国公労新聞|2025年10月10・25日合併号|第1653号

25人事院勧告の取扱い〈政府と中間交渉〉
早期に完全実施を

 国公労連は9月18日、単組書記長などの参加のもと、8月8日に提出した要求書に基づく政府との中間交渉を実施しました。
 内閣人事局の辻総括参事官は冒頭、2025年人事院勧告(以下「25人勧」)の取扱いについて、「(8月7日に開催された給与関係閣僚会議で)人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある旨、確認されたところである。今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている」などと回答するにとどまりました。
 25人勧は、私たちの要求をすべて実現するものではありませんが、①官民較差の比較企業規模の引上げ、②中高齢層にまで波及する俸給額の改定、③2年連続となる通勤手当の拡充など、少なくない賃金改善を伴うものとなりました。終息する兆しのない物価上昇に苦しむ職員とその家族の生活実態を少しでも改善するため、最低でもこれらの賃金改定を完全に実現する必要があります。

政府は責任ある対応はかれ

 6月に閣議決定された「骨太の方針2025」では、「賃上げを起点とした成長型経済の実現」「物価上昇を上回る賃上げの普及・定着」などが謳われています。約900万人の労働者に影響する国家公務員の賃金は、それを先導するように早急かつ大幅に改善されるべきです。
 一方で、近年の人事院勧告の取扱いは、2021年と2024年の2回にわたって、政局に紛れたまま放置され、改正給与法の成立・施行が遅延し、国家公務員の勤務条件の安定性が著しく損なわれました。労働基本権の代償措置である人事院勧告を軽視する重大な権利侵害であり、とりわけ2024年の賃金改善が「凍結」状態となったことは、到底容認できません。
 10月4日には自民党の総裁選挙が実施され、秋の臨時国会では、新たな首相が指名されます。その召集は10月下旬頃と予想されていますが、2025年度補正予算案も審議されることを踏まえれば、改正給与法案の十分な審議時間の確保と早期の成立がないがしろにされることも危惧されます。
 国公労連は、9月29日に「賃金改善の早期実施などに向けた要求決議」のとりくみを各組織に要請しました。10月17日までに「要求決議」を機関会議などで決定し、内閣人事局宛てに送付するとりくみです。

非常勤課題改善待ったなし

 25人勧では、国家公務員の賃金のあり方をめぐって、さまざまな課題が残されました。①民間の春闘相場を下回る賃金改定率、②本府省業務調整手当の拡充による地方支分部局との機関間格差の拡大、③年齢差別である高齢層の理不尽な賃金抑制、④同一労働同一賃金の原則に矛盾した地域手当による地域間格差、⑤再任用職員や非常勤職員の劣悪な勤務条件など、極めて多岐にわたっています。
 これらの課題を早急に解消しなければ、職員の不公平感の蔓延やモチベーションの低下、「若者の公務員離れ」がより深刻となり、人材確保がさらに困難なものとなりかねません。この交渉では、各単組からも多角的な観点で主張しました。
 とりわけ非常勤職員の勤務条件は、「3年公募要件」が撤廃されてもなお、雇用の安定化につながらない実態、常勤職員との均等・均衡待遇などが喫緊の課題であるにもかかわらず、その展望すら反映されない「ゼロ回答」の勧告・報告となりました。
 内閣人事局は、各単組からの追及を踏まえ、「フルタイムの常勤職員とそれ以外の非常勤職員という任用形態に限界がきている…その仕組みそのものを変えていく必要があるのではないか。多様化、流動化に対応していかなければいけないという問題意識は政府も共有している」と回答しました。
 「骨太の方針2025」などでは、「会計年度任用職員の処遇改善や能力実証を経た常勤化など在り方の見直しを進める」ことが謳われています。非正規公務員の要求の実現に向けて、政府の有言実行を求めていく必要があります。

定員管理政策の抜本的転換を

 この交渉では、長時間過密労働の是正に当たって、その根本的な要因である職場の人的体制の確保、すなわち政府の定員管理政策の抜本的な転換が不可欠であることも強調しました。
 2026年度の定員要求は、実質的な純増が2091人となっています。内閣人事局は、「各府省から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っている」と回答するにとどまりましたが、各府省の定員要求は、最低でも満額査定することを求めました。
 また、健康・安全確保の課題であるカスハラ対策は、25人勧での「公務員人事管理に関する報告」を踏まえ、「各府省等におけるとりくみを支援して」いくという回答にとどまっています。
 国家公務員は、憲法に定められた「全体の奉仕者」であり、「公共の利益」を実現することがその本分です。カスハラを許容することは、職員を「一部の奉仕者」に変質させることを意味します。政府の責務は、「各府省等におけるとりくみを支援して」いくことにとどまらず、その姿勢や認識を組織の内外に発信するとともに、実効性のある措置を主体的に講じることにあるはずです。
 政府との最終交渉のスケジュールは不透明なままですが、すべての国家公務員にとって魅力と持続可能性のある勤務条件を構築するため、25人勧に責任をもって対応すること、労働組合と誠実に交渉・協議することを求めていく必要があります。

