国公労新聞2019年1月10日号(第1536号)

【データ・資料:国公労新聞】2020-01-10
青年座談会 夢はみんなを笑顔にすること
大切な単組こえたつながり


 国公青年フォーラムが2019年10月25〜27日に福島県いわき市で開催した「国公青年交流集会2019」には全国から約120人の青年が参加しました。10年ぶりとなった国公青年交流集会で得たものや、労働組合運動における夢について、6人の青年に語ってもらいました。(司会=国公労連・西口想)
 


視野広がった国公青年交流集会
 青年交流集会に参加してどうでしたか?

 井手尾 全労働の青年協議長として視野を広く持つ必要があるといつも思っていたのですけど、今回参加していろいろな単組の方の話を聞いて「自分の視野は狭かった」と気づきました。
 例えば宿舎の問題について「広域異動があるのだから宿舎の確保を」という形で当局に迫ってきたのですけど、分散会の中で全通信の方から災害が起きたときに災害無線の関連で職場にすぐ駆けつけないといけないのに宿舎が近くになくて出勤が困難で国公労働者の役割を果たせない環境にあるという視点で宿舎の問題が語られました。
 この話を聞いて昨日、当局交渉を行ったのですが、「公務と災害への向き合い方という意味でも宿舎は必要ですよ」と今までとは違うロジックで要求できたのです。

 杵島 1日目だけの参加だったのですが、分散会で災害現場の最前線に立つ国公労働者の役割の大切さを改めて実感しました。国公労働者が自らも被災しながら業務を進めなければいけない現場の苦労なども聞き、こうしたことを私自身も周りに伝えていく必要があると思いました。

 米島 単組を越えたつながりがつくれたし、全司法の中では地域を越えてより結集も強まってとても良かったです。
 それと分散会などを通していろいろな職場の実態を知ることで国公産別全体として要求していく重要性がよくわかったのと、逆に自分の職場に照らして考えることができて、要求のポイントも多面的に深めることができて有意義でした。

 森 運営側の感想になりますけど、国公青年協が休止した後、青年運動推進委員会になって今の青年フォーラムが立ち上がって、集会が成功したのは大きかったなと。また、今回、感想文を見ると参加者みんなが楽しく交流することができたことがわかって、とても良かったです。

 野村 参加していちばん良かったのは、ほかの単組の方と交流できたことです。交流のやり方についても、集まって話しましょうといってもなかなか打ち解けられないのですが、チームをつくって一緒に体を動かすことで打ち解けられ良かったです。

 山本 つい昨日まで全く知らなかった各単組の青年たちが運動会もやって、楽しく交流している姿を見て、いいなぁと感慨深かったです。
 お父さんみたいな視点ですね(笑い)。

 山本 今回の集会の成功を見ると、自分も何かの取り組みをやろうとしたときに、仲間が集まれば新たなつながりが生まれるという勇気をもらいました。
 それから、自分より組合歴の少ない青年が分散会で鋭い意見を言っているのを聞くと、自分も頑張らなければと感化されました。
 仕事の面でも他の省庁とのつながりがあることを発見したり、考え方の幅が広がって、交流というのがただの遊びじゃなくて、交流の中でお互いが学びあえて気持ちもより前向きに変化したりするなど得るものが多かったですね。
 
 ——最初の分散会のときは緊張して打ち解けられない人が多い感じだったのが、運動会を1回挟むと一気に仲間みたいなチーム感が出て(笑い)運動会って、だからみんなやってるんだ、なるほどねと思いました。

「 みんないつまで帰らんとね 」

 井手尾 初日の受付のときは、みんな緊張で顔がこわばってた(笑い)。でも全日程が終わったときは、「みんな、いつまで帰らんとね」と言わなくちゃいけないぐらいずっと帰らなかった(笑い)。それって成果ですよね、離れがたくなったっていうのは。

 森 最終日に3日間の写真を使ってスライドショーを作って紹介したんですけれど、参加者みんなの表情が本当にどんどんよくなっていくなというのを実感しながら作ってました。

 井手尾 各単組の仲間に対して「よその人感」がなくなりましたね。いま合庁に勤めてるんですけど、職場に戻ってもほかの単組の人が身近な国公の仲間として感じられるようになりました。

