国公労新聞2016年7月10日号(第1465号)

【データ・資料:国公労新聞】2016-07-10
切実な要求実現へ
政府・人事院との交渉を強化

 国公労連は6月15日に人事院に「夏季重点要求書」を提出し、8月上旬の人事院勧告へ交渉を積み重ねています。切実さを増す増員要求の実現とあわせ、暑い夏のたたかいはいよいよ本番をむかえます。


7月25日の週は「第2次闘争強化週間」 
7月27日中央行動に代表送ろう
 今年の人事院勧告で「見直し」がねらわれる扶養手当にかかわって、国公労連は6月9日に要求書を提出、引き下げや廃止は断じて認められないと人事院と交渉してきました。しかし、人事院は、配偶者にかかわる扶養手当を改悪する構えを強めており、これからのたたかいはきわめて重要です。
 賃金改善をめぐっては、人事院の勧告作業と並行して、7月下旬に政府が決定する最低賃金目安額をめぐる労使間のせめぎ合いが激しくなっています。塩崎厚労大臣は「年率3%程度」の改善を最低賃金審議会に求めましたが、このペースでは最低賃金が千円を超えるのは20年代半ばで、ひろがる格差は解消されません。
 「民間準拠」に固執する人事院の姿勢を突きくずし、実質的な賃上げにつながる勧告の実現へ、最低賃金改善のたたかいと結びつけた官民共同の運動が求められています。
 
◇何としても増員を勝ち取ろう
 公務員定員削減反対、大幅増員を求めるたたかいも重要段階をむかえます。約3万4千人分の署名を積み上げた6月24日の内閣人事局との交渉では、各単組からは、あいつぐ定員削減のもとで、職員の献身的な努力にたよっている実態が示され、政府の使用者責任を厳しく追及しました。
 内閣人事局側は、「総人件費抑制の方針は変わらない」「単に『職場が大変だ』と言うだけでは、官邸や国会に説明ができない」などと回答し、要求を正面から受けとめていません。職場から声をあげ、何としても増員を勝ちとるたたかいが重要です。
 国公労連は、7月25日からの週を「第2次闘争強化週間」に設定、27日には全国上京団による中央行動でたたかいます。職場決議の送付や、中央行動に一人でも多くの仲間を送り出し、政府・人事院に要求実現をせまっていく必要があります。



 
悪しき海兵隊を撤退させ沖縄県民を救おう 
県民大会に6万5千人

【沖縄県国公発】沖縄本島中部のうるま市で4月28日、ウォーキング中の20歳の女性が、強姦目的に嘉手納基地所属の元海兵隊員に棒で殴る、首を絞める、刃物で刺す等の暴行を受け殺害され、その後遺棄される残虐極まりない事件が発生しました。6月19日、「元海兵隊による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」が、午後2時から那覇市の奥武山陸上競技場を主会場に開かれ、6万5千人の参加者が事件への抗議だけでなく、被害者を悼み、遺族に寄り添う姿勢を表しました。沖縄県国公からは家族を含め125人が参加しました。

 
 
米兵犯罪パトロールに国公労働者
日米地位協定の改定こそ政府のとるべき道

 7月1日、国公労連は、国の職員による「沖縄・地域安全パトロール」の実施に関して、以下の書記長談話(抜粋)を発表しました。(国公労連ホームページに全文)

   ◇   ◇   ◇

 今年4月28日に沖縄うるま市内で発生した米軍属(元海兵隊員)による女性暴行殺人事件にかかわって、政府は5月26日に「沖縄県における犯罪抑止対策推進チーム」を発足させた。警察による体制の強化に加えて、「車両100台規模の『沖縄・地域安全パトロール隊』を創設して、繁華街等において、緊急防犯パトロールを実施する」としている。
 既に6月15日から沖縄総合事務局と沖縄防衛局から職員によるパトロール(土日含む毎日19時から22時)が開始され、8省庁の在沖縄の13機関に対して追加の車両約20台と人員の協力が求められている。
 問題の本質は、この間繰り返された米軍関係の犯罪・事件を如何に解消するかにある。沖縄県民の権利といのちを守るためには、米軍基地の大幅な整理・縮小、海兵隊の撤退、日米地位協定という治外法権を抜本的に改めることである。
 何より国の機関には、それぞれ定められた役割があり、そこで働く職員も限られた体制の中で、国民の権利や安心・安全を守る重要な職務を担っている。それに加えて、夜間のパトロールに車両と人員を振り分けることは、それぞれの機関の執務時間の体制を弱め、国民へのサービス機能が低下することにつながるものである。
 政府は、国家公務員だからといって安易に職務外の業務命令を行うべきではない。それよりも、沖縄県民の声に真摯に向き合い、米軍による犯罪・事件の根絶にむけた対策に着手すべきである。


