国公労新聞2020年5月25日号(第1543号)

【データ・資料:国公労新聞】2020-05-25
政権が検察を私物化する法案は撤回
働きがい持てる定年延長の実現を


検察人事に政権が介入する「特例定年」条項は削除を
 国家公務員の定年を延長する国家公務員法「改正」法案は、検察庁法「改正」案を含む一括法案として5月8日に国会審議が始まりました。しかし、幹部検察官の人事への内閣の介入を正当化する検察庁法「改正」案に対する抗議がネット上で急速に広がり、政府は18日に一括法案の強行採決を断念しました。国公労連は19日に九後健治書記長の談話を発表し、検察庁法「改正」案から「特例定年」条項を削除して分離し、国家公務員労働者が働きがいの持てる定年延長を実現するために、国公法「改正」案は先送りすることなく慎重審議を行うよう求めました。
 検察庁法「改正」案等の審議は衆議院の内閣委員会で行われました。本来、国家公務員の労働条件は内閣委員会で審議を行い、検察官にかかわっては法務委員会で審議されるべきものです。この点でも従来の対応とは異なっています。
 検察庁法「改正」案の最大の問題は、現在検事総長65歳、他の検察官63歳の定年年齢を65歳にするとともに、「特例定年」によって内閣の裁量で次長検事や検事長の定年延長を可能とするものです。検察OBは「検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐ」と異例の批判を表明しました。
 「♯検察庁法改正案に抗議します」のツイッター上の投稿が1000万を超えて広がり、俳優や歌手、作家などの著名人も声をあげました。市民と野党の共闘によって今国会での成立は断念させ、そして廃案に追いこもうとしています。本来の趣旨である国家公務員の定年の引き上げと、後付けされた検察官人事への恣意的介入に道を開く「特例定年」とをない交ぜにして議論することこそが問題です。

雇用と年金の確実な接続は政府の責任
 公的年金の支給開始年齢は2022年3月末の定年退職者から65歳となります。人事院は2018年8月、政府に対して定年年齢を段階的に65歳に引き上げるよう求める「意見の申出」を行いました。しかし、政府は、国公労連の定年延長要求を正面から受け止めることなく、再任用の義務化によって雇用と年金の接続をはかることとしました。
 しかし、この再任用制度では、フルタイム再任用が定員の枠内扱いであることから、本人の意に反して短時間再任用となるケースが多いことや、再任用者の給与水準がフルタイムでも現役世代の6割程度とされており、年金支給開始までの生活を支えるには不十分な水準であること、など多くの問題を抱えています。これらの問題は、定年延長を実現することによって早急に解決しなければなりません。
 そもそも民間労働者には高年齢者雇用安定法によって、定年の引き上げ、継続雇用制度、定年年齢の廃止のいずれかによって65歳までの雇用を確保することが義務付けられています。雇用と年金の確実な接続は、検察官を含む国家公務員にも保障されなければなりません。同時に、公務員労働者の定年延長は、民間労働者のモデルとしてふさわしい制度とすることが求められています。

公務員バッシング許さず国民共同で要求前進を
 国公法「改正」案は、①総定員法や総人件費抑制方針の下で「2年に1歳ずつの引き上げ」で行政体制と高齢期雇用の両方が確保できるのか、②俸給月額を7割水準にするとしているが特定の年齢に達したことを理由に引き下げることは職務給原則に反すること、③役職定年制の導入により行政運営や人事管理が混乱する可能性が高いこと、④能力・実績主義強化によって行政を歪め国民の権利や安心・安全を脅かすことにつながりかねないこと、などきわめて重大な問題があります。
 国公労連は、定年の段階的引き上げの間の定員管理の柔軟化や職務給原則にもとづく賃金水準の確保、役職定年制の限定化などを求めてきました。国会の審議ではこれらの点について慎重な審議を尽くすことが求められます。
 一方、菅官房長官は22日の記者会見で「検察庁法の改正部分も含め検討が必要だ」と発言し、マスコミは、政府が国公法「改正」案は廃案とする方針と報じています。政府高官の声として「民間企業が苦しい中、公務員を優遇するのはおかしい」と国民の怒りをすり替え、国民を分断する発言もでています。
 雇用と年金の確実な接続を実現するため、再任用制度の抜本的改善も含めたたたかいが求められます。そのためにも労働組合の組織と運動を強化することが重要です。
 新型コロナの感染防止のため集会やデモなどの行動が制限されているもとでも、ツイッターなどで多くの市民が声をあげ、検察庁法「改正」案の成立を断念させたことは画期的な成果です。国会で与党が多数議席を有していても、政治を決めるのは主権者である国民であり、この国の民主主義が正常に機能していることを示したものです。安倍内閣の横暴を許さず、民主主義擁護、すべての人が自分らしく尊厳を持って生きられる社会をめざし、引き続き幅広い労働者・国民と連帯していっそう奮闘することが求められます。



 
都労委に救済を申立て
国公一般ハンセン病資料館分会


 国公一般は5月8日、国立ハンセン病資料館分会の組合員2人が雇い止めされたのは不当労働行為(労働組合法7条1号・3号)にあたるとして、東京都労働委員会にその救済を申し立て、当該雇い止めの撤回を資料館運営側の日本財団と笹川保健財団の2法人に命令するよう求めました。

組合敵視による不当解雇
 申立ての相手方(被申立人)は、日本財団と笹川保健財団の2法人。雇い止めをされた稲葉上道さんと大久保菜央さんは、国立ハンセン病資料館の学芸員として、稲葉さんは18年間、大久保さんは3年半に渡り勤務していました。
 資料館の管理運営業務については、厚生労働省が年度ごとに委託先を公募しています。日本財団は2016年度から19年度まで4年間に渡って受託してきましたが、20年度は応札せず、グループ団体の笹川保健財団に応札を依頼。20年4月からは笹川保健財団が受託しています。
 笹川保健財団は業務を引き継ぐにあたり、3月の時点で資料館に勤務している職員を対象に採用試験を行い、2人を「不採用」としました。
 救済を求める理由として申立書は、自らの意思に反して職場から排除されたのは2人の組合員だけであり、両財団が一体として行った「不採用」は組合敵視によるものであることが明らかであって、不当労働行為を構成するとしています。

裁判でのたたかいも視野に
 申立当日、当事者らは代理人弁護士とともに厚生労働省で記者会見を行いました。
 代理人の今泉義竜弁護士は、両財団は受託者の形式的交代を利用して不当に組合員を排除しており、労働委員会による救済にとどまらず、裁判所への仮処分の申立てなど司法救済も視野に入れてたたかっていくとの見解を表明しました。

学芸員の誇りを取りもどす
 「ハンセン病に対する正しい知識の普及啓発により偏見や差別を解消し、患者・元患者とその家族の名誉を回復すること」を目的とする資料館。人権啓発の館において、組合員差別ともいえるような露骨な排除は、その目的に照らしても極めて不当です。不当解雇により資料館は2名の欠員が生じており、専門性も損なわれています。
 国公一般は、資料館がその目的に沿った役割を発揮するためにも、不当解雇の撤回と職場復帰を求め、2人の誇りを取り戻すために奮闘していきます。ご支援・ご協力をお願いします。