国公労新聞2017年4月25日号(第1481号)

【データ・資料:国公労新聞】2017-04-25
人事院が無責任な調査、見解を発表
退職手当の改悪を許さない 職場からのとりくみ進めよう

 人事院は4月19日に「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について」を公表しました。これから、この人事院の見解をふまえ、政府・内閣人事局で、スケジュール的には秋の臨時国会での退職手当法の「改正」をめざし、見直し検討がすすめられていくこととなります。



公務が民間を78・1万円上回る「見直しを行うことが適切」 (人事院)
 退職給付水準の官民比較では、1人当たり平均の退職給付額は、「公務2537万7千円(うち退職手当2314万1千円、共済年金給付現価額223万6千円)に対して民間2459万6千円(うち退職一時金1006万1千円、企業年金現価額1453万5千円)となり、公務が民間を78万1千円(3.08%)上回っている。」(図参照)とされ、人事院はこの「比較結果に基づき、国家公務員の退職給付水準について見直しを行うことが適切である」と退職手当引き下げの必要性に言及しています。
 一方、経過措置については、1981年および2003年の引き下げの際に設けられた経過措置(調整率ベースで4/100、3/100。率にして3%前後の段階的な引き下げ)を参考に、今回は率を刻むことが困難であるということを理由に言及を避けています。
 前回(2012年)の見直しでは、リーマンショックの影響によって民間の給付水準が大幅に引き下がっていることを理由に、402.6万円の引き下げが一方的に強行されました。にもかかわらず、前回の調査から民間の給付水準が78.1万円も下がっています。この結果について人事院は、2012年のAIJ投資顧問株式会社の運用資産が大部分消失した問題などもあって、年金の運用実態が企業年金部分の低下につながり、全体として民間の給付水準を下げたとしています。
 また、退職一時金も前回から下がっています。これについては、退職一時金を原資に確定拠出年金(企業型)を導入したところがあるということを理由としています。
 退職一時金算定方式の「退職時の基本給の全部又は一部に勤続年数別支給率を乗じる方式」が前回の調査より増加していることをふまえれば、この間、3年連続での賃上げがあったものの、業績をベースアップではなく年収ベース(=一時金)で反映する企業や特定の年齢層や資格などに重点配分する企業が増加している、さらには、近年すすめられてきた高齢層職員の賃金抑制が影響していることも考えられます。
 国公労連は、人事院に対して国家公務員労働者の労働基本権制約の代償機関として、政府に対して、退職手当は重要な労働条件であり、適正な水準を確保すべきであると勧告するなど、再三にわたって必要な対応を求めてきたことからも、「代償措置」を果たさない無責任な見解は認められません。今後、政府に対しては、安易な官民比較を唯一の根拠とする退職手当の引き下げを許さないとりくみを強めていく必要があります。 


退職手当を引き下げる必要性はない
 退職手当は、最高裁判例で「賃金」とされ、退職手当制度研究会編著の「公務員の退職手当法詳解」でも、賃金の後払い的な性格を有するとされています。私たちの運動もあって、人事院も勤務条件性を有していることを見解で表明しています。したがって、政府による一方的な見直しは許されません。
 過去の調査(1996年)で△3%の較差が生じていた(公務員の退職手当質疑応答集・退職手当制度研究会編著)際は、「国の退職手当と民間の退職金とはおおむね均衡がとれていると認められたので、給付水準の改正は行わないこと」(公務員の退職手当法詳解)とされています。このように、過去の例や公務運営の公正・中立性の確保、厳しい再就職規制などの公務の特殊性をふまえると退職手当を引き下げる必要性は見当たりません。
 現在は見直しにあたってのルールもなく、単純な官民比較のみで大幅な引き下げが可能な制度となっています。見直しのたびに、水準が乱高下するような制度では将来設計を描くこともできません。さらに、国家公務員の退職手当の見直しは地方公務員や独立行政法人職員をはじめ、多くの労働者に影響します。仮に見直すのであれば、これらをふまえて、国公労連と協議を尽くし、合意のうえで、安定的な制度の確立、退職手当の適正な水準決定のルールの整備を行うべきです。

