国の責任と解雇権の濫用を免罪する不当判決に抗議する(談話)
――社会保険庁不当解雇撤回闘争・愛知事案一審判決にあたって

【私たちの主張:私たちの主張】2017-03-17
2017年3月17日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
 名古屋地方裁判所民事第1部(裁判長寺本昌広)は3月16日、社会保険庁分限免職処分取消等請求事件(社会保険庁不当解雇撤回闘争・愛知事案)について、原告の請求をすべて棄却するという不当判決を行った。
 
 国家公務員法第78条による分限免職(本人の意に反する免職)は、「免職することができる」とあるだけで「しなければならない」規定ではない。そのため運用にあたっては、免職を回避する努力を重ねたうえで、きわめて慎重に行われてきた。特に本件に適用された第78条4号の「官制(行政組織)若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職」による免職は、戦後間もない一時期を除いて、1964年に2事案6人の免職以外は、社会保険庁事案まで省庁間配置転換などの国を挙げた免職回避が行われてきた。
 
 社会保険庁の解体は、年金に対する国民の不信を社会保険庁職員に転嫁した政治の圧力のもとで国策として強行されたことは明らかである。それもかかわらず政府・厚生労働省は、当時政府に設置されていた雇用調整本部の府省横断的な配置転換の機能をまったく活用しないなど、十分な分限免職回避努力を尽くさなかった。
 さらに政府は、業務外目的の年金記録閲覧等で懲戒処分を受けた職員を新機構に採用しないという基本計画を閣議決定し、解体後の受け皿として設立した日本年金機構に多くの欠員が生じているにもかかわらず、あえて分限免職を強行した。
 以上の事実から本件は、国家公務員法の趣旨を逸脱したもので、分限免職に名を借りた国による不当解雇そのものである。
 
 裁判の争点である「国家公務員法第78条4号の廃職にあたるか」について判決は、「従前行政機関が行っていた公的事務を国家公務員以外の組織に担わせる場合であっても、当該事務を職務としていた官職が廃止されることになる以上、国公法78条4号の廃職に該当すると解するのが適当であって、人員削減の必要性の有無や当該官職が廃止された後の業務自体が消滅したか否かによって廃職に該当するか否かの判断が左右されることはない」と決めつけた。分限免職にあたって、人員削減の必要性の有無を問わないこととなれば、政府が組織を衣替えするだけで分限免職が正当化されることになり、国家公務員の身分保障が画餅に帰すことになる。
 
 もう一つの争点である「分限免職処分に裁量権の逸脱又は濫用があるか」について判決は、「免職を回避することが現実的に可能であったにもかかわらず、そのために合理的な努力をすべき義務(分限回避義務)が尽くされていないと評価される場合にも任命権者が有する裁量を逸脱し又は濫用したものとして、当該処分が違法となる場合がある」との見解を示した。しかし、分限回避義務の主体について「国までもが分限回避義務を負うべき主体になるというのは飛躍に過ぎる」「任命権者にとどまるのが原則」などと矮小化し、厚生労働大臣の分限免職義務を認めたものの、国の義務は認めなかった。
 そのうえ判決は、「できる限りの分限免職回避義務を履行した」と国の主張のみを採用するとともに、雇用調整本部の機能を活用しなかったことについて「国が分限回避義務を負っていたと解することはできないから…検討するまでもなく、理由がないというほかはない」と原告の主張を切って捨てた。これは、これまでの政府方針や現実に他府省の事案で雇用調整本部の機能を活用していた事実から目を覆い、国の責任を免罪する不当な判決である。
 
 原告には、何の責任もない。にもかかわらず、生活の糧を一方的に奪われた。しかも愛知事案の原告の1人は育児休業中の解雇である。解雇権の濫用は、労働契約法できわめて厳しい制限が加えられている。しかし、今回の判決は、原告の主張を一顧だにせず、国による解雇権の濫用を容認した不当なものであり、厳重に抗議する。
 
 不当解雇撤回を求める裁判は、現在、京都事案が最高裁に上告、広島・愛媛事案が控訴審、北海道・秋田・東京が一審段階でのたたかいを展開している。さらに国公労連・全厚生は、ILO(国際労働機構)の結社の自由委員会に不当解雇は「政府の解雇は団結権の侵害によるもの」との申し立てを行い、2015年11月12日にILOが日本政府に勧告して、労働組合との協議の重要性と情報提供を政府に求めるなど、国際世論も関心を示している。
 
 国公労連は、国と厚生労働省に不当解雇の即時撤回を求めるとともに、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇撤回をめさすすべての裁判闘争の完全勝利にむけて全力をあげる決意である。
 また、国の不当解雇の背景には、労働者の雇用と権利が軽視されている社会環境がある。したがって国公労連は、すべての労働者の雇用の安定と労働条件の確保をめざすたたかいに奮闘する決意を表明する。