分限免職の裁量権の逸脱・濫用をはじめて認定、一部勝訴勝ちとる
――東京事案判決を社保庁解雇撤回の完全勝利にむけた突破口に(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2017-06-29
2017年6月29日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
 本日(6月29日)、東京地方裁判所民事第19部(裁判長・清水響裁判官)は、旧社会保険庁職員3人の分限免職処分の取り消しを求めた裁判で、原告1人の分限免職処分を取り消し、2人の請求を棄却する判決を行った。
 一連の分限免職処分の取り消しを求めた裁判で、一部とはいえ勝訴を勝ちとったのは、今回が初めてで、裁判闘争を軸に全国で処分撤回闘争を展開してきた運動が反映したものであり、分限免職の不当性を司法が認定した点で画期的な判決である。
 
 判決は、争点となっていた国家公務員法78条4号(行政組織の改廃・廃職・過員が生じた場合)の要件妥当性について、「法の改廃により従前公務員が担当してた業務が他の法人等に委ねられることとされた結果『廃職又は過員』が生じることは、法の予定するところであるというべきである」として原告の主張を退け要件を満たしていると判断した。しかしこの判断は、年金制度に対する国民の不信が高まる中で、過剰なバッシングを背景に、政府が自らの責任を社会保険庁に転嫁して、社会保険庁の廃止・解体へと強引に進めた事実を顧みない不当なものである。
 
 分限免職回避努力義務の主体と裁量権については、政府・厚生労働省の義務について、閣議決定した基本計画に盛り込まれた分限回避の「できる限りの努力」は「施策を示したもの」と矮小化し、信義則上の努力義務についても「現行法上の根拠は見当たらない」と原告の主張を退けた。そのうえで、「任命権者がその権限の範囲内で行う分限免職回避努力義務の限度では図られているものというほかない」と社会保険庁内に限定した。これは、「政治のパワハラ」と指摘されたように、冷静な議論がないまま大量解雇を強行した政府の責任を不問にするに等しい不当な判決である。
 
  分限回避義務の裁量権の逸脱・濫用について判決は、本人の意に反する処分であることから「最終的な分限免職処分の段階に至るまでに、可能な範囲で、廃職の対象となる官職に就いている職員について、機構への採用、他省庁その他の組織への転任又は就職の機会の提供等の措置を通じて、分限免職処分を回避するための努力を行うことが求められる」とし、「特定の職員について分限免職処分を回避することができた相応の蓋然性があったにもかかわらず、社保庁長官等において当該努力を怠った結果、分限免職処分に至ったものと認められるような事情があるときは、当該職員に係る分限免職処分については、裁量権の逸脱又は濫用があったものとして、その効力は否定されるべきである」と基本的な考えを示した。
 そのうえで、全体としては「分限免職回避のための努力は行っていた」としつつも、3人の原告の個別的な事情を踏まえた検討結果では、懲戒処分のない1人の原告について、機構発足前に社会保険庁からの正規職員の採用予定人員に欠員が生じていたことに着目して、「仮に追加募集がされていたならば、原告が正規職員として採用された相応の蓋然性もなお十分に存したというべきである」として、社会保険庁長官等が追加募集の努力を怠ったことから「社会保険庁長官等が分限免職回避努力を尽くさなかったことにより、その裁量の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるというべきである。これに反する被告の主張は採用することができない」と処分取り消しの判断を行った。これは、これまでの私たちの主張が反映したもので、今後の足がかりとなる判決である。
 ただし、懲戒処分歴のある職員の一律排除については、「政策的判断として不合理であるとまではいえず、このような基準を設けることが機構法に違反するということもできない」と原告の主張を退けたことは不当である。
 
 国賠法上の損害賠償請求権について判決は、消滅時効の起算点が争点となっていたが、人事院判定時にすべきとする原告の主張を退け、分限免職の日を起算点と判定して時効(3年)により消滅したとして原告すべての請求を棄却した。
 
 今回の判決は、原告2人の不当解雇を容認する不当なものではあるが、原告1人について分限回避努力の裁量権の逸脱・濫用を認定した点で、これまでの政府の主張のみに従った不当判決とは一線を画すものである。不当解雇撤回を求める裁判は、現在、秋田事案で一審、愛知・広島・愛媛事案で控訴審、京都事案で上告審でのたたかいを展開している。また、国公労連・全厚生がILO(国際労働機関)の結社の自由委員会に対し、「不当解雇は団結権の侵害によるもの」と申し立てた事案について、結社の自由委員会が日本政府に勧告を行い、労使協議の重要性を指摘すると同時に追加の情報提供を求めており、国際機関でのたたかいもこれからが正念場である。
 
 国家公務員は、全体の奉仕者として、公正・中立である必要性から身分が保障されているが、政府の判断で一方的な解雇が可能となるならば、これまで以上に行政が政治に歪められる危険性が高い。また、国家公務員も労働者であり、賃金を唯一の生活の糧としているが、労働基本権が制約され労働法の適用がないために、労働者としての抵抗手段も限定され、解雇権濫用法理も適用されないため、分限免職の濫用は権利の侵害である。
 国公労連は、引き続き、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇の撤回をめざすすべての裁判闘争と連帯して完全勝利にむけて全力をあげる決意である。