国公労新聞2017年11月10日号(第1493号)

【データ・資料:国公労新聞】2017-11-10
「公務員賃下げ違憲訴訟」の上告棄却に厳重に抗議する
最高裁判所の存在意義が問われる不当な判断

 最高裁判所は10月20日、国公労連と個人原告が提訴・上告していた「公務員賃下げ違憲訴訟」について、裁判官全員一致の意見として「本件上告を棄却する」との不当な決定調書を送達しました。
 この裁判は、2012年4月から2年間、戦後はじめて人事院勧告に基づかずに、議員立法による給与改定・臨時特例法にもとづいて平均7・8%もの不当な賃下げを強行したことに対して、同年5月25日に国公労連と組合員370人が政府を相手に東京地方裁判所に提訴したものです。
 この賃下げは、2009年の政権交代で誕生した民主党政権が、公務員バッシングが激しい社会情勢のもとで、選挙公約として公務員の総人件費の2割削減を掲げていたことから、政権発足当初から人件費削減が政策課題として重視されたことから始まりました。そして時の政府は、地域主権改革(国の機関の地方移管)を推進するとともに、新規採用者抑制や退職手当の平均400万円の引下げなどを推進しました。
 さらに、国家公務員には、憲法で保障された労働基本権が制約されていることに着目して、自律的労使関係制度の創設で労働基本権の一部を回復するのと引き替えに、人事院勧告に基づかない公務員賃金の引き下げを検討していました。
 そして政府は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の復旧・復興費を名目として、賃下げを国公労連に提案して、まともな交渉も経ないまま、賃下げ法案を国会に提出しました。政府が提出した法案は、成立しませんでしたが、民主党、自民党、公明党の3党で合意した議員立法が、政府提出法案とほぼ同じ内容の給与改定・臨時特例法として国会に提出されて成立しました。なお、政府が約束した自律的労使関係制度を創設する法案は、成立しませんでした。
 国公労連は、①憲法で保障されている労働基本権制約の代償措置である人事院勧告に基づかない賃下げは、憲法28条(労働基本権の保障)違反であり、ILO(国際労働機関)条約違反であること、②十分な交渉・協議を尽くさなかったことは団体交渉権の侵害であること、など国家公務員労働者の権利侵害を最大の争点として提訴したのです。
 裁判は、一審の東京地方裁判所が2014年10月30日に、国公労連の請求を棄却する不当な判決を行いました。そのため国公労連と原告359人は、東京高等裁判所に控訴しました。しかし、東京高等裁判所も昨年12月5日に控訴をすべて棄却する不当な判決を行ったため、国公労連と原告311人が同月16日に上告したものです。
 
「結論ありき」で三権分立を歪めるもの
 最高裁判所は、上告棄却の理由を高裁の判断が憲法解釈にも法令解釈にも誤りがないと決めつけて、審理も開かずに、門前払いとする不当な判断を行いました。
 当該高裁の判決は、「人事院勧告制度が、国家公務員の労働基本権制約の代償措置として中心的かつ重要なものである」、「国会は、国家公務員の給与決定において、人事院勧告を重く受け止めこれを十分に尊重すべきことが求められている」と、この間の最高裁判所判例を踏襲して人事院勧告の重要性は認めましたが、賃下げの違憲性について「国会は、人事院勧告どおりの立法をすることが義務づけられているとはいえない」などと勧告の法的拘束性を一審同様に持ち出して、論理のすり替えによって合憲と判断した不当なものでした。
 そのため、上告にあたっては、憲法28条違反であることに加えて、①議員立法で一方的に引き下げたことは、国会の裁量権の逸脱であり、「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理する」と内閣の職務権限を定めた憲法73条4号に違反すること、②労働条件の不利益変更法理と同等の基準に照らした判例違反であること、③ILO87号条約及び98号条約についての解釈に誤りがあることなどの主張と具体的事実を含めた理由書を4月に提出しました。また、憲法判断を行うよう「大法廷回付に関する意見書」を9月に提出しました。
 しかし最高裁判所は、戦後はじめての人事院勧告によらない賃下げについて、私たちの主張を顧みず、政府の主張に配慮した一審・二審の「結論ありき」で構成された不当な判決を確定させました。これは、司法の最高機関であり、終審裁判所としての最高裁判所の存在意義が問われるものです。
 政府と国会に寄り添う姿勢は三権分立の日本の統治機構を歪めるものと言わざるをえません。
 
