すべての世代の賃上げ、定員削減ストップを 第162回中央委員会ひらく
国公労連は4月12日、第162回中央委員会を東京都内で開催し、中央委員22人が出席しました。中央委員会では、国民本位の行財政・司法の確立、人事院勧告期・概算要求期闘争をはじめとする賃金・労働条件の改善、組織強化・拡大のとりくみなどを柱とする夏季闘争方針案を議論し、「2024年夏季闘争方針」「概算要求期重点要求」「人勧期要求」「中間会計決算報告」などを全員一致で決定しました。
冒頭のあいさつで九後健治委員長は、「人事院が『給与制度のアップデート』や『公務員人事管理のアップグレード』と称して公務職場でも能力実績主義強化や官民の人材交流、総人件費抑制政策などを進めようとしている。使う側にとって都合のよい労働者づくりが狙われていることは明らかだ。夏季闘争に向け現在も春闘をたたかっている仲間を引き続き支援するとともに、『社会的賃金闘争』をすすめる立場で最低賃金闘争や公務員賃金闘争をすすめること、人間らしく働き暮らせる社会の実現に向けて官民共同のとりくみをすすめることが重要だ。春闘期の組織拡大で各単組は『定期大会を増勢で迎えよう』と『減らさず増やす』とりくみに奮闘された。夏季闘争でも全員参加型ですべての職場に『頼りになる労働組合』をつくっていこう」と呼びかけました。続いて浅野龍一書記長が2024夏季闘争方針等を提案し、討論では15本の発言がありました。
討論(要旨)発言順
〈全法務〉給与制度のアップデートは大きな課題。職場討議資料を活用し学習を行う。すべての世代の賃金改善へ奮闘したい。定員課題は法務省当局も重要課題ととらえているが政府の定員削減の転換が必要だ。また防衛費増で法務省の予算削減を財務省より厳しく言われ、とりわけ非常勤職員の勤務条件引下げでこれでは生活できないとの声が上がっている。
〈開建労〉普天間基地返還の日米合意から28年も経過したが今も返還されず、辺野古新基地建設はいつ終わるかわからない中で建設が進んでいる。また政府は様々な機会を狙って南西諸島全体をミサイル基地化しようとしている。反対のとりくみを地元から粘り強く続けていく必要がある。仕事を通じて米軍とかかわるが、米軍の横暴を常に感じている。ぜひ沖縄支援連帯行動に参加し、現地を見て感じてもらいたい。
〈国公一般〉国公一般の相談で防衛省・自衛隊からの相談が多い。労働組合がない職場は声を上げられない状況になっていると思う。ILO要請ではこのような状況も訴えてきてほしい。昨年は全医労やそごう・西武のストライキなどで労働組合への期待が高まった。また「非正規春闘」としてたたかわれ、非正規労働者もたたかえば賃金が上がることを実感した。この間、非常勤職員の処遇が改善されてきているが、今後は国公労連の機関会議や運動に当事者が参加できるようにすることが必要だ。
〈全国税〉原口氏の不当な解雇取り消しを求めるとりくみ支援に感謝。人事院の審理が2年半経過したがまだ判定が出ていない。争議も長引いており、再度の支援カンパをお願いしたい。国税当局のパワハラや人事評価の認識の低さに驚いている。人事評価などは上司の恣意的な判断で決定されていることが明らかになり、改善させていかなければならない。
〈全厚生〉能登半島地震の対応や紅麹問題で本省の仲間は疲弊しており、組合員を増やして支えていきたい。非常勤職員の課題では公募撤廃と抜本的な労働条件改善をめざし運動を行う。年金機構においても非常勤職員は業務量に見合った賃金になっておらず署名等のとりくみで改善させたい。感染研の公法人化が近づいてきており、研究者の仲間から不安な声が広がっている。研究環境の継続・改善へとりくみをすすめたい。
〈全医労〉今年はストライキを打たずに要求を前進させることができた。特に非常勤職員の経験加算を導入するよう要求した。ストライキを2回準備する提案に対し反対の声が上がったが、各地で改めて議論しストを構え交渉に臨み、高齢層でも5000円以上の賃上げを勝ち取ることができた。全国各地で国公労連の仲間がかけつけてくれて励みになっている。
〈全労働〉給与制度のアップデートに対するとりくみが最大の課題。労働条件の切り下げを誰ひとり許さないとりくみが重要だ。定員課題では2025年の定削計画阻止に向けて今が踏ん張りどころだ。