 野村 その親近感を生かして、今度は県国公やブロック国公で何かできたらいいですよね。合庁内の単組が集まって何かやるとか。

 井手尾 今回の集会に同じ熊本の人が参加していて、同じ合庁で働いてるということがわかって(笑い)、「全然ほかと交流がないね」「じゃあ2人で幹事をやって交流会しません?」という話で盛り上がったので実現できるといいなと思っています。

 新年号の座談会なので、労働組合運動におけるあなたの夢を聞かせてください。

 山本 「みんなを笑顔にすること」ですね。職場のみんなを笑顔にすることって、それこそ今の定員削減をやめさせて業務量に見合った増員を勝ち取ってやりがいを持って人間らしく働ける職場を作らないとできないわけで。
 労働組合って、みんなを笑顔にするという感じじゃない雰囲気が漂うことが多かったりするので大事ですね。

 野村 私のは夢というほどじゃないんですけど、いま全法務の青婦協議長をやってて3年目になるんですけど、青年組織の活性化をはかりたいですね。青年組織を活性化させて、若い人がどんどん積極的に組合運動に参加していくようになるのが夢ですね。

 森 国公労連の専従になった当初は国公青年協の復活だと思っていたんですけど、そんなに簡単なことではないことがわかったので、近いところの夢は何かと言ったら、ブロック単位で青年の取り組みをきちんとできるようにしていくことです。

ブロック単位で青年の取り組みを
 今回、各地から青年が参加してくれたので、その青年たちを中心にしながら国公青年フォーラムがアシストしてブロック単位での青年の取り組みができたらいいなというのを近いところで思ってます。

 井手尾 大きな夢で言うなら、国家公務員がより一つになれたらいいなと思います。何かの施策をするにも様々な省庁が関わるわけで、その施策を真に国民サービスとして作り上げて運用するに至るには、垣根を超えた連携が必要だと思います。まずは、少しでも同じ国家公務員としてお互いを身近に感じ、膝を詰めて話せるよう、お互いを知ることができたらと思います。そのために国公青年フォーラムや国公労連の集会や交流会への参加が有意義だと思いますし、私もいろいろ参加させていただきましたが、周りにも勧めていきたいです。

 米島 重要な要求を一つひとつ実現していきたいと思ってます。いま専従をやっていて、知識と経験は増えてきたなとは思っているんですけど、現場の声の把握や労働組合に結集していく意味をもっと共有して要求実現につなげていけたらいいなと思っています。

 杵島 夢はいっぱいあります。まず職場では、いま障がい者の人も働いているし、非常勤職員もそうだし、派遣労働者や請負労働者も働いていて、当局に分断されるのではなくていろいろな形で弱い立場に置かれている労働者にも共感してもらえて仲間になってもらえる労働組合をつくりたいですね。組織者というとおこがましいのだけど、分断に抗して多様性の中での組織化ができるようになりたいと思っています。そして夢ですから言いますけど、国公労連全体で10万人ぐらいは組織拡大したいなと思います(驚嘆の声)。
 それと、日本だけじゃなくて、気候変動の問題など世界とも連帯する運動もやりたいですし、外国人労働者を組織化することにもチャレンジしたいと思っています。

 野村 女性の役員を増やしたいですね。

 井手尾 その点も重要ですね。私が役員をやっていること見て、「女性にも関われるんだなと思いました」とよく言われます。

 ——国家公務員全体で女性の採用比率が若い世代になるに従って増えているのだけど、労働組合の役員はジェンダーバランスがよくないというのは改善すべき課題ですね。

女性の参加を増やしたい
 

 井手尾 全労働青年協にとっては、前身の青婦協の頃も含めて、私が初めての女性議長になるのですが、私に務まるかなあと話があった当初は不安な気持ちもあったのですが、私がやろうと決心するに至ったきっかけがありました。
 ある青年の会議に参加したときに、私以外はみなさん男性だったのです。それを見たときに、職場には女性がたくさんいるのに、ここに女性がいないのはなぜだろうって疑問に思ったんですね。
 それで女性の要求についての議論があったときに、女性の参加がなければ男性に「こういう女性の要求がある」と間接的にお願いすることになるわけだけど、しかし、結婚や出産育児など、青年の女性が抱えていることを、当事者自らが具体的に伝えることも大切だと思うんです。もし自分はまだ当事者になっていなくても、女性同士の話で出てくる話も沢山ありますし。それで、女性自身が声をあげる人に自分がなって前例ができたら「あの人もやってたし、私もやってみようかな」と思ってくれる人が続いてくれると思ってやっています。ですので、労働組合の役員に女性を登用していってほしいですね。

