全員参加型で運動すすめよう
笠松書記長にインタビュー
過去最高の内部留保
過去最低の労働分配率
Q 秋季年末闘争をめぐる情勢の特徴をお聞かせください。
A 「日経平均株価史上初の4万5000円突破 連日最高値を更新」といった景気の良い報道が流れていますが、一方で国民の生活は大変苦しい状況を強いられています。
総務省の消費者物価指数では23か月連続して2〜4%の上昇(前年同月比)となっており、物価高騰がつづいています。また、厚生労働省が発表している7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)では、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月から0.5%増加し、7か月ぶりにプラスとなっていますが、ボーナスなど「特別に支払われた給与」の伸び率が影響した結果であり、所定内給与に残業代や休日手当などを加えた「きまって支給する給与」だけで見ると生活が良くなっているとは言い難い状況です。
他方、大企業の内部留保は過去最高の564.1兆円に上り、利益もこの10年で2倍、30年で17倍に増加しているにもかかわらず、労働分配率は過去最低の37.3まで落ち込んでいます。労働者の賃金・賃上げが意図的に抑えこまれていることなどが原因で生活改善となっていないのです。組合員のみなさんをはじめ、労働者・国民の生活を改善させていくことが秋季年末闘争で求められています。
国政に目を向ければ7月の参議院選挙の結果、衆参両院で与党が過半数割れし、政治的空白が生じ、停滞している状況にあります。また、石破首相の辞任表明を受けて、自民党総裁選が実施されており、国政の停滞が長期化しています。本来であれば、早急に臨時国会を開催し、参議院選挙でも争点となった物価高騰対策などが議論されるべきです。この秋季年末闘争期は、私たちの労働条件にかかわっても重要な時期です。与党が過半数割れしている状況を捉えれば、国民の願いや私たちの要求を実現させるチャンスともいえます。国民のみなさんとの連帯と共同を前進させ、物価高対策や、生活改善できる大幅賃上げに向けた世論を広げていくことが必要です。そのためにも職場・地域からのいっそうの奮闘が求められます。
25人勧、勝ちとった成果と残された課題
Q 25年人勧の取扱いはどうなっていますか。
A 25年人事院勧告では昨年に続き少なくない要求の前進を組合員・労働組合の力で勝ちとることができました。官民比較企業規模を100人に戻させたこと、すべての職員を対象に俸給表全体を引き上げ、中高齢層職員においても昨年を大幅に上回る改定額とさせたこと、駐車場料金を含むマイカー通勤にかかる手当を改善させたことなどは、貴重な到達点です。
しかし、私たちの要求や生活と労働の実態から見ればまだまだ不十分で、前進・改善させていかなければなりません。
また、機関間、地域間、職員間の格差を拡大する措置も打ち出されています。中高齢層職員や地方出先機関で働く職員が労働条件改善の流れから取り残されている実態もあり、直ちに是正・解消させなければなりません。
政府は8月7日に実施した第1回給与関係閣僚会議で人勧尊重の姿勢は示していますが、政治情勢が混沌とした状況で、人勧取扱いや改正給与法の国会審議のスケジュールは極めて不透明です。
国公労連は、月例給・一時金などの改善について、政府の恣意的な取扱いを阻止し、十分ではないものの組合員とその家族の生活を少しでも改善させるため、改善部分の早期実施に向けた追及を強化していきます。また、再任用職員の賃金・一時金の抜本改善や非常勤職員の均等・均衡待遇、人事行政諮問会議の最終提言を踏まえた措置など、残された課題に対する政府・人事院への要求を強めていきます。
職場からのとりくみとしては、9月10日号の国公労新聞なども活用し、定期大会での議論やこの間の要求・運動の到達点を組合員同士で確認し、組織拡大につなげていくとともに、当局追及をはじめ職場・地域から要求実現にむけたとりくみをすすめていきます。
増員、公共サービス拡充へ世論を広げよう
Q 公務・公共体制拡充、長時間労働の課題はどのようにすすめますか。
A 国民のいのちやくらし、権利を守る、そのことを担う職員の長時間過密労働をなくし健康を守る一番の方策は人手不足の解消=増員です。毎年のように自然災害が多発し、公務員の役割が再認識されるもと、増員をはじめとする公務・公共サービス拡充に対する世論は大きく広がっています。2024年度も「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」にとりくみ、残念ながら請願採択は叶いませんでしたが、紹介議員は、114人にも上りました。各単組がとりくんでいる請願署名は国会採択を勝ちとり、定員も純増となるなど、運動の前進をつくりだしています。
2024年6月には、政府の定員管理政策を変更させ、合理化目標数を5年で10%から5%へと半減させるという貴重な到達点を築きました。その反面、増員数も抑えこまれ、とりわけ地方出先機関における増員は十分ではありません。さらに政府は「人手不足が深刻化する中、行政DXにより公務員の数を増やさずに行政サービスを持続できる環境を整備する」との方針を示しています。
国公労連はこれまでの運動の到達点と現情勢をふまえて、この秋から「公務・公共サービスの拡充を求める請願署名」を単組の請願署名と歩調を合わせて推進していきます。その際、世論をさらに広げていく観点を重視し、職場要求と地域住民の共通する要求を「見える化」して、国民本位の行財政・司法の確立を国民的課題として社会連帯を追求していきます。また、公務・公共サービスを必要とするステークホルダーとのつながりをいかした市民との共同を実践していきます。2026年度の定員要求(政府全体で5342人、純増2091人)の満額確保にむけて政府・当局への追及も強めます。
仲間を増やすキーワードは「対話」
Q 秋の組織拡大強化月間のとりくみはどのようにすすめますか。
A 昨年度につづき「全員参加型の運動スタイル」をすべての職場で実践し、「人づくり」すすめ持続可能性を追求することを提起しています。
要求実現をめざして仲間を増やし、全労連の運動方針である「対話と学び合い」を実践していきます。具体的には、この10〜12月の強化月間において各単組が定期大会時から組合員数を増加させることを目標とし、正規・非正規・再任用などすべての職員を対象とした対話と脱退防止のとりくみをすすめます。とりわけ、10月および4月の新規採用職員の未加入者への重点的な働きかけと、異動などに伴う脱退防止策を積極的に講じるとともに、2026年春闘を視野にいれた支部・分会体制の基盤づくりをすすめていきます。
「対話」を重視し、職場で働くすべての仲間一人ひとりとの対話を通じて、要求を組織するとともに要求を実現するためにも労働組合への加入も含めて活動に参加していただくことを呼びかけていきます。
その際、組合が勝ちとってきた成果や組合の力、組合員だからこそ加入できる国公共済会を全面に打ち出し対話をすすめていきます。民間損保では自然災害が多発・甚大化していることに伴って火災保険の掛け金が急騰していますが、国公共済会の火災共済は1円も上げていません。こうした有用性なども提供していきます。組合員を増やして要求を実現・前進させていきましょう。
最下位脱出?