 
 
「公務員賃下げ違憲訴訟」控訴審
いよいよ結審、年内にも判決か

◇判決日までとりくみの継続を
 2014年10月30日の東京地裁不当判決を受けて、同年11月13日に東京高裁に控訴した「公務員賃下げ違憲訴訟」の第3回口頭弁論が6月20日開かれ、国公労連の岡部委員長が意見陳述するなか、東京高裁前要求行動と報告集会にとりくみました。
 川神裕裁判長は不当にも、国公労連が提出していた元総務大臣の片山善博氏をはじめとした証人申請をすべて却下しました。次回の9月12日の第4回口頭弁論をもって結審し、年度内にも判決が下される公算が大きくなっています。
 残された期間はあとわずかですが、最後まで裁判勝訴をめざして、「公正判決を求める要請署名」の集約(11月末)と各地での宣伝行動の強化が重要です。
 
◇判例違反の1審判決
 「公務員賃下げ違憲訴訟」は、政府と国会が、2012年2月29日に給与改定・臨時特例法を成立させ、2012年4月から2年間にわたって平均7・8%にものぼる賃下げを国家公務員労働者に押しつけたことは、労働基本権制約の「代償措置」である人事院勧告を無視し、憲法に違反するとして提訴した裁判です。
 1審判決は、「人事院勧告は『勧告』に過ぎず、国会は、人事院勧告どおりの立法をすることが義務づけられているとはいえない」として国会の裁量権を全面的に認め、人事院勧告を無視した賃下げは憲法には違反しないと判示しました。
 これでは、労働基本権は制約されたまま、その「代償措置」もないに等しいこととなり、到底認められるものではなく、「人事院勧告を尊重することが大前提」とした「82年人勧凍結スト処分判決」にも違反する極めてひどい判決です。
 
◇経過と到達点
 国公労連は、この間、世論を背景に裁判に勝訴するために、全県での街頭宣伝行動の実施、民間労働組合への支援要請にとりくんできました。
 1審段階では、「公正判決を求める要請署名」個人33万7984筆、団体6736団体、「学者・有識者からの賛同署名」170筆、「すべての証人の採用を求める要請書」2万8262筆を集約し、東京地裁に提出。また、控訴審の段階では、7月1日現在で、「公正判決を求める要請署名」個人10万9668筆、団体3172団体、「すべての証人の採用を求める要請書」1万9408筆を集約し、東京高裁に提出しました。


 
 
国公青年セミナー ― 大いに学び交流

 2016国公青年セミナーが6月17日・18日に東京都内で開かれ、北海道から沖縄まで全国の青年50人が参加しました。
 17日は国会議員会館に集合し、鎌田書記長から「これから国公労連の運動の中心を担うのは青年の皆さん。大いに学び、交流しよう」と挨拶があったあと、人事院交渉、財務省交渉、議員要請の各グループに分かれて行動しました。
 
◇現場の声を人事院・財務省にぶつける
 人事院交渉は、人勧期交渉の一つとして位置付け、青年独自要求書を提出して初任給や住居手当の引き上げ、通勤手当の自己負担解消など、青年の切実な要求を人事院に訴えました。
 人事院側の回答は「総合的見直しでは青年層に配慮」としつつも、「担当に伝える」との誠意のない回答に終始しましたが、参加した青年からは「ふだん単組で訴えている要求を人事院に直接言える貴重な経験だった」「これからも直接現場の声を伝える機会を作ってほしい」などの感想が寄せられました。
 財務省交渉は、宿舎課題で理財局の課長補佐と交渉を実施し、青年自らが住んでいる宿舎の写真を見せながら複数入居の実態を訴え、勤務地から近く、かつ衛生的な宿舎の確保などを求めました。
 財務省側からは「(複数入居については)我々も同様の問題意識を持っている」などの回答があり、参加した青年からは「宿舎問題の実状を知ることができた」「財務省側もこちらと近い問題意識があることが分かったので、これからも交渉していきたい」などの感想がありました。
 