第二の賃金「昇格」
改善求め交渉

 国公労連は6月2日、国土交通労組、全法務及び全国税の行(二)組合員を含む12人の参加で人事院交渉を実施しました。
 全国的に頻発している大規模な自然災害では、国の行政機関が担う自動車運転業務の重要性が改めてクローズアップされています。行(一)以外の俸給表も職務の特性に見合った「アップデート」など、きめ細やかな検討を求めました。
 組合員からは、「定年延長後も仕事内容は変わらないのに30%もの賃下げはおかしい」「50代以下の行(二)職員はほとんどが付加業務をしており、働き方と賃金が見合っていない」「旅費制度が変わり、出張でどれほど運転しようが日当がなくなった。仕事量は増えているのに減収だ」「能登半島地震を経験した。現地へ行く官用車は必要。不補充政策の撤回を」「災害応急作業等手当を運転手にも適用するよう求める」といった職場からの切実な声を伝えました。
 人事院からは、「行(一)以外の俸給表の給与水準は、行(一)との均衡を基本に所要の改正を行っている」「部下数要件の運用は可能な限り配慮してきている」「60歳前後の給与カーブの在り方は、民間水準を注視しつつ検討していく」といった従来回答にとどまりました。
 最後に国公労連から、行(二)俸給表の号俸の延長、官民較差の重点的配分などあらゆる措置を検討し、行(二)職員の処遇を早急に改善できるよう25人勧に反映することを求めて交渉を終えました。

安保法制強行から10年、2300人が抗議
武力で平和つくれない

 総がかり行動実行委員会は、安全保障関連法(安保法制)の強行採決から10年となる9月19日の夜、「武力で平和はつくれない!強行採決から10年 戦争法廃止!9・19国会正門前大行動」を開催し、国公労連の仲間も結集しました。安保法制は「戦争法」とも呼ばれ、集団的自衛権の限定的な行使容認など、日本の防衛政策を大きく転換させる法律で、施行当初より平和主義の理念との整合性が問われ続けています。参加した2300人が「戦争法は今すぐ廃止」「憲法生かせ」「排外主義は許さない」とコールし、戦争法廃止に向け粘り強くたたかい続けることを決意し合いました。

10月施行 育児時間の見直し等
取得パターン増える


 10月1日に、両立支援制度のうち「育児時間の見直し」と「育児に係る両立支援制度を利用しやすい勤務環境の整備」などが施行されました。これらは、昨年の人事院勧告時に育児休業法改正の意見の申出がなされ、すでに法改正がされていた内容ですが、同趣旨の民間の育児介護休業法の施行時期に合わせて今月から施行されたものです。「育児時間」と「育児に係る両立支援制度を利用しやすい勤務環境の整備」の見直しの概要は次の通りです。

育児時間の見直し


 改正前の育児時間制度は、対象となる職員の子の年齢について、常勤職員は「子が小学校就学の始期に達するまで」、非常勤職員は「子が3歳に達するまで」と任用形態で格差が設けられていましたが、今回の見直しで非常勤職員も「小学校就学の始期に達するまで」となり、均等待遇を求めてきた私たちの要求が一歩前進しました。
 また、育児時間はこれまで、勤務時間の始め又は終わりに、30分単位で1日につき2時間以内で請求する制度でしたが、見直し後は従来のパターンに加え、「1時間単位で1年につき10日相当の勤務時間の範囲内(フルタイム勤務の場合は年間77時間30分以内)で請求するパターン」のいずれかを選択できるようになりました。
 新パターン(1年10日相当)では、1日勤務しないこととすることも可能で、従来パターン(1日2時間以内)で制度の対象外とされていた1日の勤務時間が6時間15分未満の非常勤職員も請求できます。なお、新パターンで1日勤務しない場合は分単位で承認されるほか、1時間未満の残時間数を使い切る場合にも分単位で承認されます。
 請求する際の期間については、2025年度は10月施行のため10月1日から2026年3月31日の半年間となり、新パターンで請求する場合は「5日相当」の時間数となります。2026年度以降は、4月1日から3月31日までの1年間を期間として請求します。
 そのほか、育児時間に関するいくつかの運用も柔軟化されます。従来パターン(1日2時間以内)では、「勤務時間の始め又は終わり」という制限が撤廃され、勤務時間の途中での請求・承認が可能になりました。それに伴い、同様の制限があった時間単位の介護休暇・介護時間についても時間帯制限が撤廃され、保育時間も含め、他の休暇との併用・組み合わせが可能となりました(保育時間については1日勤務しない日は取得不可)。
 全体としては制度が拡充されますが、柔軟化する分、今後の運用は複雑になります。詳細は人事院HP(妊娠・出産・育児・介護と仕事の両立支援のページ)をご確認ください。

育児両立支援の環境整備


 職員が本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき、育児休業制度等を周知し育児休業・産後パパ育休の取得意向を確認することが各省各庁の長の義務ですが、10月以降は、子や家庭の状況により両立の支障となる事情の改善に資する事項(勤務時間帯、勤務地、業務量等)に関する職員の意向を各省各庁の長が確認し、配慮することも新たに義務化されました。
 同様の意向確認・配慮は、子の妊娠・出産等の申出時期に加え、出生後3歳になるまでの適切な時期(1歳11月から2歳11月までの1年間)にも行うことが義務化され、育児期(3歳〜就学前)の両立支援制度等の周知と利用の意向確認、勤務時間帯・勤務地・業務量等の意向確認および配慮が必要となります。

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