3%超の賃金改定も生活改善には不十分
機関間・地域間・職員間の格差拡大は容認できない
2025年8月7日 国公労連中央闘争委員会
人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告・報告及び公務員人事管理に関する報告を行った。
官民較差にもとづいて、月例給は3.62%(1万5014円)、一時金は0.05月分の改善を勧告した。この勧告の背景には、25春闘で全労連・国民春闘共闘に結集する労働者・労働組合が、昨年以上にストライキ権を確立・行使するなど、いかんなく交渉力を発揮し、単純平均で3%超の賃上げを勝ち取った運動の成果がある。このたたかいに結集された全国の仲間のみなさんの奮闘に心より敬意を表する。
今回の勧告において月例給は、1991年以来34年ぶりに3%を超える改定率となった。また、初任給を高卒で1万2300円、大卒で1万2000円引き上げるとともに、若年層の給与改善に重点を置きつつも、すべての職員を対象に俸給表全体を引き上げ、中高齢層職員においても昨年を大幅に上回る改定額となった。このことは、組合員やその家族の生活改善にむけて全世代の賃上げを要求してきた私たちの運動の成果である。しかし、物価が46か月にわたって連続して上昇しているなか、生活改善という点では不十分であり、再任用職員をはじめ、中高齢層職員の賃金改善については改定率が逓減されたことによって、物価上昇分にも満たない水準にとどまった。このように生計費原則を顧みない勧告となったことは極めて不満である。
こうした結果となった背景には官民較差算出にあたっての比較企業規模の問題がある。この間の私たちの粘り強い要求によって今回、人事院は2006年に不当に引き下げた比較企業規模を100人以上に戻した。しかし、本府省・地方支分部局を格差なく1000人以上に引き上げるという私たちの要求には応えなかった。その一方で、本府省職員においては1991年以降、東京23区に所在する企業規模500人以上の本店事業所の従業員と対応させてきたものを1000人以上に引き上げた。このことは機関間格差を拡大するものであり、職員の不公平感を助長し、組織のパフォーマンスを低下させかねない。国の行政機関は、本府省や地方支分部局による全国ネットワークを構築し、各地域でくまなく公務・公共サービスを提供している。その組織体系などを維持するに当たっては、広域の人事異動も余儀なくされている。本府省と地方支分部局が連携して行政を担っており、いずれも全国的に事業を展開している大企業に相当する組織である。また、人材確保の困難性は本府省のみならず、地方支分部局も同様である。そうした実態を踏まえれば、比較企業規模を1000人以上として官民較差の解消を図り、「外部労働市場と比較して見劣りしない報酬水準」を早急に実現すべきである。
本府省業務調整手当については、幹部・管理職員を新たに手当の支給対象に加えたが、俸給の特別調整額との「二重払い」ともなりかねない重大な問題を孕んでいる。さらには、本府省課長補佐級以下の職員の手当額引き上げも盛り込まれた。こうした措置は、機関間・地域間・職員間の格差をいっそう拡大するものであり、容認できない。そもそも「本府省の業務の特殊性・困難性」などは、適正な職務評価に基づく級別定数の設定などに反映すべきである。業務の特殊性・困難性は、本府省のみならず地方支分部局でも当然に高まっている。こうした実態を正当に評価し、それに見合うよう、現行の級別標準職務表を抜本的に改善することが先決事項である。
マイカーにかかる通勤手当、特地勤務手当等については、いずれも改善の措置が図られた。とりわけ、マイカーにかかる通勤手当は各ブロック・県国公を中心とした強い要求であり、私たちの運動が実を結んだものである。通勤手当については、現在持ち出しとなっている費用がどこまで解消されるか判明しておらず、あくまでも実費弁償となるよう運動を強めていく必要がある。特地勤務手当等については、いわゆる生活不便地にも国の行政機関を設置していることの意義を重視し、地方支分部局での人材確保が困難となっている実態も踏まえて官署等の指定の拡充が必要である。
一時金について、国公労連はすべての職員の生活改善につながる期末手当への配分を要求しているが、人事院は期末手当に0.025月、勤勉手当に0.025月均等に配分しており、人事院の能力・実績主義強化の姿勢は依然変わっていない。
再任用職員については、一時金が常勤職員と同じ0.05月の改善となったものの、そもそも支給月数が常勤職員の約半分に抑えられている実態は解消していない。非常勤職員については、常勤職員に連動して賃上げとなることが想定されるが、その他はゼロ回答であり不満である。これら常勤職員との不合理な格差は即刻解消すべきである。
今年の勧告、職員の給与に関する報告、公務員人事管理に関する報告において、人事行政諮問会議の最終提言を具体化する施策・方向性が打ち出されている。人材獲得競争が激化するなか、「選ばれる公務職場」を実現するため「公務のブランディング」をすすめるとしているが、近年の「若者の公務員離れ」は、①「外部労働市場に見劣りしない報酬水準」を期待できない、②将来的にも上昇が見込める賃金体系が崩壊しつつあり、職業と組織への長期的な帰属意識やワークエンゲージメントを醸成できない、③過剰な定員合理化により職場の人的体制が脆弱化し、職員の長時間過密労働が恒常化している、④不条理な「公務員バッシング」や厳格な服務規定の運用などに起因する精神的な負担が蔓延している、⑤国家公務員という職業の理想と現実のギャップが若年層から「働きがいと成長実感」や自己実現の機会を奪っていることなど、複合的な要素が指摘されている。
こうした若者の職業意識などを踏まえれば、「職員の価値観」などの多様化や「職員の育成の重要性」を重視すべきであり、至上命題である人材確保を実現するためには、「実力本位の人事管理」よりも「働きがいと成長実感」が重要な観点となっており、その具現化が求められている。能力・実績主義のさらなる強化も強調されているが、これは公務の変質につながる危険を高めるものであり、さらに一部の職員のみにその利益が集中されれば、組織全体で働きがいと成長実感を持てる公務組織は実現できない。
「『これから』の公務」に必要なことは、国家公務員の特性である中立性・公正性・専門性などを維持すること、及び能力・実績主義の強化が人材確保につながってこなかった実態などを踏まえて真に必要な人事マネジメントシステムを構築し、国民本位の行財政・司法を確立することである。
公務員人事管理に関する報告において、超過勤務の縮減に向けたとりくみが掲げられているが、根本的な要因である職場の人的体制不足を解消することなしには解決しない。人材確保と併行してとりくむ必要がある。カスタマー・ハラスメントについて必要となるとりくみを人事院規則に明記するとしている。これも職場の実態を踏まえた運動・追及が実ったものであり、国としてハラスメントを許さない基本姿勢を示させるとともに、実効性のある具体的措置を講じさせるために引き続き追及を強化していく。
今後のたたかいは、政府との交渉へと移る。国公労連は、各単組・ブロック・県国公と連携し、職場・地域からの運動で要求を前進させてきたことを確信に、公務員賃金の早期確定、26年度予算査定、公務・公共体制の拡充など諸要求実現をはじめ、26春闘を視野に要求とたたかう体制の確立、対話を重視した組織強化・拡大をめざす決意である。
人事院勧告期のたたかいに奮闘された全国の仲間のみなさんに心から敬意を表するとともに、引き続く国公産別のたたかいへの結集を呼びかける。
以 上