〈全労働〉非常勤職員は行政にとってなくてはならない存在。雇用の安定は大変重要な問題で、現状は人権侵害となる取り扱いだ。人事院が非常勤職員制度の見直しに言及したことは運動の成果。公募見直しとなれば非常勤職員の組織化にも大きな力となる。
〈全司法〉昨年の春闘でのストライキ等のたたかいが世の中に賃上げの必要性を広げたと思う。そして今夏の人事院勧告ではすべての職員の賃金引上げを勝ち取りたい。役員請負ではなく組合員全体でとりくみをすすめ、生活改善をはかっていきたい。
〈全司法〉全司法では3月の中央行動と合わせ中央労働学校を開催。中央行動で国公労連や全労連の運動を体験し理解してもらいながら役員育成もはかっている。労働学校では国公労連の仲間づくり講座でコーチングのワークショップを行い、参加者から大変好評を得た。
〈国土交通労組〉羽田空港事故の真相究明には事故の原因を正直に話すことが重要で責任追及は再発防止につながらない。しかし現在、業務上過失致死を対象に捜査されている。過去には個人が刑事訴追されたこともあり、国土交通労組では個人の責任にしないとりくみを行っていきたい。
〈国土交通労組〉沖縄で全国女性交流集会を開催。ガマの見学や平和祈念館での平和学習をはじめ、ジェンダー平等課題での学習や交流を行い、参加者から好評を得た。
〈国土交通労組〉給与制度のアップデートは将来に向かって重大な勤務変更であるが、いまだに内容が明らかにされていない。労働組合の意見を無視して改悪されないよう奮闘し、誰ひとり不利益変更されないようにとりくむ必要がある。人事院勧告でプラス部分がアップデートの改悪分の穴埋めになるような制度改悪は許されない。
〈全通信〉全支部に夏季闘争方針案への意見を聞いた。いちばんの要求は職場実態に見合った要員確保。要員不足はすべての公務職場で共通したものだが、定員合理化が強行され続ければ、超過勤務は増え続け健康破壊や国家公務員のなり手不足につながる。公務・公共サービス拡充署名は1人5筆の目標をほぼ達成でき、過去5年間で最大の集約。これは来年度から狙われている新たな定員合理化計画を危惧する背景があると思う。また公務・公共サービスの拡充は国民の後押しが重要。そのため、ブロック・県国公の活動が重要だが、運動が停滞している組織が増えている。ブロック・県国公運動の全国的な底上げが重要だ。
〈全司法〉裁判所における非常勤職員については2019年ごろから障害者雇用率を達成するように始まった。現在300人を超える非常勤職員が働いている。ステップアップ制度の採用を求める声が大きく、働きがいに関する要求が強い。せっかく採用されたのに労働条件の良いところを求めて転職する人も多い。非常勤職員の適切な雇用の在り方が検討されているときに、常勤職員との格差是正を求めて奮闘したい。
ストップ! 政府の定員削減
市民のくらし守る行政へ増員を
国家公務員の定員(職員数の上限)は、2014年に閣議決定された「国家公務員の総人件費に関する基本方針」などに基づき、毎年度に前年度末の2%が合理化(削減)されています。その結果として、国の行政機関の人的体制は脆弱化の一途をたどり、行政機能の低下や職員の長時間労働などを招いています。
国公労連は、2025年度以降の定員合理化の中止などを政府に要求してきました。この特集では、政府の定員管理政策をめぐる諸問題などを再確認し、今後の要求の在り方を展望します。
政府の定員削減によって職員89万人から30万人に
現在の国家公務員は、常勤職員が約59万人在職しています。一般職が約29万2千人、特別職として、主に防衛省の自衛官などが約26万8千人、裁判所職員が約2万6千人、国会職員が約4千人などです。それぞれ個別の法律で定員が定められています。ここでは、政府の定員管理政策の対象となっている一般職の定員がたどってきた経緯などを中心に報告します。
一般職の定員は、「行政機関の職員の定員に関する法律」(総定員法)に定められていますが、実際には政令である「行政機関職員定員令」に各府省の定員が定められます。2024年度当初の定員は、30万7379人です。
