「公務員賃下げ違憲訴訟」最高裁不当決定を弾劾する(声明)

【私たちの主張:私たちの主張】2017-11-06
2017年11月6日
国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部
同弁護団

 
 10月20日、最高裁判所第二小法廷(裁判官:菅野博之、小貫芳信、鬼丸かおる、山本庸幸)は、「公務員賃下げ違憲訴訟」について、裁判官全員一致の意見として「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない」との決定を行い、決定書を上告人ら代理人弁護士事務所に送付してきた。
 決定理由は、憲法解釈の誤り・理由不備等の上告理由に当たらない、判例相反など法令解釈に関する重要な事項を含むという上告受理申立理由にも当たらない、というだけの極めて形式的ないわゆる「三行半」決定であった。
 
 しかし、本件はまさに、国家公務員の労働基本権制約の代償措置たる人事院勧告が画餅に帰すような場合には憲法28条違反になる、との全農林警職法判決を始めとする最高裁判例の射程に照らし、人事院勧告を超える給与減額について、憲法28条に違反するのではないか、という判例相反と憲法解釈が問われた事件である。
 そして、本件高裁判決も、憲法28条違反となる場合について、「必要性がなく、又は、その内容において著しく合理性を欠くときには、立法府の裁量権の範囲を超えるものとして違憲となる」との判断基準を示した。上告人らは、これは立法府の裁量権を過度に広く捉えており憲法28条の解釈を誤っている、労使対等決定の原則に根ざす労働条件不利益変更法理同等の基準が用いられるべきである、と主張し、上告理由、上告受理申立理由の柱としていた。
 また、給与減額立法が議員立法でなされ、その内容について国家公務員労働者を代表する国公労連との団体交渉が一切なされなかったことについても憲法28条、73条4号違反を主張していた。
 
 まさに、原判決の憲法解釈の誤りが問題となっており、法令解釈に関する重要な事項が含まれていたことは自明である。典型的な憲法訴訟であり、全農林警職法事件判決などに続くあらたな憲法判断がなされるか否かが注目されていたのである。
 しかも、本件は当事者も多く(上告人は国公労連と個人311人)記録も大部であるため、訴訟記録が最高裁に到達したのは6月であった。弁護団が徹底した審理を求めて9月26日に大法廷への回付申請を出した。それにもかかわらず、記録到達からわずか4カ月で、最高裁はろくに記録も検討せずに上告棄却・上告不受理としたのである。
 我々は、この不当決定を満身の怒りを込めて弾劾する。
  最高裁は、内容の審理に踏み込めば、全農林警職法事件判決などの判例との整合性が問われ、本件給与減額支給立法の合憲性を問題にせざるを得ず、説明不能に陥り、早期の幕引きを図ってそこから逃げたものと考える他ない。それは、政府・国会の違憲な措置を不問に付するに等しいものである。立法・行政の措置の違憲性を判断するという司法権の使命に反する、恥ずべき態度と言わざるを得ない。
 最高裁は、憲法の番人たる自らの役割を放棄し、歴史に汚点を残したものである。このような最高裁のあり方こそ問われなければならない。
 
 不当判決の前にも、「公務員賃下げ違憲訴訟」を提訴したことの意義は少しも失われない。
 本件は、2012年5月25日以降、国公労連と組合員370名が、労働基本権制約の下で政府・国会による賃下げが強行されたことそのものの違憲性を問い、2年間の差額賃金の支払いと損害賠償を求めて東京地裁に提訴した、初めての大衆的な集団訴訟であった。
 独立行政法人や地方公共団体にも賃下げの影響が波及する中で、国家公務員労働者が怒りの声を挙げたこと自体が重要であり、たたかう国公労連の権威と団結を高めるものともなった。
 一審では10名もの原告が証言を行い、国家公務員の精勤とそれに対する平均約100万円もの給与減額が生活に及ぼす被害を明らかにした。また、総務省幹部が証言台に立たざるを得ない状況に追い込み、今後、こうした不当な措置については法廷で説明せざるを得なくなる先例をつくり上げた。
 本件訴訟をたたかう中で、給与減額措置は延長されることなく2年間で終結し、新たな給与減額の策動を許さない歯止めとなり、その後政府が勧告尊重の姿勢に立たざるを得ない状況をつくり出した。加えて、労働基本権回復と労使協議の重要性について、三度も日本政府宛のILO勧告を引き出した。
 さらに、多くの労働者・労働組合の協力を得て展開した全国での街頭宣伝や署名獲得は、団結と連帯を広げるとともに、公務員バッシングを打ち破っていくことの一助となった。
 
 国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部と同弁護団は、この間支援いただいた多くの労働者・国民の皆さんに心より感謝の意を表する。
 本件裁判闘争はこれで終結するが、安倍政権が狙う改憲を阻止し、全ての労働者の権利擁護、賃上げと安定した雇用の確保など、憲法にもとづく基本的人権の保障をめざし、いっそう奮闘する決意を表明するものである。