被爆の実体験から追体験に」というメッセージから始まり、大中さんは「自分が被爆したらどうなるかについて想像力を働かせて考えてみてほしい」と会場の参加者に呼びかけました。そして、「過去を振り返らない者は、同じ過ちを繰り返す運命にある」ということを強調し、常に学び続けていくことの大切さと、それを伝えていくことの重要性を訴えました。参加者からは、「学校では聞くことができない貴重なお話だった」「自分だけ生き残ってしまったと悩まれる被爆者がいると聞いたが、生き残ってくれた人のおかげで被爆の実相を知ることができる。学んだことを伝えていきたい」などの感想が寄せられました。

被爆80年にむけ 草の根の運動さらに

 3日目(6日)はヒロシマデー集会(閉会総会)が開催され、「核兵器禁止条約を力に、『核兵器のない平和で公正な世界』への道を切りひらくため、ただちに行動に立ち上がろう」と訴える決議「広島からのよびかけ」が採択されました。そして、平和を願う全国各地からの参加者によるメッセージリレーが行われ、福井、静岡、沖縄、東京の「高校生平和ゼミナール」の仲間たちがステージを埋め尽くすと、核兵器のない平和で公正な社会の実現への希望あふれる空間になりました。
 来年は被爆80年。世界中のどの国にも核兵器を使わせず、世界中のどこにも核兵器のない社会をめざし、国公労連も草の根の運動を続けます。

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