国公労新聞|2025年11月10・25日合併号|第1654号

25人勧の早期実施を求め政府交渉
「ワークライフバランス」発言は撤回を

 国公労連は10月30日、8月8日に提出した要求書に基づく政府との3回目の交渉を実施しました。2025年人事院勧告(以下「25人勧」)の取扱いについては、終息する兆しのない物価上昇に苦しむ職員とその家族の生活実態を少しでも改善するため、その賃金改定を完全かつ早期に実現することをあらためて求めました。

 7月の参議院議員選挙から3か月にわたる政治空白があり、10月21日に第219回臨時国会が召集されましたが、本年度の補正予算案の審議なども予定されているため、改正給与法案の十分な審議の確保と早期の成立が蔑ろにされるおそれがあります。

 一方で、本年度の地域別最低賃金が順次改定され、10月上旬には時給1226円の東京都、1225円の神奈川県で発効しました。2都県の一部の地域では、すでに国家公務員の高卒初任給が地域別最低賃金を下回る事態に至っています。

 内閣人事局は、「人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢の下、国政全般の観点から検討を進めているところであり、早急に結論が得られるよう努力してまいりたい」と回答するとともに、そのスケジュールについては、11月前半の給与関係閣僚会議で取扱いを決定し、この臨時国会で改正給与法案の成立をめざしていることなどを明らかにしました。

 しかしながら、25人勧が想定している12月1日までの改正給与法の施行が危ぶまれていることから、「人事院勧告制度を尊重する」とする内閣人事局の姿勢は、労働基本権の代償措置を軽視するものと言わざるを得ません。

高市政権が狙う「働かせたい改革」

 高市首相は、自由民主党総裁に選出された10月4日、「『ワークライフバランス』という言葉を捨てます」と発言し、多くの批判を招いています。国公労連は、この発言の撤回を内閣人事局に求めましたが、「新総裁としての決意を述べたものであって、我々に向けられたものではないと認識している…引きつづき『働き方改革』を進めてまいりたい」と回答するにとどまりました。

 しかしながら、この言葉は内閣総理大臣としての認識にも内在するはずです。それを裏付けるように、10月21日には、「労働時間規制の緩和の検討」が厚生労働大臣に指示されています。

 「ワークライフバランス」は、国家公務員の「働き方改革」をめぐる中心的な概念として定着しつつあります。職員の長時間過密労働の是正や健康・安全確保に当たって、それが欠落した措置には実効性を期待できません。高市政権が狙う「働きたい改革」「働かせたい改革」などの動向も厳しく監視していく必要があります。

 また、10月21日に高市首相が松本大臣(国家公務員制度担当)に宛てた指示書には、「国家公務員の人事評価の徹底、早期選抜・中途採用を推進しつつ、執務環境を含め、その処遇を大幅に改善するとともに、定員抑制を見直しに取り組む」と記述されています。内閣人事局は、この趣旨などについて、「特別の指示があったとは認識してない。これまで推進してきている施策の範囲内のものと認識している」と回答しています。

 国家公務員の人材確保が喫緊の課題となっていることも踏まえ、その勤務条件の改善、長時間過密労働の解消につながる定員管理政策の抜本的な転換などに向けて、政府への継続した追及が不可欠となっています。

「青さ」を力に未来切り拓く
国公青年フォーラム定期総会

 国公青年フォーラムは10月11日、東京都内で2025年度定期総会を開催し、27人が参加しました。各単組の青年から全国交流集会などのとりくみや、政府のDX推進や法改正に伴う職場環境の変化に対して人員不足の職場実態などが報告されました。
 学習会では、国公労連の鎌田一顧問による「国公労働運動と行政民主化」についての講演がありました。戦前の「天皇の官吏」から今の「全体の奉仕者」となった中で、労働基本権制約や弾圧、行革・省庁再編、人事評価制度導入などに立ち向かってきた国公労働運動の歴史を振り返るとともに、国民本位の行政実現のため政策チェックと職場改善を柱に行動してきたことが語られました。特に、青年運動の要求によって初任給の改善や週休2日制など、現在では当たり前に享受している権利を勝ち取ってきた経緯を学びました。
 講演の最後には、国公労働運動が国民の基本的人権を守り行政の信頼を高める重要な役割を担っていると強調しました。その上で、青年の情熱と希望こそが社会を豊かにする原動力だと訴え、理不尽に抗い、社会正義を貫いてより良い社会を求めていく、そうした「青さ」を大切に未来を切り拓いてほしいと力強く呼びかけました。
 分散会では、青年が抱える課題や今後の青年活動の展望、組織拡大のアプローチについて活発な意見交換を行い、宿舎など身近な職場問題や、「情熱が無ければ加入は広がらない」など多様な意見が交わされました。
 運動方針案が採択され、新たに運営委員長に選任された太田健太中央執行委員による団結ガンバローで閉会しました。春の国公青年セミナーをはじめとした青年が主役の運動をすすめていきます。