 米島 全司法の青年協の定期総会とかだと、出席者の3分の1ぐらいが女性なのでそこは割とうまくいっていると思います。ただ、全司法の全国大会などになると必ずしもそうではないので、青年に限らず、女性の参加を増やしていくことは大事ですね。

 森 「全員参加型の労働組合」を作っていく必要があると最近、強調していますけど、それこそ子育て中の女性が参加しやすい労働組合を作っていく必要がありますね。そしてその重要性を身をもってよく知っている青年層のところで女性の参加を増やしていきたいですね。



 
コミュニティ・オーガナイジングで「 すべての組合員を主人公 」にしよう


 「組織拡大が進まない」「青年にどう働きかけていいのか分からない」「役員のなり手がいない」「集会や行動の参加者が少ない」「署名が集まらない」など、労働組合の取り組みが上手くいかないと思うことがないでしょうか? 日本の労働組合だけでなく、ほかの国の労働組合でも同じように取り組みが上手くいかない状況が広がる中で、いま「コミュニティ・オーガナイジング」という“仲間の力を引き出す手法”が注目されています。
 たとえば、アメリカでは昨年7月に連邦レベルの最低賃金を2025年までに段階的に時給15ドル(約1600円)に引き上げる法案が成立しました。この最賃引上げ運動にコミュニティ・オーガナイジングが活用されているのです。また、女性運動にも活用され、#MeToo運動などが世界各地で広がっています(4面参照)。
 このコミュニティ・オーガナイジングを日本で活用して仲間づくりを進めようとしている大阪府職労の小松康則委員長と京都府職労の高橋幸信副委員長にお話をうかがいました。(聞き手=国公労連・井上伸)



 ——日本でコミュニティ・オーガナイジングのすべてを学ぶには、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)が2日間に渡って開催するフルワークショップに参加する必要があります。すでに大阪府職労は24人、京都府職労は13人がこのワークショップに参加していますが、どんな感想が出ていますか?

「相手をねじ伏せる」のでなく「相手の力を引き出す」対話へ

 高橋 いちばん面白かった感想は、「これまでの自分の対話は、相手を言い負かせて、ねじ伏せることを得意技にしてきた。ところが、ワークショップに参加して、このやり方が全く間違っていたことに気づいた。対話は相手の状況と価値観を引き出し、相手自身に考えてもらって、答えを導くことが大事なのだとわかった」というものでした。労働組合では「対話が大事」とよく言われますが、私たち役員の方が情報量は多いことから、一方的に自分だけがしゃべって相手をねじ伏せがちです。これでは相手の力を引き出すどころか、相手の力を奪っている。そのことに気づいたわけですね。
「すべての組合員を主人公」にできる

 小松 印象深かった感想は、「これまで『組合員が主人公』と言ってきたが、それは言ってただけというのが分かった。今までのやり方では結果的に『組合員を主人公にできない』ということが分かった。コミュニティ・オーガナイジングは文字通り『すべての組合員を主人公にする』ために必要だ」というものです。

 ——コミュニティ・オーガナイジングを活用することによって、実際の取り組みにどんな変化が生まれていますか?