 退職手当改悪阻止にむけ職場から声をあげよう
 国公労連では、退職手当改悪阻止を夏季闘争の柱のひとつに据えてとりくみをすすめていきます。具体的には、一方的な改悪阻止にむけて国公労連で要求書を作成・提出し、政府・内閣人事局への追及を強めていきます。
 職場段階からのとりくみとしては、国公労連が作成する学習資料を活用して、学習を深めるとともに、全労連公務部会がとりくむ政府あての「退職手当の引き下げに反対する署名」の最大集約に力を注ぎます。また、こうした学習・署名などを背景に、各級機関でも改悪阻止にむけた当局交渉を強めます。
 これらのとりくみを推進し、退職手当の引き下げを許さず、同時に人勧・最賃闘争での要求の前進にむけ、奮闘していきましょう。




最賃1500円求める
エキタスのデモに労組が共同


 全労連と国民春闘共闘委員会は4月15日、38都道府県で最低賃金の大幅引き上げを求めて宣伝行動にとりくみました。
 東京では、新宿駅前での宣伝行動に続き、若手グループAEQUITAS(エキタス、ラテン語で「公正」の意味)の最低賃金1500円の実現を求める新宿デモにナショナルセンターの枠を超えて労働組合も参加し1500人が結集。サウンドカーから国公労連の西口書記(写真左)がハローワークの非常勤職員の雇用・労働条件改善を訴えました。





 政府の「働き方改革実行計画」は使用者のための「働かせ方改革 」

 3月28日、政府の働き方改革実現会議は、働き方改革実行計画を決定しました。安倍首相は、働き方改革について「同一労働同一賃金を実現する」「非正規という言葉を一掃する」などと発言し、具体策を実行計画としてまとめるとしていましたが、どのような「計画」となったのか、注目されていた課題を中心にその概要をまとめてみました。

 

似て非なる「同一労働同一賃金」
 同一労働同一賃金については、「同一企業・団体における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」と、社会全体で客観的に均等待遇をめざすのではなく、あくまで企業が判断する仕組みに矮小化しています。判断基準となるガイドライン(案)では、職務、職業能力、勤続などの違いを認め、同じ仕事をしていても人事コースや責任の違いによる賃金格差を容認するなど、現在の不当な格差にお墨付きを与えるものです。また、ガイドラインの実効性を担保するために、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法を改正するとしています。しかし、その内容は、事業主に均等待遇と均衡待遇を求める規定の整備という曖昧なものです。また、労働者に対する説明責任を義務化するとしていますが、企業に立証責任を求めていないことから、労働者が立証することは困難であり、使用者の一方的な判断で格差が容認されてしまいます。このように実行計画の「同一労働同一賃金」は、国際社会が求めている同一労働同一賃金とは似て非なるものです。


大改悪となる残業上限規制
 時間外労働の上限規制について実行計画では、労働基準法に罰則付きの上限規制を設けるとして「歴史的な大改革」「労働界と産業界が合意できたことは画期的」などと自画自賛しています。しかし肝心なのはその内容で、実行計画では、時間外労働協定(36協定)の上限を「原則、月45時間以内、かつ年360時間以内」と現在の大臣告示と同じ内容に止めています。そのうえで、「臨時的な特別の事情」があれば、年720時間以内(休日労働含まず)とし、「1カ月最大で100時間未満(休日労働含む)」「2~6月平均で80時間以内(休日労働含む)」と過労死の労災認定基準と同じ水準での時間外労働を容認するものです。そもそも労働基準法は1日8時間、週40時間を労働時間の上限として定めていますが、その大原則を歪めてしまいます。そのうえ政府は、財界の要求にもとづいて労働時間規制を適用しない高度プロフェッショナル制度(年収1075万円以上の高度専門職)創設と企画業務型裁量労働制(みなし労働制)の対象業務拡大という「残業代ゼロ」「定額働かせ放題」の労働基準法の大改悪をセットで行おうとしており、「画期的」なのは使用者にとってのみで、労働者にとっては大改悪といえます。
 そのほか実行計画では、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」が盛り込まれ、非雇用型テレワークで雇用契約によらない働き方を推進しようとするなど、「働く人の視点に立った働き方改革」といいながら、全体的に使用者による使用者のための「働かせ方改革」という側面が色濃く表れています。それは「働き方改革」の真のねらいにあります。実行計画の「基本的考え方」では、「働き方改革は、社会問題であるとともに、経済問題であり、日本経済の潜在的成長力の底上げにもつながる、第3の矢・構造改革の柱となる改革である」と「働き方改革」を企業の成長戦略として位置づけていることから明らかです。
 私たちは、このような安倍政権の「働き方改革」の響きの良さに惑わされることなく、人間らしく働くルールの確立をめざすとともに、労働法制の改悪を許さないための共同を推進していく必要があります。