秋田最賃引上げ『半年遅れ』に抗議
【秋田県国公発】8月25日、秋田県の労組界隈に衝撃が走りました。秋田地方最低賃金審議会が、最低賃金を現行から80円引き上げ1031円と改定したものの、発効日を2026年3月31日とする答申を行ったからです。「来年3月末日?!いくらなんでも遅すぎる!」ニュースサイトでは、「半年遅れては実質40円の引上げ、実質全国最下位は変わらない」とのコメントも。しかし、テレビや新聞は「最下位脱出、時給1000円超えた」と報じ、発効日については記事の最後に申し訳程度に触れるのみ。
本来、告示から30日で発効するものを半年もの先送りは例外規定の乱用です。物価上昇に苦しむ労働者を置き去りにし、使用者に過度に配慮をするものであり、法の趣旨からも到底許されません。
秋田県春闘懇談会と秋田県労連は、街頭宣伝を実施。9月8日には秋田県国公と全司法秋田支部を含む14団体が労働局へ異議申出を行いました。また、全労連竹下事務局次長が同席して、全国750団体から集まった再考を促す団体署名も提出。さらに県庁にて記者会見を行い、異議の内容と発効日の問題点について説明し、理解を求めました。一地方の最賃審議会に、全国から要望を出すのは極めて異例ですが、わずか一週間で700を超える署名が集まるとりくみも、あまり例がないといえます。
残念ながら異議申出は却下されましたが、私たちが要望していた中小・小規模事業者への支援の拡充を国に要請することが審議会の報告に盛り込まれたほか、地元紙が社説の中で、「物価上昇下であり労働者への配慮も必要」と論じるなど、全国の仲間との連帯したとりくみがマスコミの目を発効日遅延問題に向けさせることができました。
国公女性協
ジェンダー平等で誰もが働きやすい職場へ
秋の代表委員会
国公女性協は、9月15日、都内で「2025年秋の全国代表委員会」をオンライン併用で開催しました。7単組、3県国公からオブザーバーを含め22名が参加し、2025年度運動方針と統一要求、秋季年末闘争方針等を確立しました。
来賓の国公労連・笠松鉄兵書記長からは、労働組合の役割が重要視される情勢の中でさらなる女性協のとりくみへの期待と、社会的困難を抱える当事者自らが声を上げる重要性を伝える力強い連帯あいさつをいただきました。
続いて、関口香織議長が運動方針等を提案した後、「私の考えるジェンダー平等とは?」をテーマに分散会を実施。身近な違和感などを出し合いながら、どんなとりくみをすればジェンダー平等社会が実現できるか、意見交換しました。「まだまだ家事育児は女性の仕事という社会の固定観念がある」「どこの職場でも育児等の短時間勤務者には代替要員が確保されないため、周りの負担が大きくなっている」「医療現場では賃金が安く、経験年数に見合っていない。ケア労働は女性の仕事という固定観念が残っているのでは」といった指摘や、改善のために人員増は当然のことながら、「男性が長期の育休を当たり前に取得する職場にしていく」「シングル女性の要求も吸い上げる工夫が必要」「誰もが働きやすい職場へ、まずは長時間労働をなくしていく」など、今後の実践に向けた意見が出されました。
全体討論では、県国公参加者から「県の女性協活動が難しくなっている。次世代にどう引き継ぐか、アイデアはないか」という悩みも出され、それに応える各組織のとりくみを共有しました。また、予算不足等で独法職場がさまざまな困難に直面している実態も報告され、運営費交付金の拡充を求める国公労連の運動への結集も呼びかけられました。
最後に今後も集会等を通じより多くの仲間とつながり、切実な要求の実現に向けたとりくみについて女性協単組代表者会議等で検討していくことを確認。来期女性協議長については、引き続き国公労連の関口中央執行委員が選出されました。