◇国会議員に要請
 体制拡充を訴える議員要請では、参院選前ということもあり秘書対応がほとんどでしたが、定員削減による職場の実状を現場から訴えました。参加した青年からは「要請相手の表情も見ることができ、地元選出議員の場合は『お世話になってます』と言ってもらい、気の引き締まる重要な体験をした」などの感想が寄せられました。
 
◇青年運動活性化のヒントをもらった
 18日は、関西勤労協の中田進先生と岐阜県労連の平野竜也事務局長を講師にまねきました。中田先生は「労働組合の必要性とその真価」と題して、労働組合の歴史と現代での役割について笑いを交えて講義され、平野事務局長からは岐阜県労連青年部の活動実績を踏まえて青年運動の活性化のコツを伝授して頂きました。
 講義後の質疑では、組合活動をする上での悩みなどの率直な意見交換が行われ、「ヒントをたくさんもらった」「支部に持ち帰って皆と共有したい」「こういう学習を増やしてほしい」などの積極的な感想が多く寄せられました。


 
 
「軍事研究を考える」をテーマに問題点を議論・検証
第34回国研集会  

 第34回国立試験研究機関全国交流集会が6月17日、国公労連と学研労協で構成する実行委員会の主催により、「軍事研究を考える」を集会テーマに茨城県つくば市の研究交流センターで開かれ、90人が参加しました。
 「異常に急進展する軍事研究と研究者・研究機関――それとのたたかい方」と題する記念講演を行った新潟大学の赤井純治名誉教授は、「軍事費が5兆円を突破するもとで、防衛省が大学等に研究を委託する競争的資金『安全保障技術研究制度』の予算も昨年度の倍額の6億円にふくれあがり、さらに自民党の国防部会が100億円への拡充を安倍首相に提言している。一方で、大学や研究所の運営費交付金を削減している。見えてくるのは研究者を軍事研究に協力させようとするものだ」と批判。
 さらに、日本学術会議の「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」(1950年)や海外や新潟大学での反対運動を紹介しながら、国民との共同をひろげ、この流れをストップさせようと参加者に呼びかけました。
 パネルディスカッションでは「軍事研究」の問題点について、各分野から5人のパネリストが発言しました。
 気象研OBの増田善信さんが実体験にもとづき戦時中に天気予報が出せず、台風や地震などの天災で多くの方々が亡くなった過去が語られました。
 戦場ジャーナリストの志葉玲さんは中東などで現場取材した映像や写真をもとに、軍事研究の行き着く先では、とりわけ、子どもなどの弱者がその犠牲になっていることなどが報告されました。
 これらの報告を受けた後、全体で議論・検証しました。
 また、集会にむけてとりくんだ個人アンケートは、防衛省や米国国防総省の資金提供による軍事研究の是非について、「進めるべきではない」が56・1%、「進めるべき」は26・0%、「無回答」が17・9%、年齢別では若手ほど、「進めるべき」との回答が多いという結果がでています。「進めるべき」の意見は「研究資金獲得」「国防」「科学技術の発展と民生転用」のためが中心となっています。
 そうしたことを受け、集会参加者からは「職場では話ができないテーマなので、組合で議論する場を提供し、若い研究者をはじめ対話することが必要」「すでに軍事研究にかかわる予算をもらっている可能性があるので、組合でもチェック運動が必要」など対話と運動の重要性が語られました。


 