働く権利確立、労働基本権回復めざして
 この裁判闘争の意義・目的は、国家公務員労働者の権利を守るたたかいであると同時に、すべての労働者の賃上げと雇用確保をめざすたたかいでした。
 そのため提訴以来、全国で街頭宣伝や署名獲得(個人46万6539筆、団体1万1665筆)など、世論に訴え、多くの労働者・労働組合から裁判闘争についての理解と支持を得るために奮闘してきました。
 こうした全国的なたたかいによって、①組合員への不当な攻撃に毅然とたたかう姿勢を示す運動を展開することで組織の団結の強化に結びついたこと、②政府による不当な賃下げの延長や新たな賃下げを断念させ、その後政府が勧告尊重の姿勢に立たざるを得ない状況を作り出したこと、③ILOへの要請等により、労働基本権回復と労使協議の重要性について、3度の日本政府宛の勧告を引き出すことができました。
 また、賃下げの不当性を世論に訴え、官民の共同が広がるなかで、賃下げのスパイラルを断ち切り、賃上げの気運を高める一翼を担うとともに、全大教など不当な賃下げの影響をうけた労働組合との共同を地域から発展させてきたなどの貴重な到達点を築くことができました。
 裁判闘争は、ここで一区切りをつけざるを得ませんが、5年間以上にわたって、全国の仲間の奮闘によって積み重ねた到達点を確信として、今後の運動に活かしていくことが重要です。特に、政府や国会が一方的に人事院勧告によらない賃下げを強行することを許さないために、労働基本権回復を視野に入れたとりくみを強化するとともに、代償措置が画餅に帰すことがないように、政府・人事院への追及を強化していかなければなりません。
 また、公務員労働者の労働基本権を明確に保障しているのは、唯一憲法です。公務員の働く権利確立や労働基本権回復をめざす上でも、あらためて憲法の尊重・擁護の義務を負う公務労働者の役割を実践し、改憲勢力が多数を占める国会情勢であるからこそ憲法改悪を許さないたたかいに全力をあげていくことが求められています。

 

特別国会開会
労働条件改善で重要局面迎える
特別国会で給与法、退職手当法の成立ねらう


 11月1日に招集された特別国会は、首相の外交日程がつづき、実質審議がない状況となっていますが、私たちの労働条件に直結する給与法「改正」案、退職手当法「改正」案など必要最小限の法案の成立をめざすとされています。

 特別国会では、首相の所信表明が17日に行われ、代表質問が20〜22日で行われることが確認されています。重要法案である「働き方改革」関連法案や、カジノを解禁する「統合型リゾート(IR)実施法案」などは、審議日程が十分とれないため、来年の通常国会に先送りされることとなっています。

政府・内閣人事局は不誠実な対応に終始
 私たちの労働条件をめぐって、秋季年末闘争が重要な局面を迎えるなかで国公労連は、人事院勧告と退職手当の取扱いについて政府・内閣人事局との交渉を実施しました。
 岡部委員長が現時点での政府の検討状況を質したのに対して、植田人事政策統括官は、給与改定の取扱いについて「人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、国政全般の観点から検討をすすめているところであり、早急に結論が得られるよう努力してまいりたい」、雇用と年金の接続については、「引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していく方針。また、『公務員の定年の引上げに関する検討会』が設けられ、課長級の幹事会での議論も開始しており、これらの会議を通じて、定年の引上げに関する様々な課題について検討しているところ」、非常勤職員の処遇改善については、「本年5月の給与に関する全府省申合せや、7月の人事院の指針改正等も踏まえ、処遇改善にむけて必要なとりくみをすすめる。」などと検討状況を明らかにしましたが、国公労連がこの間、指摘・要求してきたことに対して、まったく応えておらず、不十分な回答にとどまりました。
 さらに「退職手当の水準見直しは、調整率を100分の83・7に引き下げることによる基本額の引下げにより行い、経過措置は設けない。引下げ時期については、法案成立後速やかに引下げを実施することとしたい」と私たちのこの間の要求にまったく応えない引き下げありきの不誠実な回答に終始しました。
 
賃下げ・退職手当改悪許さない
 国公労連は、内閣人事局の回答に対して、あらためて人勧改善部分(月例給・一時金)の早期実施、「給与制度の総合的見直し」による賃下げ回避、定年延長の実現、非常勤職員の雇用・労働条件改善、必要な人員確保はじめとする長時間労働の是正を求めました。
 退職手当については、不誠実な対応に厳重に抗議し、、退職手当の性格は労働条件であること、政府の対応が労働基本権、期待権、請求権を侵害するものであることを指摘しました。
 また、森友・加計疑惑にかかわって、公務職場、とくに税務を預かる職員に納税者からの苦情の矢面に立たされるなど被害が出ている問題を紹介し、国会において森友・加計疑惑の徹底究明をはかるとともに、公務の公正・中立性の確保と信頼が損なわれないよう的確な対応を求めました。
 いよいよ、私たちの労働条件をめぐって、特別国会で山場を迎えようとしています。近日中にも政府は第2回の給与関係閣僚会議を開催し、給与法「改正」案、退職手当法「改正」案を閣議決定・国会へ上程することをねらっています。緊迫する状況のもと、国公労連としても全労連公務部会に結集し、国会議員要請や、委員会傍聴などの国会闘争を強めていくこととしています。
 職場段階からも、「全国統一行動週間」での職場集会での確認等にもとづいて、労働条件関連予算や昇格等の民主的運用などにかかわる要求での各級交渉を強化するとともに、改善勧告の早期実施をはじめ、すべての職員の労働条件改善や、退職手当の引き下げ阻止にむけてのとりくみを強めていきます。秋季年末闘争勝利にむけて奮闘していきましょう。