核不拡散条約(NPT)再検討会議
4月27日から5月22日にかけて、ニューヨークの国連本部で、核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催されました。この会議に合わせて原水爆禁止日本協議会(日本原水協)は4月25日から5月4日にかけて、アメリカ・ニューヨーク行動として代表団を派遣しました。国公労連から参加した、太田健太中央執行委員と関口香織中央執行委員から、そのとりくみについて報告します。
NPTは、核保有国であるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国を「核兵器保有国」と定め、それ以外の国による核兵器の保有・製造を禁止しています。さらに、核保有国の責務として、核軍備を減らすことに誠実にとりくむことを義務付けています。日本は、1976年にこの条約を批准しています。
5年に一度開催される再検討会議では、参加している191か国が、過去に合意した内容の実施状況などの話し合いに加え、今後のとりくみについて、全会一致での成果文書の採択に向けた議論や交渉を行う場でもあります。直近の2回の会議では、成果文書の採択に至りませんでした。そのため、今回も採択できなければ、NPTそのものの存在が危うくなるとの指摘もされていました。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃が続く不安定な国際情勢の中で、今回のニューヨーク行動は大きな意味を持ちます。各国の代表団とともに、多くの市民が議論の行方に関心を持っていると世界へアピールするとともに、核兵器廃絶へ踏み出すよう各国政府に迫るための国際的な行動となります。
そのスタートとして行動初日の国際共同パレードでは、被爆者代表のほか、日本・アメリカ・イギリス・韓国などの代表団が、「ノーモア広島!ノーモア長崎!ノーモア被爆者!ノーモアWAR!」とマンハッタンの大通りに力強いコールを響かせ行進しました。
核使用の危機と被爆国の役割
再検討会議初日の挨拶でグテレス国連事務総長は、核使用の危険の高まりに危機感をあらわにし、各国がNPTを遵守し軍縮と核の不拡散への努力を強めることを求めました。討論は、中立外交を貫くベトナムが議長国に選出されましたが、イランが副議長に推薦されていることに対し、「条約に違反し核開発を進める国に資格はない」などとアメリカが反発。NATO加盟国も同調するなど、冒頭から、決裂を危惧するような意見の応酬がありました。核保有国同士も、中国やロシアが自らの核軍縮の責任は棚上げにしてアメリカ等を非難するなど、意見の対立が続きました。日本から派遣された、国光外務副大臣からは、「核廃絶の原点は、核兵器の惨禍を二度と繰り返してはならないという被爆者の願いにある」との高市首相のメッセージを代読し、国際協調の枠組みであるNPTをより強固な形で次世代に引き継げるよう維持・強化が急務だと訴えました。しかし、前回会議には岸田首相が出席していたことを考えると、副大臣の派遣には物足りなさを感じました。また、核保有国に対して核軍縮への義務の履行を迫ることもなく、戦争被爆国として核廃絶に向けた行動の先頭に立ち努力する姿勢が見えなかったことはとても残念でした。
また、行動の一環としてビエット議長(ベトナム)に要請しました。ビエット氏は、自国において、ベトナム戦争で使用された枯葉剤による影響が2世3世へと出ている現状に触れ、広島、長崎の被害については深く理解した上で再検討会議に臨んでいると話しました。また、困難は伴うが、日本からの代表団とも協力して、各国共通の一致点を探し出したいと熱く語ってくれました。
最終的に今回の再検討会議は、アメリカとロシアの対立をはじめとした各国の溝が埋まらず、3年連続して成果文書を採択できずに閉幕を迎えました。一方、各国のNGO(非政府組織)代表団から、核保有国であっても、市民は核兵器廃絶を願い、それに向けて運動しているとの報告がされたことはとても印象的でした。私たちは、唯一の戦争被爆国としての役割を日本が果たすよう、核兵器廃絶署名をはじめとした草の根の運動に関わっていくことが大切だと改めて強く感じました。 (関口香織)
NGOセッション 核の非人道性訴える
NPT再検討会議では政府代表だけでなく、各国のNGOも意見を述べる機会(NGOセッション)が設けられ、日本被団協、日本原水協、平和首長会議(広島市長、長崎市長)、韓国原爆被害者協会などから様々な訴えがありました。
そのNGOセッションに先立ち、日本原水協代表団は、前日に被爆者らを招いた代表団会議を開催。被爆の苦しみや核廃絶への思いなど、核兵器の非人道性をテーマに、広島、韓国、マーシャル諸島の3つの地域から深刻な被爆の実相が語られました。
広島で姉とともに被爆した金本弘さんは、幼少期から病と闘い続けた人生と亡き姉への思いや「原爆がなければ」という痛切な思いを、涙ながらに語りました。韓国から広島に強制連行され被爆したシム・ジンテさんは、病に苦しみ、約7万人の朝鮮半島出身被爆者への謝罪も補償もない現状を告発しました。被爆2世のハン・ジョンスンさんは、自身と子が病に苦しみ、核被害が世代を超えて続く現実を訴えました。さらに、ビキニ環礁の出身者であるマディソンさんは、米国の水爆実験で故郷のマーシャル諸島を奪われ、海洋民族ながら今も故郷の海に帰還できない無念と、核被害の深刻さを語りました。
核兵器の被害は、世代や国を越えて今もなお続く問題です。核兵器の非人道性とこうした悲劇を繰り返さないことの訴えを前日に学ぶことで、NGOセッションでの様々な訴えをより深く受け止められました。(太田健太)
NYメーデー 「労働者のパワー」実感

