国の主張のみに沿った不当判決に抗議する
社保庁解雇撤回裁判・京都事案の控訴審判決にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2016-11-17
国の主張のみに沿った不当判決に抗議する(談話)
-社保庁解雇撤回裁判・京都事案の控訴審判決にあたって-
 
2016年11月16日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌 田  一
 
 大阪高等裁判所は11月16日、旧社会保険庁・京都社会保険事務局職員の分限免職処分の取り消しを求めた控訴審で、「控訴人らの請求はいずれも理由がない」とし、「原判決(一審判決)は正当であるから、本件控訴を棄却する」という不当な判決を行った。
 判決は、争点である、①国家公務員法78条4号(行政組織の改廃による本人の意に反する免職)の妥当性、②分限免職努力違反・裁量権の逸脱・濫用、③国賠法上の違法性及び社保庁長官等の過失の有無、の三点についていずれも私たちの主張を退け、国による不当解雇を免罪するきわめて不当なものである。
 
 判決は、争点①の「分限免職の妥当性」について、「(国会の立法により)、従前行政機関が行っていた事務を国家公務員以外の組織に担わせる場合であっても、当該事務を職務としていた官職が廃止されることになる以上、任命権者は同号(国家公務員法78条4号)に基づく分限免職処分をすることができるというべきである」などと、国による社会保険庁解体と分限免職処分を容認した。
 これは当時、年金未納や年金記録問題など年金制度に対する国民の不信が高まる中で、過剰なバッシングを背景に、政府の責任を社会保険庁に転嫁して、社会保険庁の廃止・解体へと強引に進めた事実を顧みない不当なものである。また、こうした不当処分が容認されるならば、国家公務員を分限免職処分するために、当該部門を民営化・外部委託等すれば、不当解雇が正当化されることとなり、公務員の身分保障は画餅に帰し、公務の公正・中立性の確保が困難となる。
 
 争点②の「分限免職回避努力義務・裁量権の逸脱・濫用」について判決は、分限免職処分について「転任のための合理的努力を尽くさずに、任命権者において同処分をした場合、当該処分は、任命権者が有する裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、違法なものになることがあるというべきである」と裁量権の濫用等の可能性を指摘した。しかし、「裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることは、当該処分が違法であると主張する当事者(控訴人ら)に立証責任があるものと解される」として、任命権者の一方的な強権発動に関して処分された側に立証責任があるという不当な見解を示したうえで、「(国による)転任のための合理的な努力がされた場合において、更に努力の余地があったからといって、直ちに違法評価を受けるものではない」と国の裁量権濫用等を認めなかった。また、整理解雇4要件を満たすべきとの私たちの主張についても「国公法に基づく任用関係にある国家公務員に適用されるものではない」と切って捨てた。
 他方、「分限回避義務の主体について」は、国の「社保庁長官及びその委任を受けた社保局長に独立的かつ終局的に帰属する」との主張に対して、「国公法55条1項(任命権者)は、その任命権が及ぶ範囲をその部内の機関に属する官職に限られるものとすることを明らかにしたものにすぎず、分限免職処分にかかる裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無を、任命権者の行いうる活動の範囲内の問題のみに限る趣旨であると解することはできない」とし、「厚生労働大臣は、内閣の一員として、閣議決定された本件基本計画(日本年金機構法に基づく不採用職員への対応)に基づき、上記努力をすべき義務(分限回避義務)を負っているものということができる」と一審と同様に厚生労働省の責任を認めた。
 また、「社保庁の解体は、機構法とそれに基づく閣議決定によって決定されており、官職の廃止は、国策によるものであって社保庁が行ったものではない。したがって、厚生労働大臣や社保庁長官等が分限回避措置を行う場合には、間接的に政府全体が分限回避措置に向けて努力をすべきものと解することができる」と間接的にではあるが、初めて政府全体の責任を認定した。しかし判決は、「(国は)常に総定員法1条1項に規定する政府全体の定員の総数の最高限度に満つるまで、転任による分限回避義務を負うものではない」「分限免職処分はあり得なくなるものではない」と結果は国の責任を認めなかった。
 
 争点③の「国賠法上の違法性」について判決は、「本件各処分は適法であることから、社保庁長官等がこれをしたことが国賠法上の違法行為に該当しないことは明らかである」と一方的に断じた。
 
 このように今回の判決は、こうした私たちの主張を一顧だにせず、政府の主張に従った不当なものであり、厳重に抗議するものである。
 不当解雇撤回を求める裁判は、現在、北海道、愛知の事案で一審段階が結審を迎えるほか、秋田、東京での審理が進められている。また、愛媛・広島では高裁でのたたかいを展開している。
 さらに、ILO(国際労働機構)の結社の自由委員会は、2015年11月に日本政府に対して社会保険庁の分限免職処分に関して労使協議の重要性を求めると同時に追加の情報提供を求める勧告を行うなど、「不当解雇は団結権の侵害」の可能性について強い関心を示しているが、本判決は国際世論に関してにも真っ向から応えていない。
 
 このたたかいは、社会的にも意義がある。
 政府は、社会保険庁の廃止・解体を強行したうえに、年金積立金を投機に使用しているが、政府には、年金制度の安定的な運営を行う義務があり、このたたたかいを通してその責任を明らかにして年金制度の拡充・強化を図ること求められている。また、不当解雇などの労働者の権利侵害を社会的に抑止し、人間らしく働くルールを確立するためにも重要なたたかいである。さらには、公務の中立・公平性の確保など、公務員制度の民主化のためにも負けられないたたかいである。
 
 国公労連は、今回の不当判決に屈することなく、上告して逆転判決をめざす。また、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇撤回をめざすすべての裁判闘争の完全勝利にむけて全力をあげる決意である。
以 上