独法労組代表者会議
経験・教訓学び要求前進を

 6月24日、国公労連・独立行政法人対策委員会は、独法労組の運動の到達点を確認し合い、労働条件や職場実態など交流を深め、今後のたたかいを発展させるため、国公労連会議室で、「独立行政法人労働組合代表者会議」を開催し、10労組27人が参加しました。
 開会あいさつで、橋本独法対策委員長(国公労連副委員長)は「独立行政法人制度が発足し、15年経った。独法の役割は国民の権利保障を目的とするものであるのに、政府は縮小・統廃合をすすめてきた。公務・公共サービスに携わる労働組合として、その責務をはたそう」と呼びかけました。
 つづいて、笠松独法対策委員が、夏季闘争のとりくみと2016年度運動方針(構想案)を提案。「賃金・労働条件の早急な確定をはかるとともに、交渉機能の強化、有期雇用職員の無期化、組織強化・拡大をすすめよう」と呼びかけました。
 各単組からの報告では、労使自治によって年次休暇や夏季休暇など公務の労働条件を上回る成果をかちとっている経験が出され、国土交通労組からは、この4月に統合・発足した3機関(自動車技術総合機構、海上・港湾・航空技術研究所、海技教育機構)で、全職員の雇用を確保し、労働条件切り下げをさせずに移行したことが報告されました。また、全医労からはスト権を確立し、団体交渉で要求前進をかちとったとの発言がありました。参加者は、これらの教訓を今後の運動にいかしていくことを確認しました。
 最後に青柳独法対策委員が「貴重な要望・意見が出された。独法対策員会として対応していく。今後も、情報交流を強化し、とりくみを発展させていく」とまとめのあいさつを行い、会議を締めくくりました。


 
 
社保庁不当解雇撤回裁判

北海道事案

11月24日に結審
 裁判勝利にむけて、傍聴行動とともに、公正な審理・判決を求める署名を広げることがいよいよ重要になっています。
 6月28日の第22回弁論で11月24日に結審することが決まりました。このことにより年度内判決が予想されます。
 
秋田事案
証人採用求める
 この間、進行協議を重ねてきましたが、裁判所が原告の主張を全く理解しない状況でした。5月16日の第11回弁論では、あらためて分限免職になった経緯等具体的に主張し、原告側申請の証人採用を求めています。
 
東京事案
重大な局面に
 6月2日の第11回弁論で、国は裁判所から求められていた①省庁間配転について一般国家公務員と社保庁職員の相違②日本年金機構設立時、欠員となっていた正規職員をなぜ募集しなかったのか――について従来通りの答弁を提出。
 原告側申請の薄井証人(元日本年金機構設立委員会事務局長)の証人採否が重要な局面となっています。裁判長は過去からの国家公務員の人事政策について、原告申請の盛永国公労連顧問から聞きたいと述べ、盛永顧問の証人採用が決定的となっています。
 
愛知事案
進行協議続く
 4月13日の第14回弁論で、裁判長交代による更新弁論があり、6月13日、7月6日の進行協議を経て証人の採否が次回弁論で決定します。
 
京都事案(控訴審)
意見書を提出
 5月18日の第3回弁論では、大阪市立大学の渡邊賢教授(行政法)の意見書を提出し、地裁判決の矛盾を指摘。原告証人として元京都社会保険事務局長を申請しましたが却下され、次回弁論で結審が予想されます。
 
愛媛事案(控訴審)
3人全員が控訴
 3月30日の高松地裁判決は不当にも請求棄却。これを不服として原告3人全員が高松高裁へ控訴しています。
 
広島事案(控訴審)
原告で全厚生に加入
 昨年12月21日に広島地裁で請求棄却の不当判決を受けた原告1人が広島高裁へ控訴していましたが、5月に全厚生に加入し、全厚生闘争団としてたたかうことを決意。6月9日の第1回弁論では、原告が「分限免職となったことを自己責任と決めつけた判決は許せない」と陳述しました。


 
 
【ILO】公務員の労働基本権の保障を求めて10度目の勧告

 6月11日、ILO(国際労働機関)は理事会を開き、結社の自由委員会の日本政府に対する勧告を承認しました。
 これは、全労連と国公労連が、政府の「公務員制度改革」が日本政府が批准している「結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第87号)」及び「団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(第98号)」に反して、十分な協議なしにすすめられ、労働基本権の制限をさらに悪化させるものとして、労働基本権の保障を求めて2002年に結社の自由委員会に申し立てた案件にかかわる勧告であり、今回で10回目となります。
 今回の勧告では、これまでと同様に、「公務員の労働基本権を保障するための協議を遅滞なく実施すること」に加えて、国公労連が昨年、「公務員賃下げ違憲訴訟」の一審の不当判決の内容と内閣人事局の設置により級別定数の権限が人事院から使用者へ移管されたことに対して「権利の侵害に等しい」と申し立てたことに対して、「代償措置である人事院勧告制度の機能に関する情報の提供」を政府に求めました。
 国公労連は、今回の勧告にもとづいて、憲法で保障された権利の回復を政府に求めるとともに、全労連に結集し、公務・民間で力を合わせて、公務労働者の権利確立にねばり強くとりくんでいきます。


