国民の権利保障機能を後退させかねない総人件費抑制と定員削減に抗議する
――「総人件費方針」及び「機構・定員管理方針」の閣議決定にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2014-07-25
2014年7月25日
日本国家公務員労働組合(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
 政府は本日(7月25日)、「国家公務員の総人件費に関する基本方針(以下、「総人件費方針」)」及び「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針(以下、「機構・定員管理方針」)」を閣議決定した。
 今回の決定は、6月24日に決定された「経済財政運営と改革の基本方針2014(骨太方針)」の「公的部門改革の推進」の項で示された「国家公務員の人事管理・総人件費等に関する基本的な方針を策定する。あわせて、機構・定員管理の基本方針を策定」するとしていた課題を具体化したものである。
 
 「総人件費方針」では、基本的考え方として、①府省の枠を超えた戦略的・機動的な人材配置の実現をめざす、②職員構成の高齢化や雇用と年金の接続に伴う構造的な人件費の増加を抑制するとともに、簡素で効率的な行政組織・体制を確立することにより、総人件費の抑制を図る、などとしている。
 具体的には、「給与及び退職給付」について、「地域の民間賃金や60歳超を含む高齢層従業員の給与の実態を踏まえつつ、能力・実績の給与への一層の反映や給与カーブの見直し等を推進する」、「5年ごとに退職手当支給水準の見直しを行うことを通じて、官民均衡を確保する」ことが示され、人事院が検討している「給与制度の総合的見直し」の具体化を後押ししている。
 また、「機構・定員及び級別定数」については、「定員の合理化」と「府省の枠にとらわれない定員再配置の実施」が示され、それにもとづいて「機構・定員管理方針」が策定されている。級別定数については、「人事院の意見を十分に尊重する」と付記はしているものの、「内閣の重要施策に対応できる体制を機構・定員管理と一体となって実現する」として、内閣人事局に権限が移管された級別定数の設定・改定にかかわって、積極的に関与する意図がうかがえる。労働条件である級別定数の査定にあたっては、使用者による不当な介入を許さず、「改正」給与法第8条の「人事院の意見については、十分に尊重するものとする」ことを完全実施し、労働基本権の代償機能が十分保障されることが最低限担保されなければならない。
 さらに、「総人件費方針」をふまえ「毎年度、概算要求前に、人件費予算の配分方針を定める」としているが、労働条件と密接に関わる課題が含まれていることから、労働組合との誠実な協議の実施が必要不可欠である。
 
 「機構・定員管理方針」では、機構管理について、「政策の重要度等を踏まえた機構の重点配置及び府省の枠を超えた機構の再配置を推進する」として、府省の枠を超えた柔軟な機構管理の方針を打ち出した。
 定員管理については、「5年ごとに基準年度を設定し、府省全体で、対基準年度末定員比で毎年2%(5年で10%)以上合理化する」として、各府省の5年ごとの合理化目標数は内閣人事局が通知するとして、合理化計画の継続を前提としており、永続的に定員合理化計画を策定することを盛り込んだ。
 また、各年度の定員管理については、新規増員は「特に必要な場合に限る」とし、既存業務の増大に対しては「自律的な組織内の再配置によることを原則とし、新規増員は厳に抑制する」としている。さらに、内閣人事局が「重要政策に対応した戦略的な定員配置を実施する観点から、府省の枠を超えた大胆な定員配置を推進する」としているなど、府省間の定員再配置を強調している。
 機構・定員の査定にあたっては、各府省に「行政事業レビューや政策評価の結果、行政評価等による勧告等を反映し、定員配置の最適化を図る」ことを求めるとともに、それを促進させるために総務省が策定する「国の行政の業務改革に関する取組方針」を各府省が踏まえて要求を行い、内閣人事局が「審査に適切に反映させる」としている。そのうえで、各府省の業務改革のとりくみと査定への反映状況を総務省と内閣人事局が公表するとしており、査定官庁の影響力を強めている。
 
 以上の方針は、公務の実施体制のあり方や複雑・困難化する行政への対応、職員の健康管理問題など、現実に深刻化している職場の実態を顧みず、総人件費抑制と使用者権限の強化のみに焦点をあてたものと言わざるを得ない。
 また、11月22日に経済同友会が提言した「国家公務員制度改革関連法案の国会提出にあたって」のなかで、「(内閣人事局が)権限を存分に活用することで、戦略的かつ機動的に霞が関の組織と人員の配置を変えることが可能になる」とした財界の思惑とも符合するものであり、国家公務員を「全体の奉仕者」から「政府財界のしもべ」に変質させるねらいがあることも見過ごすことはできない。したがって、この方針にもとづいた「改革」については、容易に賛同することはできない。
 
 これ以上の総人件費抑制による定員削減は、行政機関の機能を脆弱にし、国民の権利保障機能の低下を招き、職員の健康破壊を加速しかねない。いま政府がなすべき課題は、行政分野の実態に着目して、行政需要にみあった定員の大幅増員による体制確保とそれによる公務・公共サービス機能の向上である。
 さらにいえば、従前の定員管理の手法を永続化するのではなく、定員管理の根本的な問題こそ見直すべきである。総定員法が施行された1969年当時、約90万人配置されていた行政職員は45年経過した今日では3分の1以下にまで減少しており、業務の繁閑に応じてメリハリをつけて定員を再配分することが困難となっている。したがって、まず総定員法を廃止して、定員管理のあり方を根本から見直すべきである。
 また、定員の縛りが、再任用や定年延長、非常勤職員制度、職員の健康管理など、公務員制度や職員の処遇に深刻な影響を与えている実態を直視して、柔軟な人員配置が可能な定員のしくみに改めるべきである。
 いま若者の就職問題が深刻な社会問題となっており、国の行政機関の職員の増員をはかり、若者の雇用の受け皿となることは、社会的にも許容されるはずである。
 
 国公労連は、今回の方針の策定に断固抗議するとともに、国民のための行財政・司法を確立する立場から、国民の権利保障機能の後退をまねきかねない政府方針の中止・撤回を強く求めるとともに、行政需要にみあった定員の大幅増員による体制確保を求めるものである。