青年が元気になり組合加入者が倍増になった支部も

 小松 青年部がとても元気になりましたし、ある支部では組合加入者が前年比で倍増しました。
 これまでは役員のなり手が少なくて、組合員に依頼しても断られることが多かったのですが、ワークショップに参加した青年が自ら声かけをして新たな役員が増えています。

 高橋 京都府職労はワークショップの参加から日が浅い人が多いので、まだ具体的な成果はないのですが、会議のやり方を大きく改善しています。これまでは会議で話す人が固定化していたのですが、参加者全員が発言して元気が出る会議に変わってきました。
 そして、4月の新規採用者の仲間づくりに向けて、11月から月1のペースでワークショップを開催しています。

 小松 大阪府職労も会議が大きく変わりました。コミュニティ・オーガナイジングを活用する前までは、私が「こんな大変な情勢なのだから頑張らないといけない」と力を込めてたくさんの課題を提起して、みんなに奮起を促していました。そんなある日、会議に参加している一人の役員が「こまっちゃんの話を聞いてるだけで疲れるわ」と言いました。当時の私は「人がこれだけ頑張って会議の準備もして一生懸命話してるのになんちゅうこと言うねん」と心の中で毒づいてるだけで、みんなに元気を出してもらうどころか、逆に疲れさせる会議をやっていたのです。
 でも、コミュニティ・オーガナイジングを学んでから、その役員の指摘が正しかったことを理解しました。今では日常的な会議や学習会はもちろん、大阪府職労の定期大会にも、コミュニティ・オーガナイジングの手法を活かし、ワークショップなどを導入して組合員から「こんな楽しく元気が出る会議や大会ならすすんで参加したい」と好評を得ています。
 
 高橋 職場の大きな課題は、人員が削減されて長時間労働が蔓延していることです。つい先日、「残業代が払われていない」という職員から相談があったのですが、私もコミュニティ・オーガナイジングを活用し、その職員の力を引き出して労働組合とともに職員自らが声をあげることで、残業代を払わせることができました。現場の仲間一人ひとりが長時間労働をなくせるように自らが声をあげていけるようにしたいというのと、構造的に職員数が足りないという問題の解決にむけて、コミュニティ・オーガナイジングを活用していきたいと思っています。
 長時間労働をなくす課題も、先ほども話したように4月の新規採用者の組織拡大にむけて、ワークショップを重ねていきます。

「疲れる会議」から「元気の出る会議」へ

 小松 大阪府職労も会議が大きく変わりました。コミュニティ・オーガナイジングを活用する前までは、私が「こんな大変な情勢なのだから頑張らないといけない」と力を込めてたくさんの課題を提起して、みんなに奮起を促していました。そんなある日、会議に参加している一人の役員が「こまっちゃんの話を聞いてるだけで疲れるわ」と言いました。当時の私は「人がこれだけ頑張って会議の準備もして一生懸命話してるのになんちゅうこと言うねん」と心の中で毒づいてるだけで、みんなに元気を出してもらうどころか、逆に疲れさせる会議をやっていたのです。
 でも、コミュニティ・オーガナイジングを学んでから、その役員の指摘が正しかったことを理解しました。今では日常的な会議や学習会はもちろん、大阪府職労の定期大会にも、コミュニティ・オーガナイジングの手法を活かし、ワークショップなどを導入して組合員から「こんな楽しく元気が出る会議や大会ならすすんで参加したい」と好評を得ています。

 ——今後はどんな取り組みをしていく予定でしょうか?

職員削減やめさせ長時間労働なくしたい

 高橋 
職場の大きな課題は、人員が削減されて長時間労働が蔓延していることです。つい先日、「残業代が払われていない」という職員から相談があったのですが、私もコミュニティ・オーガナイジングを活用し、その職員の力を引き出して労働組合とともに職員自らが声をあげることで、残業代を払わせることができました。現場の仲間一人ひとりが長時間労働をなくせるように自らが声をあげていけるようにしたいというのと、構造的に職員数が足りないという問題の解決にむけて、コミュニティ・オーガナイジングを活用していきたいと思っています。
 長時間労働をなくす課題とととも、先ほども話したように4月の新規採用者の組織拡大にむけて、ワークショップを重ねていきます。

 小松 大阪府職労も同じで、長時間労働をなくすことと、4月以降の新規採用者を含む仲間づくりに焦点を当てて、戦略をつくったり、対話の手法を身につけるためのワークショップを実施していきます。