1969年に総定員法が施行されると、ほぼ同時に第1次定員削減計画が実施されました。当時の国家公務員は約89万人でしたが、第9次定員削減計画が終了した2001年までに定員削減と増員がくり返され、約84万人となります。そこから2003年の郵政公社化で約28万6千人、2004年の国立大学の独立行政法人化で約13万3千人、その他の独立行政法人化で約9万人の定員削減があり、2004年度には33万2843人となりました。僅か35年間で約3分の1にまで縮減されたこととなります。
それまでも定員削減は無秩序的にくり返されてきましたが、現在につながる定員合理化(定員削減)の潮流は、この2004年度から始まったといえます。
2004年12月に「今後の行政改革の方針」が閣議決定されました。そこでは、「…スリムで効率的な政府を実現するため、国の事務・事業の見直しを行い、…積極的に廃止・縮小を進め、…国が直接行う必要のない事務・事業については、民営化、民間委託…等を進めることにより、組織・業務の減量・効率化を図る。特に、地方支分部局等の事務・事業…について、…集中的に減量・効率化を行う」として、2005年度から2009年度までの5年間で2004年度末定員の10%以上を削減することとされました。
2006年6月には、同年5月に成立した「行政改革推進法」と「市場化テスト法」や「行政減量・効率化有識者会議」の最終とりまとめなどを踏まえ、「国の行政機関の定員の純減について」が閣議決定されました。そこでは、2006年度から2010年度までの5年間で、とりわけ市場化テスト(官民競争入札)による国の事業の民間委託などで4.2%以上、全体で5.7%以上の定員を純減することとされました。
2009年7月に閣議決定された「平成22年度以降の定員管理について」では、2010年度から2014年度までの5年間で2009年度末定員の10%以上を合理化することとされ、2009年3月に地方分権改革推進本部が決定した「出先機関改革に係る工程表」に基づき、国の地方支分部局の地方移譲と国家公務員の地方移管の仕組みを検討するとともに、ここで初めて各府省の定員合理化目標数が定められました。
一方で、2010年5月には、「平成23年度の国家公務員の新規採用抑制の方針について」が閣議決定されました。2011年度の新規採用者数を2009年度の6割程度にとどめることとされ、各府省の新規採用者数の上限値が定められました。この新規採用抑制は、国家公務員の総人件費抑制と定員純減を目的として、2013年度までの3年間にわたって実施されましたが、その前後の数年間にわたって、厳格な定員管理のもとで新規採用者数は縮減を余儀なくされました。
2014年7月には、「国家公務員の総人件費に関する基本方針」とともに、「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」が閣議決定され、各年度の国の行政機関の機構・定員管理を戦略的かつ的確に実施するための基本的な枠組みと指針が定められました。とりわけ「各府省の定員の合理化については、ICTの活用など行政の業務改革の取組を推進しつつ、…2015年度以降、5年ごとに基準年度を設定し、府省全体で、対基準年度末定員比で毎年2%(5年10%)以上を合理化すること」とされ、内閣人事局が「内閣の重要政策に対応した戦略的な定員配置を実現する観点から、府省の枠を超えて、大胆に定員の再配置を推進する」とともに、「各府省の直近の定員の動向等を反映して、5年ごとに各府省の合理化目標数を決定…する」こととされました。
この閣議決定に基づき、5年ごとの定員合理化目標数を永続的に決定できる仕組みが構築されました。直近では、2019年6月に2020年度から2024年度までの定員合理化目標数が決定され、現在に至っています。
職員数も人件費もOECD最低 国の行政責任を放棄する政府
政府の定員管理政策の本質とは
2004年度から現在に至る政府の定員管理政策の本質は、2005年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」の前文にその特徴的な記述があります。そこには、「『小さくて効率的な政府』を実現し、財政の健全化を図るとともに、行政に対する信頼性の確保を図ることは、政府にとって喫緊かつ最重要課題の一つである。このため、政府はこれまで…『官から民へ』『国から地方へ』等の観点から行政改革を推進してきた。今後、…これまで以上に事業の仕分け・見直しなどを行いつつ、行政のスリム化、効率化を一層徹底することが必要である」とされています。