レバカレ開催
労働運動の新ステージへ

 全労連は10月11〜13日、「労働運動交流集会・レイバー・ユニオン・カレッジ(略称レバカレ2025)」を東京都内で開催し、700人が参加しました。70の分科会と3つの全体会が開かれ、組織拡大から平和やSNSまで、多彩なテーマで参加者が交流しました。国公の仲間も63人参加し、本部から3つ(下記掲載)、大阪国公も1つの分科会を主催しました。

青年分科会
運動の担い手になった原点語る


 なぜ今日この場にいるのか―自身が運動の担い手になった原点を語り合う場として、公務・民間の垣根を越えて75人が集い、熱気に包まれた交流の時間となりました。
 冒頭に国公青年フォーラム運営委員から、「公務の労働運動は地場賃金への波及や人権保障、行政の民主化に寄与してきた。官民が手をとりあえば社会正義や権利保障が実現する」と公務・民間の運動は一体であることを訴えました。
 続いて登壇した公務職場の青年2人から「全国の仲間との交流や職場ハラスメント対応を通して活動の意義を実感した」「今ある権利を守るために活動している」と自身の経験が語られました。民間労組の2人からは「若い分会長を支えるために関わり始めた」「職場に組合を立ち上げ、今では使用者と交渉できるようになった」と厳しい状況下での前向きな実践が共有されました。
 つながりが運動の原動力という教訓を得たこの分科会は始まりの一歩目ですが、小さな一歩の積み重ねが、官民を越えた大きなうねりをつくっていく―そんな未来を見すえて運動の担い手を広げる歩みを進めます。

レバカレ分科会
10の問いからさぐる国家公務員のリアル

 国公労連はレバカレの1日目(10月11日)に、分科会「10の問いからさぐる〈国家公務員のリアル〉」を運営しました。
 この分科会は、国家公務員がよく聞かれる「10の問い」(高給取り? 残業してばかり? 非正規公務員が多い? 国家権力をふるう怖い職業? 霞が関で働いている? 一生安泰? 労働法は適用されない? 労働組合をつくれる? 団体交渉には意味がない? 政治家の言いなり?)を糸口として、国家公務員のイメージと実態についてそれぞれの参加者が出しあいながら、対話によって掘り下げていく分科会です。

「正解のない問い」から広がる対話


 当日は公務・民間の様々な職場から参加者が集まり、非正規化・外部委託化の実態、公務員が果たすべき本来の役割、行政民主化の重要性など、幅広いテーマで対話が行われました。
 参加者からは、「賃金の話になるだろうと思って参加したら人権保障の話に落ち着いてすごく良かった」、「対話を通じて、労組未加入の若い人に伝えるべき団体交渉の意義を再認識できた」などの感想が出されました。
 運営側としては、講演・報告などの台本や発言原稿を事前に用意できる形式としないことには不安もありましたが、台本なしで「正解のない問い」を話しあったからこそ、参加者の主体性が引き出され建設的な対話となったように感じました。今後のとりくみに活かしたいと思います。

レバカレ分科会
仲間を誘う対話のレシピ 声かけの難関乗り越えよう

 レバカレ2日目(10月12日)の最後に、分科会「仲間を誘う対話のレシピ〜声かけの難関を乗り越えよう」を開催しました。
 この分科会は、職場で未加入者を労働組合に勧誘したり、組合員を組合のイベントに誘ったりするときの「声かけ」に焦点を当て、声かけへの意識の持ち方や対話のステップなどを学ぶとともに、参加者同士で声かけの演習をすることを目的としたものです。国公労連のパンフレット『対話をすすめる5つのレシピ』を素材にしています。

「声かけの意識変わった」グループ演習

 分科会当日は、4人掛けの9つのグループ席が満席となり、運営スタッフを含む42人の参加のもと、ファシリテーター(進行役)と参加者が双方向でやりとりをすすめる対話形式の講義で学びを深めました。
 声かけの演習では、各々の参加者が声かけのシナリオをつくり、そのシナリオに沿ってペアで声かけの練習をしました。参加者からは、「具体的にわかりやすい話で勧誘されると、思わず『参加します!』と言いたくなってしまう」「この分科会に参加して声かけに向けた意識の持ち方が劇的に変わった」「実際に声かけの練習をすることで、自分の声かけの仕方の改善点が明確になった」などの感想が寄せられました。
 分科会では、みんなが安心できる会議や組織のあり方についても意見交換をし、「心理的安全性」の大切さを学びあいました。

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