 ——最後にコミュニティ・オーガナイジングのすすめを、小松さん、お願いします。

全員参加型の組合づくりに必須のコミュニティ・オーガナイジング

 小松 
「労働組合は何もしてくれない」—この言葉がいまの労働組合の弱点を示しています。労働組合が「自分たちで要求を実現する」ためのものではなく、「自分のために何かをしてくれる」ものになってしまっているのです。
 実際、私に「こまっちゃん、役員やねんから何とかして」とか「たまにはええ話、持ってきてや」とか「メリットないから組合やめるわ」と言ってくる組合員がいます。
 いつの間にか、組合役員はサービスを提供する側で、組合員はサービスを受けるだけの顧客という図式になってしまっていたのです。そして組織拡大が目的化し、組織拡大した組合員を「お客さん扱い」していたのです。「組合に加入してくれた」という言い方もそれを表しているように思います。
 先ほど紹介した感想にもあるように、「組合員を主人公」にするためにはコミュニティ・オーガナイジングを活用することが必要です。全員参加型の組合づくりへ、みなさんもぜひワークショップに参加してください。



 
政治・行政・労働組合
女性参加を増やしジェンダー平等へ
上智大学教授 三浦 まりさん


みうら まり/1967年東京都生まれ。上智大学法学部教授。米国カリフォルニア大学バークレー校で政治学博士号取得。東京大学社会科学研究所研究員などを経て現職。専門はジェンダーと政治、福祉国家論。著書に『私たちの声を議会へ——代表制民主主義の再生』(岩波書店、2015年)、『日本の女性議員——どうすれば増えるのか』(朝日選書、2016年)、『しゃべり尽くそう!私たちの新フェミニズム』(共著、梨の木舎、2018年)、『生きづらさに立ち向かう』(前川喜平氏、福島みずほ氏との共著、岩波書店、2019年)など。パリテ・キャンペーンやパリテ・カフェの活動も行い、一般社団法人パリテ・アカデミー共同代表でもある。


 
 2018年5月、「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が施行されました。政治における「パリテ(男女均等、同数)」を盛り込んだ理念法で、「日本版パリテ法」とも呼ばれています。この法の成立への尽力とともに、女性議員を増やすためのトレーニングを提供する一般社団法人「パリテ・アカデミー」の共同代表でもある三浦まり上智大学教授に、全司法の鳥井絵美書記長と全医労の前園むつみ書記長が2時間にわたってインタビューしました。ここではその一部分を紹介します。(※インタビューの全体については雑誌『KOKKO』第33号に掲載しますのでぜひ購読ください)

 鳥井 「日本版パリテ法」(以下パリテ法)の施行でどんな変化が起こっているでしょうか?

 三浦 ここ2年でジェンダー平等への関心が高まっています。とりわけ、#MeToo運動が結集点となって、性暴力と性差別への批判が積極的に報道されるようになったことが大きいです。
 政治が変わらないといけないという報道量も増え続けていて、政治に参加したいと考える女性も潜在的に増えていると思います。
 パリテ法ができて、1年後に統一地方選と参院選があったのですが、女性候補者に関する報道量はかなり多かったと思います。また、若干ですが女性候補者数も増えました。
 今後も関心を持って各政党の女性比率を並べて、「自民党はこんなに女性が少ない」とみんなで声をあげて改善を求めていく必要があります。

 前園 行政においてはどうでしょうか?
 
ジェンダー平等には公務員を増やすことが必要

 三浦 国家公務員の採用は女性が3割以上になっていますよね。採用では多くても管理職では少ないというのは、やはり働き方が過酷だということだと思います。これを解決するには国家公務員を増やす必要があるでしょう。仕事はたくさんあるのに、国家公務員を削減したら1人当たりの労働時間が増えてしまいます。長時間労働である限りは女性が増えない、女性が管理職になれにくいわけですから、行政現場におけるジェンダー平等を実現するという意味でも国家公務員を増やしていくという方向に世論を変えていく必要があります。

 鳥井 パリテ・アカデミーを作ったのはなぜでしょうか?