また、これまでの定員削減計画などでは、「〇年間で〇%」という目標が定められています。2005年度から2024年度までの20年間では、概ね5年間で10%です。この割合には合理的な指標や根拠もなく、各府省で「行政のスリム化、効率化」「国の事務・事業の見直し」「組織・業務の減量・効率化」などの要素がなくとも、行政の実態を無視したまま、この割合に準じた定員合理化目標数が一方的かつ一律に決定されるという特徴があります。それが各府省の事業規模と定員のアンマッチを助長し、行政体制の歪みを拡大させてきました。
この20年間で実施されてきたことは、国の財政赤字の増大を招いた政府・財政当局の責任を転嫁するため、国家公務員の総人件費抑制という口実のもと、地方支分部局の定員削減というかたちで個々の職員の労働強化をもたらすものです。全国の各地域で行政体制が縮減されているため、行政サービスを受ける国民の不利益にもつながっています。規制緩和をはじめとする新自由主義的な「構造改革」路線に基づき、市場化テストによる公務の民間開放や国の出先機関の地方移譲などと一体的に実施されてきたことを踏まえれば、政府のこうした姿勢は、国の行政責任を放棄するものでしかありません。
さらに、2009年の社会保険庁の解体と日本年金機構への移管に伴う定員純減とともに、525人の不当・違法な分限免職処分という公務リストラが強行されたことも看過できません。
定員と国家財政との相関関係
【図表1】は国公労連が作成したものです。「今後の行政改革の方針」が閣議決定された2004年度から2023年度までの20年間を表示しています。中央の折れ線グラフは、内閣人事局が公表している「国の行政機関の定員の推移」です。各年度で並べた左側の棒グラフが国の一般会計の年度当初の歳出予算、右側の棒グラフが補正予算などで増額された年度末の歳出決算です。歳出総額は、国の行政の事業規模を定量的に把握するために有効な指標です。この歳出総額と定員が絶対的な数値として適正な相関関係にあるものかどうかまでは分析できませんが、少なくとも過去20年間の推移として、相対的に両者が反比例しているということは、国の行政の事業規模が拡大する一方で、それに見合った増員が措置されてこなかったことを裏付けているものと判断できます。
【図表2】も国公労連が作成したものですが、国家公務員の総人件費と国の公債残高を対比させたものです。総人件費が半減しているにもかからず、公債残高は2.3倍に膨張しています。2005年に閣議決定された「行政改革の重要方針」では、「『小さくて効率的な政府』を実現し、財政の健全化を図る」とされていました。総人件費抑制は、財政の健全化を目的として実施されているはずですが、正反対の結果を招いています。国家公務員の総人件費と国の公債残高が相関関係にないことが明確です。
諸外国の公務員数との比較
【図表3】は内閣人事局が公表しているものです。各国で公務員の分類はさまざまであるため、地方公務員などが混在した「公的部門における職員数」というものですが、「人口千人当たり」という、国民に必要な行政サービスなどを提供するに当たって、国の人口規模でどの程度の人的体制が必要なのかを判断するための指標です。国と地方の役割分担なども各国でさまざまですが、国家を維持・運営するための「公的部門」の役割は、このグラフに表示されているほどに大きな差はないはずです。
【図表4】は国公労連が作成したものです。地方公務員や独立行政法人などを含めた「公務員人件費」について、OECD諸国との比較を各国のGDPに占める割合で表示したものです。「公的部門における職員数」ばかりでなく、「公務員人件費」ベースで比較しても、日本は最低水準でしかありません。中央の折れ線グラフは、図表2で比較した公債残高を各国別に表示したものです。OECD諸国と比較しても、公債残高との乖離が突出しています。
定員削減の中止 各府省の基幹業務の増員を
行政肥大化招く定員「再配置」