NYメーデーの前日に行われた全労連と米国レイバーノーツの交流会では、アメリカの労働運動から多くの学びを得ました。特に、アメリカは組合結成の法的ハードルが高く、組織率が低い中で労働者に主体性を持たせ、オルガナイザーを育て広げることを重視している点は、私たちの運動にも示唆を与えるものでした。さらに、「自分の労働が軍事行為に加担していないか」という相談が増えていることも紹介され、反戦・平和の課題が、労働現場の問題として広がっていることを示していました。広島県被団協の佐久間邦彦理事長の被爆証言や、全教の鈴木憩子中央執行委員の報告とあわせて、労働組合が平和を守る主体であることを国際的に共有できたことは大きな成果でした。
街全体で祝う労働者の祭典
翌日のNYメーデーでは、「労働者の祭典」の名のとおり、労働者と市民との一体感や、労働者が連帯することで生まれるパワーを肌で感じました。
メーデー発祥のアメリカでは、戦後に主要労組の保守化などを経て、メーデーは世間から長らく忘れられた存在となっていました。しかし近年、移民労働者を組織化する労組のとりくみと反トランプ・反ⅠCEの運動が合流し、今年は各地で主要労組が参加するメーデーへと発展しました。
さらに、NY市長のマムダニ氏が、現職市長として実に100年以上ぶりにメーデーの集会で登壇し、「連帯した労働者なくしてこのNYの街は成り立たない!この街は、労働者の連帯の力で強くなる!」と熱くスピーチ。会場のボルテージは一気にあがり、参加者からのコール&レスポンスにより大歓声に包まれました。
集会後のデモ行進では、沿道の市民が参加者に手を振ってエールを送り、デモの隊列とともにコールするなど、デモ参加者と市民との距離がとても近いのが印象的でした。NYには労働者の運動と市民の確かな一体感があり、これは今後の日本の労働運動の発展にとっても重要な視点だと感じました。(太田健太)
カスハラ対策の人事院規則 10月から施行
人事院は4月15日、人事院規則10―17を制定し、本年10月1日に施行することとしました。その概要は図表のとおりです。
これは、改正労働施策総合推進法が本年10月に施行され、カスタマー・ハラスメント(以下「カスハラ」)対策が民間企業で雇用管理上の措置義務となることを踏まえたものです。この人事院規則の第1条では、「人事行政の公正の確保、職員の利益の保護及び職員の能率の発揮を目的」とした措置を講じることが定められています。ハラスメント対策の人事院規則としては、セクハラ(1999年4月施行)とパワハラ(2020年6月施行)につづいて3つ目となります。
カスハラが深刻化した職場の実態
国公労連は、職場で深刻化するカスハラの被害を踏まえ、2021年に組合員を対象とした実態調査を実施し、その結果を記者発表しました。政府・人事院には、「すべてのハラスメントの根絶に向けて実効性のある対策を講じること」などを要求してきました。新たに人事院規則を制定させたことは、そうした運動の成果です。
カスハラの背景として、民間企業では、①過剰な顧客至上主義の蔓延、②デフレとも相まった商品価格以上のサービス(付加価値)の恒常化、③ストレス・格差社会の長期化、④SNSによる匿名性の高い情報発信ツールの普及などが指摘されています。
国の行政機関では、こうした一般的な背景とともに、過剰な定員合理化がその要因であると指摘せざるを得ません。職場の脆弱な人的体制では、個々の職員の資質や長時間過密労働に依存した行政運営となっています。結果として、行政サービスの低下を招き、ささいなミスをきっかけに国民の怒りを誘発しているばかりでなく、苦情処理の担当者がワンオペを余儀なくされることに伴い、そうした怒りを深刻化させる悪循環を招いています。
カスハラ対策の実効性を確保するために
こうした実態を踏まえれば、新たに定められたカスハラ対策では、多岐にわたる措置が講じられなければなりません。
例えば、カスハラの防止には、①各府省が定める基本方針などの外部への公表と啓発、②職員の個人情報の取扱いの見直し(名札の様式変更、庁舎内での撮影禁止など)、③必要な人的体制の確保(管理職員の配置や複数の職員での対応)、④行政窓口の録画や電話の録音(被害の抑止効果と証拠保全)などとともに、カスハラが発生した場合には、⑤被害者を救済するための精神的なケアや職務の変更、⑥警察・人権擁護機関との連携、⑦再発防止のための外部への公表と啓発などが必要となります。
一方で、人事院規則の運用通知には、「苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針」が定められています。
人事院が2024年7月に公表した「ハラスメント相談に関する職員アンケート調査結果」では、「ハラスメントを受けたと感じたことがある職員のうち相談をした職員」は35.8%でした。「相談した職員が『公務内の相談窓口』を選択しなかった理由」(複数回答)は、「相談窓口より身近な人の方が相談しやすいから」が59.8%、「相談をしなかった理由」は、「相談をしても解決しないと思ったから」が52.2%などとなっています。この結果を踏まえれば、職員の心理的安全性をはじめ、健康に働くことのできる職場環境が整備されているとは言えません。苦情相談の実効性を確保することが不可欠です。 国家公務員は、日本国憲法に定められた「全体の奉仕者」であり、「公共の利益」を実現することがその本分です。カスハラを許容することは、それを「一部の奉仕者」に変質させることを意味します。政府・人事院の責務は、各府省が実施するカスハラ対策の「調整、指導及び助言」や従来のハラスメント対策の延長線上にとどまることなく、さまざまな措置を主体的に講じることにあるはずです。

