公務の中立・公正性の確保、労働基本権の全面回復をめざす
――「改正」国家公務員法の成立にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2014-04-11
2014年4月11日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
 本日(11日)、国家公務員法等の一部を改正する法律(以下、「改正」法)案が参議院本会議で可決・成立した。
 国公労連は、法案の検討過程から問題点を指摘してきたが、それらがまったく修正されないままで法律が成立したことに、重大な懸念を禁じ得ない。衆議院での法案審議の過程で与党と民主党で法案修正等の合意書が交わされた(12月3日)が、附則に政府が定年の段階的引き上げと再任用制度の活用の拡大などの措置について「検討する」という条文を付け加えただけで、法案審議を加速させたことも禍根を残した。
 国公労連は、法案の提出時(昨年11月5日)に所見を公表しているが、改めて主要な問題点を指摘する。
 
 第一は、国家公務員の労働基本権を制限したままで、労働条件の決定にかかわる権限を人事院から使用者機関に移管したことである。「改正」法では、内閣人事局を設置(内閣法第21条)して、そこに人事院の級別定数の設定・改定と任用・試験・研修の企画等の権限の移管、総務省の人事行政と機構・定員管理等の移管、新設される幹部人事の一元管理や総人件費の基本方針を含めて多くの権限を内閣人事局に移管・集中(国公法第18条の2)し、強大な使用者機関が設置される。
 法案では、級別定数の設定・改定にあたって人事院の意見を尊重する(給与法第8条)ことが盛り込まれ、国会審議では級別定数の勤務条件性が争点となった。稲田担当大臣は、12月3日に「個々の官職の職務の級の格付け自体は、突き詰めれば、勤務条件に関連する側面はない。しかし、当該官職に個人を当てはめた場合及び個々の格付けの結果の積み上げは、勤務条件に関連する」などとする「級別定数関係事務に関する見解」を示した。見解では、権限を内閣人事局に移管する姿勢は崩さなかったものの、勤務条件と密接に関連することを認めざるを得なかったこと、運用にあたって人事院との協力や連携を強調したことなどは、まったく不十分ではあるが、私たちのたたかいの反映である。法律の運用にあたって、労働基本権制約の代償機能が十全に確保されるよう政府・人事院への追及を強化する必要がある。
 他方で労働基本権については、衆参内閣委員会での附帯決議で自律的労使関係制度について「職員団体と所要の意見交換を行いつつ、合意形成に努めること」が盛り込まれたが、国会の討論でも政府・与党はこれに真摯に向き合う姿勢をまったく示していない。引き続き、憲法と国際条約に沿った労働基本権の全面回復を求めていかなければならない。
 
 第二は、幹部職員(本府省の部局長以上。約600人)の人事について、内閣総理大臣が適格性審査を実施した上で幹部候補者名簿を作成するという、人事配置に官邸の意向を色濃く反映する仕組が盛り込まれたことである(国公法第61条の2)。また、幹部職員の降任に関する特例(国公法第78条の2)を新設して、本人の意に反する降任を可能とする要件を拡大した。これらは、各府省の適材適所を基本とした人事配置から、時の政権による恣意的な人事を許すこととなり、「全体の奉仕者」という公務の公正・中立性が損なわれかねない。
 さらに、内閣総理大臣が案を作成して閣議決定する採用昇任等基本方針(国公法第54条)の基本的事項に、「職員の公募に関する指針」が新設された。これは、幹部職員の政治任用を可能とする仕組みであり、附帯決議では、「幹部職員の公募を実施すること等必要な推進方策を検討すること」(衆参両院)が盛り込まれた。他方で「第三者の意見の聴取など公正な適格性審査の仕組みを検討すること」(参院)も附帯決議に盛り込まれたが、政治任用が具体化された場合、公務の公正・中立性を損ない、行政の専門性の確保さえも困難となりかねない危険性がある。
 
 「改正」法成立後は、政令や指針、人事院規則などが具体化されることから、これまで指摘してきた問題点の解消を求めるとともに、労働者・国民の権利を保障する公務・公共サービスの拡充をめざし、民主的な公務員制度の確立を求めていく必要がある。また、新設された「登録された職員団体は、人事院規則の定めるところにより、職員の勤務条件について必要があると認められるときは、人事院に対し、人事院規則を制定し、又は改廃することを要請することができる」(国公法第108条の5の2)の規定の活用も必要に応じて検討する。
 
 憲法で保障されている労働基本権が不当に制約されている国家公務員労働者にとって、給与などの労働条件決定に関わる人事院の代償機能を使用者機関に移管したことは、権利が奪われるに等しいものである。したがって、新たな労使関係のもとで、国家公務員労働者の権利を確保するために、国公労連との交渉・協議等を十全に保障する対等な労使関係の確立に向けて全力をあげる。
 国公労連は、引き続き憲法15条(全体の奉仕者)に基づく公務員の中立・公平性の確保、国家公務員労働者の権利の回復を求めて奮闘するものである。