2014年に閣議決定された「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」では、「既存業務の増大への対応に当たっては、自律的な組織内の再配置によることを原則とし、新規増員は厳に抑制する」こととされています。
「既存業務の増大」、すなわち行政ニーズが増大した場合であっても、それが既存の基幹業務などである場合には、定員は「自律的な組織内の再配置」で賄わなければならず、実質的に増員は措置されていません。
一方で、各府省は、定員の純減を回避するため、一方的かつ一律に決定される定員合理化目標数を上回る増員を要求する必要があります。しかしながら、「既存業務」には増員が措置されないため、各府省は、新たな行政需要(新規事業)を自ら創出・捻出する必要があります。それが行政サービスの需要と供給のアンマッチにつながり、ほとんど利用されない行政サービスや費用対効果を期待できない事業など、「『小さくて効率的な政府』を実現し、財政の健全化を図る」という趣旨に反して、「無駄な行政」を膨張させかねない事態に至っています。
こうした定員合理化目標数を前提とした定員の再配置は、適正な人的体制を確保できないまま業務の肥大化を招いており、国民のニーズに適応するための行政体制を弱体化させてきました。
業務遂行を阻害する新採抑制
2011年度から3年間にわたって閣議決定された「国家公務員の新規採用抑制」は、定員合理化とも相まって、一部の官署では年間の新規採用者が0となるなど、各組織の年齢別人員構成を極めて不均衡なものとしました。現在は、その年代が30歳代の中堅層となり、係長級の官職に配置できる職員が圧倒的に不足しています。
結果として、20歳代をはじめとした若年層の職員が昇任・昇格しないまま、給与水準に見合わない係長などの複雑・困難な業務に従事させられる職場が急増しています。まさに労働力の搾取であり、「職務給」の原則にも抵触しています。必要な実務経験や知識・技能の蓄積も不十分なまま重要な業務に従事するため、組織としてのパフォーマンスの低下にもつながっています。
「官製ワーキングプア」の増大
政府の定員管理政策は、非常勤職員の境遇も深刻化させています。「官製ワーキングプア」とも揶揄される非常勤職員は、一般的には定員外の職員です。その劣悪な雇用と労働の実態は、過剰な定員合理化により脆弱化した常勤職員の人的体制を補完するため、必要な勤務環境と人事制度を整備することなく、非常勤職員制度の欠陥を放置したまま無秩序的に雇用を増大させてきたことに起因していると言わざるを得ません。
非常勤職員は、臨時・一時的な官職や業務に従事するという前提のもと、その任期は一会計年度である1年間を限度とされ、任期の更新に当たっては、公募に応募することが原則であるなど、極めて不安定な雇用を余儀なくされています。
2023年7月1日現在のところ、複数回にわたって任期を更新する通年雇用の非常勤職員は、全国で約8万4千人であり、常勤職員を含めた一般職の国家公務員の約24%を占めています。もはや「臨時・一時的」という非常勤職員制度の前提が形骸化しています。
「働き方改革」を阻害する職場の人的体制
人事院は2023年4月、「超過勤務の縮減に係る各府省アンケートの結果」を公表しました。2021年度の実態として、全府省である44府省等の内、34府省等が「恒常的な人員不足の部署があった」と回答し、30府省等が「定員が不足していた」ことをその理由としています。定員管理を担当する部局(内閣人事局)への要望としては、定員の増加・新設や合理化目標数の緩和などに多くの府省等が回答しています。
長時間労働の是正に当たって、職場の人的体制の拡充、すなわち政府の定員管理政策の抜本的な転換が不可欠であることは、各府省の認識としても顕在化しています。政府は、現在の定員管理政策を維持する口実として、「業務見直し・効率化やマネジメント改革」「働き方改革」などという主張をくり返していますが、すでに各府省の業務にはその余地がありません。とりわけ定員合理化が激化した2004年度からの20年間にわたって、すでに業務の縮減・簡素化、ICT化、民間委託化などをくり返してきたからです。