 
 
【インタビュー現場が主役の労働組合で行政民主化へ
<サンダース旋風や最賃一五ドル運動>
アメリカ労働運動の再生から学ぶ

 最賃賃金15ドルをめざす取り組みの前進やサンダース旋風などアメリカの労働運動が再生しています。ここから何を学べるのか、山崎憲さん(JILPT国際研究部主任調査員)と布施恵輔さん(全労連国際局長)のお二人にお話を伺いました。その一部分を紹介します。インタビューの詳細については、『KOKKO』8月号に掲載しますので、ぜひご購読ください。(聞き手=国公労連調査政策部・井上伸)


 
全労連国際局長 布施恵輔さん
「予算獲得」で地域住民とともに公務員がストライキ 

 ふせ けいすけ 
 1974年生まれ。全国労働組合総連合(全労連)常任幹事・国際局長。東京学芸大学卒(教育学部国際文化教育課程国際教育研究専攻)。

 ――布施さんは4月にアメリカに行かれていたということですが、印象に残ったことはどういったことでしょうか?
 ちょうど、公立の小中高校を組織しているシカゴ教員組合がストライキを4月1日に打ちました。このストの課題が「fight for funding」=予算獲得なのです。これを最初聞いたときに、予算獲得のたたかいというのは公務サービスの予算配分の問題であり、民営化のような、公立学校が地域からなくなるという分かりやすい問題でなく、抽象的で難しい課題だと正直思いました。予算獲得のストライキがどう取り組まれているのか興味深いとシカゴの組合役員に言ったら、「4月1日の朝6時に来い」と言われてシカゴ郊外にあるルーズベルト高校に行ったのです。
 朝6時には、学校が完全に封鎖されていて、そこでピケをはりながらのスト集会にルーズベルト高校の教職員の組合員だけではなく、支援に来ている市職員、あるいは州の職員の組合員がいる。ここまでは私も事前に想定できていたのです。ところが、保護者がたくさん参加している上に、生徒もたくさんおり、地域の民間企業の組合の人もたくさん参加していたのです。
 特にシカゴは「fight for 15」の発祥地でもあるので、マクドナルドで時給引き上げと労組結成を求めて運動をしている人たちも教員組合のストライキに参加して一緒に集会をしているのです。
 そして、ストライキ集会では、親、生徒、卒業生、地域の工場労働者、マクドナルドで最賃レベルで働く労働者らが、自分たちの実態もまじえながら公立学校の大切さを訴え、ストライキへの連帯を自分の言葉で次々と語っていきました。
 これはすごい光景だなと思いました。公務と民間の労働者の連帯だけでなく、親、生徒、地域住民などコミュニティーまで含めた大規模なストライキ運動になっているわけです。朝6時のテレビのニュースから、学校が閉鎖され生徒や地域住民も参加しストライキ集会が取り組まれていることが報道され、報道でストを知った地域住民も参加して集会の規模が大きくなっていきます。最終的には朝6時の倍ぐらいになって数百人の規模になっていました。
 そして、学校でのストライキ集会が終わったら、今度は参加者みんなが近くのマクドナルドに行って、マクドナルド前での抗議集会を始めたのです。これにはとても感銘を受けました。予算獲得という難しい課題で、生徒の保護者や地域住民まで含めた運動の構築が公務の労働組合でできているということと、公務の組合が最低賃金で働く低賃金労働者とも一緒になって運動を展開していることは日本の公務の労働組合にとっても大きな示唆があると思います。
 