 三浦 きよんさん(お茶の水女子大学准教授)と、女性を対象にした政治スクールを作りたいと意気投合して、まずアメリカのスクールを視察しました。
 アメリカには政治スクールがたくさんあるのですが、そこでの取り組みに学びながら1年間の準備期間を経て、一般社団法人パリテ・アカデミーを2018年3月に作ることができました。ちょうどパリテ法が5月に施行されましたから、いいタイミングでした。
 パリテ・アカデミーを始めて、受講生は100人ぐらいになりました。これまでも政治スクールは日本にもあったのですが、若手の女性に対象を絞ったものはありませんでした。
 
ワークショップのトレーニングが実際のアクション広げる
 それから従来のスクールの多くは座学で、有識者の話を聞いて勉強していくという形でしたが、パリテ・アカデミーでは実践的なトレーニング・プログラムを提供しています。このトレーニングを受けた女性が、統一地方選に5人出て4人当選し、その後の自治体選挙でも2人が当選しています。参院選には3人挑戦したのですが当選できず、国政選挙はまだ厳しい状況です。でもこれをやり続けて女性の政治家を増やしていくことが重要だと思っています。
 今は東京の取り組みだけになっていますが、地方でも実施することを目指しています。パリテ法では、地方公共団体も政治に参加する女性の人材育成が責務となっています。男女共同参画センターが全国に300近くあるので、そこが今後は女性の政治参画に関しても役割を担ってほしいと思います。全国でトレーニングを広げていくには、ノウハウを持っているトレーナーがまだ足りません。パリテ・アカデミーではトレーナーも養成しているところです。
 従来の座学で話を聞くというのは最初のきっかけにはなります。私も依頼されて講演をすると、女性が政治にもっと参加する必要があると皆さん思ってくれるのですけど、その先の実際にアクションをきちんと起こすことには必ずしもつながっていかないように感じています。実際のアクションまで持っていくことが、大きなうねりには必要です。ですので私が講演をして全国をまわるだけではなくて、トレーナーを養成してアクションにつながるワークショップを広げていきたいと思っています。

 前園 労働組合も座学が多いので学ぶべき点だと思います。
 
コミュニティ・オーガナイジングで女性が自信を持って語り共感広げる

 三浦 女性が政治家にならない理由の一つは「自信がない」ということだと言われています。それは労働組合の役員も同じだと思います。もちろん家庭の事情で時間がないからできないという女性が多いのですけど、それがクリアできても「自信がない」という壁があるのです。それを突破するためにコミュニティ・オーガナイジングのワークショップを行って自分のストーリーを語るというトレーニングを実施しています。
 労働組合の役員も政治家も同じですが、他人に共感してもらって実際に他人に動いてもらえるようになる話をする必要があります。それには自分のストーリーが何かを分析して、さらにそれを語るトレーニングを通じて、共感を広げる話ができるようになります。
 実際に、コミュニティ・オーガナイジングのトレーニングによって自信を持って共感を広げる話ができるようになった女性たちを見ていると、スキルを身につけるトレーニングの大切さがよくわかります。

 鳥井 #MeToo運動などと労働組合も連携する必要があります。労働組合への期待についてお聞かせください。

 三浦 女性運動と労働運動の連携の必要性が高まっていると思います。とりわけハラスメント禁止のILО条約ができて、それを批准できるぐらいに日本の法律もきちんと向上させなければいけないというのは、労働運動の中でも重要な課題だと思います。女性運動との連携に期待しています。
 そのためにも、労働組合の役員に女性を増やしていくことが重要です。労働組合の役員に女性が増えると労働組合が出すアジェンダも変わってきて、長時間労働の改善に力がもっと入るようになったり、女性運動との連携もより進むようになると思います。
 それと公務における非正規問題を改善する必要があります。相談事業などに非正規で働く女性たちが多いわけですが、ハラスメントの問題とも関わりますけど、行政の相談事業が豊かになっていくというのは、関係性のあるいい社会をつくるためにも重要で、専門職としての価値をもっと高めていくべきです。
 そこにお金をかけず非正規化してしまう日本社会のあり方が、人に頼れないバラバラな状況を作り、孤立感を抱える人を増やし、自殺率が高止まりになっている原因だと思います。非正規ではなく安定した雇用で行政の質を高めていってほしいです。