一方で、人事院が5年ごとに実施している「国家公務員長期病休者実態調査」では、2021年度の10万人当たりの人数である長期病休者率が2323.1であり、前回から383.1ポイント増加しました。その病因として「精神及び行動の障害」が1701.2であり、前回から431.0ポイント増加するなど、5年前から急増しています。職員の長時間労働と長期病休を伴う健康被害、職場の人的体制の相関関係を否定できません。
「若者の公務員離れ」を招く勤務環境
近年は、「若者の公務員離れ」が深刻化しています。2023年度の国家公務員採用試験の一般職(大卒程度)の申込状況は、前年度と比較して6.3%減少しています。総合職では6.2%減少しました。
また、若年層の離職者の増加傾向も顕著となっています。2017年度と2021年度を比較した辞職者数(離職者数全体から定年退職などを除いた自発的な退職者数)は、59歳以下全体で16.0%増加している一方で、20歳以上24歳以下では30.2%、25歳以上29歳以下では66.4%、30歳以上34歳以下では27.5%増加しています。
将来的に生産年齢人口が減少していくなかにあって、民間企業も人材獲得競争が激化しています。安定的に優秀な人材を確保するためには、長時間労働を解消し、ワークライフバランスを推進するとともに、民間企業と比較しても魅力のある職場の勤務環境を確保することが不可欠です。
国公労連の主な要求
政府はこれまで、こうした定員合理化に伴う弊害などを検証することもなく、旧態依然の定員管理政策を前例踏襲的に継続してきました。政府が実現すべきは、新自由主義的な「構造改革」路線が招いた行政体制の脆弱性を是正するため、すでに破綻している定員管理政策を早急かつ抜本的に転換するとともに、各府省の基幹業務に従事する職員を増員することです。
国公労連は、そのための措置として、①総定員法を廃止すること、②「国家公務員の総人件費に関する基本方針」などの閣議決定を撤廃すること、③最低でも2025年度以降の定員合理化目標数の検討を中止し、定員合理化を凍結すること、④それらの措置を講じることにより、過去20年間の定員合理化の割合である40%を基準としつつ、定員を純増させることなどを要求しています。
能登半島地震支援ボランティア記
倒壊家屋、がれき手付かず
4月19日から21日にかけて全労連の「能登半島地震支援ボランティア」に中本副委員長と丹羽中執が参加しました。今回の支援ボランティアは第2回目となり、全国から約30人が参加し珠洲市と能登町に入りました。支援ボランティアは、羽咋市の全国災対連・県災対連支援センターに集合し、そこから被災地へ入ることとなります。
羽咋市からは、のと里山道を利用し七尾市の徳田大津インターチェンジまでは対面通行できましたが、そこから輪島市・珠洲市方面は北に向かって一方通行となっています。路面は舗装がひび割れ、崩落などが多数あり制限速度は時速40キロに制限されていました。
初日の作業は、珠洲市脇田町にて地震と津波被害により被災された住宅のたたみや家具、家電製品の搬出と、被災廃棄場所への投棄作業でした。搬出作業はボランティア要員が多く短時間で作業が完了しましたが、支援センターまでの移動時間が2時間30分から3時間近くかかるため、十分な作業時間を確保することができなかったのが残念でした。
翌日は能登町の柳田、姫地域の被災家屋の廃棄物の搬出作業。能登町柳田までは支援センターから約2時間で到着。被災されたお宅の外観は、屋根にブルーシートがかけられている程度でしたが、屋内の壁にはひびが入り、建具などは傾いた状態でした。
次の作業をする能登町姫地域までは山間部から海側へ約15㎞の距離を約1時間かけての移動で、途中の道路はいたるところで崩落が発生し仮設の迂回路により普通車1台が通るのがやっとの状況でした。
最終日は輪島市を視察しました。輪島市街地に入ると、家屋の倒壊が目立ち始め、ニュースで見たビル倒壊現場のすぐ近くは輪島の朝市周辺で、火災により焼失した地域が広がっており、言葉を失いました。
金沢市内のホテルに滞在しながらボランティアに参加しましたが、地元のニュースでは能登半島地震の報道が数多くされていたものの、首都圏に戻ればほとんどされていないのが現状です。
引き続く支援の必要性を強く感じました。