司法の役割を放棄した上告棄却に抗議する
――社保庁不当解雇撤回裁判・秋田事案の上告棄却 にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2019-10-23
2019年10月23日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長  九後 健治
 
1 最高裁判所第一小法廷(裁判長:山口厚、裁判官:池上政幸、小池裕、木澤克之、深山卓也)は10月17日、「分限免職取消等請求事件」(秋田事案)について、①本件上告を棄却する。②本件を上告審として受理しない。③上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする。との不当決定を行った。
 この決定は、仙台高裁判決の問題点を明確に示した上告申立(および上告受理申立)について、何ら審理をせずに門前払いとするものであって、断じて許すことはできない。また、この事件は、国による戦後初の公務員大量解雇事件であり、最高裁はこの事件に対する実質的判断を明確に示す責任がある。しかし本決定は、最高裁がこのような責任を自ら放棄し、「人権の最後の砦」としての役割をも投げ捨ててなされたものであり、満身の怒りとともに厳重に抗議する。
 
2 そもそもこの事件は、国家公務員法や人事院規則を無視した不当解雇事案であり、政府・与党による社保庁職員への報復として断行された「政治のパワハラ」という点にその本質がある。すなわち、2004年に国会議員の年金未納問題が発覚し、この年の参院選挙で大敗した自民党が、個人情報を「閲覧」したとされる職員に対する大量の懲戒処分を強要したうえ、2008年には自民党の強い要請により、懲戒処分歴のある職員を日本年金機構に一律不採用とする閣議決定を行った。このような強い政治的介入の下、年金問題の責任を末端職員に転嫁するかたちで断行されたのが社保庁解体と本件分限免職処分である。
 三権分立の下、独立した立場から、不当な政治的介入により権利を侵害された者を救済することこそが司法府の役割であり、まさにこの事件については裁判所による積極的に踏み込んだ審理と判断が求められていたはずである。時の政権に忖度し、裁判所としての役割と使命を見失った最高裁には、失望の念を禁じ得ない。裁判所には、権利擁護の原点に立ち返った姿勢を強く求める。
 
3 秋田事案の上告棄却により、社保庁不当解雇撤回のすべての裁判闘争が終結したことになる。7つの事案(北海道、秋田、東京、愛知、京都、愛媛、広島)で展開した裁判闘争は、すべて上告棄却という不当な結果となったが、東京高裁判決において「社保庁や公的年金制度に対する国民の信頼の失墜は、長年にわたる年金行政のあり方等によるところが大きく、本件各処分当時に現場で働いていた個々の社保庁職員にその責任を帰することができない問題である」と判決文に明記され社保庁バッシングを克服したことや、分限免職回避努力義務の主体を社保庁長官だけでなく厚生労働大臣にまで認めさせたことは大きな成果であり、到達点である。これらの成果は、7つの事案の原告たちが勇気を持って立ち上がらなければ獲得できなかったものであり、今後の闘いにおいて確信となるものである。これまで、裁判闘争に奮闘してきたすべての原告とこの裁判闘争を支えてくださった全国の仲間にあらためて敬意を表し、深く感謝申し上げる。
 
4 裁判闘争は終結したが、分限免職処分の取消を求めるたたかいは終わらない。2008年に閣議決定した「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」の見直しを政府に迫り、日本年金機構の体制と業務運営を改善させる運動と一体で、元社保庁職員を職場に戻すたたかいを進めていかなければならない。
 加えて、行政・司法の私物化を排し、すべての公務員が時の政権に忖度することや不当な圧力に屈することなく、「全体の奉仕者」として任務を遂行することが求められている。国公労連は、全厚生の社保庁不当解雇撤回闘争の早期解決をめざし、引き続き支援を強めるとともに、公正・公平な民主的公務員制度の確立に向け奮闘する決意である。


以 上