不当解雇を免罪する判決に抗議する
——社保庁解雇撤回裁判・広島事案の控訴審判決にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2018-05-17
2018年5月17日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一

 広島高等裁判所(第4部裁判長 森一岳裁判官)は5月17日、旧社会保険庁職員の分限免職処分の取り消しを求めた裁判で、「原判決(一審判決)は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却する」という不当な判決を行った。

1、一審の広島地方裁判所の判決(2015年12月21日)は、極めて不当なものであった。
 争点の分限免職(国家公務員法78条4号の行政組織の改廃による本人の意に反する免職)の妥当性について一審判決は、「(社会保険庁は)廃止されたのであるから、これによって社保庁に置かれていた全ての官職は廃止されたものというほかない」と切って捨てたが、控訴審判決はこの不当判決を妥当と判断した。
 これは、年金未納や年金記録問題など年金制度に対する国民の不信が高まる中で、政治の責任を社会保険庁とその職員に転嫁して、社会保険庁の廃止・解体へと強引に進めた事実を顧みない皮相的な解釈である。こうした不当処分が適法と解釈されるならば、国家公務員を分限免職処分するために、当該部門を民営化・外部委託等すれば、解雇が正当化されることとなり、公務員の身分保障は画餅に帰し、公務の公正・中立性の確保が困難となる。

2、もう一つの争点である分限免職回避努力義務・裁量権の逸脱・濫用について一審判決は、「任命権者において分限免職処分を回避することが現実に可能であったにもかかわらず、そのための努力義務を怠った場合にも、当該分限免職処分は、裁量権を逸脱又は濫用したものとして、違法であるというべきである」と原則論を前置きしたが、その判断基準として、「本来、社保庁の官職についていた職員全員が分限免職の対象なりえたところ、このうち他へ転任した者や退職勧奨に応じた者を除いた者について一律に分限免職処分がされたものであるから、任命権者が複数の候補者の中から分限免職の対象とする者を選定したものでない。そうすると…〈中略〉…人員選定の過程又はその判断の合理性に問題が生じることもないから、これらの問題があったことを理由とする裁量権の逸脱又は濫用を論じる余地はない」と断ずるなど乱暴な理屈を展開した。控訴審判決は、この点に関しても、さすがに「論じる余地はない」との表現は用いなかったものの、「分限対象者の選定は存在せず」適法であるとして原判決を容認した。

3、他方、分限回避義務の主体について一審判決では、任命権者(社保庁長官等)に矮小化したうえで、厚労省や他府省への転任を希望していたにもかかわらず必要な情報提供等を怠っていたとの原告の主張を一蹴して、こともあろうに「(原告が)機構又は協会への採用を一切希望しなかったために…〈中略〉…採用されなかったのは自らの選択の結果であって当然というほかはない」と自己責任論を展開して、任命権者の責任を不問にした。この点に関して控訴審判決では、「厚労大臣も内閣の一員として機構法案等の閣議決定や基本計画に関与した」ことを踏まえて厚労大臣の回避努力義務を認定したことや自己責任論を踏襲しなかった点は、原判決の乱暴さを若干補ったものではあるが、厚労大臣と任命権者の分限免職回避義務違反については原告の主張を退けた。

4、このように今回の判決は、こうした私たちの主張を一顧だにせず、政府の主張に従った不当な一審判決を容認し、不当判決を免罪するものであり、厳重に抗議する。
 不当解雇撤回のたたかいは、労働者の権利確立のためにも重要であり、不当解雇などの理不尽にあらがうすべての労働者と連帯するとともに、人間らしく働くルールの確立と労働法制改悪阻止のたたかいに全力をあげることが必要である。また、日本年金機構の体制問題や情報管理、政府による年金積立金による投機などで、年金制度に対する国民の不安が高まっているいま、このたたかいを通じて年金制度の拡充・強化を図ることも重要である。

5、不当解雇撤回を求める裁判は、現在、一審で一部勝訴した東京事案を含め、秋田・愛知・愛媛事案について控訴審段階での審理がすすめられ、その多くは大詰めを迎えている。
 このたたかいは、公務員労働者の権利と身分保障の確立、すなわち全体の奉仕者として公務の中立・公平性を確保するなどの公務員制度の民主化のためにも負けられないたたかいであり、今回の不当判決に屈することなく逆転判決をめざす。
 国公労連は、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇撤回をめざすすべての裁判闘争の勝利と、政府に対して処分撤回と全員の職場復帰など早期全面解決を求めて全力をあげてたたかう決意である。