低賃金・無権利状態の放置はすべての人の被害に
 低賃金労働で全く無権利状態の人たちが地域にいることは大きな問題で、じつは公務員である自分たちとも密接につながっていて改善しなければいけない問題なのだと理解され運動が展開されているのです。その際のスローガンが「Mac job costs us all」(マクドナルドのような雇用はみんなにとって良くない)です。これは、低賃金・無権利状態の仕事を放置してしまうことは全ての人たちにとって被害があるというニュアンスのスローガンです。
 マクドナルドのような低賃金・無権利な労働が地域にあることはみんなにとって問題なのだということを、ファストフードで実際に働く労働者が言うだけではなくて公務を含めた労働組合が重要な課題として取り組んでいるのです。「fight for funding」と同時に「Mac job costs us all」という2つのスローガンが結びついている労働組合の運動を目の当たりにして、ここから日本の労働組合運動も大きく学ぶ必要があると思いました。
 
 
 
JILPT国際研究部主任調査員 山崎 憲さん
最前線の組合員こそが主役
労組組織のサポートで民主主義を再生 

 やまざき けん 1967年生まれ。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)国際研究部主任調査員。在職中に明治大学大学院経営学研究科経営学部専攻博士課程修了、博士(経営学)。著書に『「働くこと」を問い直す』(岩波新書)、『仕事と暮らしを取りもどす─社会正義のアメリカ』(遠藤公嗣、筒井美紀との共著、岩波書店)など。

 ――アメリカの労働運動から何を学べるでしょうか?
 アメリカで今起きているのは、労働運動が社会運動と連携するという表面的な話だけでなく、連帯を通じて労働組合が自らの組織を再生させているということなのです。最前線にいる労働組合員こそが主役であって、その労働組合員をサポートする組織に切り替わろうという方向に進んでいるのです。
 現在、アメリカから始まり、世界を巻き込んでいる最低賃金の引き上げ運動である「fight for 15」にはこうした背景があるのです。小さな単位で一人ひとりが主役となって参加する民主主義の機会を増やしていく。これが、たとえば、アメリカの「バーニー・サンダース旋風」やスペインのポデモスとしてあらわれているのです。
 こうした状況を日本の労働組合運動と関連づけて考えてみましょう。公共部門の多くの労働組合には、綱領の中に「行政の民主化」という言葉が出てきます。戦争へと向かう流れを止められなかったことへの反省がここには込められています。
 
「行政の民主化」とは何か
 ところが、この「行政の民主化」の内実について、現在、きちんと議論されているでしょうか? 市民や働く人が参加することなく、少数の権力者によって行政組織や株式会社が動かされた結果、戦争という道に進んでいってしまったという反省が「民主化」という言葉には込められていたはずです。そこには、「一人ひとりに発言権があって、一人ひとりの個性がきちんと守られて」という社会でなければ、同じように戦争という道にまた突き進んでいってしまうという真摯な人々の思いがありました。
 「行政の民主化」とは、行政組織で働く人にとっての民主化という狭いものではなく、市民を含めた行政に関わるすべての人が行政という組織に参加するための民主化のことをいいます。つまり、一般国民すべてにとって開かれた民主化ですから、パブリックコメントを集めたり、審議会に偉い先生に入ってもらって意見を聴いたりする通り一遍の市民参加ではなくて、本当にその受益に関係のある人たちがきちんと参加できる場をどれだけつくれるのかということであったはずです。
 とりわけ、行政機関を組織する労働組合にとって、かつての過ちを繰り返さないためにも、「行政の民主化」についてあらためて議論することは重要です。これは、アメリカやヨーロッパで労働運動が地域に根差した組織と連帯しているという状況と通じることといえます。なぜならば、「行政の民主化」は、行政にかかわるすべての人が当事者として直接に参加する機会を実現することによってしか実現しないからです。そのために、労働組合は最前線に立つ現場の人、つまりは労働組合員一人ひとりが主役となるように支えるための組織へと生まれ変わらなくてはなりません。
 現実に日本で起こっている問題を考えてみれば、さまざまな行政上の問題で困難をかかえるような一般市民がたくさんいるわけです。そういう人たちにどうやって行政の場に参加してもらえるようにするのか。実際に行政で働く最前線の人たちが、自分たちが最前線に立ちながら自分たちも参加し、かつ一般市民が参加できるようにしていく。それをサポートするのが、公務の労働組合が綱領に掲げた「行政の民主化」でしょうし、アメリカやヨーロッパで現在起こっている労働運動と社会運動の連携とも通じるものになります。